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Brewer 2.0

SPECIFICATIONS
重量(実測値) Mens:446g / 8.5 inch (pair)
使用目的 ・パックラフト、カヤック、カヌー
・その他ウォタースポーツ
・旅行
・ロックスクランブリング
・アウトドアマルチユース
アッパー ・疎水性キャンバス生地
・エアメッシ(つま先、タン、内側側面中央)
・ゆるく低いかかと周り
・素足で履くためのSockliner
・刺繍が施されたタン
・耐水性のあるシューレース
ミッドソール ・かかとから母指球までほぼ水平
・膨らみを設けた中足部のアーチ
・EVA フォーム
・つま先部の排水口
アウトソール ・G.15™ rubber
・表面接触が高い
・接地面の水分を吸い込む溝
・non-marking
足と地面との距離 17mm heel(かかと)
16mm ball(母指球)
サイズ・カラー サイズ:US 8.5 / 9.0 / 9.5 / 10.0
 *Dワイズよりやや広め
 *実足長25.5cmのスタッフ
 (通常なら8.5。ネオプレンソックスを履くなら9.0)

カラー:Storm Navy
PRICE
¥17,500 + tax

Review

能ある鷹が爪を隠さず
排水性と防滑性能に優れた
シンプルスニーカーの2.0
ASTRAL
『Brewer 2.0』

 

パックラフトをはじめとした水のフィールドでは、ウォーターシューズと言われる靴やスポーツサンダルといわれる固定力の高いサンダルなどが使われています。
ではウォーターシューズとはどのようなデザインかというと、いわゆる「サーフシューズ的」なものがほとんどです。欧米の有名なカヤックメーカーもそのようなタイプを出しています。しかし、そのシューズでは「歩いてアプローチ」や「電車、バスで移動」という観念は含まれていないように見られます。

そこでパックラフターたちはトレイルランニングシューズを用いました。トレイルランニングシューズはメッシュを多用しているため排水性が高く、比較的グリップにも優れているからです。僕も最初はトレイルランニングシューズでした。本当のところそれでも十分な機能は果たします。しかしパックラフトでの川の出入りにはほぼ毎度、足が水没するような状況です。そうするとトレイルランニングシューズの、はき心地を良くするためのクッション材やインソールが少し保水しすぎるのです。沢登り用のシューズを使うというのも選択肢でしょう。今ではハイキングシューズのようなデザインのものも出ていますから、陸上においても十分使いやすいでしょう。しかし、もっともっと川用の機能を高め、ついでに普段でも履けちゃうようなカジュアルなデザインならなお良し!それがASTRALの『Brewer 2.0』(ブリュワー2.0)です。

Mens
Storm Navy
223 g

 

About ASTRAL

ASTRAL(アストラル)というメーカーを初めて聞く人もかなり多いはず。カヌー、カヤックなどの水遊びをしていなければお目にかからずに一生を過ごすことでしょう。
アストラルはもともと「Lotus Designs ロータスデザイン」というPFD(パーソナルフローテーションデバイス)、日本ではライフジャケットや救命胴衣と言われているものを作っていた伝説的なメーカーでした。今あるPFDの原型を作ったと言っても過言ではないそのメーカーは「パタゴニア」に買収されましたが、その後PFD事業から撤退しました。さらにその後、ロータスデザインの創業者が新たに立ち上げたメーカーがアストラルです。今でも革新的で環境に配慮した先進的なPFDを作り続けている一方、数年前より力を入れて展開し始めたのが「シューズ」です。最初はウォーターシューズのみでしたが、今ではデイリーユースからトレイルシューズまでをカバーしています。

 

Brewer 2.0の良さについて、なにが先に来るかは好みでしょう。しかし、大きく3つ。「シンプルなデザイン」「優れた排水機能」「高い防滑性能」です。

【シンプルなデザイン】

Simple® というスニーカーメーカーを思い出してしまうくらいシンプルなデザインです。単純にみただけならカジュアルスニーカーそのもの。◯B◯ストアでも売っていそうです。これだけシンプルなので、普段も履いてしまいたくなるほどです。
初代ではぐるりと回りにステッチが入っており、これがまたデザイン的に良かったのですが、このステッチがちょうど擦れやすい場所にあるため、だんだんと糸が切れてほつれてしまったり、ヘビーユーザーはそこから生地が裂けてしまったりすることもありました。ですのでこの点についてはデザインの好き嫌いはあるにせよ、アウトドアシューズとしては改良点です。

mens / outside

mens / inside

 

