Highland Designs

TOP QUILT [4th Edition]

スリーピングギア
Weight

360g

PrimaLoft+Aerogel の技術からうまれた、断熱性と形状安定性に非常に優れたPrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™を使用。平均360gのキルトタイプの化繊綿スリーピングバッグ(寝袋)。温暖期の単体使用または保温力向上や結露対策のカバーとしても使用可能。
Weight

360g

SPECIFICATIONS

重量
360g ±5%(Regサイズ 実測値)
サイズ
全長:178cm
首幅:64cm(周りで128cm)
胸周:128cm
フットボックス底面径:φ31cm*深さ50cm
素材、構造他
生地:15D *15D ナイロン
中綿:PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™ 60g/m2
想定適応温度:適温/12 ℃(サマーシーズン用)
       限界/6℃
カラー:シルバーグレー
24,000円 (税込26,400円)

日本のキルトの先駆け
化繊綿を使い続けた
ハイカーズデポのこだわり
『Top Quilt トップキルト』

*本製品とは一部カラーや仕様が異なる場合があります。

 

背中側を思い切ってなくし、足元だけ閉じていて、上からおふとんのようにかけて使う「Quilt」というスリーピングバッグ(寝袋)は、北米を中心としてウルトラライトハイキングを嗜好するハイカーたちが「軽量化と向き合う中」で生み出されてきたスタイルです。日本で一般に言われる「封筒型」と「マミー型」の寝袋の間を取ったような、もう一つの寝袋の形といえるでしょう。現在ではこのスタイルが必ずしも軽量化とは直結しないことがわかってきましたが、ウルトラライトハイキングに当てはめると合理的な働きをしてくれるデザインです。そのトップキルトですが、あえてシンセティックダウン(化繊綿)で作ることにこだわり続けています。

化繊綿のデメリットとして「素材としての重さ」がありますが、サマーシーズンに限定してみるとその差は小さく、湿気への強さや手入れの簡便さなどを考えると、重量差をカバーするメリットが見えてきます。そして、化繊綿のキルトにしかできない「寒冷期のトップカバー」として使用する方法はとても理にかなっていて、ダウン(羽毛)スリーピングバッグとの相性が良く、既存の製品も活かせる汎用性の高さが特徴です。

そのトップキルトが新たな中綿素材「PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™」を採用して「4度目」となるモデルチェンジをしました。

*画像はサンプルのため、本製品とは一部カラーや仕様が異なります。

表側

 

裏側

 

裏側 開いている状態

 

ハイカーズデポが開店して1年後の2009年から日本では先駆けてキルトタイプのスリーピングバッグとして販売しています。気がつけば9年。今や当店の定番であり、ダウンスリーピングバッグ全盛の現代にあって、トップキルトは化繊綿スリーピングバッグ再考のきっかけを作ったエポックメイキングと言えるでしょう。1stではシート状にはなっていない中綿を使うことで膨らみ感があり柔らかな風合いと軽さが特徴でした。2ndではナノ撥水加工を施した生地の採用とPrimaLoft® Silver(当時はSports)を採用し、屋外での積極使用を考えました。3rdでは表面生地を15デニールのミニリップストップナイロンに変更し、2ndからおよそ50gの軽量化をし、1stへの回帰となりました。

その後、撥水ダウンやフリースの構造を中綿として利用したPolartec Alpha®などの出現により、その立ち位置を変えてはいるものの、やはり化繊綿だからこその良さというのもあるのです。

 

PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™について

トップキルトは2009年の販売開始以来、シンセティックダウンであることにこだわってきましたが、2011年におこなった一度目のマイナーチェンジの際に、素材をPrimaLoft®  Silver(旧Sports)へのリニューアルをおこないました。3回目の改変、4th Edition では新しい挑戦として新素材を採用することになりました。

 

ここから長いです(笑)長い永い文章です。
覚悟はできましたか?

