
CONSTANT VELOCITY Ⅱ
Weight
586g
SPECIFICATIONS
- 重量
- 586 g / Men's 9 インチ、ペア(実測値)
*個体差±1% - ラスト
- AR 8
・8mm drop for heel striking
・heel height 24mm - toe height 16mm - アッパー
- Synthetic Air Mesh
- ソール
- outsole : Vasque Traction Plus
・Vasque AxisGrip rubber sole for high performance grip
midsole : Compression Molded EnduraLast EVA
・Enduralast EVA midsole for excellent cushioning and compression resistance
insole : Anatomical High Rebound Footbed - カラー&サイズ
- 〈Men's〉
Dress Blues / Neutral Gray
店頭取扱サイズ US inch 8 / 8.5 / 9 / 9.5 / 10
26.0〜28.0cm(0.5cm刻み)
〈Women's〉
Alaskan Blue / Majolica Blue
店頭取扱サイズ US inch 6 / 6.5 / 7 / 7.5 / 8
23.0〜24.5cm(0.5cm刻み)
*これ以外のサイズは問合せいただければ確認します。

“CONSTANT VELOCITY 絶え間なく速く”
Vasque のトレイルランニングシューズで人気だったのは Blur SL です。しかし、本国アメリカでの人気、そして名品というならばそれは「Velocity」でしょう。
ベロシティの特徴・長所といえば、それはスタビリティ(安定性)の高さと言えます。今見ればややもするとハイキングシューズのような作りになっています。そのしっかりとしたデザインのおかげで歩くのも走るのも登るのもオールラウンドに高い能力を発揮しました。
そのベロシティに、低速で長距離を移動し続けるための高い耐久性を付加したモデルが「Constant Velocity」なのです。
正直バスク3兄弟(トレイルベンダー、バーティカルベロシティ、コンスタントベロシティ)を一番最初に試しばきした時に「一番好きかも」と感じたのが、このシューズでした。この数年間、ほぼ毎日ゼロドロップか、それに近いサンダルやシューズを履いてきて、ドロップ差のあるシューズが苦手になっていました。そんな僕にとって本当はドロップ差がもっとも少ないバーティカルベロシティに履きやすさを感じるはずなのに、その対極にあるコンスタントベロシティに好感触を抱いたのです。なぜか。それはおそらく、今まで履いたことのある「良いシューズ」の感触があったからだと思います。
たいていの場合、人が「良い」と言うものは今使っているものと同じか、それと良いところが似ている時に言う言葉です。僕がよく知っている靴というのはホールド感があり、スタビリティがあるのが当たり前でした。シューズを履く上で大事なのがヒールの収まり、これがとにかく良い。靴紐を締め込んだ時にしっかりとかかとをホールドする感触があります。最近は少し浅めのヒールカップが多いなかでは、深めで硬さのあるヒールカップが足首をシューズの中に固定し、ちゃんと納めてくれる感覚が強いのです。甲の高さも十分あり、フィット感を重視したボリュームが薄くて細めの形状。カラーリングや見た目は古き良きアメリカのトレイルランニングシューズの良さを思い出させます。そう。全体的に、良い意味でトラディショナル(伝統的)なデザインなのです。
ですが、現在の流れにもしっかりと適応しています。アルトラをはじめとした近年流行のシューズの特徴にトゥーボックスの広さがあります。そこまでの余裕はないですが、トゥーガードが立ち上がっており、トゥーボックスに空間を作るような仕様になっています。ミッドソールはバスク3モデルの中で最も耐久性に優れたEnduralast EVA midsole を採用。トレイルベンダーよりは固く、バーティカルベロシティよりは柔らかいのですが、衝撃吸収性に非常に優れながらもへたらない耐久性を持つのです。これは昨今増加傾向にある長距離のランニングやレースでのへたらなさを考えたものです。
