ノン・ハモによるハイカーのための軽量ハンモック案内

記事:勝俣隆

 

2016年春に「Hammocks for Hiker 」というイベントがあったのを知っている方はいらっしゃいますか?(2017年もあるそうです。)ハイカーのためのハンモック、と不思議に思った方も多いでしょう。わたしもそうです。いまだにそうです。ええ、わたしは「ノン・ハンモック・ハイカーです!」と声高に叫びたいくらいです。ハンモックを山に持っていく理由が分からない、地に足の着いた人間なのです。ですので、ノン・ハモとして、最近のウルトラライト・ハンモック事情について、スタッフのニノのハンモック愛に絆(ほだ)されるように、試し張りに付き合った時に感じたハンモック考をお話しできたらと思います。

 

「ハンモックの利点とはなんなの?」
宙に浮いていることかしら、たぶん。きっとそれ以外にないでしょう。着地していたらただの頼りないグラウンドシートですからね。地面から浮いていると、確かにいいこともありそうです。
「雨が降ってもテントやツェルトの下の水たまりに怯えなくて済みます」
「雨上がりで、まさに濡れた地面にいやいやグラウンドシートを敷かなくて良いのです」
「虫がうろちょろしません。ダニも安心です」
「あ、地面が傾いでいても寝られます」
「そもそも地面なんて必要ないのです」

驚きです、ハンモッカー。地面が必要ないなんて…。

言われてみると、日本の山なんて平たいところより、おおよそ地面が傾いたところばかり。十分な宅地面積がなくて、広いお山なのにキャンプグラウンドで肩を寄せ合って、都会よりも近くでお隣さんと一緒にご飯です。イビキで困ることもありますよね。ハンモッカーが森を見ると、「ああ、ここで吊ったらどんなに心地よいことだろう」なんて思うみたいです。普通の地面ハイカーなら「こんなところで寝られるか」と憤慨するところを、澄ました顔で寝床にしてしまうのでしょうね。むかつきます、ハンモッカー。そういえば、オーナーと雨の多いメインの森を歩いたときも彼は、地面の濡れも気にかけず、斜面を選んでハンモック泊とシャレこんでいました。こちらは半濡れの地面に横たわり、夜の間中、体温を地面に奪われ続けるというのに…(ハンモックでも気温が低いときは下から冷えないように対策が必要だそうです)。
そういえば、以前、アメリカで出会った女性ハイカーはハンモックを使っていました。女性だと、やはり寝る場所に気を遣うそうで、男性が多い場所ではあまり泊まりたくないので、できればこっそりと離れたところで寝たい、と。「ハンモックだと寝床を探すのが簡単なのよ」と勧められたのですが、話を聞くと見た目に反して意外と重いのです。そうなのです、ハンモックは重いのですよ、一式。

「ハンモックって重いから!」
わたしのつたないハンモックの知識だって、ハンモックだけでは木につるせないのは分かっています(ハンモックって寝る部分の布ですよね?)。

・ハンモック
・木に結ぶロープみたいなやつ
・クライミング用のカラビナ
・寝るときに張るタープ

布部分がどんなに軽くたって、うっかりしたら合計で1キロを超えてしまいます。そんなに重いならテントが良いです。浮かなくてもいいです。地面がビシャビシャでひたひたでもいいです。テントバンザイ!
そんなことをハンモック・ニノに言ったところ、「サブ・セブンがあります」と答えるのです。この人は、気が付くと「サブセブンイイヨナァ、サブセブン」といつも唱えているような気がします。
サブセブンを見せてもらうと確かに軽い。Sub Sevenと言うからには7オンス未満に違いない、と思ったら本体145グラム。頑張れば6オンスです。145グラムと言えば、Tシャツ一枚の重さ。うっかりすると、タイベックのグランドシートだってそのくらいです。
「軽いのに、寝心地と重量のバランスを重視した、オーバーナイトハイキングにも対応できるハンモックなんですよ。」
そういう謳い文句に騙され続けて、はやウン十年。寝心地とか無縁の輩にちがいない、一日くらい寝るのなら、こちとら木の根っこでも我慢すればできるやい、と思ったら、メーカーではスルーハイキングでの使用も考慮して作っているとのこと。スルーハイキングといえば、半年のあれです。やれやれです。きっと、そういう殊勝な人がいるのでしょう、半年の長旅の間、ハンモックで寝てしまう人が…。*ニノはCDTをバイクパッキングをしたとき、ほとんどハンモックでした。やれやれ。

