
Ultralight Dry Sacks
Weight
80g
バックパックの雨対策をどうするか?
パックカバー(外側)にするか、パックライナー(内側)にするか?
雨の多い日本のハイカーなら誰もが一度は考えたことがある問題だと思います。梅雨時期や台風シーズンだけでなく、まだ雨の降る晩秋や雪が溶け始める残雪シーズンも悩ましい時期です。
シリコンコーティングされたナイロン(シルナイロン等)素材の普及により急激に軽量化されたハイキングギアとしてパックカバーやパックライナーといった防 水ギアがあげられます。パックライナーは日本では沢登りや渓流釣りの愛好家の間では昔から一般的な対策でした。ハイカーにとってはやっと少しずつ認知され てきていますが、まだまだパックカバーの方が一般的。重量比から見てより高い防水性が得られるパックライナーは梅雨時から秋にかけて雨の多い日本では、もっと注目されていいアイテムなのではないでしょうか。
パックカバーは背中からの浸水が防げないため、防水という点では完璧でないものの、一般的なナイロン製のパックライナーに比べて軽く、バックパックそのものを濡れや汚れから守ってくれます。公共機関を利用するハイカーにとって”濡れや汚れ”への対策は移動時のマナーを考えると無視できないポイントと言えます。一方、パックライナーは完璧に近い防水性を発揮するものの、バックパックそのものは濡れてしまい、また一般的なナイロン製のものは重量の面で満足のいくものではありませんでした。
やはり同容量に対応のパックカバーと同程度の重量であるということは重要な選択ポイントになります。ここで例として50L相当のバックパック対応のパックカバー&パックライナーの重量をいくつかみてみましょう。
○パックカバー
mont-bell ジャストフィットパックカバー 50L 125g
Granite Gear クラウドカバーXS(50Lに対応可) 実測83g
○パックライナー
SEA TO SUMMIT ウルトラシルパックライナーS 実測87g(公称74g)
Granite Gear エアベントHDパックライナーM 163g
Outdoor Research ULドライパックライナー55L 実測112g(公称102g)*旧製品 参考
Outdoor Research ULドライパックライナー45L 実測109g(公称94g)*旧製品 参考
こうして比較してみると最近のパックライナーが重量の点でもパックカバーに劣らなくなってきたことがわかります。ちなみにパックライナー間の重量 差は生地の厚さに比例しています。SEA TO SUMMITは30デニール、参考の旧OR製品は40デニール、Granite Gearは70デニールとなります。
上記のパックライナーに対して、
OR ウルトラライトドライサック 55L 実測99g(公称84g)
OR ウルトラライトドライサック 35L 実測80g(公称70g)
素材 40デニール/ポリエステル100%/ポリウレタンコーティング
ウルトラライトドライサック55Lは軽さの点ではSEA TO SUMMITにはかないませんが、容量が少し大きいことを考えるとほぼ同じ生地の重さだと推測できます。ところが、繊維の太さが40デニールの為、SEA TO SUMMITなど従来の軽量シルナイロン製パックライナーと比べて丈夫で同等に軽いと言えます。また、同メーカーで比較してもシルナイロンにウレタンコー ティングしていたものよりも、約12%、10g以上の軽量化ができています。
<素材>
従来多くのメーカーが採用している、30Dシルナイロンは一部ユーザーから、沢登りや渓流釣りの際の漏水が報告されています。渡渉や滝の直登、泳 ぎなど、渓流での使用はメーカー想定外ではありますが、水をかぶる頻度が高い場合は漏水の可能性が無視できません。 そこで『もう少し厚い生地で、もう少し防水性の高いもの』とい考えになり、パックライナーがどうしても重くなってしまう原因でした。
ところが、OR ウルトラライトドライサックは、シルナイロンではなくポリエステルを採用しています。ポリエ ステルはナイロンと違い繊維が水を含みにくいのが特長です。シルナイロンの様な撥水はしませんが、シリコンコーティングをせずとも水を含まないので、濡れ による重量増を気にする必要がなくなります。また接着の難しいシリコン素材よりも経年劣化に対しても強いです。(*ウレタンコーティングの劣化がないわけ ではありません。湿度の高い状態が長いと加水分解を起こすことがあります)ポリエステルの性質として紫外線などの耐候性の高さも着目したいポイントです。 生地は防水性の高いことがうかがえるしっかりとした厚みのポリウレタンコーティング。メーカーとして推奨はしていませんが、水に積極的に濡れる状況に対し ても十分な防水力を持っているといえます。
<サイズ>
35Lは同メーカー旧モデル45Lパックライナーに近いサイズです。幅はやや大きく、その分高さが低くなっています。ですので容量は少ないです が、幅はGOLITE Jam50、GossamerGear Gorillaクラスのメインコンパートメントにジャストフィットで、このクラスより下のサイズにも最適です。積極的に軽量化を図りたいハイカーはジャス トフィットで考えると良いでしょう。
55Lは同メーカー旧モデル55Lよりも幅をややゆったり、高さを低く作られています。GOLITE Jam50、GossamerGear Gorillaなどから、GraniteGear Crown60、ULA Ohmまで対応する大きさです。少し大きめに感じるかも知れませんが、バックパックのスペースに余りを作らないためにはこの大きさを選ぶのも良いと思いま す。重量よりも対応の幅を考えるならこちらが良いでしょう。
<仕様>
カラーはライナー使用の際にも内部が暗くなりすぎ無いように光が透けやすい薄い色を選択しています。どのカラーも中に入っているものが少し透けて見えるくらいなので内部視認性も高く、明るく見やすいです。
ロールトップクロージャーシステムを採用していますが、ここにも新しい技術が取り入れられています。ロールトップの場合、三回重ねて回した方向と 逆にバックルを留めると完全防水にできます。しかし、空気の力で押し戻されることがあるので、気づかない間に完全防水でなくなっていることがありました。 回し始めるところの芯材を変更し、TPU(熱可塑性)コーティングを施したことで、生地と密着しずれにくくなり、また水を含まない素材の為圧力に対しても 耐性を増しました。
パックライナーの軽量化がはっきり数値にでてきた現在、バックパックの濡れ&汚れ防止対策よりも内部の防水性にこだわるのであれば、こうした軽量 パックライナーは非常に効果が高い道具といえます。また、宿泊時のテント内ではバックパックから取り出したパックライナーに道具を全て入れてしまい、バッ クパックはスリーピングバッグの足側を入れるビビィとして使用することもできます。防水なので、テント内が狭い場合はそのまま外に置いておくこともできま す。バックパックを足元のマット代わりに使用することは良くやる手段の一つ。パックライナーに道具を詰められればテント内の荷物も散らからず一石二鳥です。
もちろん長年ハイカーに愛されているパックカバーも軽量化されていますので、どちらを選ぶかはそれぞれのハイカーの優先順位によるのでしょう。
*大きなゴミ袋二枚重ねなどでパックライナーの代用をする方法は今も昔もハイカーの知恵。わたし達もやっていましたが、大事な時に穴が空いていて荷物が濡れること数回。痛い目を見た人、痛い目を見たくない人はパックライナーをオススメします。