温暖な季節を基準に「Under 2kg(2キロ以下)」でオーバーナイトハイキングに行く「Ultralight 2nd」ステージ!?それが「U2 Style Hiking」。
このスタイルを思いついたきっかけ「Gnu S+Cape ヌーエスケープ」の発案者Gnu(ヌー)さんと、ハンモックせんせーこと当スタッフのニノと、Turtle(タートル)ハイカーことシンさんの3人で某日某所にて、実践してきました。
U2 Style Hiking
記事:かめのように歩きたいかめ
今は昔の平成30年水無月ころのお話でございます。時は満ちたり、某日某所。ちょっとのんびりとした日にのんびりとしたハイキングをするために、とっても荷物を軽くして、身も心も軽やかにハイキングへと出かけることにしました。そのベースウェイト(水・食料・燃料を除いた重量のこと)はなんと2kg以下!
そのスタイルを「Under 2kg」と「UL 2nd Gen.」という意味を込めて、『U2』と呼ぶことにしましたとさ。きっとこれが平成最後のU2。そんな話の始まり始まり。
【ことのはじまり】
ウルトラライトハイキング(以後 ULまたはULH)。それはロングトレイルを歩くハイカーたちが歩き続けるために生み出していった実践的な手法であり、切実な行動でした。今では解釈が広くなっていますが、本来は行為そのものを指すのではなく、軽量化する方法でありハイキングの1つの手段なのです。僕がULHを意識したころに言われていたのは、ベースウェイトが Under 10 pound(lb)≒ 4.5kg 以下、でした。10lbとしているのはキリが良いからで、日本では5kgとしても良いでしょう。あの頃は「本当に5kg以下になんてできるのかよ!?」と思っていました。いくつもリストを作り、オーバーナイトハイキング、デイハイキング、沢登りなどとスタイルごとに重さを計り。どうしても9kgよりも軽くできなかったことを今でも覚えています。
そんな僕も今では普通にパッキングするとベースウェイトが4.5kg以下。一般的にはアウトドア歴が長いほど欲にまみれ、道具にまみれ重くなって行くものですが、僕にとってロングハイキングを経験したことで、とても現実的に歴代ハイカーの追体験をするかのごとく、自分の荷物が少なく軽くなる様を経験することができました。その後、もっと自分が必要なものだけを見極めていく中で今の道具や重量があるわけです。しかし、この中に全くの無駄がないかというとそういうわけではありません。2011年頃「青マーマー」と言われた35Lサイズで230gほどしかないバックパックでベースウェイト約3.5kgの経験をし、そこに「自分のための嗜好品や無駄」を少し加えたのが「今スタイル」というわけです。
では今、改めてあの「青マーマー」を使ったときくらい真面目に一生懸命軽量化に取り組んだらどうなるのだろうか。そんなきっかけを与えてくれたのが、我らが グレート・ザ・GNU(ヌーさん)の発案から生まれた『Gnu S+Cape ヌーエスケープ』なのです。
ヌーエスケープは「シェルターとレインケープ」を兼ねたアイテム。135g と超軽量ですが別に非常用というわけではありません。好天時には積極的に使うことで驚くほど軽量にオーバーナイトハイキングが楽しめるのです。ぜひこちらのページもご覧ください → 【GNU S+Cape ヌー・エスケープ】。そんなエスケープを使って軽量にハイキングに行くとしたらと考えていたら、何気なくベースウェイト2kg以下のリストが出来上がってしまったのです。
ふむふむ。それならばもう少し自分たちらしいスタイルでもできないものだろうか。そんなことで、おじさん3人で『U2』を楽しんできましたの話。前振り長し。
【ハイカー紹介】
ハイカーその1:
釣り歩きジェントルマン こと
Gnu(ヌー)さん。
このU2 Styleのきっかけになった「Gnu S+Cape」の発案者でもあり、『釣歩日記』の作者でもあります。釣歩日記は、スルーハイキングしながら、釣りも狩りも楽しんでしまおうという欲張りハイカーのお話なのです。しかも、結構なワイルドライフ好きのため、最近では北海道の日高に魅力を強く感じておられるそうでございます。2012 PCTハイカーでもあり、他にもたくさん歩いております。
ハイカーその2:
Fuckin'ハンモッカーこと
Nino
ハンモックや自転車など、ハイカーズデポの主流から外れるものばかりが好きな“不思議ちゃん”ハイカー。2012PCTハイカーで、そのほとんどをカウボーイキャンプで過ごしたという尋常ならざる存在であり、心臓に毛が生えているようです。最近は子育てに奮闘中。
ハイカーその3:
永遠のピーターパンシンドローマーこと
Turtle(かめ)*筆者でございます
旅好きが高じて仕事もせずにふらふらり。いつの間にか引っかかったeddyが「このお仕事」だったようでございます。ひとつところに留まらぬ「器用貧乏」または無駄な「物知り」というところでしょうか。いやはやお恥ずかしい限りの人生でございます。はい。
【U2規則】
アンダー2kgのハイキングなんて、決まりがなければできません!なんでもありなら四次元ポケットやホイポイカプセル持っていけば終了です。
こういうことをやると「じゃあ北アルプスでも通用するのか?」「安全性は担保されるか?」みたいなことを考えるお方もいるとかいないとか。そもそもそういうものではないのです。自分の良く行く場所、良く知っている場所。穏やかな天気の良い時。ちょっと遠出は面倒だけど、近場でサクッと。雨降ったら行かない。そういう時に「UL遊び」と「ULの練習」を兼ねてやったら楽しいでしょ、ってことなのです。
というわけで規則!
