イベントリポート

「Trail Experience Tour 2019」アフターリポート

2019/08/29
長谷川晋
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令和元年となった2019年の6月22日、23日。トレイル整備だけでなく、周りのハイキングもトレイルタウンも楽しんでしまおうという一泊二日の『Trail Experience Tour』は今年で3回目。ハイカーズデポが整備に行くようになって7回目。まだ10年は経ってません。
ハイキングに息づくハイキングカルチャー同様に、トレイルに息づくトレイルカルチャーを思う存分味わう2日間。舞台は「信越トレイル」とそのトレイルタウンである長野県は「飯山(いいやま)」。

Trail Experience Tour 2019

記事:長谷川晋

2019年6月22日、23日の一泊二日。信越トレイルのお膝元であるトレイルタウン「長野県 飯山市」の生活文化や食文化を体験し、信越トレイルをハイキングし、さらにトレイル整備まで、たっぷりとトレイルカルチャーを満喫するためのツアーを開催いたしました。

ハイキングにはハイキングカルチャーがあるように、トレイルにはトレイルカルチャーがあります。それはハイキングも内包し、トレイル沿いに点在するトレイルタウンやそこにある文化をも含んでいると言っても良いでしょう。

僕はハイキングの主役はハイカーだと思います。しかし、そのトレイルにおいてはトレイルを維持管理し、整備する人たち、トレイルに愛情を持って接する人たちこそが主役なのです。そういう「トレイルの主役たち」が住み暮らす土地を知ることは、トレイルをもっとより深く知ることになると思いますし、トレイルをもっと魅力的にすると思っています。

 


毎回毎回募集を開始する前には、さて今回は集まるんだろうか、と心配になるのですが、ありがたいことにこの数回はお声がけいただく声が多く感謝しております。

今回は、特に同タイミングでまとめて参加のご連絡をいただいた関係で、しばしスタックしてしまうことになり、皆様にはご迷惑をおかけしました。しかし信越トレイルクラブ事務局となべくら高原森の家のご協力もあり、なんとか皆様を受け入れる調整ができましたこと、重ねてお礼を申し上げます。

今回もニックネームを!と張り切っていましたが、なんと当日責任者の私が風邪を引き、声もなかなか出にくく、そんな気持ちにもなれず、なんともはや情けないことでありました。昨年参加のリピーター組の数名は昨年を踏襲しましたが、初参加の方たちはまぁなんとなく(笑)。すいません!ゆるして〜!

なんとなくフルネームは恥ずかしいので、お名前だけご紹介。初参加は定員オーバーのなんと7名。しんやさん。ゆかさん。さちこ。りゅうじさん。たかひろさん・まゆこさんご夫妻。けんたさん・ゆきこさんご夫妻。けんた&ゆきこさんは先立って行われた信越トレイル延伸ルートモニターツアーにもご参加されており、二週連続の飯山です。みなさんのことを今回は照れもあり名前で呼べませんでしたが、次回は馴れ馴れしく(笑)呼ばせていただければと思います。
ここにリピーターのみよしさん、のぶちゃん、まるちゃんさん。そして今や準スタッフとの噂も全く聞こえてこない、Matoi“ネコ”トリオが今回はお休みで、Matoi“ネコ”ひろくんの一人で参加となりました。ひろくん三年連続ありがとうございます!5回でもらえるTシャツ目指しましょうね〜。
今回のハイカー枠はAT帰りのゆきこちゃん。そして、取材はTRAILSのスーパースター、タカ!そしてわたくしを入れると14名。昨年よりもまた増えてしまいました。もうこれは今年だけだぞ〜、と自分に言い聞かせております。そして毎度毎度のことながら行き届かず、皆様のご協力あればこその無事だと思っています。本当にありがとうございます。

 

さて1日目。2019年。令和元年の6月22日。

すでに数日前からの天気予報でみんなの心は雨模様。ですがこれも毎度のことで、そうですよ、こんな時期にやっているんだもの。

ところが予報とは裏腹に少しパラパラ舞うことはありますが、なんとか持ちそうな空模様。予定時間の11時前にJR飯山駅で集合をしまして、一路、斑尾高原に向かいます。

初日はまずショートコースのハイキングから始まります。今回は斑尾高原の赤池をスタートし、希望湖(のぞみこ)までをゆっくり植物や風景、そしてハイキングを楽しみます。もともとは街道としても利用されていたという区間は道幅も広く快適。大きく奇形のブナや豊かな広葉樹林の植生も興味深いです。その後、沼の原湿原を通り季節外れのニッコウキスゲにも出会いました。時折雨は降るものの本降りに会わずに希望湖へ到着。途中休憩も挟みましたが、2時間程度の気持ち良いトレイル歩きでした。毛無山の登山口付近には最近になって新設されたカウンター(通行人数計測)がありみんなで見学。