僕たちの経験においてはトレイルランニングシューズはおおよそ800kmくらいを目処に交換時期だと思います。その時のミッドソールというのは驚くほどにシワが入り、潰れています。特にヒールストライクで負担のかかる、かかと部分はなおさらです。その潰れたくらいが履きやすいというハイカーも少なくないのですが、その分足への衝撃吸収性は失われているわけです。800kmていど使えば、ミッドソールだけでなく、アウトソールやアッパーもかなり傷んでいるのでどのみち交換どきですが、それでもミッドソールのクッション性を失わないように考えられているというわけです。
コンスタントベロシティは「The consummate all-arounder」と評されています。熟練したオールラウンダーと訳せば良いのでしょうか。それは今までのベロシティシリーズの結晶という意味も含まれているのだと思います。それだけでなく、つま先高がトレイルベンダーよりも6mm薄く、バーティカルベロシティよりも2mm厚い。かかと高がトレイルベンダーよりも4mm薄く、バーティカルベロシティよりも6mm高い設定で、ちょうど中間に位置します。ヒールのクッション力はトレイルベンダーに匹敵するがヘタリにくいので機能が長持ちし、トゥーはバーティカルベロシティのように足裏感覚も感じやすい。そういう意味でもオールラウンダーということなのだと思います。
どうしてもドロップ差が8mmもあればヒールストライクにならざるを得ませんが、クッション性も欲しいし、足裏感覚も欲しいという欲張りなハイカーや、やはりトラディショナルなヒールストライカーだけれどできるだけ耐久性を求めるロングディスタンスハイカーにも選びやすいシューズでしょう。
Men's カラー:Dress Blues/Neutral Gray(写真 下)
Women's カラー:Alaskan Blue / Majolikan Blue(写真 下)
About VASQUE
バスクは1964年からアウトドアシューズを作っているアメリカの老舗シューズメーカーです。元はワークブーツメーカーRed Wingですので、シューズ作りのノウハウは他メーカーに劣るものではありません。
日本での認知度以上にアメリカ本国では高い評価を得ており、Sundowner や2016 Backpackers Gold Editor's Choice を取った Skywalk などトラディショナルブーツの名品だけでなく、次々に新たな定番を作る力を持っています。特にバックパッキング、ハイキングの分野での評価が高く、パフォーマンスハイキングは新たな価値を作り出す分野として注目されています。
そんな中で、名品 Velocity や Blur SL を2010年以前に排出して以降、この数年トレイルランニングシューズでは目立ったアイテムはありませんでした。ですが、2017年。とうとうVasque が本気になりました。ラストも新たに挑んだのが、TRAILBENDER、VERTICAL VELOCITY、CONSTANT VELOCITY の3モデルです。
『TRAILBENDER』『VERTICAL VELOCITY』『CONSTANT VELOCITY』 について
「この3モデルがあれば、アメリカ国内にいる多様な人たちの90%を満足させられる。」
そんな言葉が新モデル発表時にメーカーから聞かれたようです。新たなラストは、ドロップ差こそ違いはありますがこの3モデルに共通して使われています。しかしそのどれもが共通点を見つけることが難しいほどに違いがあり特徴を持っています。それぞれに異なるソールパターンや大きさ、厚み、硬さ、ドロップ差。そしてそれぞれのモデルの性格に合わせた最低限のプロテクション性能。このプロテクションへのこだわりは登山靴メーカーとしての矜持であり、近年の軽量化志向や過度に柔らかいクッションへは安易に流されない、バスクという老舗メーカーの思いが伝わってきます。
はっきりとした特徴のある3モデルですが、コンスタントベロシティはその中でいうと、時流を捉えつつも、トラディショナルであり続けるシューズと言えるでしょう。
【3モデルの特徴】
長く歩きたい、歩き続けたいハイカーをサポートする『TRAILBENDER』
クッション性・安定性・多様なトレイルに対応・オーバーナイト・長距離・6mmドロップ・フォアフット&ヒールストライク
