熊野古道を舞台としたKEENのTRAVEL TRAIL

フットウェアブランドKEENが2021年に提案するのは「TRAVEL TRAIL」。山から街へ、街から山へ、その土地に触れ合いながら旅をするというコンセプトはハイカーズデポで提案してきた「ハイキング」そのもの。2008年のオープン当時はKEENの定番モデル「ターギー」を展開していたご縁もあり、TRAVEL TRAIL第一回の取材紀行に店主の土屋がゲスト参加しました。


TRAVEL TRAIL

フットウェアブランドKEENの2021年のキーワードは「TRAVEL TRAIL」。昨年末に国内外のトレイル事情、ハイキング事情についてKEENの担当者の方にお話しする機会をいただいた際にお聞きしました。
日本では本場北米における実情の紹介や説明が足りないまま、地方振興のための経済用語として「ロングトレイル」という言葉だけがひとり歩きしてしまった経緯があります。しかしこの10年で海外トレイルを経験するハイカーも増え、山岳エリアのみにとらわれない自由な歩き旅のあり方が草の根的に広がりつつあります。プロモーションでつくられたシーンではなく、草の根的に根付きひろがりはじめたシーンです。はじめてTRAVEL TRAILの企画を聞いたときには、メーカーによる言葉の言い換えでシーンをかき乱して欲しくないと思ったのも事実です。しかし同時にこれは「歩き旅(=ハイキング)」の魅力をより多くの人に知ってもらうチャンスだとも感じました。
「アウトドア」という多様な活動を包括する文化がアメリカから紹介された1970年代以降も、日本においては「登山」がシーンの中心であることに変わりはありません。歩いて旅をする場所は山岳エリアが中心になり、かつそこには標高によるヒエラルキーがまだ空気感として残っています。そんななか「歩いて旅をすること、その場所は山だけに限らない。」そんな提案をKEENとそれをバックアップするYAMAPはおこなおうとしています。彼らにとってもこの提案はチャレンジであるはずです。そしてなによりこのコンセプトはULハイキングとロングハイキングの専門店ハイカーズデポのコンセプトそのものでもあります。そこで第一回目の取材紀行に店主の土屋が協力させていただくことになりました。

『KEEN「TRAVEL TRAIL in 熊野古道」〜世界遺産の道を歩く〜(YAMAP)』

 

熊野古道

TRAVEL TRAIL第一回目の舞台は熊野古道。2004年に世界遺産に登録されてから17年。登録当時からアウトドア文脈、登山文脈で熊野古道が語られる際には「大峯奥駈道」がとりあげられることがほとんどでした。縦走路であること、テント泊ができること、こうした登山要素が最も強いからです。わたし自身も熊野古道にいくとしたら大峯奥駈道を思い描いていました。大峯奥駈道以外にはあまり興味がなかったと言ってもいいでしょう。しかし取材を前に熊野古道について歴史や文化を勉強し直すと認識は大きく変わりました。それはハイカーズデポを通じてわたし自身が登山のみにとらわれない旅のあり方やそれを実践する人々と出会ってきたからかもしれません。中辺路、小辺路、大辺路、紀伊路、伊勢路、すべての古道に旅のテーマを見つけることができたのです。その感覚は中辺路を歩いてみて更に深まりました。

今回は2泊3日、歩いたのは実質1日にすぎません。熊野古道にご挨拶にうかがった程度です。しかし実際に現地を訪れると様々な刺激を得ることができました。わずかとはいえ道を歩くことで、その土地の人と話すことで、やれることやりたいことのイメージが大きく膨らむのです。今回の旅は大峯奥駈道にしか目を向けていなかった自分の視野の狭さを気づかせてくれた旅でもありました。そして熊野古道での新たな計画もうまれたのです。はやく実現させたいですね。

固定観念で切り捨ててきた場所に、思いもかけない旅の可能性がある。
大事なことは土地ではなく、土地の見方にこそある。
そこに何を見出せるか掘り起こせるか、可能性は旅人の目線次第。

自由な発想で旅を楽しむハイカーをこれからもハイカーズデポ ではお手伝いしていきたいと思います。

 

KEENとYAMAPによるTRAVEL TRAILの紀行記事は今後も様々なゲストをむかえて続いていきます。こちらも是非お楽しみください。