閑話休題

 

素材について

疎水加工を施したポリエステル中空繊維のプリマロフトは、化繊綿の中でも疎水性・軽量性・ソフト性・コンパクト性・速乾性などに定評がある素材です。プリマロフトには繊維の細さや重量あたりの厚み、クロー値(熱抵抗を表す数値で保温能力の指標となる)等の違いにより幾つかのタイプが存在します。これまではかさ高と耐久性が特徴のSilverを使用してきました。

4th Editionのトップキルトの制作においては、新技術「Cross Core™ Tecnology」を取り入れたPrimaLoft® Gold を採用しました。しかもその厚みは従来の100g/m2ではなく、60g/m2という一気に4割も軽いものを採用。プリマロフト®のようなシート状の中綿は目付け(=重さ)を測るのに生地と同じ表記をします。素材によって必ずしもその通りではないのですが、単純に考えて数字が大きくなればそれだけ厚さがある、または密度の高い生地だということになります。ということは中綿で数字が小さいということはそれだけ密度が薄いので、保温力が小さいことを示します。それなのに60g/m2という厚みを採用したのはなぜなのでしょう。そうです。お分かりの通りそこにこそ「Cross Core™」のからくり、技術があるということです。

silica gel(シリカゲル)をご存知でしょうか?あの乾燥剤(または吸湿剤)のあれです。もちろんそのものではありませんが、そのシリカゲルを構成しているSilica で作られた「Aerogel エアロジェル」(*gelは日本語ではゲルですが、英語の発音はjelなのでジェルと表記します)は宇宙開発で有名なNasaによって発展してきた素材です。
その特性は「非常に多孔質」で「低密度」。素材構成の95%や98%が空気と言われており断熱性、耐熱性、形状安定性を持つにも関わらず超軽量な素材です。例えばガスバーナーでシート状のエアロジェルをしたから熱しても燃えず、その上に置いてあるマッチに引火しません。またたった2gしかないエアロジェルの塊は2.5kgのブロックの重さを支えます。エアロジェルの塊は不思議な半透明さのため「frozen smoke 凍った煙」や「solid air 固体の空気」などといういくつものニックネームが存在しています。

そのエアロジェルをプリマロフト®の繊維と混合させることに成功したのが「Cross Core™ Tecnology」でその技術によって作られたのが「PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™」(略:プリマロフトクロスコア)というわけです。繊維にエアロジェルが含まれることで、繊維自体が多孔質構造になります。保温するために必要な「Daed Air Space デッドエアスペイス」が“繊維と繊維の間”ではなく“繊維そのもの”にできるというわけです。ですので放出された熱を余すことなく、プリマロフト綿の中に含むことが可能になりました。それだけではありません。エアロジェルは重さに対しても高い安定性を示しますので、プリマロフトクロスコアの繊維自体が潰れにくくなっています。従来の中空糸では強い圧力で潰れてしまうと保温力が低下してしまっていました。しかしそれも改善されたので、全体的に高い断熱性能を発揮する素材になっているのです。

 

数値の比較

次は数値として見てみます。従来は一番高い保温力だった「Gold」ですが、その数値を上回っています。従来の採用していた「Silver」から比べると35%くらいclo値(クロー値)が上がっています。これがすごいことなのかどうかは正直僕らにも分かりません。しかし長年更新されることがなかったということはクロスコアによって飛躍的な進歩をしたと言って良いと思います。

PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™

dry clo値:1.07 cl0/oz/yd2

PrimaLoft® Gold

dry clo値:0.92 cl0/oz/yd2

PrimaLoft® Silver

dry clo値:0.79 cl0/oz/yd2

 

では次に従来のトップキルトに採用していた素材との比較をします。今回採用したのは「PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™  60」です。Totalのclo値というのは目付け(生地重量)に対しての断熱性を指します。これだけ見ると以前の素材の方が数値が高い=断熱性が高い、ということがわかります。もちろんPrimaLoft® SILVER  60との比較ならば36%近いアップですからその良さがわかります。しかし、PrimaLoft® SILVER  100と比べたら約22%減は大きい差です。ですが、それだけでないのがプリマロフトクロスコアなのです。

PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™  60

目付け:60g/m2 |厚み:0.9cm|Total dry clo値:1.93

PrimaLoft® Silver  100

目付け:100g/m2 |厚み1.9cm|Total dry clo値:2.37

PrimaLoft® Silver  60

目付け:60g/m2 |厚み1.3cm|Total dry clo値:1.42

 

もともとGoldはSilverと比べ柔らかなので厚みがでにくいものでした。ですので同じ60g/m2での厚みの差はそれほど気にするものではないです。ですがPrimaLoft® SILVER  100と比べると1cmもの厚みに差があります。そこで僕らは実験をしました。季節は5月から6月にかけて。実験は二人が別々の環境で行い、外気温が最低で10℃くらいまで下がりました。タープでの完全オープンで使うようにしたので、テントの保温はありません。

正直なところぼくは10℃前後の気温の時に旧トップキルトで暖かいと思ったことはありませんでした。それなのにプリマロフトクロスコアのテスト品を見ると厚みはペラペラだし、クロスコアとか嘘くさいしで、バックアップも用意して行きました。その結果どうだったのか。温かいのです。温かいというより寒くないと言うべきか。不思議と熱が溜まって逃げていかない感触がありました。化繊綿の場合、体が放熱している間は良いのですが、寝入って副交感神経が優位になると体温が下がるため、どんどん温かくなくなる感覚があります。また湿気を吸うこともないので、僕のような発汗が良い体質ではジメッとしてくるのも化繊綿の悪い面です。ところがです。それもありませんでした。ずっと同じ状態というか、変に蒸すようなこともなく、冷たくもなく、寒くもなく、すごい温かいというわけでもない。ただ、とにかくわかったことは従来品よりは確実に「快適」で「寒くない」という事実でした。それが4割も軽くなった中綿素材で可能だったという「事実」です。これはもう一人のテスターも同様の意見だったことを付け加えます。

PrimaLoft®社もプリマロフトクロスコアには大きな自身があるようで、彼ら自身で「the benchmark in performance synthetics」と言い切るほどです。僕らはその自信が本当のものだと思いました。さらにメーカーの説明としていただいた中に某アウトドアメーカーでの素材テストでは、従来のプリマロフトと比べ「加重時想定で15%ほど」clo値に優位性が立証されているそうです。要するに数値としては以下のようになるということです。

PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™  60  /Total dry clo値:1.93 × 1.15 = 2.22

PrimaLoft® Silver  100 /Total dry clo値:2.37

数字が苦手なそこのあなた!そう僕です。頭がいっぱいでしょう。最後になんてこと言うんだよって話をします。数値はしょせん数値です。わかりやすい測りであると同時に「事実」ではないということもまた事実なのです。だから数字どうこうが苦手な人はさっと流しておいてください。

結論これが僕たちが採用した理由であり僕たちが思う事実は、「PrimaLoft® Silver  100 と比べた時に PrimaLoft® Gold Insulation with Cross Core™  60 は同等かそれ以上に温かく、または寒くなく使うことができた」ということなのです。

 

 

トップキルトの夏における単体使用

「シュラフカバーだけでかまわない」「スリーピングバッグのジッパーは開けている」

夏場の寝具を考えるとき、こうした使い方をしばしば耳にします。7~8月の月別最低気温の平均は北アルプスの場合、5~10℃前後に集中します。

国内流通している主な夏用ダウンスリーピングバッグを簡易比較してみます。

A|重量290g ダウン130g(750FP) 8℃

B|重量350g ダウン150g(750FP) 8℃

C|重量430g ダウン180g(750FP) 8℃

D|重量380g ダウン150g(725FP) 5~10℃

E|重量460g ダウン180g(725FP) 3~6℃

F|重量460g ダウン180g(860FP) −5~0℃

平均的な夏用のダウンスリーピングバッグは、総重量 290〜460g、ダウン量は130〜180g、温度域は 8℃前後と考えられます。ダウン量で50gも差があれば保温力にも差がありそうですが、ダウンの質や寝袋の構造次第ではそのくらいの差もあると考えてよいでしょう。