Brewer 2.0の特徴について

【優れた排水機能】

排水機能も特徴のひとつです。しかしながらこれについては、初代には敵いません。ところがこの排水機能、高くすると反面砂利や砂が入りやすいのです。2.0になって大幅に変更された部分でもありますが、それでも優れた排水性能を持っています。

初代では回りにミッドソールから貫通する水抜き穴がありましたが、それが2.0でなくなりました。しかし新たに設けられたのがつま先のミッドソールからインソールに貫通する三つの穴です。小さいために砂や砂利も入り込みにくく、しかしながら三つの穴があることでスタックせずにスムーズに水が流れ出してくれます。横方向からの水抜きはアッパーの両サイドに開けられた穴だけで十分です。

初代デザインではかかとに大きなドレーン(というには表現が優しいほどの切れ目)がありましたが、ここから大量の砂利が入り込んでくるに困ったことが何度もありました。ですので2.0では廃止されています。その代わりに小さな穴が設けられています。注意して見ないと気がつかないくらい地味ですが、これならば入るものを防ぎつつ水だけを排水するには十分です。つま先を上に向けると水が抜けにくい構造の一般的なシューズと違い、パックラフトやカヤックの内部で座っている時につま先が上を向いていても水がしっかり流れ出ています。

2.0の改良で全体的に言えるのは、必要な水抜き穴は作るが、インパクトは求めず実利に徹したということでしょうか。これによって確実に砂利は入りにくくなり、水は出やすくなったと言えます。

ミッドソールからインソールに向けて
貫通している水抜き穴

 

内側と外側に2個ずつ設けられた穴は 乾燥状態では通気を促し、 濡れた時には排水に役立つ、 定番だけど確実性の高い方法

 

かかとにある水抜き穴。
ちゃんと見ないと気がつかない

 

【高い防滑性能】

G®Rubberという独自のものを使用しています。ブリュワー2.0では「G15」に変更となりました。以前よりもソールの耐久性が上がり長持ちするようになりました。どちらにしてもそのシンプルなソールパターンからは想像できないほど、一般的なトレイルランニングシューズや滑りにくいと言われている登山靴とは比べるべくもなく、滑りにくいのが特徴です。アストラル以外でのよく見かける加工ではありますが、波上のスリットがアウトソールに刻んであることも、滑りにくくする工夫です。

もちろん滑らないものではありません。沢登りの世界ではいまだにラバーソールには否定的です。ビバ!フェルトソール!というわけです。僕も全部の種類ではありませんが、以前はゴムソールの代表格であったAqua Stealth Rubber や一般的に普及しているフェルトソールも使いました。が、言うほどゴムソールが悪いものではないと思います。
フェルトは確かに滑らないのですが、たしかなグリップもしません。ぬめりあるところや赤苔とかでは効果はあると思います。その反面高巻きの際や土や落ち葉など陸上ではからっきしです。耐久性も良くありません。
ラバーソールは「グリップするところではすごいするし、しないところではしない」というのが僕の感想です。例えば花崗岩などのスラブではまるで吸い付いているようでした。ですがダメなところ、例えば濡れた丸太のヌメるところでは滅法弱い。得手不得手がはっきりしているので僕にとってはわかりやすかったので好きでした。それにある程度丈夫なので、陸上もいけるし水もいける。どっちが一足でマルチなのかというと、ラバーソールだと思います。正直ブリュワーはそのどっちでもありません。このシューズで沢登りをしたことはないので、正確な比較はできませんが「アクアステルスよりは苦手な場所が少なく、かと言って強烈なグリップをする感じもない」そんなイメージです。ですので、フェルトに近いのかもしれません。が、フェルトよりも「いいかんじ」なんですよね。使い始めて数年経ちますが、不満も不安もなく使っています。