そうこうしているうちに雨が降り出したので、希望湖でのランチを諦め、斑尾高原にある「山の家」にお邪魔させていただきました。ここも施設としては随分経つように記憶していますが、綺麗に管理されていてハイカーたちにとっても憩いの場所になります。テラスのテーブルで各自のお昼を広げてランチをしました。ランチのあとには、今やゴリ押しとも取られかねない私お気に入りの「パティスリーヒラノ」のケーキデザート付き!今回も美味しゅうございました。

実は今回これに終わらず、新たな試みであります、「飯山寺町歩き」に向かいます。飯山は古くから街道沿いで栄えた町でした。たくさんのお寺だけでなくそれに関連する仏具屋なども多くあります。これは決して信越トレイルとは無関係ではありません。信越トレイルクラブたってのおすすめということもありましたが、有名な禅僧白隠慧鶴の師、道鏡慧端が暮らした正受庵があり、以前からいつかは行きたい場所だったので渡りに船、鴨が葱をしょって来る、という具合でした。寺町歩きの最中も結局少し雨に降られましたが傘を差すこともほとんどなく、正受庵以外にも素晴らしいお寺とその町の中を歩く、貴重で素敵な時間でした。飯山の奥深さ恐るべし。

この後やっと「森の家」に移動。それぞれにコテージで一息ついた後は、これも定番の「いいやま湯滝温泉」で汗をさっぱりと流しました。露天風呂の早期再開を願っております!夕飯は参加者全員で、いいやま湯滝温泉名物でもある、毎度ながらも毎度美味しくてボリュームたっぷりな「旬の郷土料理コース」を楽しみました。わざわざご挨拶に来ていただきました、信越トレイルクラブ事務局長の大西様。いつもご厚意ありがとうございます。

まだ終わらない今日。コテージに戻ってからはトレイルクラブの人たちのお話を聞かせてもらう。昨年から事務局で汗を流すATハイカーの鈴木英治氏だけでなく、今年はPCTとCDTのスルーハイカーである黒川小角氏も参加。さらに参加者のゆきこちゃんも今は森の家の業務をしているが信トレに携わる。3人ものスルーハイカーがここ飯山に集う。三人寄れば文殊の知恵。三本の矢。なんと心強いことでしょう。スルーハイカーたちが考える信越トレイルのこれからについて、とても貴重で、ためになるお話を聞かせていただきました。本当にありがとうございます!

これにて1日目終了。任意での懇親会と玄関に置かれたキャップについては、参加した人たちとネコのみぞ知る、、、

 

2日目。令和元年の6月23日。

今日も天気予報は良くない。午前中はなんとかもてば良いくらいでしょうか。今日が本番のトレイル整備。早く寝た人も遅く寝た人もちゃんと起きて、ひろくん以外は準備万端で朝の集合時間にもちゃんと揃っていました。

今回は関田峠から牧峠、そして宇津ノ俣峠までと、整備としては長めの設定。それも前の週だったかの整備が悪天候で中止になったため、整備が遅れているというのが理由だった。なのでこの大人数だからこその、一気に整備をしてしまおうということになりました。

低温が続いた春から、やっと暖かくなり雨が少ない梅雨の影響でしょうか、いつもよりも草の生え方が遅いような早いような。ちょうど良く、ぐんぐんと成長をしはじめたころのように感じました。少し腰を据えて集中的に一部区間を整備した昨年とは違い、できるだけスムーズにスピーディに、一人一人の作業は簡潔にし、全員で全体的に整備が行き届くようにというのが今回の最大のポイント。枝切り鋏を持つ人。ノコギリを持つ人。さらにこの後使うために鍬や剣先スコップも持って歩きます。整備担当の田村さんと木下さんはチェーンソーを持ち、大きな枝打ちを担当。僕も他の人は持たないナタで、手強い笹などもざっくざっくを落としていきました。小さい休憩を挟みながら、前後の人と離れすぎないように調整をしつつ進んでいきました。
お昼は牧の小池。雨も強く降ることもなく、助かります。牧の小池は、2年前にきた時は同じ時期でまだ雪が残り大きな氷が池に張っていました。昨年も牧峠から上がりここが折り返し地点でした。アライグマがいたのも思い出です。

