ハイキングティップス

タープ設営バリエーション その1|CT Tarp ベース

2018/05/18
長谷川晋
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長方形をしたスタンダードなレクタングラータープは、使い方を知っていると実に自由に形を変えて、その状況に合わせた使い方ができる頼もしいアイテムです。ですが、どう扱ったら良いか分かりにくいものでもあります。そのバリエーションをご紹介。大体は一般的な長方形タープも使えますが、ベースとしてTrail BumのCTタープなど4辺にバンジーコードを入れているものに対応しています。

Trail Bum/CT Tarpなど4辺調節可能なの設営バリエーション

タープはシンプルなだけに、どんな張り方が最適なのか、そもそもどんな張り方できるのか分からない人も多いでしょう。タープは張り方のバリエーションを増やせるとどんどん楽しくなる道具です。その中でも4辺をバンジーコードで絞れるTrail Bum/CT Tarpのようなタープは、変形の張り方をすると必ず生じるタープの弛みを解消できる特徴を持っているので、今までにない形状でも張ることができバリエーションが豊富です。

日本国内で見ることができる代表的なものでは以下の4つになるでしょう。

Trail Bum/CT Tarp

Paago Works/Ninja Tarp

Exped/Scout Tarp

Freelight/Swing Tarp

次は順に張り方のバリエーションを見ていきます。どれか自分の中でピンとくるものがあったら試してみてください。

 

1、ハンモックとの併用:タープを対角で張る

近年、アメリカのメーカーがこぞって様々な実験と開発に熱中しているのがハンモックキャンピングの世界。2002年に Hennesy Hammock が誕生してからハンモックはハイカーが使用できるシェルターとして認識されはじめました。実際にアパラチアントレイルではダニによるライム病対策のために、地面ではなく空中で眠ることができるハンモックを使っているハイカーも増加傾向にあります。Hennesy Hammock のようにセットで販売されているハンモックシェルターもありますが、多くは軽量なナイロンハンモックとタープを自分で組み合わせて使用することがほとんどです。例えばCT Tarp の対角線は約3.5m。ハンモックと併用するにはちょうどよいサイズです。左の写真はCT Tarpのプロトタイプをヘネシーハンモックに組み合わせた際のもの。右の写真は製品版をENOのサブ7ハンモックに組み合わせた際のものです。

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2、バイクパッキングでの設営

ダートロードを駆使して長距離ツーリングをおこなうバイクパッキングでは幕営地の標高が比較的低いことからも、タープは有効なシェルターとして活用できる。バイクとの併用で興味深いのは、バイクをタープの支柱として使用できるところにある。左の写真ではホイールを支柱として風に対して有効なように低くタープを設営している。右の写真では倒立させたバイク本体を支柱として内部空間を広くとっている。

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3、単体使用での設営バリエーション

*写真は全て当店HPに掲載したスウィングタープを紹介した記事の転用。形状、サイズに違いはあるものの、同様の使い方は可能です。

ここでは、さらに様々な面白い形状のタープの張り方を紹介していきます。名称については筆者の完全なる寄稿時の気分によってつけた言葉遊びですので、あまりにお気になさらずに、ご参考にしていただければ幸いです。

a. 低空幅広型 マンタレイ・スタイル

片側一辺を地面に固定してから一方を立ち上げる方法。高さと幅を変えることで床面積も変えられる。低くなるほど広く、高くなるほど狭い。この場合開いてい る側は内側にポールを立てているが、外側から引っ張り上げることもでき、その場合は内側の空間を広く使いやすい。閉じている側を引き上げれば内部空間は広 がり居住性も上がる。低い方を風上(吹いてくる方)に向け、辺を地面に近づければ近づけるほど耐風性は上がって行くが、結露は比例して起こりやすくなる。 入り口を広く、反対側を狭く、高低差をつけることで風の通り道ができやすくなるので結露は起きにくくなるが、内部の熱も逃げていく。

b. 低空幅広高空幅狭兼用型 ケイブ・スタイル(aka レイウェイ・スタイル)

外側に張り出すタイプだが、タープ内側のループから引くのが特徴。辺のループから引くと入り口が広がるが風の影響を受け過ぎる。本来ビーク(つば状)にするには中央ループを引っ張る必要があるが、四辺のショックコードによるテンションでしっかりと張れる。この状態を高くして使えば、内側にあるループに別売りのバグネットなどをぶら下げることができる。サイドを上げて使えばより室内空間を広げられる。両側から引くことができるのでマンタレイ・スタイルよりも 広くなる。引いているのと引いていないのでは大きく異なる。ここからのバリエーションも考えられる可能性のまだありそうなスタイル。 前後が同じ大きさで開くために風が通りにくくなることがあり、結露は起こりやすくなる。

c. 高空幅狭型 ツインピーク・スタイル

補強の付いているタイアウトループの内側からポールを立てて立ち上げる。ポールからポールの間の距離が短いため、1人で斜めになるか、2人なら左右に別れ る必要がる。この形状も低空型にすることもできるが、高空型だからこそ生きてくるスタイルと考えられる。前後が同じ大きさで開くので安定感はあるが、風が 通りにくくなることがあり、結露は起こりやすくなる。

下画像)ツインピーク・スタイルの場合は辺(へん)中央のタイアウトループを上げればオープンハッチ型になり、出入りや調理などの生活がしやすくなる。寝る時は元の場所にポールを戻せば良い。

 

d. 高空幅狭型 ピラミッド・スタイル

この張り方の最も特長と言えるのははポール一本での設営が可能なことと耐候性の高さ。マンタレイ・スタイルも一本のポールで設営出来るが、入り口側から風に吹かれると舞い上げられやすい。ピラミッド・スタイルの方が風が上を抜ける時に押さえつける力が働くため比較的風に強くなる。地面との隙間も少ないため 雨や風の侵入も他のスタイルと比べ全方向で抑えられる。もう一本ポールを使うとオープンハッチ型にも変形できる。ピラミッド・スタイルの場合は四面のどこ でこでもオープンにできるので立てた後に開けたい方向を選べる。

タープが正方形に近いほど安定する設営方法になります。

e. 高空幅狭変形翼型 アルファミッド・スタイル

実際ハーフピラミッドにしては長過ぎるかもしれないが、変形のうちの一つとしては面白いのではないか。辺の中央一カ所を固定。左右の辺の中央をテンション をかけながら固定。入り口側の角を適度に内側に入れる。縫い目のラインに沿って真っすぐに一本立ち上げる。最後に微調整をすればこの形になる。風には弱 く、結露も起きやすいだろうが、入り口側から風が入らないように工夫出来たら、安心感の得られる密閉性はあるだろう。保温性を考えてもよいかも知れない。


 

 

*ソロタープの張り方についてはこちら タープ設営バリエーション その2|ソロタープ ベース

長谷川晋

書き手長谷川 晋

1978年、東京生まれ
自転車で日本を旅して回ったのが「旅人」としての原点。トレイルネームは「Turtle(タートル)」 セレクトショップ、スキー場、山小屋、アウトドアショップなどの勤務を経てハイカーズデポ スタッフへ。2010年のパシフィック・クレスト・トレイルスルーハイクの後、その経験を後進ハイカーにブログやイベントなどを通じ積極的に提供。ウェブマガジンTRAILSとの共催イベント「LONG DISTANCE HIKERS DAY」をたちあげ、日本人長距離ハイカーコミニティの中心人物でもある。現在は一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所の代表理事をつとめ、日本における長距離トレイルやハイキング文化発展に奔走している。著書に『LONG DISTANCE HIKING』(TRAILS)がある。

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