
参考商品:DOWN BAG 860FP(モデルチェンジに伴い廃番・在庫無し)
Weight
580g
*現在販売しておりません。
*数量限定の特別販売となります。こちらのinfoも一緒にご覧下さい。
ULハイキングでポピュラーなスリーピングバッグといえば「キルト」や「ハーフバッグ」などが典型的なスタイルとしてアメリカの書籍等では紹介されています。
体重によりロフトが失われる背面側を思いきって省いたキルト。この掛け布団スタイルは軽量化とダウンを効率的に保温に活かすという点では最も優れた スタイルかもしれません。アメリカにおけるULハイキングに限定せずとも、こうしたスタイルは日本、イギリスなどのダウンスリーピングバッグメーカーが既 に提唱していた例があります(注1)。しかしいくらメリットがあるといっても、多くのハイカーにとっては「寒気が入り込むのでは?」という不安からか、ま だまだ躊躇するスタイルであることも事実です。そこでキルトでなくともダウンを効率的に活用できる軽量スリーシーズンモデルを企画しました。
①形状 フードレス
首、胸、足の幅は57cm、75cm、28cm。グラマラスなシェイプ
スリーシーズン使用をベースに考えているため思いきってフードは省略。春の残雪期や晩秋 の山ならばニットキャプやフード付ダウンジャケットを併用することで対応していただければと思います。いわゆるハーフバッグ形状ですが、スリーピングバッ グ内で手を動かして作業しやすいように胸まわりはキモチ余裕を持たせ、足については効果的な保温ができるようにきつくない範囲でなるべく細くさせました。 かなりメリハリあるシェイプにデザインしています。かつてのMountain Equipment(イギリス)やPHD(イギリス)、現在ならNunatak(アメリカ)などのシェイプに近いと思います。
全長は170cm。身長180cm前後の男性がギリギリ使用できる長さ(注2)を設定しました。女性から男性まで比較的多くの方に対応するかと思います。
②構造 コンティニュアスバッフル
フルジップ全開の状態。ボックスは横一列に接続構造
上面にダウンを集中させ、ロフトを効率的にかせぐキルト。これと同じような効果を得るためにスリーピングバッグのバッフルを上面、下面とも連続してつなげるコンティニュアスバッフルを採用しています。ジッパーを全開にしてスリーピングバッグを一枚のシートのようにしたら片一方を持ち上げ振ることでもう片一方にほとんどのダウンを集めることができます。これにより寒さを感じるような時期にはダウンを上面側に集約して保温力アップを 計ることが可能になります。またキルトと異なり、下面も連続しているため、めくれて寒気が入り込む、暖気が抜けるという心配も少なくなります(注3)。 コールドスポットを無くし、ダウンのロフトをしっかりだせるようにもちろんボックスキルト構造を採用、ボックスの隔壁の高さも通常のダウン量260gのス リーピングバッグよりも高めに設定してあります。
③表面素材 軽さとダウンプルーフ
20Dnlナイロン シレ加工
表面素材は制作をお願いしたNANGA(日本)との検討で、20Dnlシルファイン(東洋紡)にシレ加工を施したものを採用しました。
ーダウンを押さえつけずロフトを最大限活かす軽さ(NANGAで最も薄く軽い20Dnl)
ーダウンの抜けを極力おさえるダウンプルーフ(09年度よりNANGAもこの点から東洋紡製を採用)
ーダウンの吸湿、発散をできる限り妨げない透湿性(撥水処理のみ、耐水コーティングはしない)
こうした点を重視して20Dnl シレ加工を採用しました。撥水処理の永続効果が魅力的なNANO-tex加工も魅力的でしたが、現時点で、日本において20Dnl生地に加工するのが難し く30Dnlになってしまうこと、撥水処理であることに変わりないため耐水圧が無いためシェルターの結露等と接触し続けた場合は浸水がおこってしまう、と いったことから今回のコンセプトに合致するのはシレ加工と判断しました。
なお、この生地のDnl数と表面加工処理はアメリカ某ダウンメーカーと同じというのも最終的な判断の材料になっています。
④ダウン 860FPハンドピックグーズダウン 260g 参考温度−6℃仕様
今回のダウンバッグはいわゆる「3シーズン対応」としています。ゴールデンウィークの残雪の山から11月の晩秋の山まで、工夫次第でなるべく長い期 間使用できるように考えています。日本、アメリカ各社の3シーズンダウンスリーピングバッグのスペックをいくつか比較してみます。
A)ダウン量400g 800FP −4~−15℃(上面ダウン量 約240~260g)
B)ダウン量250g 800FP 0~−10℃(上面ダウン量 約150~160g)
C)ダウン量450g 750FP −6℃(上面ダウン量 約270~290g)
