
Lone Peak 6[mens]
Weight
528g
ALTRAのフラッグシップ
いまやハイカーのスタンダード
クッション性とダイレクト感の融合
そして安定性へ
ブランド誕生の地、ユタ州の山から命名されたローンピークは2011年のALTRA誕生と同時に産まれたモデル。同ブランドのトレイルランニングカテゴリーにおけるスタンダードであると同時にフラッグシップといえるモデルです。inov8 や new balanceといった先行ブランドで謳われてきた低いドロップ差やフォアフットといったスタイルを加速度的にシーンに定着させた立役者が ALTRA です。いまや北米のハイカーやトレイルランナーにとってスタンダートとなったローンピークは、2010年代から2020年代にかけてのハイキング&トレイルランニングを象徴するシューズです。
進化を続けるローンピーク。そのバージョン6は、評価の高いLone Peak 5 からは大きな変化はその見た目からはわかりません。日本代理店の商品紹介にも「バージョン5からあえて大きな変化はもたらさずアップデートされた」とあります。バージョン4から続く柔らかく通気性の高いメッシュアッパーを採用しています。これは第三世代までに指摘されることが多かったアッパーの耐久性不足といった問題を一気に解消しただけでなく、ゴミや砂の入りにくさと高い通気性を両立した優れた素材です。広々としたトゥーボックス。前後の反りがおさえられたフラットな履き心地と高いクッション性、地面へのダイレクト感と素早い反応、これらが高いレベルで融合したミッドソール「Altra EGO™ foam」がローンピーク6.0でも最大の特徴といえるでしょう。
いくつかあげられる変化の中で注目したいのは、履いた時に感じる安定感です。最初足を入れた時にバージョン5とは明らかな違いを感じたものの、何がそれを提供してくれているのか分からなかったほどです。 バージョン6で変わったのは側面にある物理的な補強です。これによりシューズ内での足の安定性が高まり、歩行を助けてくれるようになりました。バージョン5では一旦影を潜めた通気のためのホールもよりはっきりとした形で復活しています。
フラット感・ダイレクト感の第一世代(1.0、1.5)、広々としたトゥーボックスの第二世代(2.0、2.5)以降、クッション性と剛性感の第三世代(3.0、3.5)、そして第四世代は第一世代を彷彿とさせながら、全ての世代の特徴を融合させようとした挑戦的なシューズでした。4.5で見えた完成形への道筋を、第五世代で意欲的に全世代の特徴を高レベルで融合し、長距離ハイキングに適した進化を感じとることできました。第六世代ではさらに細部へのこだわりを付加して、ソフトでありながら安定性を求めた進化を続けています。
アッパー
アッパーの素材は第四世代から継承。耐久性と高い通気性がありながら、砂などが入りにくいものです。素材の定番化は安心材料のひとつでもあります。優れた速乾性に合わせ、非常に高い通気性を持ちながら、砂などが入りにくいのがこのアッパーの特徴です。トゥーボックスは指先の自由度を確保しつつ、甲周りに補強がしっかりと入り、特に内足側に大きな当てが入りました。これにより安定性が向上したように思います。第四世代以降に特徴的な補強コーティングから、第五、第六と物理的に当てをする補強する部分が増えています。トゥーボックスの広いメッシュ部以外はメッシュの露出が減った印象です。トゥーガードは第五世代よりさらに硬いものになりました。これにより、長距離という当初から続くコンセプトに対して、アウトソールとのバランスが良くなっています。側面の物理的な補強により、シューズの歪みが抑えられ、しっかりとした履き心地になっています。さらに甲周りのフィット感が高く、歩行時の安定感に良い影響をあたえているようです。ヒールカップはバージョン5から引き継いだフィット感の高いものです。
使われているメッシュ素材は、通気性が高く速乾性にも優れますが、「すぐに濡れる」「足が冷える」といったデメリットも生じます。メリットとデメリットは表裏一体ともいえるのですが、このメッシュ素材の乾きやすさという点を長距離ハイカーの多くが高く評価しています。特徴がはっきりしているシューズは、最適な履き方使い方をしっかりと探せるものです。
アウトソール
MaxTrac™ Rubber、TrailClaw™といったオリジナルのラバー素材やパターンとなっています。アウトソールのデザインについてはバージョン4とほぼ同じ、アグレッシブなパターン配置です。オールラウンドというよりは前後の動きに対してよりトラクションを発揮するようなパターンになっています。ハイカーズデポ スタッフの主観的な評価ではありますが、全モデルを履き込んできた意見として、ローンピークのトラクションは安心できるものといえるでしょう。またロッカーが強すぎないフラットなアウトソールも歴代ローンピークで継承されてきた特徴のひとつです。
ミッドソール
バージョン5からの継続となりますが、アッパーとミッドソールの相性が非常に良い感触です。ALTRAオリジナルのミッドソール「Altra EGO™ foam」は重要な地面へのダイレクト感にくわえ、定評のあったバージョン3のクッショニングを思い起こさせる柔らかな接地感を併せ持っています。おそらくバージョン3から履き替えた人はダイレクト感を感じ、バージョン4から履き替えた人はクッション性を感じるのではないでしょうか。クッション性とダイレクト感のどちらかではなく、どちらも持っている。それが今のローンピークを性格づけるミッドソールの感覚です。歩行時には柔らかい地面の時にはコシを感じ、硬い地面の時にはふわっとしたクッションを感じます。このミッドソールは多種多様な地面を歩くことになる長距離ハイカーに好まれるのではないでしょうか。長い距離を安定して歩けるようになったことは、より早くではなく、より長く歩き続ける走り続けることを意図しているALTRAにとっ本来の目的に合致したミッドソールといえるでしょう。
