
参考商品:Windveil Pull-on(メーカー廃番・在庫なし)
Weight
105g
「風の膜(まく)」という名のウィンドプルオーバーをまとい、風を切りながら軽やかに歩く。
Rab Windveil Pull-on
Maya(左)、Ebony(右)
サイズ UK S、M、Lサイズ
ウィンドヴェールは120g(Lサイズ)ととても軽量でシンプルなデザインです。ある意味、よくあるデザインでもありますが、こだわりが詰まっています。使用している素材は、20D ナイロン、Pertex® Microlight です。これもよく使用されている素材ではありますが、従来のものと異なり、ストレッチ性とより高い通気性を持っています。そのため、長時間にわたるハイキングやバイクライド、ランニングなどのエンデュランスにも対応します。それ以外にもボディの半分の長さのセンタージップにより、脱ぎ着が容易なのはもちろんのこと、衣服内の換気にも役立ちます。センタージップの途中にはスナップボタンが付いていて、センタージップを大きく開いた時に、開きの大きさを調整し空気の入り過ぎを防ぎます。また、繊維の太さも20D を採用しているので、ウィンドシャツの強度としては十分なものとなっています。裾には1/2。要するに半分だけ締められるドローコードが付いています。全体で締め付けると確かに密閉性は高まりますが、裾がずり上がりにくくなりますし、ましてや通気が目的のウィンドシャツだからこそ、それほどの密閉性を求めないのです。その分パーツも減り、シンプルな仕組みになる分、丈夫=重たくなる生地を使用してもこれだけの軽さを実現できたのでしょう。
センタージップの途中に配置されたスナップボタン。取り外しはワンハンドで可能。
右側だけについているプルコード。ワンアクションで裾を絞められます。
ウィンドシャツ、ウィンドジャケットについての考察
ここ数年定番のアイテムとなっているウィンドシャツカテゴリ。確かに、その有用性は当店でも言い続けていることですし、レインジャケットにできない ことができるため、同じような形をしていても別に持っていくことを勧めています。しかし、ケースバイケースなのは当然のことで、現在は数年前と状況も変 わっているのは確かです。
ウィンドジャケットは、十数年前に一度は「失われたカテゴリ」になったことがありました。なぜなのか。それは通気性がなかったからです。旧ウィンド ジャケットカテゴリ時代は、ウィンドジャケットは「防水ではないナイロンジャケット」そのもので、防水ではないだけで、防風性が高い=動き出すと蒸れるも のがほとんどでした。G社の防水透湿素材やeVent®、Pertex Shield+® などの素材は、外気が乾燥しているほど透湿性能を発揮しますので、ウィンドジャケットを使用することの多い、雨の降っていない時=晴れもしくは曇りの時な らば、どうせ蒸れるウィンドジャケッ トを着ているぐらいなら、レインウェアを着ても同じということになります。これが世間で言う「レインウェアがあれば、ウィンドジャケット代わりにもなる」 ということなのです。
しかし、ここ数年で一般化してきたウィンドジャケットカテゴリ(当店では主にウィンドシャツと呼称)は、通気性が非常に高いことが評価され復興して きたのです。そのきっかけの一つになったのはMONTANE のFeatherlite Smock(2014年で廃盤)は、通気するのにダウンが抜けない、ダウンプルーフの素材に注目し、それでウィンドシャツをつくりました。その時の素材が 当時最新素材だった Pertex® でした。そしてさらに通気性が高いものが登場しました。その代表格はPatagoniaのDragonfly Jacket から続く旧Houdini Jacket でした(現行のフーディニジャケットは著しく通気性が低くなっています)。日本メーカーの、丈夫ながら高通気性の特殊な生地を使用していたもので、当時あ の生地感には少なからず驚きと感動を覚えました。通気性が高いのであれば、ある程度動きが活発化しても蒸れにくく、適度に風も抜けるので不快感が少ない状 態で行動できます。けれども風は無理してまで通り抜けにくいところにはいかないので、適度に風を逃がし、風による低温化の影響を軽減します。この機能は絶 対にレインウェアにはできません。例え、通気性が高いと言われる NeoShell® ですら、コーティングもしくはフィルム状の部分を使用し、雨が通り抜けない、いわゆる”防水”の状態を維持するためには、通気性が著しく低下することは避 けられず、ウィンドシャツ同様の通気性を持つことはできません。
ところが、新ウィンドシャツカテゴリが勃興し、数年経つ間に、ウィンドシャツは再び防風性の上昇という流れになりました。それが顕著に現れたのは、 Arc'teryx の旧スコーミッシュフーディが登場した時です。現行とは違いますが、当時の生地は裏地に透湿性コーティングを施すことで、防風性を高めるという試みをしまし た。これは山用のウィンドジャケットということなので、通気性を落とし防風性をあげるということを選んだのですが、決して間違いでは無いものの、それでは 旧世代のウィンドジャケットに近い考えになっていってしまうのです。実際に、着用したときの蒸れ感は旧フーディニジャケット以上で、これではウィンドシャ ツといったイメージではなくなってしまいます。その後、他メーカーも追随するように防風性の高いウィンドシャツをリリースするようになりました。
しかし、ウィンドジャケットの復興もしくは新ウィンドシャツカテゴリの勃興との方向性が異なって来れば、それを元に戻そうとする力も働くのです。それが2014、15年から新たにリリースされたウィンドシャツのモデルに見られる傾向です。
通気性を重視したWindveil
従来からウィンドシャツに用いられることが多かった Pertex® Microlight ですが、ダウン製品に使うものを転用している場合もあり、確かに数値上は通気性があると認められているものの、体感としては蒸れ感を感じるものでした。しかし、このウィンドヴェールに使われいる Microlight 素材は、独特な畝(ウネ)感を持ち、リップストップも薄いところと厚いところがはっきりと分かれる構造になっています。また、あえて目が荒く織られているところからも、おそらくダウンプルーフされていないものと推測ができます。ですので、従来のものよりも通気に優れていると言われています。実際に比べてみても空気の抜け感が良くなっています。もちろんその分防風性は落ちていますが、上記もしたように、風はわざわざ通りにくいところに行こうとはしませんので、十分な防風効果が得られます。それでも風が抜けてしまうような強風かはそもそもウィンドシャツではなく、それこそフィルムやコーティングの構造を持った完全防風のレインウェアなどハードシェルの出番と言えるのではないでしょうか。
Patagonia 旧Houdini Jacket ほどの通気性ではありません。しかし、以前にはスコーミッシュジャケット最大の特徴となっていたストレッチ性を持っている上に、再び流れを戻してきた高い通気性を併せ持っています。防風性の高いウィンドシャツ、 ウィンドジャケットが出てきたころから、あまり山でウィンドシャツを着ない、という声を聞くようになりました。そんな思いを持つハイカーや多くのアウトドアアクティビティを楽しむ人たちにこそ、通気性が高いタイプのウィンドシャツ、ウィンドジャケットを着て欲しいと思います。