- 暖かい季節に楽しむ
- 雨が降ったら行かない
- 無理やりの軽量化は絶対にしない
この3つは前提としてあります。もちろんそこが標高2,000m以上であっても良く知っている場所であればできるでしょう。みなさんの心の中にある、その秘密の場所ですよ。そういうところで“サクッ”とです。楽しくなかったらやらない。要はがんばらない、ってこと。日頃みんな仕事やら子育てやら頑張っていらっしゃるじゃないですか。だからハイキングの時はがんばらない。それ鉄則。
そりゃあ、かめさんだって歯を食いしばって足を引きずりながら歩く時もありますよ。でもそれはそれで楽しいのだから、ハイキングは競争ではなくどこまでいっても自己満足なのだからありってことだと思います。でもいつもいつもじゃあ疲れます。
だからこそU2だけは、せっかくこんなに軽くしたんだから、気持ちも軽くなりましょうよ。だってさ、軽いって自由、だもの(笑)
なんだかなぁ〜。だめだこりゃ。
【道具選び】
道具選びは多くの人が好きでしょう。僕はきらいです。面倒です。いつもおんなじで一向に構いやしません。ですけど、今度ばかりはそうはいかないってことで、あれやこれや考えました。そしたら、意外と楽しい。久しぶりに店のスタッフ同士装備談義で盛り上がっちゃったり。土屋さんは行かないのに「これ俺のリストな!」って(笑)行きたいんですよね。すいません!
これが意外とUnder 2kg。簡単です。いや、皆さんにとっては簡単で無いでしょう。だって、全部を買えるわけではないですから。たまたま僕たちは借りたり、備品だったりで用意できるので、思いの外できちゃうんです。しかしそれではつまらない。面白くありません。
例えばHMGのスタッフパックを使えば、そりゃだいぶ楽になるでしょう。それにみんなS+Cape使えばunder 2kgなんてお茶の子さいさい佐井聡(TRAILS)です。でもそうじゃない。雨具とシェルターを兼ねると本当に軽量化できます。でも雨具は雨具で持って行きたい人もいる。どんなに軽くしたってハンモックは持っていかなきゃ気が済まない「ハンモックはラ・マン」を座右の銘とするNinoみたいなのもいるし、当然ながら好みがそれぞれにあるわけです。
それから今回は、ハイカーサコッシュの生みの親であり「UL博士」こと“Loon”ベーさんにできるだけ確認を取りながらベースウェイトを決めました。
- 燃料のボトルはベースウェイトにカウントしない。
- 水を飲むためのボトル(今回は一本)まではノーカウントだが、運搬用の水筒は基本は「空」の状態なのでベースウェイトカウント。
- サコッシュに入れたものはウェアラブルなので、ベースウェイトノーカウント。
- 食料などから出るゴミはベースウェイトにはカウントしない。
- トレッキングポールも基本はベースウェイトカウントしない。
サコッシュをウェアラブルとカウントするのは「ずるい」のではという話は前々から出ていました。ですけどそんなに重箱の隅つつくようにストイックにしなくってもね〜。ということと、やってみるとついでにいつもよりサコッシュの中も軽量化してしまうので、まあ今回はウェアラブルってことで良いでしょう。大きなポケットってことでどうぞ皆様ご理解ご了承くださいませ。トレッキングポールはもちろん使っていればベースウェイトノーカウントです。が、バックパックに付けたら。。。なんですけどね、これもあくまで今回の規則ではこのように考えてみましたとさ。
【それぞれの装備と考察】
ヌーさんはミニマル担当です。ミニマルは軽さよりも小さいことを優先します。特に道具縛りなく自由に考えてもらいましたが、バックパックは大人の事情でTrail BumのBig Turtle(315g)とS+Capeは使うようにお願いしました。ヌーさんのリストはこちら。gnu_u2 *PDFで開きます。
ヌーさんの装備ですごいのは、そこそこの防寒着や着替えが入っていることです。バックパックは付属の背面パッドをそのまま使っているということもあってか、特別軽いというわけではありません。やはりシェルターとレインウェアを兼ねて「141g」というのが圧倒的です。例えばぼくは、ケープで雨具を軽量化しましたがタープが別なので合わせて339gですから2倍以上の差があります。そこで軽くなった分、他を特別に軽くすることなく、アンダー2kgの達成です。