ミッドソールとアウトソールとの間に挟まれるストーンガード™も大きな特徴の一つ。岩場などでの突き上げから足を保護してくれるだけでなく、ソールユニット全体の硬さを出すことができます。
フットシェイプ™
見た目でわかる大きな特徴がこのフットシェイプ™。指先をリラックスさせ、かつそれぞれの指にしっかりと力を込めて大地を踏む感覚を引き出してくれる幅広のトゥーボックス。裸足で生活し、山野を移動する先住民族の足はそのほとんどが指先が大きく開き幅広の足となっています。人間本来の力で歩くならば、こうした型が理想的だとの考えから、足を締め付けない自由な足型はローンピークに限らずALTRAの大きな特徴になっています。
ローンピーク6 気になる点は、、、
初代から全てのローンピークを履き込み、様々なトレイルを歩いてきたハイカーズデポスタッフの長谷川が指摘するローンピーク唯一の欠点といえばヒールカップ内側の素材が弱いことです。100kmも使わないうちに、内側の生地に穴が開いてしまうこともありました。もちろんハイカーの歩き方使い方も大きく関わるので一概には言えませんが、ローンピークが好きだからこそ最も気になる点なのです。ローンピーク5もミッドソール部分が出てくるまで履いたようですが、やはりヒールカップ内側の擦り切れは早かったそうです。もちろん履けないレベルではなく唯一気になる点と考えれば良いでしょう。その他に指摘される点としてはアウトソールの減りの早さもあげられますが、これはグリップ性能と引き換えという側面もあるので、評価は難しいところです。バージョン6までの変化の過程で着実に進化し、完成度を高めているシューズがローンピークです。
ローンピークの変遷
人間が本来もつ自然姿勢、自然な運動フォームに導くための「ゼロドロップ」はALTRAシューズに共通する最大の特色ですが、トレイルランニングシューズであるローンピークの個性は何なのか。それを理解するために6世代にわたるその歴史を紐解いてみましょう。
第一世代
・1.0【Origin】薄めでシンプルなソールユニット 柔らかいアッパー
・1.5【Tightly】薄めでシンプルなソールユニット タイトなアッパー
第二世代
・2.0【Wide】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット 伸びの少ないアッパー
・2.5【Stretch】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット ストレッチアッパー
第三世代
・3.0【Moderate】ロッカーと腰のあるソールユニット 適度なバランスのアッパー
・3.5【Durability】ロッカーと腰のあるソールユニット プロテクション重視のアッパー
第四世代
・4.0【Softy】腰がありフラットなソールユニット 柔らかく通気性高いアッパー
・4.5【Moderate】腰がありフラットなソールユニット 通気性高くバランスのとれたアッパー
第五世代
・5.0【Cushion】やわらかな接地感のソールユニット 通気性高くバランスのとれたアッパー
第六世代
・6【Stability】第五世代の完成度はそのままに、安定感という更なる強みが加わりました
ローンピークはALTRAにとって創業時から続くフラッグシップモデルのひとつですが、アンバサダーやカスタマーのフィードバックから実験的な改良を重ねてきました。そのため、各世代毎の個性が顕著なことが特徴でした。
ファーストモデル以降のローンピーク変遷を大枠でとらえると上記のようにハイカーズデポ では理解しています。第一世代から第二世代に至る過程はシューズトレンドが「マックスクッション」に傾倒するのと歩調をあわせています。その影響もあってか、第二世代以降、やや厚みのある柔らかいアッパーをもつ軽くフレキシブルなシューズになりました。
このようにローンピークは世代毎にソールとアッパーとのバランスが個性的なだけでなく、シリーズ全体を通じてソールの力強さに比べ、アッパーのおさえこみに物足りなさを感じる傾向がありました。ネイティブアメリカンのモカシンシューズを彷彿とさせるアッパーに頼らない構造はローンピークの特徴ともいえますが、使う人を選んでしまう、評価がおおきくわかれることも事実でした。こうした個性的なアッパーとソールのバランスが改善され、シューズとしての一体感を誰もが楽しめるようになったのが6年目の第三世代からと言えます。より良い可能性を模索した上で履き手を選ぶシューズから、長距離トレイルに代表される様々なコンディションに対応できるバランス感の良いシューズへ、そのひとつの方向性を指し示したのが第四世代です。第四世代は、ソールのフラット感は初代を彷彿とさせ、アッパーの雰囲気は第二世代を思い出す。そんな世代間融合をも感じさせるシューズでした。そして第五世代。世代間融合という方向性は第四世代と同じですが、オリジナルミッドソール「Altra EGO™ foam」により、第五世代ならではの接地感を手に入れました。この第五世代からはソールの特徴、アッパーの特徴という捉え方よりも、シューズ全体の完成度が一段階あがった感覚があります。
そして第六世代ですが、第五世代で手に入れたシューズとしてのトータルな完成度が継承されています。そのうえで「安定感」というあらたな強みが加わったといえるのではないでしょうか。多くの方に足入れをおすすめできるハイキングシーン、トレイルランニングシーンのまさにスタンダードシューズです。
長距離ハイカー向けともいえる更なる進化。
ローンピークからは目が離せません。
Comment スタッフコメント

第四世代までの毎回違う個性というが無いのはちょっと寂しい!けれど、ローンピーク5で感じた歩く上での若干の不満が今回はほとんど解消されているように感じ、完成形への確実な進化を感じます