
Spotlight Bivy
Weight
563g
SPOTLIGHTはとにかく軽量&コンパクトに徹して設計されたビビィサックです。 2009年まで同じBlack Diamondから発売されていたLIGHTSABREが3本のポールで剛性をあげ、足元の空間で換気にも配慮するなど、ビビィサックとしての居住性に重 点を置いていたのを考えると180度の方向転換といえるでしょう。しかし軽量&コンパクトとはいえ、スリーピングバッグカバーとは次の点で異なります。
ーボトム(グラウンドシート)側は厚手の生地を採用
ー最低限のポール使用で頭上にクリアランスを確保
ーモスキートネットの標準装備
こうした点からビビィサックはあくまで「シェルター」であることがよくわかります。
アメリカでは単体で使用されているビビィサック。しかし湿潤な気候の日本では、
1)雨天での使用感(生活空間や出入りの問題)がいまひとつである
2)防水透湿素材のビビィサックは重量が約1kgにもなってしまう
こうした問題点が指摘されています。1)は雨が多い日本でハイカーが最もビビィを躊躇する理由でしょう。また2)によって1kg前後のダブルウォー ルテントが発売されている現状ではビビィを選択する積極的な理由が消し去られてしまいます。そんな中、約500gという重量を実現した当モデルは「タープとの併用」を前提にした日本でのビビィサックのあり方を提案できるのです。タープとの併用は「雨天での生活空間の確保」「ビビィ本体の素材の幅が広がる」といったメリットを与えてくれるのです。
スポットライトビビィ(*1) 487g + ソロタープ(*2)190g =677g
*1)アルミポールは使用せず
*2)例:MSR E-ウィング(187g)、Integral Designs シルタープ(190g)等
<左上:本体生地/右下:ボトム生地>
ビビィは本体生地とボトム生地が異なるという点が大きなポイントです。これはスリーピングマットを内部に入れて使うことを前提にしているからです。地面に直接触れることを前提にしている生地ですから、場合によってはビビィサックの中に入らず、グラウンドシートとしてビビィの上に寝るという使い方もできるのです。
<庇部分にはワイヤーが入っています>
当モデルは頭上にアルミポールを入れることで十分な内部空間を確保していますが、写真のようにワイヤーも入っているため、場合によっては軽量化のため、アルミポールを使用しないという使用方法も選択できます。
<独特のポールクリップ方法>
ポールの固定は新しい方式が採用されています。ポールエンドが球体になっており、その球体を固定位置に配置されているプラパーツにはめ込むのです。 パチッという音がするまで軽く押し込むだけです。このポールエンドの採用ですが、ポール位置が所定位置からずれてしまった際に、シェルター生地に過剰なス トレスを与えないためだと思われます。
<上半身をカバーするバグネット>
日本のスリーピングバッグカバーや冬季用ビビィサックと最も異なる点がこのバグネットです。換気性能に乏しい形状をカバーするためでしょう、上半身に相当する大きなメッシュパネルを配置して少しでも換気性能をあげようとしています。これを十二分に活用するためにもタープとの併用は有効性が高いといえます。
<吊下用ループ>
写真では見にくいですが、足元の中央、全体の中央部にループが配置されています。トレッキングポールや枝等を利用して引き上げても良いのですが、タープ併用ならばタープポールから吊り下げることでビビィの内部空間を広げるのが有効です。タープポール間に細いラインを張れば、ビビィ中央部のループを吊り下げるのも簡単です。
ビビィサックにはいまだ結露の問題(注1)等が残ります。しかし結露を無くすことは現実的には不可能です。結露とどう付き合うかを模索するべきなの でしょう。化繊綿のスリーピングバッグや小型タープとの併用などで日本における可能性を検討することは無意味ではないはずです。「大地に眠る」という感覚を最も呼び起こしてくれるのがビビィサック。スポットライトビビィはそんなUL的キャンプスタイルに手を届かせてくれる道具のひとつではないでしょうか。
注1)結露対策として最も有効なものは「換気」を十分におこなうことです。これに最も留意したビビィが同じBlack Diamondで2009年まで作られていたLIGHT SABREなのです。
<参考>
2010年度、Black Diamondの素材はエピックからナノシールドファブリックに変わりました。
エピックはシリコンを繊維の内部にまで「含浸」させることで、生地が水分を保持しないように加工した素材です。他の撥水加工が表面加工であるのに対して、内部加工であるため、素材特性の変化がほとんど無い耐久性と生地が水分を含まない点に特色があります。
それに対してナノシールドファブリックの場合は他のナノ加工同様、シリコンコーティングによる表面加工となります。撥水の耐久性はエピックの方が高いようですが、耐水圧はナノシールドファブリックの方が高くなっています。