
TerraFlex
Weight
550g
"Feel The World" = Xero Shoes
「Xero shoes」はInvisible shoesという名前で創業されたミニマリストサンダルのメーカーです。スポーツサンダルやアウトドアサンダルには、靴の機能を上手に取り入れた老舗のTeva、中興のChaco 、一般化させたKeenといった有名メーカーが存在感をしめしてきました。しかし2010年以降になると、クッション性を担うミッドソールを省いた非常にシンプルなサンダルを作る新興メーカーが注目を集めはじめます。そのルーツはタイヤゴムと革紐で作られたHuarache(ワラーチ)とよばれるメキシコの伝統的なサンダルにあります。このシンプルなサンダルスタイルはULやナチュラルランニングといったムーブメントを象徴するアイコンにもなりました。
ナチュラルランニングを志向するランナーを中心にワラーチそのものやルナサンダル、インビジブルシューズ(ゼロシューズ)が注目されるようになってからは、類似のサンダルメーカーも続々と誕生しました。しかしこうした後発メーカーはクッション性重視のトレンドが生まれはじめると、そちらに舵をきるところも少なくありませんでした。しかしXero Shoes ではクッション性を極力排したモデルこそが未だに主力であり、メーカー創業当時と変わらない手作りキットを販売し続けるなど、メーカーのオリジナリティを色濃くアピールし続けています。
そんなXero shoesが考えるミニマルなベアフットトレイルランニングシューズが「Terra Flex テラフレックス」として2018年に登場しました。
同社は2016年秋からサンダルのみならず、シューズにも進出。そのシューズはXero Shoesらしくアウトソールやフットベッドの機構にはほとんど手を加えず、サンダルストラップをシューズアッパーに置き換えるだけという、まさにサンダル的なアプローチのミニマリストシューズです。2017年にはランニングシューズとして「Prio プリオ」が登場。今回のテラフレックスはプリオの経験が活きたモデルとなっています。
Terra Flex 大地に適応するシューズ
Unisex カラー:Forest(写真 下)
Xero Shoesからついにトレイルランニングモデル「Terra Flex」が登場です。ランニングモデルPrioから一年、基本的にはPrioからアウトソールのラグパターンを変更、アッパー素材もより丈夫なものに変更、というようなわずかな変更でこのTerra Flexは誕生しました。これはある意味、Xero Shoesが考えるミニマルシューズとしてPrioの完成度が高かったことを物語っています。ミニマルシューズの完成形がベースなのですから、ランニングモデルからトレイルランニングモデルへの変更は必要最低限で足りるのです。
Terra Flexは使っている素材にも、縫製の箇所にも、無理なデザインがありません。他社のミニマリストシューズではソールが薄いこと以外は高機能素材、凝ったデザイン、薄くとも高いクッション性のミッドソールなど、他のシューズ同様の機能が付加されているのが普通です。しかしTerra Flexにはそれがありません。特に他のミニマリストシューズの多くにも存在するミッドソールがないことは、スポーツシューズの常識から考えれば非常に特徴的な構造といえます。足裏感覚を重視したり、ナチュラルな歩行&走行動作を意識するために、必要最低限のもの以外は省いてしまった最たる事例です。これができたのはシューズメーカーとしてではなく、ワラーチをベースとしたサンダルメーカーとして創業したからこそ。
本来、人間は歩くにあたって人体外のクッションなど必要としていません。裸足だったり、草履だったり、モカシムシューズだったり、「裸足もしくはクッション機能がない履物」を履いていた歴史の方がはるかに長いのです。しかし、現代のスポーツシューズによりクッション機能に慣れてしまったわたしたちは“シューズのクッション機能を前提とした歩き方”をしてしまっているのです。Terra Flexはフットベッドのクッション機能などである程度は履きやすくなっているものの、はじめてこうしたシューズを履く人にとっては足裏感を違和感として感じてしまうこともあるはずです。その違和感はいままで靴に歩かされてきた証拠かもしれません。しかし慣らすように少しずつ歩くことで、当初感じていた違和感は解消されるはずです。裸足もしくはクッション機能がない履物を履いていた当時の歩き方、つまりフォアフットからミッドフットでの着地に体が移行していくのです。その時、あなたはTerra Flexを通じて足裏全体で大地を感じるはずです。