足裏感覚を重視しつつも安定性に優れるテクニカルシューズ『VERTICAL VELOCITY』
グリップ・アセント・スピード・アグレッシブ・安定性・汎用性・4mmドロップ・フォアフットストライク
トラデョショナルでありつつ、時流に合わせた耐久性を手にいれた『CONSTANT VELOCITY』
オールラウンド・トラディショナル・超耐久ミッドソール・オフトレイル・8mmドロップ・ヒールストライク
VERTICAL VELOCITY の仕様
・ラスト(足型)とフィット
新たに作られた『AR』ラストは、TRAILBENDER、CONSTANT VELOCITYと共用のものになります。形状はストレート。そうすることで、多くの人にとって足入れ感が良くなります。これはシューズを選ぶ上で重要な第一印象を左右する大きなポイントです。もちろんそれだけの単純な理由だけでなく、履きやすさは足をリラックスさせることにつながり、長時間でも履きやすく、低速から高速まで幅広く対応するようになります。
つま先の幅ですが、バスク3モデルの中では一番狭く感じます。それはアッパーの外側形状が足に合わせてフィットしている、要するにトゥーボックスが低く容積が小さいことに起因します。他2モデルとラストが同じではあるので、実際には横方向の広さはあります。トゥーガードが上に立ち上がり指を動かせる空間が作られているのですが、小指側が確実に狭いです。それは、“フィット感”ではなく、フィットを重視した結果でしょう。昨今の流行は「指を広げて踏む」ですが、やはりトラディショナル、このシューズは指をぎゅっと安定させ力を集約させるようになっています。
トレイルベンダーやバーティカルベロシティと同様、バスクの従来ラストとは大きく異なる幅広めの新ラストを採用してはいますが、アッパーをローボリューム、フィットデザインにしたことで非常にトラディショナルな履き心地に仕上がっています。。中足部からかかとまでの広さは特に他メーカーとも大きく違いがあるように感じません。
かかとのヒールカップは、3モデル中もっとも高さがありしっかりとした作りになっています。かかとの収まりをよくするために縁に封入されたクッション材の効果もあり、心地良い納まり感があります。ヒールカップが無いもしくは柔らかいものが多くなりつつあるなかでは、久しぶりに安定感の高いヒール構造と言えます。
しかしこれには理由があるのです。ヒールストライクではかかとから着地するわけですが、かかとの骨は丸く、外側寄りについているため、ヒールストライクとは実は非常に不安定でブレが起こる着地方法なわけです。(*試しにかかとだけで片足立ちしてみるとかなりの難しさだとわかるはずです。片足立ちするときはみんな無意識につま先で踏ん張り五本の指で器用にバランスを取っているのです。)だからこそ必要以上にかかとをシューズにしっかりと固定する必要があるわけです。
ラストは3モデル共通ですがドロップ差(母子球とかかとの高さの比)は異なっています。初代ベロシティは当時では普通に10mm以上のドロップ差があったと思いますが、コンスタントベロシティは「8mm」のドロップ差となっています。この8mmというのも従来と比べれば低めと言えますが、バスク3モデル中ではもっとも高低差があります。このドロップ差を Vasqueは“for heel striking”と表しています。
例えば、ドロップ差がゼロのシューズの場合はヒールストライクには向いていません。強制的にでもミッドフットやフォアフットでの着地をするようにしないと脚への衝撃は従来のシューズ以上のものになり怪我につながります。返ってドロップ差が10mmとかある場合はミッドフットやフォアフットでの着地には向かず、爪先立ちをし続けているような状態になりますので、無理に行えばふくらはぎや前足部へ必要以上の負荷をかけることになり怪我につながります。
このシューズの場合ドロップが8mmですから、歩きでも走りでもヒールストライク用となり、ミッドフットやフォアフットには不向きとなります。
デメリットばかりが声高に叫ばれる昨今ですが、パフォーマンスを高めるという意味では、ヒールストライクのスタイルは決して悪いわけではありません。もちろんこれが今や主流でないことも事実なわけですが、選択肢の一つとしてあることは大切です。関節や骨への負担が減るフォアフットストライクではありますが、パフォーマンスを持続するには筋力が必要なので疲労した場合は返って関節や腱への負担が考えられます。それに対しヒールストライクは関節への負担が大きく、長い目で見たときにデメリットが大きいものの、筋力を温存することには役立ちます。