牧峠から花立山は結構な登り返し。みんな疲れも感じていたでしょうに、元気に歩いてくれました。花立山には加藤則芳さんが眠ります。そこに新しく試験的に導入した道標を立てました。これはアメリカPCTなどに使われているもので、トレイルクラブの努力もありまずは試験的に導入ということになりました。これで一冬どのように越すのかを見ながら、今後の検討になります。やはり日本のトレイルの草分けだけあり、一歩先行く偉大なトレイル先輩に感じました。さらにここにあるケルンにメッセージを書いて積み増しをします。

ここからは整備もしつつですが、宇津ノ俣峠から降っていきます。快適なトレイルに、少し雲が上がり明るさが増したように思いました。楽しい会話と楽しい整備、楽しい歩きももう終わりです。田んぼに飛び出すところが宇津ノ俣のトレイルヘッドです。この付近からは、振り返ると今歩いてきた関田峠から宇津ノ俣峠などが一望できます。また飯山の町や関田山脈の向かいの山々が望めます。

距離でいうと、約8kmあります。2018年が往復1.8kmだったことを考えるとなかなかです。ただでさえ歩くので体力を使うのに、整備もしながらで、最後の方はみなさんも少し疲れ気味で、手も止まっていました。それでも怪我もなく最後まで集中し、整備していただきありがとうございました。本当にお疲れ様でした。そしてこれから帰るというのが一番の重労働だったりして。車よりも新幹線が楽で良いですよ〜(笑)

 

森の家に着いて、トレイルに募金をしたり、なんとなく最後の寂しさみたいなものを感じつつも、二日間の予定はこれで終了となりました。汗を流しに温泉に行った後は、各自別れて帰宅の途に着きました。

 

いつも言っているので、反省してないように思われますが、反省してます。参加者のみなさま。私の足りない説明や引率にも関わらず、最後までお付き合いいただき、大変感謝しております。ありがとうございます。これくらい抜けてた方が気が楽ですかね。またよろしくお願いします!いや、反省していますよ〜。それから、ご意見もいただいておりますので、次回に活かせたらと思っております。

簡単にまとめるつもりが、少し長くなってしまいました。それくらい今回はさらに盛りだくさんだったと思います。にも関わらず問題なく終えられたのは、信越トレイルクラブ事務局の鈴木さん、黒川さん、佐藤さん、整備担当の田村さん、木下さん。みなさんのおかげです。本当にありがとうございます。みなさんの連携プレーこそ信越トレイルを支える核だと思います。僕も微力ではありますが、少しでもお手伝いできればと思っております。それから内野さんも移動のお手伝いをありがとうございます。森の家のスタッフのみなさんもいつも感謝しています。また参加者でありながら、三回目のリピーターだからという理由で移動のお手伝いもしていただいた、Matoi“ネコ”のひろくん。参加者としてもお手伝い係としても、カメラマンとしても?本当に頼りにしております。ありがとうございます。本当はすごく感謝していますよ。キャップはすいません(笑)
というわけで、これでアフタリポートとさせていただきます。

いろいろな視点からの詳細については、Trail Cultural Web Magazine「TRAILS」内でも紹介されておりますので、そちらもご参考にしていただければと思います。
信越トレイル トレイルメンテナンスツアー2019 | (前編)ボランティアが支えつづけるトレイル
信越トレイル トレイルメンテナンスツアー2019 | (後編)スルーハイカーが集まるトレイル

今回で3回目となるこのツアーですが、それ以前のプライベートツアーも数えると7回目となりました。もう7回、と言ってくれる方もいるんですが、たった年に一回。7年間ただただやり続けてきただけ。ありがたい反面こそばゆい気持ちです。とりあえず10年10回を目標に続けます。どうぞ来年もよろしくお願いいたします。


【Photo Gallery】

|6月22日

 

|6月24日

長谷川晋

書き手長谷川 晋

1978年、東京生まれ
自転車で日本を旅して回ったのが「旅人」としての原点。トレイルネームは「Turtle(タートル)」 セレクトショップ、スキー場、山小屋、アウトドアショップなどの勤務を経てハイカーズデポ スタッフへ。2010年のパシフィック・クレスト・トレイルスルーハイクの後、その経験を後進ハイカーにブログやイベントなどを通じ積極的に提供。ウェブマガジンTRAILSとの共催イベント「LONG DISTANCE HIKERS DAY」をたちあげ、日本人長距離ハイカーコミニティの中心人物でもある。現在は一般社団法人トレイルブレイズ ハイキング研究所の代表理事をつとめ、日本における長距離トレイルやハイキング文化発展に奔走している。著書に『LONG DISTANCE HIKING』(TRAILS)がある。

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