すでにシート状成形されている化繊綿の場合は、中綿重量の微調整が不可能なため、トップキルトの制作においてはこの温度対応をふまえたうえで、重量的にもダウンから大きく外れないことを念頭において素材の選択をおこなってきました。ですので従来品でも総重量430gまで抑えていました。ところが今回は中綿素材自体の目付けを大幅に引き下げたことで、約360g(レギュラーサイズ)という軽さになりました。

こうした日本の夏山においては、レインウェアや防寒着で「雨対策」「寒さ対策」をしっかりしていることが大前提となりますが、様々なスリーピ ングバッグの使い方が実践できる場所でもあるのです。そこで日本ではまだなじみが薄い装備ですが、シュラフカバーでも、夏用ダウンスリーピングバッグでも ない、夏用軽量寝具としての「トップキルト」を考えてみます。

キルトという形状

軽さと保温力とのバランスをつきつめると、使い勝手などユーザーを選ぶ側面があるものの「羽毛のキルト」がひとつのウルトラライトハイキングを端的に表現したカタチの一つといえます。しかしこうしたキルトに対して「残雪期や晩秋の山において寒気が入り易いのではないか」といった不安感が日本ではまだまだ拭えません。日本の湿気の高さは北米などの大陸と異なり、それでも体感温度に変化があるため、比べることも簡単ではありません。

では、スリーピングバッグを布団のようにかけて使用するハイカーも多い夏場はどうでしょうか。フードと背面を省いてしまうというシンプルで軽量化に徹したスタイルも、現時点の日本の環境では、夏場の寝具と考えれば妥当性が高いといえます。更にダウンに比べ「保温力に対しての重量」で劣る化繊綿を製品として効果的に軽量化するにはこのキルトというスタイルは理にかなっているのです。

 

密着させて保温効果を高める

背面側の開きの調整ですが、ゴムコードでも細引きでもなんでもかまいません。しっかりしめたいというユーザーにはφ2mm以下の細いコードが適していま す。またストレッチ的に背面のあきを調整したいというユーザーにとってはパンツなどに用いられる平ゴムなどがお薦めできます。この部分については強度的なものは何も求められていないので、コード&コードロックの選択に際してはあらゆるものを任意で選んでください。

写真のサンプルでは一ヶ所しかないが
実際には上下二ヶ所ずつ
四つのループが付く

キルトの保温性能を最大限に引き出すには首回りの保温をしっかりすることが不可欠です。そのため襟裏の合わせを固定するのはベルクロではなく、しっかり固定できるスナップボタンを採用しています。

写真だと見にくいが
襟裏のスナップボタンで留める。
*本製品とは一部色や仕様が異なります。

 

秋冬におけるダウンとの併用(トップカバー)

キルトの使用方法として注目したいのが、秋冬のトップカバーとしての使用方法です。化繊綿のキルトは単体使用でも「軽さと保温性能のバランス」において十分に魅力ある製品ですが、他の羽毛(ダウン)スリーピングバッグと併用できる部分に、他には無い可能性と魅力があるのですす。

ダウンバッグの上にトップキルトを被せる

 

 

レギュラーサイズにはレギュラーサイズを

 

被せる余裕があるサイジング

ダウン寝袋の保温力プラス

従来はスリーピングバッグの保温力向上に 「インナー用スリーピングバッグ」 を使用する方法が一般的です。しかしこの方法だと、スリーピングバッグと体との間でインナーのロフトがつぶれやすいため、インナーの保温力を十分に引き出すことが難しいのも事実です。家庭での羽毛掛布団の場合、内側に毛布を入れるよりも、外側から毛布をかぶせる方が羽毛掛布団の保温力を十分に引き出すことができます。もとより背面側の保温はマットの方に重点をおくべきものなので、家庭用掛布団同様ダウンスリーピングバッグの上から軽い綿ものを掛けることで効果的な保温力アップが図れます。スリーピングバッグの背面とマットについて山と物理の両面から論考されているものとしては『ROCK & SNOW(山と渓谷社)』の故新井裕紀氏の連載「ハードコア人体実験室」で詳しく検証されていました。標準的なスリーシーズン羽毛(ダウン)スリーピングバッグ、約−6℃対応と併用した場合、厳冬期以外の冬仕様といえる−12℃対応程度の保温力を目安にしていただければと思います。Hiker's DepotオリジナルUDDダウンバッグ(810FP 260g、−6℃対応)相当との組み合わせでは、外気温 約マイナス17℃、シェルター内気温 約マイナス7℃でテスト済み。フロアレスシェルター、ツェルト、テント内での就寝ならば、この組み合わせで、外気温 マイナス15℃程度までの使用を目安にできるかと思います。

