
Down Cardigan / Down Vest
Weight
135g
アーバンユースのようですが、アウトドアユースでも使い勝手が良いシンプルな機能のダウンカーディガンとダウンベストを撥水ダウン、超軽量生地に変更した、Nanga直営店とHiker's Depotの2店限定販売の Nanga & Highland Designs コラボレーションアイテム。
ダウンカーディガン
重量:135g/Mサイズ(ダウン量50g) 価格:21,500円+消費税
順に HEENAとLINEN
ダウンベスト
重量:87g/Mサイズ(ダウン量40g) 価格:19,000円+消費税
順に HEENAとLINEN
ナンガとのコラボレーション
今までもHighland Designs のダウン製品の全てをNangaに作製してもらっていますが、デザインやコンセプトはこちらで考えたものがほとんどでした。しかし、今回のカーディガン&ベストは、デザイン、パターンの全てナンガのレギュラーラインそのままです。ではなぜHighland Designs がコラボしようと思ったのか、それはデザインのシンプルさでした。
Urban=都会的という言葉には“洗練された”という意味合いも含みます。洗練される過程で余計なものは無くなっていくので、必要最低限になっていくという解釈ができます。それはウルトラライトハイキングの考え方にも似ている部分があるのです。実はアーバンとULハイキングの好む指向はとても良く似ているのです。ナンガ/ダウンカーディガン・ベストはアーバンユースを意識しシンプルで最低限の機能を盛り込んでデザインされているので、ある意味でとてもULハイキング的なデザインなのです。
しかし、そのままでは即ハイキングユースとはいきませんでした。レギュラーラインでも、生地は十分軽量ですし、ダウンの品質も申し分ありません。これが10年前ならばハイランドデザインもそのまま展開していたかもしれません。ところが現在は撥水ダウンというものがあり、もっと軽い生地もあるのです。であるならば、ダウンを変え、生地も変えようということになり、ナンガとハイランドデザインのコラボレーションになったのです。
カーディガンとベストの特徴
このアイテムにはシンプルな中にも多くの特徴があります。一番の特徴はやはりその軽さにあるでしょう。ULハイキングをテーマにするHiker's Depotのアイテムとしてはこれほど嬉しいものはありません。カーディガンの重量は135g/M(ダウン量50g)。ベストは87g/M(ダウン量40g)。ベストは100gの大台を割る軽さとなりました。
ベストに関しては生地とパーツの重さが47g、ダウン40gとなるので、全体重量に対して約46%、約半分がダウンの重さということです。こんな時代が来るとは思っていませんでした。カーディガンにしても、135g中50gがダウンなので、全体重量中35%以上がダウンというのはすごいことです。例えばモンベル/スペリオダウンラウンドネックジャケットは157g中ダウン量35g(全体の22%)ですし、スペリオダウンベストの場合は156g中ダウン量45g(全体の28%)です。そう考えてみるとNanga&HDのダウンカーディガン、ダウンベストがどれほどに軽くそして温かいか想像できると思います。ここまでくれば言わずもがな、もちろんとても小さく収納ができます。
ダウンカーディガン/写真下
ダウンベスト/写真下
軽さのわけはデザイン的にシンプルだからということもあるでしょう。一般的なアウトドアウェアはジッパー、スタンドカラー(立ち襟)もしくはフード、袖や裾には調節機能と盛りだくさんです。ですが、インナーからアウターまで全てに同様の機能を入れる必要はありません。インナーにもジッパーとスタンドカラー、ミドルレイヤーにもジッパーとスタンドカラー、アウターにもジッパーとフードorスタンドカラー。とても不自然です。どこまで高い襟を重ねるのか。同じ場所に何重にジッパーを重ね合わせるのか。例えばファッションとしてシャツや同じようなデザインのものを二枚重ねて着るというスタイルはありますが、普通はしません。しかしその変なスタイルが当たり前にまかり通ってしまっているのが今のアウトドアウェアです。それは多くのメーカーが単体ずつで見たときに売れるデザインを作るからです。アウトドアのマーケットも継続するためには売れるものを作らなければならない、それが理解できる反面この状況はとてもいびつに思います。
Nanga&HDのダウンカーディガン、ダウンベストはインナーに特化したデザインであることは違い無いでしょう。ですがこれをアウターとして使うことも当たり前に可能です。これは極寒地使用でもなければ、そもそも薄手のダウン衣料なので、これをアウターとして使用できる季節や気温を考えればアウター使用の大きな問題にはなりません。
カーディガンとベストの共通仕様
