ハイキングリポート

みちのく潮風トレイル、歩きました。(18.11.17追記)

2018/04/04
長谷川晋
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当スタッフ長谷川が「みちのく潮風トレイル」の八戸〜久慈区間を2016年秋に、2018年春には景観の良い区間の一つであり海岸段丘を“心底”楽しめる最苦難とも噂される久慈〜宮古区間を歩きました。個人的事情で一気歩きができていませんが、2018年秋にはお仕事も兼ねて残りの宮古から相馬までを11月に全線歩き終えました!(18.11.17追記)

これで一応は全線を歩いたことになります。多くの人たちの協力もありまだ未開通の区間も歩かせていただいたので、かなり具体的ご案内ができるはず!店頭であれば地図は開通済み区間のものでしたら一通りお見せできるものがあります。みちのく潮風トレイルの東京の出店(でみせ)として、できる範囲でいつでもご案内します!

みちのく潮風トレイルをご存知でしょうか?
*詳しくはこちらのポータルサイトご覧ください。http://tohoku.env.go.jp/mct/
震災復興というテーマがありつつも、それに囚われ過ぎず東北沿岸地域の海、山、里、川の自然を堪能できる長距離歩道として、今なお整備されているトレイルです。未開通区間もまだありますが、スルーハイキングに挑む人が少しずつ増えてきているように思います。今年度には宮城県名取市に「仮称 名取トレイルセンター」もできる予定で、整備開始から約8年を経て次のステップへと上がろうとしているトレイルです。

その中でも、八戸から久慈の約100kmは雄大な景色と穏やかさが合わさって、気持ちよく歩ける区間として多くの人にオススメできるルートです。美味しいものもたくさんあります!ここは2016年10月に当スタッフである私、長谷川晋が、北根室ランチウェイからの釧路川パックラフティングからのみちのく潮風トレイルへの「トレイルはしご旅」の際に歩きました。

2018年3月末には久慈から宮古の区間約144kmを歩きました。久慈から南は本格的な海岸段丘とそこにある豊かな自然を体験できる区間として知られている一方、入り組んだ地形から生まれる激しい高低差が海岸段丘の特徴と言わんばかりのアップダウンが連続して続く区間でもあります。しかし、そこには想像以上の豊かな自然があります。海沿いを歩いているはずなのに、長い長い森歩き。あれほど標高が低く、人のエリアが近いにも関わらず、クマやカモシカの生息している空気がこれほど色濃いのは関東を中心としたエリアがメインの僕には初めての感覚でした。キジも民家の脇まで普通にいる鳥でした。そしてどこも美しい水が流れる沢。あの水が注ぎ込む海は当然のように美しく豊かであろうと思います。伏流する川をあんなにたくさん見られるのも珍しいことでしょう。海のすぐそばなのに、断崖のため一気に水が流れ注ぎ込む沢もあれば、大きく削られた谷を伏流し海のそばで不意に顔を出し注ぎ込む川もある。潮の満ち引きを考えなければ通れないルートや高潮時には危険になるポイントなど自然を感じるところが盛りだくさんです。「海の近くだから、山とは違う」それは当然のことです。しかし間違いなくここには海沿いだからこそ感じられる、海沿いでなければ感じることのできない自然があります。“山登り”とは異なる、“ハイキングトレイル”だからこそ感じられるものがあります。
まだまだ言い足りません。できれば、この区間を歩いた人同士で一晩語り合いたいくらいです。良い点も悪い点もあります。正直オススメかと言われれば「いいえ」というでしょう。しかし、歩いた方が良いかと問われれば「はい」と答えたい区間です。

宮古以南の区間に関しては、正直800km近くあります。ちょっとずつ説明するのにもちょっとになりません。なるわけがない。まだ未開通の区間もありますし、一言では言い難いものでもあるからです。しかしできるだけ簡単に言ってみましょう。

宮古から南はいよいよ本物のリアス海岸となり、今までのは一体何だったんだと言わんばかりの「リアスづくし」になります。そしていくつもの半島を周り、一向に前に進んでいる感じがしない「半島地獄」いや「半島天国」の始まりです。これは半島なの?と言いたくなるほど巨大な重茂半島。魹ヶ埼や歴史に残るであろう姉崎を抜けていくと山田町。そこには「船越半島」という難関が待ち構えています。攻略が難しいのが半島の特徴でもあります。半島攻略こそみちのく潮風トレイルの大きいポイントだと思います。ぜひ「船越家族旅行村」のキャンプ場で一息ついてから船越半島に入っていただければ!素敵な家族が管理人としています。また会いに行きたい。