 

結露対策

冬季の結露対策といえば、ひとつはシェルターやテント内壁の結露がおちてくる、もしくはスリーピングバッグに接することで濡れてしまうというパターン。これについてはスリーピングバッグカバー同様、トップカバー代わりのトップキルトが内側の羽毛(ダウン)スリーピングバッグを保護します。もちろん防水素材ではありませんので限界はあるもののシンセティックダウンの特性を考えれば、テント&シェルター内での結露対策としては十分に機能するといえます。
また、防水素材のスリーピングバックカバーを羽毛(ダウン)スリーピングバッグにかぶせて使用した場合、スリーピングバックカバーの内側が結露、ダウンスリーピングバッグを濡らしてしまうということもあります。経験則では、テントとシェルター内(スリーピングバックカバーの外側)の温度が0℃前後(目安としては−5℃~+5℃)だと著しく結露するように思います。実感としては−10℃に近づけば、今度は結露がスリーピングバッグ内部で氷結する傾向にあるようです。
スリーピングバッグカバーの替わりにシンセティックキルトをトップカバーとして使用した場合、内部の温度と外気温との急激な温度変化を化繊綿内部で緩やかにすることができます。スリーピングバッグカバー1枚だとその内外で急激な温度変化がおきて結露するのです。それに対してトップキルトを使用する場合、キルトの内生地、シンセティックダウン、キルトの外生地、と順に温度変化は緩やかになるため結露点をキルト内部もしくは、それよりも外側に移していくことができるのです。温度、湿度などの要因が変化しやすい山においては結露しないとは断言できませんが、数年のテストやユーザーレポートの結果からはダウンスリーピングバッグ表面での結露を大幅に軽減できるといってよいでしょう。

 

その他の仕様について

生地とカラーについて

UL黎明期に時折見られたカラーをモチーフに新たな色を染めました。カラーはやや金属感のある雰囲気を感じる「シルバーグレー」。シレ加工(熱プレスで生地の片側表面を潰しダウンの抜けを防止する)された15D のリップストップナイロンは織りの密度が高く、摩擦強度は高いながらも通気性があり、寝袋内部での結露を抑制します。

 

スタックサックについて

付属するスタックサックはこのクラスのスリーピングバッグにしては大きめのサイズに設定です。コンパクトな収納サイズよりも、寝袋の収納しやすさ、バックパック内でのパッキングしやすさ、に重点をおいています。いくら小さくしても重量が軽くなるわけではありません。

むしろ、固形物(例:りんご)を隙間なくパッキングすることが難しいように、小さくして固めてしまうと、余計に大きなバックパックを用意しないと入らなくなる悪循環を生みます。りんごをすり潰せば隙間なくパッキングできるように、寝袋は大きめの袋にふんわりと入れるくらいがちょうど良いのです。

このクラスのスリーピングバッグでの平均的な収納用スタッフサックのサイズは写真中央になります。実際にこのサイズに収納することも可能です。しかし化繊綿は圧縮が強いとロフトにクセがつき、ロフト低下を招く可能性があると言われています。中綿を痛めたり偏りができるのを防ぐ意味でも、ダウンスリーピングバッグと違いしっかり畳んで収納することをおすすめします。そうした点からもトップキルトが収納しやすい大きめサイズにしてあるのです。

左がトップキルトのスタックサック

 

