
DOWNMAT HL WINTER M
Weight
478g
SPECIFICATIONS
- 重量(実測)
- 本体:478g
ポンプバッグ:57g
収納袋:18g - サイズ
- Thickness(厚み): 9 cm
Length(長さ):183 cm
Shoulder Width(肩幅):52 cm
Foot Width(足幅):35 cm - 素材
- 上面生地:20Dポリエステル、TPU(熱可塑性ポリウレタン)ポリエーテルフィルムラミネート、耐加水分解性、Honeycomb Gripskin加工
底生地:20Dポリエステル、TPU(熱可塑性ポリウレタン)ポリエーテルフィルムラミネート、耐加水分解性
中綿素材:700 FP down
羽毛量:136g

暖かく心地よく、軽く小さく。
『Downmat HL Winter M』
背中側からの冷えは侮れないもので、接地面積も大きいですし、ここの放熱を抑えることは寒い季節に暖かく過ごすためには重要なポイントとなります。実際マットを変えるだけで寝袋を変えなくても暖かく寝られるようになったという意見も多くあるのです。暖かい上掛けがあっても冷たい床では寒くて眠りにくいという経験はありませんか?寝袋は十分な保温力があるはずなのにどうしても寒く感じてしまうハイカーには一考の価値があります。
保温力の比較では世界最軽量クラスとなるダウンマット。対応温度は−32度。参考としてR-Value(R値)は7.0。イコール温かさではなく、熱伝導性の低さ=断熱性の高さを表しています。数値が大きいほど断熱性が高く、大変大きい数値です。ここまでの保温力を誇りながら、重量は実測で478g(本体のみ)。厚みは9mmと従来品のDownmat UL Winter よりも2mmも厚みを増しています。チューブ内にはたっぷりとダウンが封入されており、無数のDAS(Dead Air Space)が熱の対流を防ぎます。ただ暖かくて軽いだけではありません。チューブの両サイドは少し大きくなっており、体がマットの中心に収まりやすい工夫がなされています。空気を出し入れするのも非常に簡単で、ドライパックライナーにもなる付属の防水スタッフサックがポンプの代わりになり、たった3〜4回でパンパンに膨らませることが可能です。丁寧にやれば2回のポンピングで9割の空気を入れられますし五分もかからないほどの簡単な作業です。力のない女性でも容易で大きな労力を必要としないのは寒さ厳しい季節にはとても嬉しいことですし、アイテム選びにおいて重要なポイントです。空気の入れ口は逆止弁になっており、入れた空気を無駄にしないのも簡単に空気を入れられる理由でしょう。空気を出すのも簡単で、逆止弁を押しながら空気を抜きます。抜くときも逆止弁を機能するようにしておけば、抜いている途中に再度空気が入るのを防ぎますので、ほぼ完全に空気を抜ききることも可能なのです。表面生地にはGripSkinというハニカム柄の滑り止めの付いた、“next-to-skin” 肌触りの良い素材を用いています。TPUポリエーテルフィルムラミネートは加水分解や剥離の心配が非常に少ないのが特徴です。



従来のダウンマットULは長方形(レクタングラー)で空気弁はinflateとdeflateに分かれており空気の出し入れはより簡便。その面積の広さから寝心地も抜群でした。それと比べてしまえば、空気をうまく抜くのには多少コツも必要でしょう。幅も狭く感じてしまいます。しかし、Downmat UL Winter M と比較すると重量は100gほどの違いがありますし、対応温度も−24度と大きな違いがあります。とにかく暖かくて軽いというギアに求められる大きな2つのポイントが秀でていることは Downmat HL Winter M の優位性を表しているといえるでしょう。
ExpedのダウンマットシリーズにULまでしかないときは、NeoAir XThermの優位性は圧倒的でした。しかし、このDownmat HL Winter Mと比べるとさすがに見劣りしてしまうのです。厚み、高い断熱性、軽さ、空気の出し入れの簡便さなど、冬用のマットに欲しい機能の全部のせと言っても言い過ぎではないと思います。
冬季用エアマットとインシュレーションマット
地面からの冷えが厳しいシーズンはマット自体の厚みを増したり、アストロフォイルや薄手と厚手のマットを2枚重ねたりと色々な工夫がおこなわれています。アウトドア用のスリーピングマットにはいくつもの種類がありますが、基本的には熱対流を起きにくくすることでマットの断熱性・保温力を高めるように工夫をしています。大きく分類すると、一つはクローズドセル(独立気泡)のフォーム材を使用したロールまたは折りたたみマット。また一つは空気で膨らませるエアマットです。クローズドセルのフォーム材を使用したマットの保温力はその素材自体の熱伝導性の低さも関係ありますが、それよりは気泡の大きさ(小さいほど熱対流が起きにくい)いわゆる密度と、厚みにあります。気泡が目視して小さくマットの厚みがあれば断熱性が高い、保温力があると認識してほぼ間違いなく、非常に理解しやすいものです。ところがエアマットとなるとそうはいきません。