こういう話をすると「どちらが良いのか」決めたくなってしまうのが人の性ですが、馬鹿と鋏は使いようとは言ったもので、自分に合わせた使い方を選んで欲しいのです。
・アッパー(シューズの上部分)
まず目につくのは、シューレースのホールの少なさです。トレイルベンダーとバーティカルベロシティは7箇所あり、一番足首よりには普段通さないランナーズノット用のホールもあり、必要に応じて足首の固定力を高められるようになっていますが、コンスタントベロシティは6箇所と数が少なく、またランナーズノット用のホールもありません。これはこのシューズが高速のランニングやテクニカルな状況で使うことを求めない現れと言えます。足が靴の中で前にずれる現象は足首の固定ではなく、甲を抑えることで十分に機能を果たしますから大きな問題にはならないでしょう。
足首周りとタンには肌触りがよい素材と縁に沿ってクッションパッドが封入されていて足にフィットするので、ゴミの侵入も抑えてくれます。そして、深くしっかりとした硬さ、固定力のあるヒールカップは、ヒールストライク時のブレを抑えるのに役立ちます。
足、とくにつま先側のフィットを高めるために、タン部分がそのままつま先まで伸びていて、そこを中心にかこむようにアッパーが作られています。こうすることで足を抑え込みやすい構造となります。基本的には縫い目を少なく考えられていますが、軽量で縫い目がいらない「Synthtic Overlays 化学合成フィルム」で補強するだけでなく、生地があまり伸びて欲しくない部分とかかと固定のためのバンドは縫い込まれています。
使われている素材は密度があるエアメッシュニット素材で裏表二重になっており、トレイルの埃やゴミを防ぎながらも高い通気性があります。リフレクティブポイントがつま先の外側とかかとに付いており車のローライトにも反射してくれます。つま先は薄くても頑丈な1.2mmの合成素材トゥーキャップで摩耗などを防ぎます。
シューレースの通し方を改めてみると、つま先には締め込むものがなくフリーで、抑え込む構造にはなっていないものの、全体にフィットを重視しているので、足入れ感ではバスク3モデルのなかでは最もスタビリティを感じるものとなっています。押さえ込みはしないもののズレにくい、ブレにくい、足の自由度は少ないといった印象です。その代わりシューズと足との一体感が得やすいと言えます。
・インソール(取り外し可能なインナーレイヤー)
・ソール(接地面のアウトソール、クッション部のミッドソール)
3モデル中で最も耐久性の高いミッドソール、Enduralast EVA midsole を採用しています。触った感触は、トレイルベンダーよりはやや硬く、バーティカルベロシティよりは柔らかいです。800kmくらい経ったトレイルランニングシューズのミッドソールは残念なほど潰れていますが、このミッドソールはそうならないということです。特に柔らかいわけではありませんが、厚みのあるヒール部は着地の強い衝撃に対して吸収性に優れています。こればかりは見ただけではわからないですし、履いて確かめるにも随分時間がかかってしまうことなので信じるしかありません。しかし、それを間接的に表しているだろう点が、かかと外側と前足部両側にある「溝」です。この溝は力がかかったときに沈みやすくして、クッション性を持たせるためにわざと入れられています。この方法を従来のミッドソールでやったとすると、この溝のところから真っ先に潰れていきます。そうしたら骨がある外側だけが先にクッション性を失ってしまいそうです。ところが、この超耐久のミッドソールならばそれでも最後まで持ってくれるからこその構造だと推察できます。
かかと外側の溝と連動するように、アウトソール(靴底)のかかと部分は斜めに広い面が作られています。こうすることでヒールストライク時にかかる力を緩衝するだけでなく、アウトソールが溝をきっかけに曲がることで、前足部に続く動きを促しているのです。
