
参考商品:Summit Supernate Bivy(取り扱い中止・在庫無し)
Weight
1270g
日本における冬季用シェルターといえば、外張方式(ARAI TENT)、内張方式(ESPACE)、防水透湿シングルウォール方式(ICIオリジナル、ニッピンオリジナル)と様々なスタイルがあげられます。それぞ れにメリット、デメリットがありますが、山岳会などの団体用としては外張&内張方式が、個人用としてはシングルウォール方式が好まれる傾向にあるようで す。シングルウォールは断熱&保温性能では外張、内張方式に劣るものの、軽さ&コンパクトさ&設営の容易さなどにおいてメリットがあります。近年は防水透 湿素材ではなく超撥水処理を施した素材を採用したBlack Diamondのシリーズも一定の評価を得ています。
そんなシングルウォール方式に、高い透湿性を誇るeventを採用したモデルが存在します。それがイギリスのメーカーRabのSummit Superlite Bivyです。
(本体素材には高い透湿性を誇るeventを採用)
シェルター内の結露が凍結する冬季は日数が増えるにしたがい、その霜のような氷がおおきくなっていきます。シェルター内に雪を持ち込まないといった冬山の 基本事項はあるものの、ウエアの濡れや体からの汗はいかんともしがたいですし、更に冬は「水づくり」といった湿気を圧倒的に放出する作業が日々おこなわれ ます。防風&防寒対策ももちろん大事ですが、冬季のシェルターには湿気対策として透湿性の高さも重要な要素になるのです。そこでDirect Vending Systemをうたっている防水透湿素材eventが注目されます。ハードシェル、レインウェアでの透湿性の高さを感じている方も増えてきているのではないでしょうか。このevent採用の自立式シェルターという点だけでも十分なトピックスといえるでしょう。以下、細かな仕様をピックアップします。
<インターナルフレーム>
Black Diamondをはじめ海外メーカーのシングルウォールシェルターで採用されているインターナルフレーム方式。本体内側にフレームを配置し張り出すため、
*シェルター本体の剛性が高くなる
*シェルター本体外側にポール用スリーブが無くなるため風の影響を受けにくくなる
といった利点があげられます。シングルウォールは冬季用という性格がつよいため海外ではこうした方式が採用されているのでしょう。多くの国内メーカーが採 用するスリーブ設営にくらべると、設営に慣れが必要なこと、時間がかかること、といった指摘がなされます。しかし既にBlack Diamondのシェルターがひろまった現在、もうひとつの選択肢として違和感はなくなりました。
<ベンチレーター>
本体後部に位置しているベンチレーター
日本的な筒型のベンチレーター。換気能力を優先するならばメッシュパネルなどをベンチレーターとした方が効率的です。しかし冬季ならば保温性も重視したいとなればやはり筒型にメリットがあるでしょう。またシェルター内部から外に手が出せるところもシェルターから外になるべくでたくない冬季には便利な機能です。ベンチレーターの高さはARAI TENTのものよりも若干低い程度です。
<ペグループ&タイアウト>
冬季仕様として最もこだわっている部分がこの二カ所ではないでしょうか。ペグループ(写真左)はアックスやストック、ショベルなどをアンカーとして使用できるよう、ループを大きくそしてめったなことで切れないようビニールで補強されています。強風下での安定感を左右するガイライン(張綱)を固定するためのタイアウト(写真右)は本体左右だけでなく、後部にもついています。その取り付けは本体生地に対するストレスを軽減するため大きなミミがつけられています。なおこのミミの中にガイラインを収納できる仕組みにもなっています。
このふたつがこれほどまでにつくり込まれていなければ更に軽量化できるはずです。しかしこの部分にこそ冬季仕様としてのRabこだわりがみてとれるように思います。
<ビレイループ>
「何に使うのですか?」という質問を必ずうけるこの特徴的なデザイン。これはビレイループ。壁の中で設営するさいにアンカーからだしたロープをベンチレー ターから中にいれ、この筒のなかに通して結ぶことで、シェルターそのものが落ちることを防ぐためのものです。ほとんどの方はまず使うことのない機能かと思 います。
<室内スペース>
実測218cm*116cmの床面積にスリーピングバッグを配置
国内メーカーの2人用と比べると一回りおおきな床面積。シェルター内での作業が否応も無く増える冬季においてはこのスペースはうれしいものではなでしょう か。メーカー公表の天井高は70cmとなっていますが、実際には90cmにややたりない程度。やや低いのは事実ですが、170cm台の方が使っても十分に 使用できる高さを確保してます。2011年2月には2人で3日間使用しましたが、特に問題は感じませんでした。
<その他>
内部にはメッシュポケットがひとつ標準装備されています。収納袋は底部にeventを使用し、ロールクロージャーを採用した防水スタフバッグになっていま す。Rabはシェルター、スリーピングバッグともに収納袋を防水仕様にしているので重さがでています。軽量化を計るならばこのスタッフバッグを変えるのが よいでしょう。
どのポイントにも冬季用としての設計思想が十分に反映されています。このレベルの作り込みがなされた自立式シェルターで、最小重量1,270gというのは冬季用として十分に評価できる軽さだといえるでしょう。
様々なコンディションが想定される冬季、
「耐風性が高く」
「自立式ですばやく設営でき」
「防風&保温機能も高く」
「1~2人で使用できるスペースをもち」
「かつ十分な軽さをほこる」
そんなシェルターを探しているハイカーやクライマーにとって、Summit Superlite Bivyはそのニーズにこたえるシェルターのひとつといえます。