スタッフバックのサイズは50L前後のバックパックのボトムと同程度に設定してあります。左写真はGranite Gear ヴァーガのボトムと比較したものになります。またスタッフサックの底面も楕円形にしてあるだけでなく、収納にゆとりがあるため融通がきくことからもバックパック内でデッドスペースができにくく、パッキングがしやすくなっています。

  


以下はさらに突っ込んだ内容になります。
また今までの経験を基にした化繊綿に対しての考察の一つくらいに考えてお読みいただければと思います。

 

化繊綿の特徴と評価

化繊綿が開発された背景にあるもの

本来、化繊綿は濡れによるロフトの低下、保温力の低下が大幅に生じるダウンのデメリットを補う素材として作られました。そのバックグラウンドにあるのは軍隊の存在です。行軍は非常にシビアな環境な中行わなければなりません。いちいちその場その場で着替えをするという対応はできず、そのまま水中に入ることもあるのです。だからこそどんな状態になってもずっと着ていられるような素材などが求められるのです。アウトドアでもエクストリームな状況は行軍に近しい環境にあることから、アウトドアギアと軍隊の道具は微妙な相互関係にあります。シンセティックダウンの持つ、「湿気に強く、保温力の低下がおさえられる」というその特性は、そういった背景から生まれてきました。

化繊綿への再注目

化繊綿自体は今や定番のアウトドア素材として多くの人に認知されていますし、数多くの製品が出されています。それ以前もあった素材でしたが、1990年台後半からアメリカのアウトドアマーケットでは、防寒衣料の素材として様々な化繊綿が新登場し、採用、変更されるというアクティブな状態の時期がありました。そして、日本同様に多湿なアメリカ東海岸ではULハイカーを中心に化繊綿スリーピングバッグが再注目され、当時、多くのフィールドテストや市販品の改造、自主製作などが報告されていました。こうしたレポートは、当時の「Backpacking Light.com」をはじめとするアメリカの様々なサイトで散見されていました。こうしたアメリカの動向をいち早く日本に紹介した媒体として、ブログ「山より道具」などがありました。今でもインターネット検索には過去の記事がピックアップされることがあります。2007年以降は日本でも一部ULハイカー達がこうした化繊綿スリーピングバッグのテストを頻繁におこなっていました。
今現在では、その当時あったような自分で道具と向き合って模索する挑戦はあまり聞かれなくなりました。こういったクリエイティブな行為が減っているのは避けようのない事実と言えるでしょう。

化繊綿が活きる環境とメリット、デメリット

6~9月期の日本の山は、梅雨、夕立、台風、秋雨と「雨対策」が避けて通れない環境です。また、フロアレスシェルター、タープ等の「床なし屋根のみ」を積極的に使用するULハイカーにとっては、地面や周囲からの「湿気対策」も湿度の高い夏には気にかけるべき点と言えます。こうした日本の夏山においては化繊綿の湿気に強いという利点はもっと評価されていて良いはずなのです。

もう一つ、夏用「羽毛」スリーピングバッグの場合、ダウン量が少なくなるため、寝袋内部でダウンが偏りやすい状況が起こります。結果、コールドスポットがところどころにできる可能性が高まります。それに対してシート状に成形されている化繊綿ではこうした中綿の偏りや局所的なコールドスポットが生じません。こうした点もシンセティックダウンの大きなメリットと言えるでしょう。デメリットとしてあげられる素材重量については、キルトという形状を選択することである程度まで軽減することが可能です。

化繊綿への考察

疎水性が高く、湿気に強いプリマロフトなどの化繊綿ですが、「水濡れても保温力を失わない」という勘違いが往々にして起こっています。羽毛と比べ、湿気に強いことは確かですが、濡れても保温性を失わないというのはやや大きく出すぎた表現です。そもそも疎水性とは水を寄せ付けにくということで、撥水とは異なりますが、撥水性も疎水性の一部と考えれば良いでしょう。疎水性が高ければ、含んだ水分を早く逃がしてくれます。結果的に中綿が濡れていない状態に早くなることで、ドライに近い状態を保持し、空気の層を残してくれるので保温力を発揮するのです。しかし、疎水性が高く、化学繊維のため吸湿性に乏しいので、体表面がウェットになりやすいのです。ですのでインナーには吸湿性に優れたものなどを着用し対応する必要があります。