またヒールストライク特有の動きとして、着地したかかとを点にして“中足部から前足部”に着地するときにも大きな衝撃がかかります。要するにヒールストライクとは一回の着地に二度の衝撃が加わるのです。ヒールストライクシューズはヒール側と全足部側で厚みが大きくことなるので衝撃吸収性に前後で大きな違いが出てしまうのですが、これを防ぐために繊維樹脂製で柔軟性のある「ESSロックプレート」が内蔵されており、全足部の着地時におこる衝撃や凹凸から前足部を守ります。また靴のねじれを抑え安定性を作り出します。さらにアウトソールに作られた溝がつま先へそして親指のリリースまでの力の動きを促します。
コンスタントベロシティに使用されるアウトソールは、Vasque Traction Plus です。他2モデルと同様の形をした4方向対応のmulti-directional lug(突起)3mmですが、中間の大きさになっており、地面への食い込みとフラットな感覚の両方を得られるようになっています。ラバーコンパウンドはヴァスク専用のAxisGripでグリップ性と耐久性が高いです。
グリップ力が良いに越したことはありませんが、それが用途や目的にあっているのかも考えて欲しいところです。グリップの良さは時にマイナスに働くこともあります。特に下りが長く続く時、ストップはインパクトでもあります。しっかり止まってくれるのは良いのですが、着地のしかたによっては過度の衝撃が筋肉や関節へとかかり、返って脚への大きな負担になることがあるのです。「グリップの良さ」というのはキャッチーです。シューズにとってはわかりやすい売り文句になるのです。けれどそれだけに惑わされる必要はないと思います。正直言って今のハイキングシューズ、トレイルランニングシューズでどうにもならないラバーコンパウンドのものはありません。今より良い、けれど、不要な良さ、ということも十二分に考えられます。それよりも歩き方や足の置き方に注意した方が怪我の予防にもなり、快適に歩けるようになるでしょう。
このシューズのオールラウンドという意味はどこにあるのでしょう。バスク3モデルの中ではまさに“中間”に位置します。アウトソールのラグの大きさはトレイルベンダーとバーティカルベロシティの中間。ミッドソールの厚いトレイルベンダー、薄いバーティカルベロシティ、かかとは厚くつま先は薄いコンスタントベロシティ。バーティカルベロシティのようにフィットよりの作りになっておきながら、トレイルベンダーの耐久性も持っている。だからこそ、足裏感覚が必要なときにも、長距離で衝撃吸収性が必要なときにも、どちらでも使えるという意味でのオールラウンドなのかもしれません。
確かにオールラウンドなのだとは思うのですが、残念なことは、このオールラウンドがヒールストライクシューズだからこそ得られるものだということなのです。ですので、ヒールストライクをしたくないハイカーにとっては、オールラウンドにはなり得ない、そもそも選択外となってしまうということです。
ヒールストライクが悪者扱いされるようになりましたが、人の体は千差万別。今までのたくさんのお話や経験で言えば、ヒールストライクに強いからだの人もいます。もし「自分はヒールストライク」が性に合っていると分かっていて、長く歩きたい、長期間使えたら良いと考えているハイカー、ランナーにとっては待望のシューズと言えるのでしょう。
・重量
Men's 9 インチ(27センチ) で 586g(1ペア)。片足 293g。
トレイルランニングシューズでもある程度のスタビリティを求めたものが、片足300g前半。1ペアで700g以下です。スピードを重視しミニマルなデザインのバーティカルベロシティと比較しても4gしか変わらないということを考えると、十分な軽さと言えます。
・カラーやデザインについて
色や全体のデザインはハイキングシューズ、少し前の良きアメリカンアウトドアシューズ。以前ではどこのメーカーでも抱いている定番のカラーリングでしたが、今ではロープライスメーカーを除いて見ることはなくなっていました。
普通に多くの人がカッコよく感じる。それは悪いことではありません。ところが、良くも悪くもメーカーと販売店、そしてカスタマーにはずれがあります。特にこの数年のメーカーの出してくるデザインやカラーリングはカスタマーとの大きなズレを感じさせるのに十分な結果でした。それは日本だけに限った話ではなく、アメリカでも同様です。今回のカラーは、アメリアかアウトドア小売店では最大手「REI」が全面協力しています。REIは今までも、メーカーでは廃番となったデザインのものでもカラーを変えながら継続して販売したり、カスタマーに寄り添う商品を扱ってきました。Vasqueは今回、メーカーとカスタマーのズレ、をREI協力のもと修正してきました。