エアマットには、⑴空気のみのタイプ、⑵オープンセルフォームを入れた自動膨張式といわれるタイプ、⑶輻射熱を利用したタイプ、⑷中綿(化繊綿、羽毛など)を入れたタイプなどいくつかのタイプが存在し、それぞれに特徴があります。まず理解してほしいことは地球上に置いて空気は非常に断熱性が高いもの(金属の一万倍ほど)だということです。しかし、それが動くことで熱を奪うのです。
⑴と⑵は従来最も普及したエアマットのタイプですが冬季・寒冷期用マットを考える上では候補からは外れてしまいます。なぜかというと、空気だけでは熱対流が起きすぎて地面が冷たければ時間が経つほどマットないの空気も冷えてしまいます。すると体の熱も奪われてしまいます。⑵はオープンセルフォームを入れることで自動的に膨らみますし、熱対流が起きにくくしたエアマットです。無いよりは良いですがオープンセルフォームですし軽量化のために肉抜きしているのでやはり熱対流により体熱が奪われてしまいやすいです。⑵のタイプで冬季用の厚手のものも多く販売されていますが、どれも保温力が乏しいのにはそういった理由があるのです。寒冷期マットで検討するならば、⑶または⑷のどちらかということになります。
⑶で最も代表的なのはThermARestのNeoAirでしょう。NeoAir発表以降確実に他社も一斉に類似品を出してきて、フォーム材が入っていないエアマットが再びアウトドア用マットと主流に躍り出ました。その大きな特徴はアルミ蒸着された生地またはシート状のものをエアマット内に入れることで体から出る輻射熱を最大限利用し暖かさを保つというものです。輻射熱と言うと分かりにくいですが、人や温かい物から放射されている熱のことです。人体はその輻射熱が高いため、熱を逃げないようにしてあげれば暖かく感じるということです。NeoAirは熱反射効率が高いアルミ蒸着されたシートをエアマット内にいれることで輻射熱を逃さず人体に反射して戻すことで暖かさを保持するものです。さらに三角形を組み合わせた構造は暖められた空気と冷やされた空気の接点を線のみにすることで熱対流が温かい面と冷たい面別々に起きるようにしたことで、体熱が奪われにくくしたわけです。
⑷の場合は化繊綿または羽毛をエアチャンバー内に封入し高い断熱性を作り出すことで地面からの冷えを防ぎ、体の熱を奪われにくくしています。考え方としてもっとも家庭の敷布団に近いものと言えるでしょう。中綿の種類、化繊綿と羽毛綿では熱伝導性が異なることとよりデッドエアスペースの小ささが変わることで対応温度が異なります。化繊綿で羽毛と同じ断熱性を求めると密度が上がり重量、収納サイズに影響があるため、製品になる段階では羽毛の方が暖かく、化繊綿の方が保温力は落ちます。
では、⑶と⑷ではどちらが暖かいのでしょう。それは⑶です。なぜならば、輻射熱の方が暖かく感じるからです。しかし考え方を変えてみます。どちらの方が寒くないのか。そうすると⑷という答えになります。どうしてかというと、断熱性が高く冷えにくいからです。人は眠りに入る直前は放熱していますので輻射熱も高まりますが、睡眠中は副交感神経が優位になり体熱は下がります。そうすると輻射熱の効果も下がってくるのです。⑷の断熱性を重視しているマットの場合は輻射熱の量は関係ないので、マット内部が冷えにくく、寒くなく使えます。もちろん表面生地は冷えますが熱伝導性の少ない羽毛中綿ならばなおさら気温に大きな影響を受けずに接地面から体の熱が奪われるのを抑えてくれるというわけです。
仕様詳細
・サイズ
Thickness(厚み): 9 cm
Length(長さ):183 cm
Shoulder Width(肩幅):52 cm
Foot Width(足幅):35 cm
・重量
本体は実測478g。ダウン量は136g(メーカー値)です。内部構造がわかるようにしてあるサンプル品を見る限りだと隙間なくたっぷり入っているようです。ポンプバッグの重量は実測57g。収納袋は18g。そのほかにリペアキットが付属しており、全部合わせて600g以下というところでしょうか。ポンプバッグはマットを膨らませるのに必須ですが、それ以外収納袋は不要ですし、リペアキットも自分のエマージェンシーキットの中身を照らしわせて必要なものだけを持つようにすることが可能です。そうすると実質重量は本体とポンプバッグを足した535gとなります。ですが、ポンプバッグ自体はパックライナーや防水スタッフサックとして使えるので、ポンプバッグを何かに置き換えることができるのなら、本体の重量のみが加算となるので、かなり軽量だと考えられるようになるでしょう。
