ハイキングティップス

トレイルインフォ〜宮古100kmセクション

2022/05/04
勝俣隆
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「みちのく潮風トレイル(MCT)」の宮古市区間は約100km。三陸特有の北部に広がる海岸段丘と南部のリアスが、そのルート上で切り替わりのが宮古です。濃厚な自然体験をじっくりと味わえます。
 100kmのマルチデイ・ハイキングなら、たっぷり一日を歩けば3泊4日程。前後に移動を挟んで4泊5日で組むと、寄り道ができるくらいの余裕ができます。連休を利用して歩くには程よく、MCTのみならず初めてのマルチデイ・スルーハイキングにうってつけ。
ここではアプローチや商店情報などをご案内します。

市内の区間が約100kmとみちのく潮風トレイル上の他の市町村よりも長い宮古市。宮古市も本来は一つの町ではなく、合併によっていくつもの町がまとまった街で、幾つのも集落を抜けていきます。

【エリア概要】

▷摂待・田老エリア

北部に位置する摂待・田老エリアは、八戸から続く海岸段丘のおおよそ南端に位置しています。「宮古100kmキロセクション」を歩き始める場合は、宮古市の北に位置する「岩泉市」の「三陸鉄道・岩泉小本駅」を利用するのが便利です。ここから宮古市中心地近くで最後のキャンプ場となる「姉ヶ崎キャンプ場」までは38kmあります。

▷宮古市街地トラバース

姉ヶ崎から重茂半島の北に突き出した閉伊崎まで広がる宮古湾をトラバースします。「姉ヶ崎キャンプ場」から「白浜漁港」までは25kmあります。キャンプ場からは、奇怪な岩が稀有な景観を描き出す浄土ヶ浜(ビジターセンターがある)までは沿岸を進みます。

宮古市街地をトラバースは、中心市街地入口を掠めつつ閉伊川を越える宮古大橋を渡り、磯鶏、津軽石の区間をロードウォークとコンビニという飴と鞭を進み、重茂半島の入り口「月山登山口」にあたる白浜漁港まで続きます。

▷重茂半島

リアスの始まる宮古市南部の重茂半島エリアは、月山から始まり山田大沢地区に降りてゆく約35キロの区間からなります。

月山を以南の重茂の町並みを抜けると、与奈から再び自然道が始まります。北部とは打って変わってアップダウンの少ない「自然歩道」はみちのく潮風トレイルきっての歩きやすさを楽しみながら、海と山の自然を堪能できます。魹ヶ崎灯台を経て姉吉デイキャンプ場を過ぎ、宮古市南端の川代地区から寺地越えを抜けると、「陸中山田駅」までは6.5kmほど、商業施設の多い国道を進みます。

【情報収集】

宮古エリアの情報は、「浄土ヶ浜ビジターセンター」にて収集できます。公式マップの販売もありますが、浄土ヶ浜ビジターセンター発行のスタッフおすすめコースのマップは無料で入手可能です。宮古市を中心に北の岩泉町、南の山田町の四枚構成の地図には、高低差や距離などは記載がありませんが、地元の見どころ情報が多く載っています。公式マップやデータブックと合わせて使うとより深い旅ができます。
公式マップセットの③がほぼ宮古を全て網羅しています(岩泉小本駅近辺が入っていませんので、GPXデータや上述のスタッフおすすめコース「岩泉エリア」を活用すると良いでしょう。

【アプローチ編】

〈宮古100kmセクションのターミナス〉

みちのく潮風トレイルの宮古区間を歩くためには、北は岩泉市の岩泉小本駅からスタートして、茂師まで歩いて移動します。

宮古市南端の川代地区にはバスがありませんので、山田町の陸中山田駅からスタートして、大沢地区~寺地越を経て川代地区に向かいます。

 

〈三陸鉄道〉

どちらのターミナスにもアプローチは宮古から三陸鉄道で移動できます。
岩泉小本駅には無料のコインロッカーが設置されています。ハイキングに不要なものを一時保管することができます。
宮古駅に併設されている宮古市役所「イーストピアみやこ」の2Fにもコインロッカーが設置されています。

途中の「摂待駅」「磯鶏駅」「津軽石駅」へは三陸鉄道が利用できます。

 

 

〈岩手県北バス〉

岩手県北バスを活用すれば、三鉄を利用するより、さらにトレイル近くまでアプローチ可能です。路線は左記の通りです。

・宮古駅前⇄田老駅前⇄岩泉小本駅前
・宮古駅前⇄浄土ヶ浜ビジターセンター
・宮古駅前⇄重茂(音部、重茂)⇄石浜
・宮古駅前⇄津軽石⇄山田駅前⇄船越駅前
・山田駅前⇄大沢地区(浜川目)

〈関東・仙台からのアプローチ〉

関東からのアプローチでは、三陸道の開通によって、高速バス路線が利用できるようになりました。

・直通バス(仙台東口~宮古・山田)

仙台から宮古駅/宮古市・その南の陸中山田駅/山田町には、直通バスが仙台駅東口から朝・晩で出ています。

・夜行バス(東京・横浜~宮古・山田)

高速夜行バス「MEX宮古・盛岡」は、通常、週末限定で宮古駅・陸中山田駅まで出ています。GWなどは運行してます。バス車内はとても快適でした。(が、朝着ではとても眠くて歩けたものではなく、午前中の距離は当てにしないほうが良いでしょう。昼寝に終わりました)