アウトドアもアメリカではSportに分類されますが、日本語のスポーツよりはハンティングやフィッシングも含むためもっと大きな意味で捉えられています。いわゆる日本でいう狭義のスポーツのようなスポーティさもなく、ヨーロッパブランドのような特徴的なカラーリングでもなく、広くアウトドアフリークたちの普段の足元を飾るのにも違和感がない「普通に良いカラー」になったと思います。
設計を含めたデザイン全体にトラディショナルさを存分に盛り込んでいますから、まさにVelocityの正当な後継モデルということができるのでしょう。
・サイズについて
バスクの新ラストは基本的には横に広いという感触を持っています。ナチュラルランニングが運動生理学の分野でも認められていき、ベアフットシューズも市民権を得つつある現代において、従来のラストだけでは十分でないのは自明の理です。まだ対応しきれていない老舗シューズメーカーの中では積極的に対応してきたことは大きな変化です。
とはいえ基本的にはやや先細りの従来の形状も踏襲したものではあります。そして、同じラストを使用しているトレイルベンダー、バーティカルベロシティとの中では一番容積が小さく感じます。端的に言えば、細いシューズ、ということです。
シューズというのは面積や長さで履くのではなく「容積で履くもの」です。ある程度の長さを取ったとしても履き込んでいくうちに横が広がり前が詰まってくるものです。ぴったり目に選べばゆくゆくは指が付くほどジャストになるでしょう。もしゆとりをとって最初は余りすぎるように感じたとしても、シューズが足の形に馴染んでいくうちに前も少しずつ詰まってきて、ちょうど良くなるでしょう。
ですが、だからといって限度というものはあります。サイズを上げ過ぎると他のところ(かかとの大きさやフレックスポイント)が合わなくなってしまいます。もともとフィット重視のシューズだということはご理解ください。
“捨て寸” という余剰分がありますので、例えば実足長が26cmのばあいでも26cmを履くことが可能です。しかし、それでは本当の意味で隙間のないぴったりサイズになってしまいますので、当店としては実足長にプラス1cm〜1.5cmするのをお勧めします。
・自分の足が細いと感じる人またはぴったりが好きな人は実足長プラス1cm
・自分の足がゴツめだと感じる人または指を広げられる余裕が欲しい人は実足長プラス1.5cm
あとは履いたときのインスピレーションです。おや?ちょうど良さそうだけどちょっと違和感、なのか。はたまた小さいもしくは大きいかも知れないけどなんだかしっくりくる、なのか。です。遠方で実物を試せない人のご参考になればと思います。
例:実足長25.5cm 体重75kg程 のスタッフ。アルトラ/ローンピーク3.0は8.5 inch (26.5 cm)、トレイルベンダーは9 inch (27.0cm)を使用。
その場合、コンスタントベロシティは8.5 inchは小さい。9 inchで狭めだが靴の特性を重視し選択。9.5 inch は履きやすくなるが、フレックスポイントが合わず歩きにくい。
Hiker's Note
・トレイルランニングシューズについて
トラディショナルなハイキングブーツは大きな安心感を与えてくれるものです。しかし、道具の軽量化やウルトラライトハイキングメソッドの普及とともにシューズも変化してきています。ライトウェイト志向のハイカーたちの足元といえば、今やその多くがトレイルランニングシューズです。トレイルベンダーと同じくローカットシューズですが、どんな特徴があるのでしょう。
トレイルランニングシューズは本来平坦である程度整備されたトレイルを走ることを目的としているため、決して丈夫な作りとは言えません。過去丈夫でハードな状況でも使えるトレイルランニングシューズが数多くリリースされていましたが、それらがなくなって久しいのです。