ニノは趣味担当。自らのハンモック縛りです。なので自分も企画に関わったTube Quilt(チューブキルト)を持っていきました。それだけで618g/2000g!一体どうなるのか。ニノのリストはこちら。nino_u2 *PDFで開きます。
ハンモック関連だけで844g(笑)タープポンチョで雨具を兼用することで軽量化しているところがポイントです。さらにチューブキルトの構造ならマントのように着ることもできるため、防寒着もありません。さらになぜかネイチャーストーブまでも。エスビットや木炭を使用する台としています。軽くしようっていうのに趣味に走っていますね。「焼き網」って、、、。それなのに、割り箸の3gっていうのが驚異的軽さだし、シュールですねぇ。自分の趣味、欲望を重んじるにも関わらず、2kg縛りという相反することを楽しむ二面性は、まさに彼の人となりを表していると言えるでしょう!ジキルとハイド!メンヘラ!それこそ彼の正体!暴いてやるぜ、ばっちゃんの名にかけて!
かめさんさんはですね。まあまあ大人の事情です。それを考慮しても、できるだけ通常のULに近いスタイルをキープしたままで、2kgを目指すことにしました。タープ、シート、マット、寝袋、雨具は別でなどですね。でも天気が良い時ルールがありますから、そこを含めてご覧ください。かめさんのリストはこちら。turtle_u2 *PDFで開きます。
心は丸く気は長く腹は立てずに口は小さく命永らえる。え〜、僕はいたって平々凡々、凡人の中の凡人。中庸を心に、人生は凪を座右の銘に生きておりますので、装備もまあよくある装備です。ちょっと反則はマットですかね。手持ちでたまたまあったので。今だと「Sirex/エベレスト10」というマットが同じくらいの軽さです。もっと軽いマットもありますが水が染み込みやすいリスキーな道具は“晴れ限定”とはいえ避けて選びました。とにかく一つ一つ丁寧に無駄を省いて軽量化。例えば収納袋は当然なし。どうしても袋が必要なら、薄いポリ袋(中サイズで約1g)を使いました。ヌーさんほどではないですが薄手のダウントップスも防寒着として持ちましたし、突飛なことはしておりません。もっとも苦心して笑いなしでは語れないのがクッカーのセット。なんとセット重量が77g!ニノやヌーさんのカップやポットとほぼ変わりません。そのセットの中身のほとんどが一桁台!鍋は、アルミがくしゃくしゃってなった冷凍の鍋焼きうどんとかの鍋と同じものが、どうしてだか家に転がっていたのでそれを利用しました。風防はほんと何年かぶりに厚手のアルミホイルを使って自作。紙カップはもちろんカップがわりです。何回目かでダメになったので、その後コーヒーとかはアルミ鍋からの直飲みでした。クアトロストーブは店のオリジナル商品だってだけじゃなくて、うちの実家で作っているから使わないわけにはいかないのでそこは縛りですね。
【写真とそのときのこと】
【ふりかえってみて】
Gnu
・総評
ベースウェイト2kg以下で泊まりのハイクをしようよ!って話になって早速ギアを詰め込んでみたのね。したらケープに泊まる装備だと何も気にしないで詰め込んだ時点で2kg切ってたのね「あっ、か・ん・た・ん。」って 俺の中では一切安全を捨てるようなことはしていないんだ。着替えも持ってるし、予備の電池やら薬も持ってるし。 そんなんだから俺的にはUL!UL!って感じじゃなくてただPCT2010,2012✕2で遊びに行ってきたー!って感じだったわけで、ただただ楽しかった。ニノくんの焼いてくれた肉が美味かったなぁ・・・
歩くのはたしかに軽い!軽い道具なんだもん当たり前。 一番印象的だったのは設置、撤収の早さと家が建ってからの荷物の少なさ。 UL哲学やレイジャーディンには興味はないし語るつもりもない。興味があるのは軽くて使える道具にだけ。それは楽して旅を楽しみたいから、楽して自然を愛でたいからなだけ。そんな俺がこういうのやってどうなの?もっと道具オタクがやった方がいいんじゃない?とか思ってたんだけど、これはこれでいい!(たまになら)だって幕の中、外がスッキリしてるあのシンプルさは気持ちがいい。何かを気づかせてくれる。あと、久しぶりにS+ケープで寝たけどやっぱ普通に寝られるんだよなぁ、足出てるの忘れてw
・今回の反省点
もっとガチでいってれば1.5kgいけたんじゃないのかなぁ?とここは反省。 防寒着とかもっと軽いのに全然できるし、収納袋も使ってるしetc
・反省点を踏まえた上で次なら道具をどうするか?
