Trail Designs カルデラコーンは2000年代前半から注目を集めてきたギアのひとつ。UL Hikingというカルチャーの初期段階においてこのシーンを牽引したのはバックパックのGossamer Gear、シェルターのTarptent、ストーブシステムのTrail Designsという新興メーカーでした。西海岸に拠点をおくこれらのメーカーは既存のアウトドアマーケットではなく、Pacific Crest Trailを歩くスルーハイカーという非常に濃密なニッチマーケットを対象に製品を開発していきました。

Trail Designsのカルデラコーンもこうした流れの中で多くのハイカーから支持を集めたストーブシステムです。カルデラコーンの最大の特徴はその独特な円錐型の風防にあります。この風防により圧倒的な熱効率を実現。アルコールストーブとクッカーの小型化で安定感を欠くようになっていた当時のULシーンに一石を投じます。高い熱効率と安心の安定感は当時ガスストーブとして同様の評価を得ていた新製品JETBOILになぞられたものでした。クッカー毎にサイズが展開されておりひとつで全てのクッカーに対応することはできませんが、それゆえにシンプルで軽く、さらに高い熱効率が備わるのです。

また独特の風防デザインに隠れがちですが、付属ストーブの燃費は賞賛に値するものです。密閉度の高い風防によって熱効率は確かに上がりましたが、酸素をしっかりと風防内そしてストーブの燃焼面に送り込まないと不完全燃焼を起こします。付属ストーブはその点もしっかりと計算された構造です。吸排気構造であるためカルデラコーンの風防内でもしっかりと完全燃焼するのです。カルデラコーンとは風防だけをさすのではありません。なぜストーブとセットで販売しているのか、それはストーブと風防が一体となったシステムがカルデラコーンだからです。安易にストーブを差し替えるとカルデラコーンの効果が得られなくなりますので注意しましょう。

さらに2010年代には付属ストーブのオプションとしてシマーリングが登場します。【Simmer=煮る】その名の通りアルコールストーブで煮炊きするためのチタン製リングです。アルコールストーブは自らの炎で本体が加熱されるため燃焼時間が長くなるだけアルコールの気化が促進され火力が上がります。アルコールストーブの火力に驚かれる方が多いのはこのためです。しかしその結果、食品を煮ようとすると食品に熱が入る前に水が沸騰してしまい煮炊きができない、ということになります。沸騰後に適度なとろ火で熱を加え続けるということが煮炊きなどの調理に使うストーブには必要なのです。シマーリングは付属ストーブの吸気口のサイズ調整をおこなうことで火力を調整します。それによりカルデラコーンは低燃費&長時間燃焼が可能になったのです。これ以降カルデラコーンは「炊飯」「調理」にしっかり対応するアルコールストーブシステムとして再注目を集めます。日本人ハイカーにとって「白米を炊ける」「鍋ができる」は嬉しいことに違いありませんよね。それも低燃費でとなると俄然興味が湧いてきます。(カルデラコーンによる炊飯について詳細)

カルデラコーンの特徴をまとめると

  • 【安定感】円錐型風防がゴトクを兼ねるため安定感が高い
  • 【熱効率】クッカーの縁まで覆う密閉度の高い風防が熱効率をあげる
  • 【低燃費】風防、ストーブともに吸排気を考慮した設計で低燃費
  • 【炊飯対応】オプションのシマーリングによりトロ火での煮炊きが可能

このようにカルデラコーンは機能的には最高のアルコールストーブシステムといっても良いでしょう。しかし興味を持つハイカーにとって最後のハードルがその収納サイズ。UL志向&ミニマル志向のハイカーにとって収納サイズはやはり無視できません。しかしカルデラコーンは縦型クッカーと組み合わせると非常に秀逸なスタッキングが可能になります。その一例をご紹介します。

  • 【収納性】縦型クッカーとの組合せで収納性の高いスタッキングが可能

 

例)Evernew パスタクッカーS

1.カルデラコーンの収納容器の蓋を外します

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2.容器の無い方をクッカーに入れ込みます

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3.ピッタリ収まります(クッカーから出ている部分は8.5cm)

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4.適当なスタッフサックに収納(この例ではSEA TO SUMMIT ULメッシュスタッフサックXXS)

 

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5.蓋をいれます

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6.ドロコーコードをきっちり締めればガタつきなく収納できます。

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スタッキング性:優)Evernew パスタクッカーSTOAKS チタンポット750NH

スタッキング性:良)Evernew チタンマグポット500、TOAKS ライトポット650

 

こうしたスタッキングにより収納性が確保できれば、安定感、熱効率、低燃費、炊飯対応というアルコールストーブシステムのなかでも抜きん出たメリットを享受することができます。

カルデラコーンはULギアのなかでは最古参に近いスタンダード。そのせいかどうしても「今更、、、カルデラコーン?」と思いがちです。実際にわたしもそうでした。しかしもう一度じっくり使ってみるとその完成度の高さに改めて驚かされます。カルデラコーンの何を知ったつもりになっていたんだろう、と反省したほどです。だからこそ収納性で躊躇しているハイカーにはこれを参考に改めてカルデラコーンに注目していただきたいと思います。