D)ダウン量280g 750FP 2℃(上面ダウン量 約170~180g)
E)ダウン量450g 725FP −7~−15℃(上面ダウン量270~290g)
F)ダウン量450g 860FP −12~−25℃(上面ダウン量270~290g)
G)ダウン量250g 800FP −7℃(キルトタイプ、上面ダウン量250g)
H)ダウン量220g 850FP 0℃(キルトタイプ、上面ダウン量220g)
I)ダウン量310g 850FP −7℃(キルトタイプ、上面ダウン量310g)
体感温度は各個人で差があります。冬、北海道&東北の人は0℃を暖かいと感じるでしょうが、沖縄&九州の人は寒いと感じるでしょう。そうした差があることをふまえて上で、ある程度一般的な数値を考えてみると、3シーズン用としては平均的な参考使用温度が−6℃前後、FPによる違いがあるにせよ、スリーピングバッグ上面に位置するダウン量が260~290g前後を みることができます。そのなかで当ダウンバッグはキルト的なダウンの使用方法を採用するので、アメリカの主要キルト等との比較もふまえ、260gというダ ウン量を決定しました。最大限のロフトを得ることで保温力の確保につとめる点から、FPも860FPのものを採用(注4)しています。サンプルや同ダウン 量、同タイプの製品の使用感からも温度のレイティングは妥当だと感じています。
なお購入後、希望する方にはダウンの追加ブーストアップ(注5)を承ります。
⑤細部仕様
(ジッパー裏ドラフトチューブ)(足元までの左フルジップ)(全周囲的に使えるフットボックス)
(ドローコード抜き口) (スナップボタン) (襟元のボックス)
左ジップ構造ですが、右ジップ状態でも、全開してキルト状態でも使用できます。ドローコードの抜き口も使用者の希望にあわせて3カ所から選ぶことが 可能です。襟元のボックスはダウンが多めに入っていますので偏りが生じません。しっかりしめて使用すれば首周りと肩口からの冷えは防げます。しっかり留め られるようにベルクロではなく、スナップボタンを採用しています。足元までのフルジップは温度調整に役立つだけでなく、場合によっては足をだして歩いてい ただいても結構です。
(使い勝手、デザインとしてもキルト的に使用可能です。)
⑥スタッフバック
付属スタッフバックはやや大きめとなります。
このダウン量および総重量のスリーピングバッグでは「コンパクト」にするため写真中央サイズのスタッフバッグが付属することが通例です。実際に写真 中央のサイズにも収納可能です。しかしギリギリのサイズであるためスリーピングバッグの収納が面倒なことも事実です。またギッチリと収納するため硬くなっ てしまい、バックパックに収納する際に融通が効かなかったり、かえってデッドスペースができやすい等の問題もあります。そこで今回のスタッフバッグはコン パクトさよりも収納&パッキングのしやすさに焦点をあててみました。
スタッフバックのサイズは50L程度のバックパックの底面サイズに近いものにしています。またバックパックの中でなるべくデッドズペースができない よう、スタックバッグ自身の底面も楕円型にしています。なお、スタッフバッグの素材に関しては撥水効果の持続に定評あるNANO-Tex加工(注6)を施 しています。
軽量ダウンスリーピングバッグを検討している方、軽さと効率ならダウンキルトだとわかっていても躊躇している方、様々な使用方法ができるスリーピ ングバッグを探している方、癖のある製品かもしれませんが、各使用者の工夫にもしっかり応えてくれるスリーピングバッグとして検討していただければ幸いで す。
注1)アメリカならWestern Mountaineering、Nunatak、Golite、Bigagnes、日本ではNANGA、イギリスではRabが背面の保温材を省略したスリーピングバッグを発売したことがあります。
注2)参考までに、ハーフバッグ形状のスタンダードモデル、Western Mountaineering タマラックが全長150cmですが、わたしは身長164cmでこのモデルを使用しています。またダウンキルトで有名なNunatakのArcシリーズのミ ディアムサイズは実測で173~178cmくらいです。
注3)上面にダウンを集めて使用した場合は下面はペラペラになりますので、スリーピングバッグごと寝返りをうてば寒くはなります。
注4)試験成績証明書はナンガホームページ参照 www.nanga-schlaf.com
注5)50g、100g、150g追加が可能です。これ以上のダウン追加はボックス容積から考えて効果的ではありません。(価格未定)
注6)縫い目の目止め加工は施していませんし、あくまで撥水であるため耐水圧はありません。