対して羽毛は、本来脂分がありそれが撥水力を生んでいますが、臭いや汚れを除去し膨らみが出やすいように洗浄しています。そうすることで吸湿性、放湿性に優れるようになりますが、同時に撥水力はなくなり、濡れるとロフトの低下を招きます。吸湿性が高いので、体表面にある湿気をどんどん吸い、体はドライに保たれ温かくなります。しかし外気に対してもこれと似たような現象起こしますので、あまりにも過剰な湿度になるとロフト(膨らみ)の低下を招き、保温力が低下します。
とはいえ、この言い方自体、化繊綿を上げて言い、羽毛を下げて言えばこういうことになる、ということなのです。ダウン自体は放湿性も優れていますので、継続的に雨などの濡れに直接当たらない、もしくは水に浸かるようなことが無ければ、そこまでのことはありません。また、化繊綿も水を多く含んでしまえば当然空気の層は無くなるので、著しく保温性が低くなります。しかし、この二つでもっとも大きな違いは、「水切れの良さ」と言えるのではないでしょうか。

例え、撥水ダウンにしても、あくまで撥水ですから、完全に水に浸かってしまえば、一旦はロフトを大きく失います。水切れに関しても、通常のダウンよりは良いとしてもやはりある程度は含んでしまいます。しかしシンセティックダウンは、収納性がダウンよりも劣る反面、この反発力の強さと、繊維自体が疎水するため、水を含んでも空間が潰されることなく、その間を通って素早く水分を外へと逃がして行くのです。化繊綿が羽毛に大きく勝る一点だと思い ます。正にこれが、上記にもあるような、野外での不意な悪天候、エクストリームな状況や軍隊の想定している状況に対応できる理由になっているのです。

また、新しい保温素材が出ています。例えば、Polartec Alpha® はその中でも注目される素材です。Alphaも背景には軍隊からの依頼があったものです。これは、化繊綿素材と異なり、肌面に生地を必要としないことで、熱が伝わりやすく、すぐに暖かさを感じます。また、放熱効果が高く、蒸れが内にこもりにくいので長時間の持続行動向きで、その抜けの良さは水切れの良さにもつながっており、化繊綿以上の性能です。しかし、メッシュ状の生地を引っ掻くようにして毛羽立たせている素材のため、強度面での不安、圧縮や経年使用によるロフトの低下、劣化は化繊綿よりも早いと考えられます。放湿、放熱に重きを置くため、密度が低く、化繊綿と同じ保温力は期待できません。実際、同重量比の保温力では、化繊綿の方に分があります。ということは、シンセティックダウンと同様の保温力を出すためには重量増になるということです。さらにそれは、収納性の大きさも指します。密度の高い化繊綿ですが、圧縮性はPolartec Alpha®などの新素材よりも優れているのです。

まとめると、化繊綿は素材自体にハリ・コシがあるため濡れても水抜けが良い。ロフトが低下しにくいため、空気の層を作りやすく、保温力を失いにくい。ダウンには劣るものの、化繊素材の中では優れた圧縮性がある。反面、吸湿性に乏しいため、内側には吸湿性の高いものを着用する必要がある、ということになります。

 


梅雨明け7、8月の使用を中心に、インサレーションウェアとの組み合わせ次第で梅雨どきの6月から台風時期の9月まではもちろん、使い方や地域によっては5月中旬から10月下旬まで、あらゆるコンディションで積極的に使用できる、化繊綿のスリーピングバッグ『トップキルト』。形状&重量&使用方法&素材といったあらゆる面で、羽毛(ダウン)でできない、新保温素材でもできない、大きな魅力や価値があるのです。

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土屋 智哉

土屋 智哉

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はじめてBackpacking Lightから化繊キルトを購入したのは2006年。それ以来、化繊キルトがわたしのマイフェイバリット。トップキルトはハイカーズデポ 開店当初からアップデートを重ねてきた自信作です。
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