15ccのアルコール燃料で7分間燃焼。400mlの水をしっかりと沸騰させられる超低燃費のアルコールストーブ。単機能を追求するために重ねた細部の調整。到達したのは驚きの低燃費と手に取りたくなる造形美。
仕様
- 重量
- 20g
ストーブ本体 13g
プレヒートプレート 7g - サイズ
- ストーブ本体 直径φ50mm × 高32mm
プレヒートプレート 直径φ62mm × 厚7mm - 燃焼形式
- オープンジェットサイドバーナー
- 素材
- アルミニウム
- 燃料最大容量
- 燃料用アルコール 15cc
- 燃焼機能
- 燃料15ccで約7分間燃焼
400ml完全沸騰
(気泡のではじめは3分過ぎ、完全沸騰はおよそ6分30秒) - 備考
- 当店での取り扱いはプレヒートプレートとのセットのみとなります。
15ccで7分間燃焼400ml沸騰
マグカップにも対応可能なサイドバーナー
低燃費と造形美のアルコールストーブ
湯沸特化 -カップ麺のお湯が沸かせればそれでいい-
日米でULシーンの盛り上がりが加速しつつあった2010年に発売されたチタンアルコールストーブ。それから12年、満を辞してEvernewが送り出す新しいアルコールストーブが「BLUENOTE stove」です。
このストーブの開発者はバリエーション系の登山を経て、今は渓流釣りに夢中になっているN氏。開発の動機は非常に単純で個人的なものでした。
「FD400マグでカップ麺のお湯300mlを沸かせる最小限のアルコールストーブ」
ギアの企画開発では、多くのユーザーを獲得するために多彩な機能を盛り込もうと知恵を絞ることがあります。しかしそれではギアの特徴がボヤけてしまい、なにをするにも中途半端な印象を与えてしまう危険もはらんでいます。その道具で何ができるかは最終的にはユーザーの知識と経験、工夫のうえに決まります。UL系ギアではなおのこと。ならばそのギアでできることできないことをはっきりさせ、機能的特徴を際立たせた方がユーザーも理解しやすいはずです。
ブルーノートストーブは非常に個人的な要望に焦点をあてて企画されましたが、それは決してニッチな要望ではありません。「カップ麺のお湯300mlが沸かせればよい。」そう考えているハイカーや登山者は思いのほか多いのではないでしょうか。300mlが沸かせれば、コーヒーも、お茶も、スープも飲めます。カップ麺だけでなくフリーズドライ食品も戻せます。湯沸かしだけの機能ですと言われると、物足りなく感じますが、実はこの機能はグローバルな要望に対応しているともいえるのです。そして製品化されたブルーノートストーブは想定仕様である300mlにとどまらず、400mlを完全沸騰させるだけの性能を持っています。
ミニマル -ゴトク不要なサイドバーナー-
アルコールストーブ開発にあたって、サイドバーナーという形式は最初から決まっていたようです。サイドバーナーであればゴトクが不要になるので道具の数が減らせます。そして収納サイズも小さくなります。アルコールストーブ再評価の機運が高まった2000年代前半から、多くのガレージメーカーが様々なサイドバーナーを製作してきました。マグカップをクッカーとして流用する典型的なULスタイルに対応するための極小サイズのサイドバーナーも早々に登場しています。ULハイカーの注目を集めたBATCHSTOVEZグラムウィニーストーブに続き、2009年には日本のT's StoveからサイドBが発売されました。しかしマグカップに対応させるためにはストーブの直径を小さくせざるをえず、使用には慣れと注意が必要です。国内外のロングハイキングで実用しているハイカーも多いものの、不安定なストーブという印象はなかなか払拭できるものではありません。