試し張りも終わって、折角なので(スキを見て)寝てみます。これはこれは!空が広く見えて気持ちいいなぁ。いやっ、ハンモックだからではないのです。心地よいのは空のおかげです。
ハンモックの中では斜めに寝るそうです。まっすぐに寝ると納豆みたいに閉じてしまいます。軽さと、見た目の短さに反して、斜め方向に生地が伸びるので男性でも余裕です。ハンモックの生地って斜めに伸縮できるようにできているのですね。びっくりです。この広さ、女性なら泳げるんじゃないかしら。なによりサブセブンの生地はさらっとしていて、べとつきませんし、通気性が良くて蒸れませんし。こういうところ、素敵です。
試し張りついでに、単行本を持ち込んで、ヘッドフォンで音楽を聴きながら、本を読んだり、空を眺めていたら、いつの間にか眠っていました。VIVA、昼寝!

HAMMOCK

SUB7でうっかり昼寝。ノンハモとしたことが、、

 

「そうはいってもロープが重いじゃないか」
眠ってしまったからと言って、騙されてはいけません。生地の良さはわかりました。でも、木に括るロープが500グラムぐらいあるのだったら、サブセブンがいくら軽かろうと、スポイルされてしまいます。それとカラビナ。あれも重いものです。クライミングの大きなものを使っていて、もうそれだけでUL的にはアウトでしたもの。騙されてはいけませんよ。重いんですって、ハンモック。
「もう少し軽ければハンモックもどうにかなるものを…」と言うと、(ほら来たことか)というニノのスマイル。何やら、全面的にわたし方面に雲行きが怪しいです。「ハミングバード社のツリーストラップに替えましょうか」と取り出したのは、重さが62グラムのストラップ二本。ペアの重さです。鉄より丈夫なスペクトラのコードに繋がっていて、耐荷重は181キログラムですって。大人が二人寝ても大丈夫。驚きです。たった62グラムのコードなのに。コードだけでも欲しいくらい。
長さの調節は「ウーピースリング」という、ロープの中にロープが通っている自在みたいな仕組みです。テント界では見たことない、ウーピースリング。ハンモック界では割と普通だとか。

HAMMOCK

ハミングバード社の軽量ツリーストラップ。 たったこれだけで大人2人分の耐荷重がある。

 

「木に巻き付けるのに一苦労ですよね…」
タープでも、木に巻き付けてしまえば、抜群の安定感です。嵐が来てペグが抜けようと、木はそうそう抜けないと相場が決まっています。軽いタープなら、アルミの小さなカラビナを使って木に巻き付ければ簡単に設営できるものを。ハンモックでは荷重もあるので、しっかりとした結び方やら、耐荷重のある大きなカラビナを使わないでしょ?というのは昔の話でした。今回の試し張りで一番驚いたギアがダッチウェア・チタンフック。そういえば、ニノが「ダッチイイヨナァ、ダッチ」と言っていたのを…。
考えてみましょう。普通に木に吊るすなら、輪っかにしたストラップを伸ばして木に巻き付け、片方の輪から片方を通して、カラビナでハンモック本体と結ぶものです。右手でロープ、左手でハンモックを持って…。そういうものだと思っていたら、そういうやり方だとハンモックが地面に付いて嫌だそうです。どこまで地面嫌いなのでしょう。
チタンフックを使えば、カラビナを外さなくても、木にぐるりと巻いてフックを留めるだけ。上下の向きを気にせず、ただ、引っかけるだけ。そのままつるつると袋から出しながら、反対側の木まで移動して、くるりと木に巻いて、フックを引っ掛けるだけ。これは、便利。ペアで15グラムととても軽いです。撤収もあっという間です。