メリット/現在多くがメッシュアッパーで作られいて長時間履いても快適で、濡れても乾くのが早いです。柔らかめのラバーコンパウンドとラギッドなパターンで泥はけとグリップが良く、全体にしなやかで軽快に歩けることが特徴でしょう。アメリカのロングトレイル“Pacific Crest Trail”のように、砂漠あり、雨あり、渡渉あり、雪ありと様々な状況下においてもトレイルランニングシューズで通し打ち(スルーハイキング)できてしまうので、トレイルランニングシューズはマルチと言えるのかもしれません。ところが、どの部分にも特化していないので、すべてにおいて苦手、弱点とも言えるのがトレイルランニングシューズでもあるのです。
デメリット/メッシュのアッパーは強くありません。数十キロで擦り切れてしまうことや岩や木に引っ掛けて直ぐに破れてしまう場合もあります。滑りにくいラバーコンパウンドは一般に消耗が激しいです。ミッドソール(アッパーとアウトソールの中間にあるクッション性をつくる部分)も全体に柔らかいため、凹凸の激しい岩場などのトレイルでは足裏への衝撃が大きく、長時間の場合痛みを伴うことがあります。分厚いミッドソールにすると足裏感覚を無くし掴む感覚を損なうだけでなく、高さがあるぶん足をくじく可能性が増します。ラギッドパターンは接地面積が少なくなるため細かいスタンスに乗るようなトレイルは不得意です。クッション性を重視していくトレイルランニングシューズですが、事実、“トレイルランニングシューズは履き込んでミッドソールが潰れてソールが削れ、履き潰れる手前が一番良い”、なんてことを言うおかしなハイカーがいるくらいですから。
・ハイカットとローカット
ハイキングシューズの主流と言えば間違いなくハイカットです。ハイカットの主な目的は足首の保護にあります。これは捻挫しにくいということではなく、足首を固定することで筋肉の疲労を軽減したり、足首のブレを抑えバランスを整えやすくするということです。ですので、ハイカットにすることで犠牲にしていることは、足首の自由な動きです。
ローカットは確かに足首の負担が少なくないです。もし重い荷物を背負うならなおさら。しかし、普段の生活でハイカットシューズを履かないように、足首の動きというのは非常に重要なのです。バランスをとるだけでなく、様々な角度や状況に合わせて柔軟に曲がることで地面への接地面積を増やし滑りにくくします。凹凸に合わせ足首が先に曲がることで体全体のバランスをとるセンサーの役目もしていると言えます。
ハイカットは安心感があり、足首への負担は減らせますが、足首の動きを制限することで細かい動きに対応ができなくなり、靴のエッジで歩くようになります。そうすると靴自体を固くする必要がうまれ、重量増につながります。もちろんメリットもあり、普段から歩き慣れていないハイカーにとっては足元で体のバランスを保ってくれるので歩きやすく感じるでしょう。多少の凹凸なら気にせずに歩けてしまうからです。ですが、本来ある障害物を避けることをしなくて良いので、歩き方は決してうまくはないでしょう。もちろんローカットシューズを履いていても歩き方が下手なハイカーはいっぱいいるとは思いますが。
日本に登山靴が入ってきた1800年終わりから1900年初めには、登山靴と草鞋での論争が起きたことがあり、それまでの日本では草鞋が登山の主流だったのです。約100年。今や日本でも登山靴ありきの山登りとなっています。ですが、道具は使いようです。草鞋で歩いていた古きハイカーたちはさぞ歩き方が上手かったのでしょう。今よりも格段にトレイルは整備されていなかったはずです。現代有名なトレイルであればその頃より歩き易く整備されていますし、足首周りの動きに対応するハイカットやミッドカットもあるので、うまく選択して選ぶことができます。
多くのスポーツの専用靴はローカットです。クライミングやランニングシューズもそうです。テクニカルなことをする時には足首の動きが必要だからです。普段の生活もローカットで十分です。高い技術を必要とする場合も技術を必要としない場合もローカットで良いわけです。足首を覆うシューズを使うスポーツ、例えばスキーは小さな屈曲の力を大きく伝えるためにハードでハイカットなブーツを使いますが、あのブーツの中でも足首の動きを使って板を制動します。スケートシューズは線で立つ補助をするためにハイカットになっています。もし長靴や地下たびをハイカットの部類に入れるならばあれは足さばきをよくしたり、ゴミや汚れの侵入を防ぐものです。実はそのどれもが足首の保護が目的ではありません。ハイカットはそれ相応の目的があってのものですので、登山はハイカットというのは通説ですが事実とは異なるのです。