軽さと耐久性のバランス
修理を前提とした構造
まさに信頼の超軽量折り畳みポール

ヨーロッパの山岳マラソン競技において使用されてきた折りたたみ式ポール。2006年頃に日本国内の発売が始まって以来、急速にトレイルランナーおよびライトウェイト志向のハイカーの間で広がりをみせてきました。ポールとしての強度は通常のトレッキングポールの1/3～1/2程度（註1）であるため、使用方法および使用環境を選ばなければなりませんが、その軽さと携帯性の高さはそれを補ってあまりある魅力といえそうです。2011年は従来からのヨーロッパメーカー（CAMP）、日本メーカー（シナノ）に加え、遂にモンベル、ブラックダイアモンドという日米大手メーカーが名乗りをあげます。折りたたみポールの存在感がますます高まってきた証拠でしょう。この中でもBlack Diamondはハイキングシリーズ、スキーシリーズと特性の違うモデルを発表しています。折り畳みポールの可能性を広げてきたメーカーといえるでしょう。

ディスタンス カーボン Zは、カーボンファイバーシャフトを採用したシリーズ最軽量モデル。日本における一般的なサイズである115cmモデルで 272g/ペア（136g/１本）となります。

トレッキングポールの軽量モデルはその強度にどうしても不安がつきまといます。特にシャフトに不意にテコの力がかかってしまいがちな積雪期や渡渉での使用には注意が必要です。一般的なアルミトレッキングポールの6割程度の強度だと理解ください。それでも無雪期であれば、実用上問題になることは多くはありません。とはいえ専用のマイクロバスケットや極端に短い石づきなど、柔らかい地面や岩の間にも入りやすい構造であることに留意してください。

ディテール

修理を前提としたジョイント構造

同社のアバランチプローブの構造が応用されたポールの接続方法。シャフト同士をつなぐケブラーコードは樹脂によりコーティング、保護されているだけ でなく、オス側が写真の様に三角錐にデザインされていることでスムーズな連結を実現しています。そしてそれ以上に注目すべきは、修理のしやすさを前提においたシステムだ ということ。写真は中段と下段シャフトを連結する部分ですが、左端の黒いダイヤルを回し続けると各シャフトが分解され、スムーズな修理対応を可能にしています。ただし再度組み上げるには慣れていないと相当な時間がかかります。あくまでメーカーが修理するための機能ですので、不用意にダイヤルを回すことは避けて下さい。

組み立てがスムーズなボタン

組み立て、折りたたみは、グリップ下のプッシュボタンが操作のキモになります。慣れるまでは良くわからないという声も聞きますが、数回試せばすぐに慣れます。回して固定する従来のタイプよりも構造も簡単で、少ない力で固定できますので、女性にも優しいのではないでしょうか。そして使用時にストレスがかかる部分をジョイントから外す3セクション方式の採用にもメーカーの強度面への配慮がうかがえます。

長さ調整をカバーするグリップデザイン

ユーザーの使い勝手に関する大きな特徴がグリップとストラップのデザインです。独特の接続方法により、グリップエンドもしっかりとEVAフォームで覆われ、通常のトレッキングポールと変わらないデザインになっています。これによりグリップエンドを上から手のひらで包むように持つことが可能になります。ポールを使用するハイカー、トレイルランナーで下りの際にこうした持ち方をしたかったという声も多いかと思いますが、軽量を特徴とする折り畳みポールでは構造上こうした持ち方ができないものが多くあります。またBlack Diamondのポールではグリップデザインを長くとっています。
ポールを長く使いたい下りの時はグリップエンドを保持、ポールを短く使いたい登りの時はグリップ下段を保持、というように従来以上に持ち方の幅が増えたの です。これは長さ調整ができない点をカバーする特徴です。このグリップデザインによって持ち方の幅が増えたことで、メリハリを効かせた選択ができるのではないでしょうか。

選べるポールエンド

折りたたみのディスタンスシリーズのポールは石突きにカバーをつけるのではなく、写真のようにカーバイドティップ（左：グリップ力が高い）とラバーティップ（右：地面を傷つけにくい）が付属。ユーザーが使い分ける構造になっています。交換は素手では難しく、トレイル上での交換は現実的ではありません。出発前にプライヤーなどで交換をお願いします。
近年トレイル保護の観点からポールに石突きカバーをつ けて使用するハイカーも増えています。しかしトレイルに石突きキャップを落としてしまう例も同様に増えています。エンド交換はこうした問題を解消するひとつの提案ともいえるでしょう。

アメリカが誇る老舗クライミングメーカーによる意欲的な折りたたみポール。サポート体制と使い勝手の向上は大きな魅力です。

「ツェルト＆タープポールとしての使用が主目的、ポールとしての使用は少ないハイカー」

「長距離レースのサポート用、後半戦のダメージ軽減に状況に応じて使用したいランナー」

 軽さとコンパクト性を求めたいユーザーにとって有力な候補です。2011年の販売開始から積み重ねた実績。当店のスタッフやお客様により、ロングディスタンスハイキングでの使用実績も豊富です。無雪期ハイキングにおける超軽量ポールとしてまさに信頼と実績のモデルといえるでしょう。