HAMMOCK

これがダッチウェアのチタンフック。 横着モノにはぴったりです。

 

「ギアの軽量化ができます」
ダッチウェアからはカラビナも出ていて、ひとつ9グラムと軽いのに、耐荷重450キログラム。純正は20グラム。どちらにせよ軽いものです。

「これまでにハンモックを使っている人なら、カラビナを交換するだけで軽量化できますし、ハミングバードのツリーストラップなら、他のメーカーのハンモックとも組み合わせられます。また、タープを木に掛けるような場合でも使えます」
ハイカー御用達の軽いカラビナは耐荷重が15キロとかですものね。すごいことです。

HAMMCK

ダッチウェアのカラビナはさっぱりとしたフォルム

 

「設営時間って最短でどのくらいなの?」
チタンフックのおかげでだいぶ短縮できた設営時間。実際に図ってみました。ゆっくり準備して1分。急いだら30秒です。
実際に宿泊するにはタープを張ったりしなければなりませんが、ハンモックを張って昼寝するだけなら、お湯が沸くまでに張り終えることができるのでした(じつは、ハンモックの人が設営や撤収に時間が掛かっているのを、こっそりほくそ笑んでいたのでした。もう笑ってられません)。撤収も、もちろんフックのおかげで簡単に外せます。
それとサブセブンのスタッフサックが少し大きめに作られているので、ハンモックを入れても余裕があり、ツリーストラップやチタンフックを入れられるのは嬉しい使用です。こういうメーカーの姿勢はユーザー目線でありがたいです。

(まとめ)
サブセブン 145グラム
ツリーストラップ 62グラム
チタンフック 15グラム
合計 222グラム

222グラムと言うのは、高性能コンパクトデジカメと同じくらいです。文庫本より少し重くて、リンゴ一個より少し軽い。222グラムで、濡れた地面でも、斜面でも泊まれ、昼寝も楽しめる。これにタープが加わりますが、それでも350グラムくらいのタープなら、合計でも600グラム。テントが軽くなろうとも、600グラムのテントは、なかなかありません。さらに袋の大きさは給食袋より小さいくらい。バックパックも小さく済みます。ああ、どうりでハイカーがハンモックと連呼するようになるのだなぁ。

いきなり泊りでは心配なので、心地よい休みの日に、ハンモック・デイハイクなんて良さそう。ノン・ハモでもそんな気が少ししました。

 


【関連動画】

[1] 今回の組み合わせでのハンモックを吊るしている様子はこちら。*基本無言ですが、最後に一言が(笑)

 

[2] ハンモックスピードチャレンジ。終わった後のドヤ顔に注目です!

 

[3] ハンモックの張り方ABC(TRAILS)
TRAILS作成のハンモックの張り方をわかりやすくまとめてくれている動画です。ニノも出てます。微妙に微笑です。


ハンモックを張るための、基本の3つの数字。これを頭に入れておけば、簡単にハンモックを設営できます。タープの張り方も、Movie内で紹介してます。
①木と木の間隔は4〜5m (目安: 手を広げて、横に2人分くらい)
②ツリーストラップの高さは160cm前後
(目安: 目の高さくらい)
③木とラインの角度は30度 (目安: 親指と人指し指で三角形をつくる)

詳細はTRAILS (トレイルズ)のウェブマガジンで。
http://thetrailsmag.com/archives/8335
「HAMMOCKS for Hiker – After Report #3 / ハンモック名鑑&周辺ギア」

 

[4] HAMMOCKS for Hiker / ハンモック・キャンピングムービー(TRAILS)
2016年春にTRAILS & Highland Designs の共同で行われたハンモックイベント『HAMMOCKS for Hiker』。その時に撮影されたイベントムービーの一つです。ハンモックがあるだけで不思議と穏やかな空気が漂うのは不思議です。(イベントの内容について→2016年 HAMMOCKS for Hiker2017年も開催予定!

http://thetrailsmag.com/archives/7440

「HAMMOCKS for Hiker」のイベントに先がけ、仲間のハイカーとハンモックキャンプを楽しんできました!