初代ブリュワーに使われていたGss は今でも一部のよりテクニカルなものに採用されています。しかし、正直なところ両方を同時に使い分けていないと、G15との違いを明確に言うことはできません。強いて言うならGssの方が少し柔らかい気がします。その分「グニっとくっつく」イメージはあります。ですので水辺などでは安心感があるものの、陸地で普通に履いている時には少し歩きづらい感じはありました。G15はGssと比べると少ししっかりとした感触があります。そのおかげで歩きやすく、マルチに使うにはこちらが良いのだと思います。

Mens outsole

 

上記の3大特徴以外にも、このシューズの特筆すべき点があります。

【バランスのとれた幾何学ミッドソール】

一つは「Balanced Geometry™ midsole」と名称する三つの機能を合わせミッドソールです。母指球からかかとまでが平ら、とアストラルは説明しています。アルトラのゼロドロップに似たものと思ってください。“水平”ではないのは、1mmだけドロップ差があるからです。どうしてわざわざしているのかは分かりません。もしかしたらミッドソールのヘタリを計算してのこと?かも知れませんね。
それから中央付近にはふくらみがあり、足のアーチをサポートしています。疲れによりバランスを崩してしまう足のアーチを支えることでバランスよく歩けるようにするのが狙いです。別売りのインソールも主にこのアーチサポートを目的としているものがほとんどです。ブリュワーの場合、インソールではなく本体そのものにアーチサポートがあります。
そして素材のEVAは水分を含まず、長期間に渡ってクッション性を保ってくれます。

 

【素足で履ける】

ミッドソールごと同じ素材でできていた初代のインソール部分ですが、2.0では生地が張られ、一見すると普通のシューズの内側と同じようです。しかし、インソールは取り外しできない仕様になっています。これをbuilt in sockliner と説明しています。初代は初代で良かったものの、正直なところ靴下を履いていてもそのままでは普段履く気にはなれず、インソールを入れていました。2.0の改良により、素足でも履くことができるようになりました。もちろん水分を含むようになったので乾きにくくはありますが、靴下を履かなくても履けるようになった利点はあると思います。また普段ばきでもわざわざインソールを追加することも不要です。
もちろん長期で見れば内側の生地が破れたりすることも考えられるので、これについてはどっちもどっちな気がしますが、実際初代を使っていた感想からすると、2.0の方が実際の使用者の大多数の意見に則した改良だと思います。

 


「Water-Ready uppers this evolution of our original shoe elevates the common sneaker to an entirely new level of performance and versatility.」とメーカーサイトに書かれています。正直、初代ほどのインパクトの強い機能はなくなりました。この点については今後初期からあるモデルは全て変更になっていくのでしょう。やはりインパクトの強い、突出しすぎる機能は環境や状況によって良悪が強くですぎるからです。そういう意味ではブリュワーは2.0になって、飛び抜けた点はないものの、ダメなところもなくなったように思います。この感想こそ、新たなレベルの能力と多用途性のある普通のスニーカー、ということなのでしょう。

 

僕はやはり機能的に優れているものが好きです。ですので壊れにくくて、軽くて、滑りにくくて。当然欲しいところですよね。でもデザインの格好良さも捨てがたい。いや、捨てたくはありません。正直なところ僕は最初ブリュワーは「見た目」でした。反則ですよ、このデザインは。少しクラシカルで、でもまだまだ現役感のあるこのシンプルなスニーカー。これでそれなりに使えたら十分かと。ですが、機能も十分すぎるほど備えています。初代についてはガイドからは厳しい声もありました。その点についても2.0でしっかりと改良してきたと思います。

正直に言います、と初代の時にも書きました。それから時は経ち。僕は新しいもの好きです。ということを考慮もします。けれど、やっぱり2.0はちゃんと改良されていると思います。好みはインソール部分だけで、あとは2.0の方が全体的に優れているように思ってしまうのは、やっぱり新しいもの好きだからなのかもしれませんね。