鯨山の山頂から大槌に入ります。時間があれば陸封型とニホンイトヨが交雑する珍しい遊水池もあるのでほっこりしてください。釜石にはすんなり入れてもらえず「箱崎半島」が待っております、はい。これがまた難敵。いや敵じゃないな。難関、難所、難半島!(言いすぎると怒られそう)しかし、この先で楽しんで欲しいのは旧街道である「浜街道」の峠道。ここはとても趣があり、道の幅や道の通し方なども感じながら大船渡まで楽しんで欲しい。水海公園から釜石に抜ける「鳥谷坂 とやさか」はふと昔の旅人が顔を覗かせそうな雰囲気があります。これまた趣のある「石塚峠」を越えると大船渡との市境となる「鍬台峠」へ。ここの“迷いの森”は日本にこんな森があることを誇りに思いたい美しい場所です。昔はバスも通ったという「羅成峠 らせいとうげ」の先にある越喜来ではぜひ滞在を(笑)トレイル沿いにある「ビアン」に寄れたら最高。綾里崎、綾里峠。あげればキリがない。碁石海岸や唐桑半島などまたいくつかのリアスご馳走を超えると気仙沼です。入り組んだ湾ならではの雰囲気が美しいです。防潮堤で失われつつある日本の原風景にあとどのくらい出会える期間が残っているのだろう。気仙沼大島の島ならでは雰囲気はちょっと一息するのに良いでしょう。本吉では素敵なおかみさんのペンション「ヴィラプチろく」。田束(たつがね)山で上からリアスを見渡し、ハイカーでも気軽に立ち寄りOKな南三陸の「いりやど」は宿泊も可能です。開いてたらラッキー「カフェG」で海をみながらホッと一息。葦が美しい北上川の雄大さを感じ、玄昌石(スレート)で有名な雄勝の波板地区にある「波板ラボ」では元気なおじさんたちとゆっくりお話する時間を。玄昌石の防潮堤。美しい浜があります。前もって電話しておくと良いですよ。石投山はとても素敵な山。心地良い山歩きを楽しんで。そして復興の勢い著しい女川を抜けて大六天山。牡鹿半島の先端に抜けていく峠道には地元有志による道標が道案内をしてくれます。鮎川は夕陽が美しい。御番所からは弓なりが美しい仙台湾や、古より信仰されて来た金華山を臨み(行けたらラッキー)ます。金華山沖は世界三大漁場でも知られています。そして島を渡ったら石巻の市街地に入ります。

石巻から先は今までとは少々趣も変わり、主に市街地を歩くことになります。しかし、思った以上に楽しい。ぼくはそう感じました。歩くところどこにでも人の歴史の足跡があるからかもしれません。旧北上川。北上運河の松林。東松島に入ると小島の雰囲気もまた少し変わってきます。宮戸から見える「浦戸諸島」は本当に目と鼻の先のよう。寒風沢、1.5kmほどしか距離がない野々島、桂島を渡る浦戸諸島は近くに大きな街があることを忘れさせてくれます。トレイルは「鹽竈神社」を抜けて、多賀城へと続きます。「松かま」の工場が開いている時間に通ったら試食をしていきましょう。そしていよいよあの長く美しい仙台湾へ。ルートとは違うけれどぜひ防潮堤上を歩いてあの海と海岸線を見て欲しいです。それを過ぎたら「名取トレイルセンター」へ。完成まではもう少しお待ちを。田んぼやビニールハウス群ののどかな景色を進んでいくと「阿武隈川」に。いよいよ福島が近づいたことを認識する瞬間です。緑濃く、雄大さ、歴史も感じる阿武隈川は飽きない時間。亘理町や山元町はりんごやいちごなど果物も有名。「はらこ飯」が食べたい人は秋に行きましょう。亘理には素敵なトレイルエンジェルがいます。そこから久々の山歩き、「四方山」を抜けて深山まで。ひなびた雰囲気が懐かしくて落ち着く山々。高尾周辺のお山のようです。再び田んぼや畑の穏やかな風景を進むと、気付いた時には新地町。そう福島県です。通っている電車は常磐線です。急に関東感を感じてしまうのは関東の人間だからでしょう。地域で自然を守っていて、森の雰囲気が素晴らしい「鹿狼山」は地元の人々にも大人気。そこを下りれば、相馬まではもう少し。松川浦環境公園はターミナスではありますが、ぜひ松川浦の防潮堤を上がり海を見て欲しいです。「たこ八」の方まで少し歩くだけで松川浦の美しい風景を見ることができます。

 

ね、意外と長くなるでしょう。これで大体1000kmです。十分長いでしょ(笑)それ以上に歩きごたえ十分。景観も十分。もうお腹いっぱい。もう歩きたくない。けど、また八戸から宮古まで歩き直しです。次のハイカーのために。

きっとまだまだ続く。

 

【Photo Gallery】

 



貸し出していることもありますが、大抵は開通済みの部分の全ての地図を揃えています。ただし今も道が変わり続けているので、最新のものはご自身でお取り寄せください。それ以外にも各地域のパンフレットなども友人たちの力を借りてご用意しております。また、長谷川自身が作ったオリジナルのトレイルルートデータもありますので、必要でしたらコピーなどしてお持ちいただくことも可能です。

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これでもまだ全部ではないマップ。全線開通で900kmの予定。右下はハイキングしやすくするためのオリジナルデータシート。

 

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それぞれの場所で美しい自然だけでなく、美味しい食べ物も待っています。いろいろ知るには地元の情報が一番!

 

長谷川晋

書き手長谷川 晋

1978年、東京生まれ
自転車で日本を旅して回ったのが「旅人」としての原点。トレイルネームは「Turtle(タートル)」 セレクトショップ、スキー場、山小屋、アウトドアショップなどの勤務を経てハイカーズデポ スタッフへ。2010年のパシフィック・クレスト・トレイルスルーハイクの後、その経験を後進ハイカーにブログやイベントなどを通じ積極的に提供。ウェブマガジンTRAILSとの共催イベント「LONG DISTANCE HIKERS DAY」をたちあげ、日本人長距離ハイカーコミニティの中心人物でもある。現在は一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所の代表理事をつとめ、日本における長距離トレイルやハイキング文化発展に奔走している。著書に『LONG DISTANCE HIKING』(TRAILS)がある。

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