〈ホテル〉

起点となる宮古駅周辺にはホテルやホステルがあります。

また陸中山田駅前の温泉施設「うみねこ温泉・湯らっくす」も便利です。前夜泊にも帰宅前にサッパリするにもうってつけです。施設内の洗濯機は無料で使えるなど、まるでトレイルタウンのホステルのようです。

 

【食料準備&補給】

買い物はトレイル沿いの町の人の暮らしが窺える絶好の機会です。食料をわざわざ持っていくのは勿体ありません。また、ハイカーが歩くことによって、地域経済へ多少なりとも貢献できます。

自然豊かなところは人里から遠いのが常ですが、このセクションは一日に食料補給ポイントがほぼ1回は訪れます。商店や商業施設をうまく活用しましょう。食料をたくさん担いで荷物を重くしたくないULハイカーには申し分ありまん。宮古セクションには、程よい間隔で商店があり、数日分の食料を担ぐ必要はありません。荷物を重くしたくないULハイカーには申し分ありません。生活道具を背負って自然の中に泊まりながら歩く「バックパッキング」体験を、より一層味わうことができるのです。

▷北のターミナスの岩泉小本駅

新設された駅舎は市庁舎を兼ねていて待合室やトイレ、無料のコインロッカーなどを利用できます。バスは駅前のロータリーから出発します。
食料品店は駅の近くに商店「山口屋」さんとローソンがあります。

 

▷摂待

トレイルが通過する「摂待(せったい)」の集落にもパンや行動食が入手できる商店が二店舗あります。

▷田老

新田老駅近くの国道沿いに「道の駅たろう」があります。なお、案内所では充電用のコンセントも利用できます。同敷地内にはコンビニエンスストア(ヤマザキ・デイリーストア)やお団子屋さん(まつばや餅店)なども併設されていて、長居は確実でしょう。ファミリーマートは少し北にあり、イートインコーナーでは充電もできます。道の駅の向かいには「田中菓子舗」があり、渦巻き状の「田老かりんとう」が入手できます。

新田老駅より少し南にある田老駅近くの「林本酒店」もハイカーフレンドリーでお馴染みです。

▷宮古市街地

(宮古駅周辺)

セクションの中間では、ハイカーにも程よい規模の宮古市街地を通過します。

市街地で食糧の補給をするにも栄養価の高い地場の料理を味わうにも、マックとミスドでどっぷりとジャンクフードに浸るにも、ホステルに泊まって銭湯&コインランドリーでリフレッシュするにも都合が良い街です。

皮膚科「後藤泌尿器科皮膚科」などの病院があるのも特記しておきます。

トレイルから一番近い商店は、地元から愛されるスーパー「玉木屋」さんです。宮古の人々の暮らしを垣間見れます。

駅近くにはツルハドラッグ(ドラッグストアの中では圧倒的に食料品が多い)が二店舗あり、市街地の北側入り口にはローソンがあります。

(磯鶏駅周辺)

宮古市街地南部の「磯鶏駅」周辺には、スーパー「fal(ファル)」がありお惣菜が豊富です。国道沿いには「ツルハドラッグ」もあります。

「うみマチひろば(宮古市地域創生センター)」近くの「刈谷商店」さんは小さなスーパーですが、お弁当やお惣菜は安くて豊富、地元の方から愛されています。特にお弁当が298円とお得なのに大きいと評判です。 「薬王堂」、ローソンも近くにあり、パンや行動食を得るのに不便はありません。

 

(津軽石駅周辺)

津軽石駅に至る堤防沿いにはカフェ「異人館」さんがあり、裏庭をテントスペースとしてハイカーに開放しています。

津軽石水門近くにはファミリーマート、ローソンがあります。ここより以南は重茂半島を抜け切り山田町に至るまでコンビニエンスストアはありません。

▷重茂地区

音部漁港から重茂地区に入る場合には、「河原商店」さんがトレイル沿いにあります。商店街にはトレイルから近いところにある「吉川商店」さんは、グーグルマップではfish storeと出るものの、食料品も多く置いておりパンや行動食を中心に入手できます。定休日にご注意ください。

 

▷南のターミナス「山田町」

山田町には山田湾に沿った国道沿いに多くの商店があり、ハイカーの補給には天国です。陸中山田駅前にはスーパー「ビハン」があり、出発前の準備にも十分です。

山田町北部の大沢地区寄りには「業務スーパー」やコンビニ、「しまむら」、「ホーマック」などがあり、スルーハイカーが追加の衣類を買うにも活用でき、装備の忘れ物や落とし物の時にもうまく活用できます。

 

text by Loon

 

勝俣隆

書き手勝俣 隆

1972年、東京生まれ
ULハイキングと文学、写真を愛するハイカー。トレイルネームは「Loon(ルーン)」
アパラチアン・トレイルスルーハイクののちハイカーズデポ スタッフへ。前職での長い北中米勤務時代にULハイキング黎明期の胎動を本場アメリカで体験していた日本のULハイカー第一世代の中心人物。ハイキングだけでなく、その文化的歴史的背景にも造詣が深い。ジョン・ミューアとソローの研究をライフワークとし、現在は山の麓でソローのように思索を生活の中心に据えた日々を過ごしている。2016年以降、毎夏をシエラネバダのトレイルで過ごし、日本人で最も彼の地の情報に精通しているハイカーと言っても過言ではない。著書に『Planning Guide to the John Muir Trail』(Highland Designs)がある。

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