
Lone Peak 4.0 [womens]
Weight
482g
ALTRAのフラッグシップ
いまやハイカーのスタンダード
広々して通気性の高い
『Lone Peak 4.0』
ブランド誕生の地、ユタ州の山から命名されたローンピークは2011年のALTRA誕生と同時に産まれたモデル。同ブランドのトレイルランニングカテゴリーにおけるスタンダードであると同時にフラッグシップといえるモデルです。inov8やnew balanceといった先行ブランドで謳われてきたゼロドロップやフォアフットといったスタイルを加速度的にシーンに定着させた立役者こそALTRAといえるでしょう。いまや北米シーンを代表する多くのハイカー&ランナーに支持されるローンピークは、2010年代のハイキング&トレイルランニングを象徴するトレイルランニングシューズになりました。

Black
7代目にして第四世代のローンピーク4.0は、とても柔らかく非常の通気性の高いメッシュアッパー素材に、広々としたトゥーボックス、前後の反りがおとなしくなった、フラットな履き心地が特徴になっています。フラット感はまるで第一世代のようですし、広々としたトゥーボックスは第二世代の再来です。
ところがこれにより問題もあります。それは第3世代の3.0や3.5からしっかりとするようになったソール構造に対して、アッパーが柔らかいために、どうしてもアッパーの抑える力が弱く、アンバランスな印象を強く受けてしまいます。しかしながら、悪い面だけではなく、第二世代が好みだったユーザーにとっては、待ってましたと言うモデルでしょう。足が遊びすぎてしまうトゥーボックスも言い換えれば圧迫感がなく足にストレスが無いとも言えます。やや、第3世代とくに3.5のバランス感は優等生すぎるのかもしれません。その分、第四世代のローンピーク4.0は癖こそ強いものの、その分特化した能力のあるシューズになっています。
特徴と改良点
1. アッパー
全体に物理的な補強をコーティングに変えていますので、全体に柔軟性を持ったと言えます。トゥーガードも柔らかいものになりました。メッシュ素材は薄いものに変更になり、非常に高い通気性を持つようになりました。つま先のドレインホールは下の位置になり、より水抜けしやすくなっています。
いま挙げた特徴のほとんどが従来の特徴をより強調するように変更されています。そしてその強調した変更が、ウィークポイントも生んでいます。全体に柔らかくなったアッパーは、足を抑えてくれませんので、靴の中で足が自由に動きすぎてしまいます。斜めのトレイルやトラバース時には、靴の中で足がぐるっと回ってしまうこともあります。靴紐を締め込んでも、全体に柔らかいのは変わりませんので、大きな変化は見られません。メッシュ素材はより速乾性に優れ通気性も高いですが、返ってすぐに濡れる、足が冷える、といったデメリットも生じます。位置を変更したドレインホールも、下に付いているので、ちょっとした拍子に水が簡単に入ります。出やすいというのは入りやすいでもあるということですね。
メリットを大きく強調した分、デメリットも大きくなりましたが、それだけ特徴がはっきりしているので、見極めさえできれば、この上ない心強い機能になります。
2. アウトソール
アウトソールのデザインは第四世代になり、すこしアグレッシブになったように思います。オールラウンドに対応するようにイメージされていた第3世代に対して、第四世代では、前後の動きに対してよりトラクションを発揮するようなパターンになっています。ただし、大きく捉えた配置などについては初代から踏襲しているといえます。細かい変化はあるものの、主観的な意見ではありますが、スペリオールやオリンパスなどと比較してもローンピークのトラクションはALTRAの中でも高く安心できるものだといえるでしょう。
3. ミッドソール
ミッドソールとアウトソールとの間に挟まれるストーンガード™は大きな特徴の一つ。岩場などでの突き上げから足を保護してくれるだけでなく、ソールユニット全体の硬さを出すことができます。第3世代ではやや前後のロッカー(反り返り)が強調されていましたが、第四世代になって、初代を思わせるフラットに近いものになっています。
柔らかい地面の時には腰のある硬さを感じ、硬い地面の時にはふっくらとした柔らかさを感じるミッドソールは、多種多少な地面を歩くことになる長距離ハイカーにほど好まれるのはわかる気がします。
4. フットシェイプ™
見た目でわかる大きな特徴がこのフットシェイプ™。指先をリラックスさせ、かつそれぞれの指にしっかりと力を込めて大地を踏む&掴む感覚を引き出してくれる幅広のトゥーボックス。裸足で生活し、山野を移動する先住民族の足はそのほとんどが指先が大きく開き幅広の足となっています。人間本来の力で歩くならば、こうした型が理想的だとの考えから、足を締め付けない自由な足型はALTRAの大きな特徴になっています。
ローンピークの変遷
人間が本来もつ自然な運動フォームに導くための「ゼロドロップ」はALTRAのシューズに共通する最大の特色ですが、特徴はどこにあるのか。それを理解するにはローンピークの歴史を紐解くとよいでしょう。
第一世代
・1.0【Origin】薄めでシンプルなソールユニット 柔らかいアッパー
・1.5【Tightly】薄めでシンプルなソールユニット タイトなアッパー
第二世代
・2.0【Wide】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット 伸びの少ないアッパー
・2.5【Stretch】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット ストレッチアッパー
第三世代
・3.0【Moderate】ロッカーと腰のあるソールユニット 適度なバランスのアッパー
・3.5【Durability】ロッカーと腰のあるソールユニット プロテクション重視のアッパー
第四世代
・4.0【Softy】腰がありフラットなソールユニット 柔らかく通気性高いアッパー
ローンピークはALTRAにとって創業時から続くフラッグシップモデルのひとつですが、アンバサダーやカスタマーのフィードバックから実験的な改良を重ねてきました。そのため、各世代毎の個性が顕著なのです。
ファーストモデル以降のローンピーク変遷を大枠でとらえるとこのように理解できます。第一世代から第二世代に至る過程はシューズトレンドが「マックスクッション」に傾倒するのと歩調をあわせています。その影響もあってか、第二世代以降、やや厚みのある柔らかいアッパーをもつ軽くフレキシブルなシューズになりました。
このようにローンピークは世代毎にソールとアッパーとのバランスが個性的なだけでなく、シリーズ全体を通じてソールが主体で、アッパーのおさえこみを物足りなく感じる傾向がありました。ネイティブアメリカンのモカシンシューズを彷彿とさせるアッパーに頼らない構造はローンピークの特徴ともいえますが、使う人を選んでしまうのも事実でした。こうした個性的なアッパーとソールのバランスが改善され、シューズとしての一体感を誰もが楽しめるようになったのが6年目の第3世代からと言えます。
一般的には良いはずの第三世代ではあるのですが、この変遷を見る限りローンピークが求めてきたものはバランス感の良いシューズというよりは、より良い可能性を模索した上での個性的なシューズであるとも解釈できます。その一つの答え、方向性を指し示したのはこの第四世代です。
明らかに、第三世代へのアンチテーゼです。いえ、アンチではなく回帰なのかもしれません。第四世代は、ソールのフラット感は初代を彷彿とさせ、アッパーの雰囲気は第二世代を思い出さずにはいられません。
個人的には第三世代のアッパーとソールのバランスの良さ、剛性感はハイキングことに長距離のハイキングにおいては最適と思うところはあります。第四世代のそれでは正直心もとない。だがしかし、何が良いかというのは、その目的や方法にもよるところです。このはき心地自体は決して嫌いではありません。むしろ第二世代を良しとしてきたので、好きなはき心地ではあるものの、もう少し耐久性が欲しいと思うところです。