生地は10d*7d リップストップナイロン生地を使用。2016年時、実使用上考えられるダウンプルーフ生地の中では最軽量の部類に入ります。ダウンには770FPの超撥水ダウン“UDD”を使用。薄手のダウンガーメントに起こりがちなロフト低下を防ぐことができます。襟は首元からややラウンドし最後はVで合わさる、UとVの中間のような形状になっています。この襟の形のおかげでジャケットのインナーにしてもほとんど見えること無く隠れてくれます。ラウンドネックは可愛らしいし、Vネックはスマートですが、どちらも重ね着をした時に完全に隠れるようにするには襟の開きを大きくしなければならないデメリットがありますが、このパターンはそのどちらでもなく、けれどそのどちらともの良いところを持っていると言えます。左胸にはポケットが付いています。無くても良いけど無いと不便、のギリギリで一つだけポケットが付いているのはとても嬉しい仕様です。前開きでスナップボタン留めになっています。前身頃の着丈は短めで、ベルトがちょうど隠れるぐらいの長さで、パンツのポケットに手を入れる時に裾を跳ね上げなくても手が入ります。後ろ身頃は長めで腰がしっかりと隠れます。前後の裾丈長さの違いは約5cmです。
・カーディガンの袖、肩周りなどについて
カーディガンの袖口はゴムやストレッチ性パイピングも無いので調節機能はありません。前腕(手に近い方)の真ん中くらいまでは捲り上げられます。袖ぐり(アームホール)は動きやすいようにシンプルなシャツスリーブで、窮屈感はなく動きを妨げるような感覚はありません。
・ベストの肩周りなどについて
肩部はカーディガンより短く、脇下はカーディガンより深くなっているため、全体にカーディガンよりも袖ぐりが大きくなっています。ジャケットのアンダーに着た時も単体で着た時も邪魔をせず動きやすく考えられています。
・色について
色は2色展開。オフホワイトのLINENと赤茶色のHENNAです。
LINEN(リネン)は麻ですが、麻色よりはもっと白に近い色合いになっています。ですが白ではなく透かしたり、ダウンが内側に入ってみると薄く色がついているのがはっきりします。真っ白ではないので、意外とどんな色を重ねても違和感無く馴染みます。見た目の色のイメージよりもカジュアルに使えます。白だから汚れやすいのではという心配もあるでしょうが、生地には撥水性も付いていますし、汚れがつきやすい襟周りでも、デザイン上襟が低いのでそこまで気にすることは無いでしょう。
HENNA(ヘンナ)は植物性染料として有名ですが、赤茶の中でも様々な色合いがあります。その中ではこれは主に茶色で赤が入っている色合いでしょう。赤めのライトの下では赤が目立ちますが、太陽光や蛍光灯下では茶色が強くでます。そのせいか全体的に紫をイメージする人もいるようですが、このように見える中間色というのはアースカラーならではなのかもしれません。アースカラーはどんな色にも溶け込みます。どんな色でもあってどんな色でも無いからです。赤や茶系統と合わせれば同系色に見えるでしょうし、青などを合わせても反対色には見えないです。だからどんな色合いとも自然に馴染むので、合わせる色を選ばないカラーと言えます。
・サイズについて
基本的に日本サイズになります。海外ブランドよりはワンサイズ近く小さくなります。
参考例:身長173cm・60kgのスタッフ Mサイズ/身長175cm・体重75kgのスタッフ Lサイズ
アーバンな衣類についての考察
このカーディガンやベストはアーバンなデザインと言ってきました。スーツやシャツと同様に確かに現代ではアーバンなデザインではありますが、そもそもスーツやシャツというのがアウトドアウェアだったのはご存知でしょうか。もちろん今のままでは無いですが、スーツはウールで作られるのが今でも一般的なように、ウールは雨にも強く(当時のウールは今よりも油分が多く残っているから)、調湿機能をもち、襟の形状を変えることで温度調節もできるからです。昔のアイガーやマッターホルンの登山者の写真を見れば、皆スーツとシャツを着て足元にはゲイターを巻いています。スーツでなければコートにベストとシャツでしょうか。現代のスーツはイギリスで流行した狩猟用ジャケットからの派生と言われています。まさに高機能服の走りと言えでしょう。例えば今の防水透湿ジャケットをウールのスーツとします。そう考えればシャツは高機能アンダーシャツに置き換えられると思います。吸汗性が良く、薄い生地は乾きやすいし、ゆったりした作りで動きやすさも確保されています。実はベストは元を辿ると一般的な上着のことで袖が付いているものだったそうです。どちらかというと行動着や作業着のような立ち位置だったのでしょうか。いつの間にか袖が無くなりジャケットやスーツの中間着とされるようになりましたが、適度な保温性を提供したり、ポケットの多いベストのようにシャツなどに足りない機能を追加したり、補完的衣類になった今でもベストの使い勝手を知ってしまうと手放せないものです。
そのどれもが今ではアーバンなデザインとされ、アーバンユースが主になっています。しかし、それは長い時間の過程でアウトドアやワークユースだったものがアーバンユースへと洗練されていったにすぎません。では洗練されたものがアウトドアで使えないのか。そうではないはずです。アーバンデザインとプレタポルテやファッションブランドなどのデザインとは一緒にしてはいけません。スーツは今だってワークウェアです。ウール製のものならば防臭・消臭性能があり、シワになりにくく、調湿機能を持ちます。都会ほど温度変化の激しい場所は無い。そう考えて見れば、アーバンユースデザインのものを改めて見直し、アウトドアユース、ハイキングユースへと落とし込んでいくことは Inovationに他ならないと思います。ましてやULハイキングやロングハイキングといったハイキング自体が向かう先がシンプルであるのならばなおさらでしょう。