ハイカーはどうしても軽さにもこだわりたくなるものです。寒冷期となれば荷物がどうしても嵩張り、重くなりがちなので普段軽量化に興味がない人も考えてしまうでしょう。できるだけ軽くかつコンパクトにということを考えつつもなるべく今手持ちのものでと考えて組み合わせによる方法をしている人も多いでしょう。しかし寝袋と同様、組み合わせるよりは一つの厚みがあるものの方が保温力は高いのです。マットも同様ではありますが、以下代表的なもとの比較をしてみます。
・リッジレストS(260g)+アストロフォイル(140g)=400g *全長は120cm・幅50cm およそ-10℃対応
・NeoAir X Therm R 430g *全長183cm・幅51cm およそ-20℃対応
リッジレストとアストロフォイルの組み合わせは、軽さとコストパフォーマンスに優れています。しかし保温力はそれほど高くはないです。アストロフォイルはそもそもR値が低く、輻射効果が高いことを考慮してもせいぜいプラス10℃。リッジレストが気温0℃くらいまでの対応なので、よくて-10℃までの組み合わせと考えられます。確かに軽量な組み合わせではあるのですが、長さは120cmですし、どちらも嵩張ることはデメリットです。寒さく少しでも軽いものをと考えている人にはおすすめの方法です。1番の対抗馬は間違いなくNeoAir X Thermでしょう。寒冷期に十分な保温力を単体で備えながら430gは圧倒的な軽さです。しかしポンプバッグが小さく空気を入れる回数が多いことや、ポンプバッグが他の道具として転用しにくいこと(専用スタッフサックにはできる)、バルブの構造上結局は最後を呼気で入れなければならないなど、細かいところとは言えデメリットが見受けられます。Downmat HL Winter M は比較してやや重いですが、-32℃という保温力を考えると重すぎるということはないでしょう。むしろ空気の入れやすさや収納性などを鑑みれば、大きなアドバンテージがあると思います。
・ドライパックライナーとしても使えるSCHNOZZEL PUMPBAG UL M
シュノズルポンプバッグはポリウレタン(PU)コーティングされたシルナイロン製で、容量は42Lあります。付属のものはMサイズで、Mサイズのダウンマットを2〜3回ていどで膨らませられるとメーカーは言っています。確かに丁寧にやれば2回で膨らませることが可能です。別売りにLサイズがあり容量が85Lあるので、うまくやれば1回でもMサイズのダウンマットを膨らませることができます。(SCHNOZZEL PUMPBAG UL L / ¥6,000+消費税)


・Inflate Flat Valve
空気の出し入れはこの一箇所で行います。フラットなバルブなので、邪魔にならず故障の原因も減らせます。バルブ内はフラップがついておりこれが逆止弁となって入った空気がすぐに出てくるのを防いでくれています。口が大きいためストレスなく素早く空気を入れられます。ポンプサックを接続してたった2〜3回で膨らみます。逆止弁のおかげで最後までポンプだけで空気を入れることが可能となります。空気を抜くときにはバルブキャップに付いているタブを逆止弁のフラップに差し込んで隙間を作ります。あるていど空気が抜けてからはからは弁のフラップを指で押しながら足や膝を使って空気を押し出すようにすると抜きやすいはずです。その方が指を離したらすぐに逆止弁が働き空気が入って行くのを防いでくれるからです。
冬季・寒冷期用のマットを膨らませるときに気をつけたいのは呼気でマットを膨らませることです。呼気の湿気によってマット内部の結露や冷え、羽毛が湿ることが考えられます。NeoAirの場合どうしても最後は呼気で調整をしなければなりません。少量なのでほとんど影響はないと思いますがそれでも気になるものです。しかしこのバルブのシステムならばポンプで完全に膨らませられるので一切呼気を用いなくて良くなります。このバルブと機能を最初に取り入れたのは間違い無くエクスペドのマットでしょう。今ではSea to Summit なども同じような機構を取り入れており、新たなスタンダードの可能性を持っていると言えます。

・素材
上面生地:20Dポリエステル、TPU(熱可塑性ポリウレタン)ポリエーテルフィルムラミネート、耐加水分解性、Honeycomb Gripskin加工
底生地:20Dポリエステル、TPU(熱可塑性ポリウレタン)ポリエーテルフィルムラミネート、耐加水分解性
中綿素材:700 FP down
・マットの形状と配置について
もともとレクタングラー(長方形)だったダウンマットがよくあるテーパーした形状になったのはただ軽量化するためというわけではなかったようです。昨今のテントの軽量化は素材だけではなくサイズの小型化という要因も合わせ持っています。それが従来の形では対応しきれなかったということなのでしょう。確かに昨今の軽量なテントは細長い台形や細長い六角形があることを考えると理解できます。