こうしたあなたの歩き方の変化にともない、今度は違う疲れがでてきます。それは足底筋、もしくは太ももやふくらはぎかもしれません。これらの箇所の筋肉はナチュラルな歩行運動で使うべき重要な筋肉なのですが、クッション性の高いシューズのおかげで使わずに済ませてきてしまった、もしくは負担をさほどかけずに済んでいた筋肉なのです。Terra Flexなどのゼロドロップシューズを履いて歩くことは本来使うべき筋肉を使い、刺激することも意味します。そのため最初から長距離を歩くことはおすすめしません。体が歩き方を思い出し、筋肉がそれに応えるようになってから、履いている時間や距離を延ばすことをおすすめします。
TerraFlexの仕様
・ラスト&アッパー
ラストは同社のサンダルがベースとなったストレート。足の動きを妨げることないゆとりがあるNatural Fit。広々としたトゥーボックスは指を十分に広げられ、リラックスできます。もちろんつま先とかかとの高低差がないゼロドロップ。裸足の時と同じ骨格のポジションがとれるため、ヒト本来の姿勢を取りやすくなります。アッパーは柔軟で足の動きに適応して思い通りに曲がり、動きます。 つま先部分には補強が施されています。フットベッドには3mm of Barefoam™を採用。インナーはソフトな吸汗速乾性素材を使い縫い目も極力減らしているため、サンダルを履くように裸足でも履けるようになっています。なお、シューズのフィット感を担うのは“inverted V”という調整可能なストラップ。このストラップはアッパーに縫いつけられておらず、シューレースを締め込み足の甲を抑えると同時にかかと周りも固定し、足と靴との一体感を生み出します。 サンダルのストラップと同じ機能だとイメージするとよいでしょう。
・ソール
市販のシューズにおいては最も足裏感覚を感じられる=路面状況を最も感じられるソールのひとつでしょう。ミッドソールがない 5.5mm FeelTrue® rubber を採用しています。しかしミッドソールが無い替わりに3mm of Barefoam™とよばれるフォームをフットベッドとして使用しているため、履き心地は想像よりもマイルドなはずです。ソールパターンは同社のZ-Trailなどのサンダルのパターンを踏襲しており、トレイルモデルだからといって特殊なパターンは採用していません。ラグの高さは前足部で4mm、アーチからかかとにかけては3mmと変化をさせています。ゼロドロップシューズならではのミッドフットからフォアフットへかけての着地を行い、母指球から足指でしっかりと大地に荷重することができれば、グリップについては概ね問題ないはずです。
・重量
Men's 8.5 インチ(26.5センチ) で 550g(1ペア)。片足 275g。 同社のランニングモデル「Prio」から片足で約50g重くなっています。もちろんシューズとして、トレイルランニングシューズとしては、十分に軽いものです。
・デザイン
このシューズは“Huarache inspired design”というように、ミニマルサンダルをシューズへと落とし込んだものです。したがって、必要以上のサポート機能、プロテクション機能は有していません。自由を感じながら、人間が本来持っていた歩き方を思い出すように履いていただきたいシューズです。アッパーデザインはいたってオーソドックスなランニングシューズを思い起こさせます。特殊な素材を使わず、複雑な構造にもなっていない。必要最小限に納めたシューズとはこういうものでしょう。
ミニマルであるということ
Terra Flexはトレイルランニングシューズとして必要最低限の機能しか備えていません。最低限の機能しかないのですから、あとは使い手次第のトレイルランニングシューズともいえます。この道具を使うことで自分自身の内なる声に耳を傾け、内なる姿を見ることができるシューズです。 ミニマリストシューズとは足本来の感覚、人として外界を把握する能力を高めるための靴ではないでしょうか。地面の凹凸が痛いこと。斜めなこと。平らなこと。柔らかいこと。硬いこと。歩きやすこと、滑りやすいこと、こうした自然の中で感じるべき事実を感じながら歩いてみてください。きっと歩くという行為がもっと面白くなるはずです。
Terra Flexのようなミニマルシューズはなるべく日常に近いところで履いてもらいたいシューズです。ちょっとした散歩や休日のワンデイハイク。もしも近くに里山があるならば、そんな場所で気軽に履いて欲しいのです。そんな時にこそ足をゆったりさせ、大地から刺激を与えたい。こうして人間本来の動きができるようにしておけば、ハイパフォーマンスなトレイルランニングシューズやマウンテンブーツを履いた時に、足の力もシューズの力も目一杯引き出せるはずです。
ミニマルであることは、自分を知ることであり、道具を知ることであり、自然を知ることなのです。