今持っているものでどうにかしたい(ただの数字遊びにお金は使いたくない)ので結局同じような装備で行くことになっちゃうと思うw
Nino
・総評
今回のアンダー2kgはまず第一にとにかく準備がたのしかった。2kg以内の装備となると、いつもの装備ではまず重量オーバーになってしまう。当たり前に使っていたいつもの道具からなにを削って、なにはキープするのか。あるいはどう切り替えるか。道具が全般的に軽くなっている現状でベースウェイト2kgの設定は適度な設定だった。4.5kgならなんでも持っていけるし、3kg台でもそれほどシビアにはならない。ベースウェイトアンダー2kgはパズル感覚で規定重量の枠内に装備を組み立てていくたのしさを感じられる設定だった。
今回はなるべく普段使っている道具を組み合わせたが、それでも枠内に収めることができたのはポンチョタープのおかげ。それとチューブキルトを防寒着にできたのも重量減に貢献した。単体で軽い道具を積み上げていくだけではベースウェイト2kg以内に収めるのには限界があることをあらためて感じるきっかけになった。
泊まりの設定では行き先によって水や食料の重量が加算されるので初日には軽さを実感するのは難しかったが、2日目の撤収後のバックパックの軽さは驚きだった。泊まりのハイキングでこれほど帰りの下り道をたのしく感じたことはない。
・今回の反省点
装備が軽くなったのをいいことに、食料を豪華にしたせいで1日目の行程で軽さを感じにくかった。
重量調整でファーストエイドの膝サポーターを削ってしまったこと。
・反省点を踏まえた上で次なら道具どうするか
今回はチューブキルトと焚き火台にこだわりたかったせいで重量を2kg以内に収めるのが難しくなってしまったが、この2つにこだわらなければもっとゆとりを持って装備が組める。次回やるなら食料込みで全体の重量を軽くすることにも挑戦したい。
かめさん
・総評
正直、Under 2kg というのは考えてもみなかったこと。それを考えるきっかけを与えてくれたのは間違いなくヌーさんとGnu S+Capeでした。不思議なものでヌーエスケープの装備リストを作った時には他の方法でもできる感触は持っていました。でもこれを想像と空想だけで終わらせるのはもったいない。ぜひ実践だ!という流れでした。しかしやってみるとやっぱり難しいものでした。特に雨具とシェルターを分けたかった僕にとってはまずそこがハードルになりました。ケープにして上下兼ねただけでは難しい。しかも通称キューベンファイバーなどの超軽量高価格製品をできるだけ使わないでとなると、本当に削れるところは削る感じでした。でもそれも楽しかったです。何年かぶりに自分の装備を根本から見直しましたし、アルミ風防を久しぶりに作るのも楽しかった。これでロングハイキングをする気にはならないけれど、たまには1gをどう削るのかを考えるのはワクワクします。とんだ変態発言ですね。
・今回の反省点
やり切ったのであまりないかなと。強いていえばカップの選択を誤ったことかな。
・反省点を踏まえ次は
すでのカップの代わりは準備済み。今回は大人の事情が絡んでいたので、次回は大人の事情なしで思う存分やってみたい。
以上。
長くなったな(笑)いつもすいません。もしU2に興味を持ってしまった奇特なそこのあなた。オススメしないのでやめなさい。どうしてもやりたいのなら、きっとできます。そういう人はたぶん楽しめちゃうでしょう。そしてこそっとやってくださいね。どうしてかって?だってそんな装備じゃ一般的には山で泊まると思われないじゃないですか。遭難と思われて通報されても困ります。だからULはいつもいつまでもこそっとしているのがお似合いなのです。
ではみなさん。そのうちまたなにか思いついてやった時にはご報告します。おしまい。