しかしマグカップでも安定感ある新しいサイドバーナーを目指したブルーノートストーブ、そのサンプル制作とテストの繰り返しの中で自分達の考える解を少しずつカタチにしていったようです。本体形状そのものが直径に対して高さが低い安定した形状になっています。またカップ上部を広げたフレアトップを採用。さらにプレヒートプレート(プライマリーパン)を使用することで燃焼効率だけでなく置いた際の安定感が大きく向上しています。
実際に500〜700ml容量の一般的なソロクッカーサイズだけでなく、スノーピークはじめ多くのメーカーが製造してきた450mlサイズのチタンマグでも安定感をもって使用できます。そしてこのサイズでも炎は無駄なく鍋底にあたるのです。
低燃費 -アルコール燃料15ccでできること-
日本のアルコールストーブビルダーには2000年代から新機構を世界に先駆けて開発してきた先駆者がいます。トルネード機構や副室の燃料を毛細管現象で即時に吸い上げる機構などを開発したJSBこと山川氏、加圧燃焼アルコールストーブを大きく前進させガソリンストーブや灯油ストーブと同じ構造を製品化したFREELIGHTの高橋氏はまさにイノベーターといえるでしょう。
一方ブルーノートストーブは決して斬新な機能や新機構が盛り込まれたストーブではありません。構造は最も一般的なオープンジェットです。この開発過程で注目すべきは新機構を産み出す姿勢ではなく、既存の機構を企画意図を実現するべくひたすらに調整する姿勢にあります。「300mlの水を低燃費で沸騰させる」という命題を追求するために細部を徹底的にブラッシュアップしています。
ストーブの寸法は安定感のためだけでなく、副室の大きさつまり燃料容量にも関係します。そして効率よく炎を鍋底に当てるためにはジェット孔の高さも重要です。高すぎると熱効率が落ち、低すぎると燃料容量が少なくなります。ジェット孔の数、直径、角度も試作を繰り返しながら調整を重ねたようです。わずか15ccの燃料で400ml沸騰という低燃費はそうした試行錯誤の賜物なのです。
注意すべき点は、このブルーノートストーブ15ccよりも多いアルコール燃料を入れることができないという点です。15cc以上のアルコールを入れると、ジェット孔から燃料が漏れてしまします。または漏れないまでも燃焼時に沸騰したアルコールが液体のままジェット孔から噴き出してまわりに引火する恐れがあるのです。使用する燃料は15ccまでを遵守してください。
ウルトラライト - 固形燃料なみの軽量化-
低燃費が実現したことでULハイカーのストーブ選択にも変化が起こるでしょう。いままで燃料の重量を考えるとULハイカーは固形燃料を選ぶ傾向にありました。400mlを沸騰させるには一般的なアルコールストーブで燃料25-30ml(約25-30g)、Esbitならば10g、FireDragonでも15gというように燃料自体の重量では固形燃料に圧倒的なアドバンテージがありました。湯沸かしに特化するなら固形燃料を選ぶ、わたしもそうですがそのように割り切っていたULハイカーは多いはずです。しかしブルーノートストーブは15cc(約15g)で400mlを沸騰させられます。この燃料重量は固形燃料とほぼ同じです。
取り扱いの手軽さではやはり固形燃料に軍配が上がりますが、燃料補給の容易さではアルコールストーブに軍配が上がります。燃料の重量、ストーブ本体の重量が固形燃料でもアルコールストーブでも変わらないのであれば、ULハイカー選択のポイントはまさに上に述べたように整理できます。軽さにとことんこだわったULハイカーのストーブ選びに新たな選択肢が加わったのです。
水400mlをアルコール15ccで完全沸騰。湯沸かしに特化した低燃費アルコールストーブという個性が際立っているからこそ、このストーブには魅力があります。その単機能を使い手であるハイカーがどのように使いこなすか。道具だけをとりあげて良し悪しを議論するのではなく、経験と知識と工夫で「こう使ってみた」「こう使えるんじゃないか」「これもできるよ」そんな楽しい話題が膨らむことを期待してしまうストーブです。