“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術

山、渓谷、河川、海岸、島嶼部などの日本の「無人地帯」。そんなアウトドアフィールドでの「人力移動と野営術」について純粋な実用例を紹介した書籍。アウトドア活動全般に対応する基本原則の入門概説書としての性格も色濃い。

仕様

重量
417g
判型
A5版 288ページ
著者
高橋庄太郎
土屋智哉
池田圭
藤原祥弘
小雀陣二
矢島慎一
発行元
グラフィック社
発行日
2021年5月25日

実体験のみで構成されたアウトドア教本
野外活動全般の入門概説書

山、渓谷、河川、海岸、島嶼部などの日本の「無人地帯」。そんなアウトドアフィールドでの「人力移動と野営術」について純粋な実用例を紹介した書籍。著者6名が実際に行なっていること、過去に体験してきたことだけを紹介することで、単なるノウハウではなく、読み物としての面白さも加わっています。
「無人地帯」という言葉が使われていますが、内容はアウトドア活動全般に対応した基本原則といえるものです。1980-90年代に刊行されていたアウトドア教本を思わせる入門概説書としての側面も見逃せません。山岳部、ワンゲル、探検部、山岳会などの組織で登山やアウトドア活動を系統だって学ぶ人が少なくなった現在だからこそ、こうした入門概説書はあらためて意味があるものだと思っています。
ハイカーズデポ の店頭でも伝えていることが、カタチを変えて盛り込まれています。「無人地帯」という言葉で敬遠することなく、手にとってみてください。ハイカーにとっても多くの気付きが得られるはずです。

個人的に最も読んで欲しい文章は、高橋庄太郎が執筆した巻末の「日本のフィールドで遊ぶ前に」です。技術の話ではなく、心持ちの話です。当たり前のことが書かれているのですが、それをあらためて意識することが少ないのも事実。自分くらいは、今回くらいは大丈夫だろうと考えてしまうことは誰にでもあるはず。そんな時に是非思い出して欲しい文章です。

自然の中で遊ぶにあたって最も忘れてはならないことは何か。
それを簡潔な単語で示してくれています。

内容

第1章:計画
無人地帯とは? そこで何ができるのか, 自由な場所で何をするか?, プランニングの進め方, 安全対策など

第2章:道具術
装備の考え方, ウェア類, 野営道具, 寝具類, ライト・ランタン, 移動のための道具など

第3章:行動術
出発の前に, 天気と潮汐・風, 地図とルートファインディング, 歩き方のコツ, 危険な生き物など

第4章:生活術1
野営地選びと野営地づくりの重要性, 野営地の探し方, リビングスペースの設営, 個人スペースの設営, テント内の創意工夫など

第5章:狩猟採集術
野生食材の採集と活用, 利用できる野生食材, 魚突き, 海の釣り, 徒手採捕+αなど

第6章:調理術
メニューと食材選びの考え方, 日数に合わせたメニュー計画, 使いやすい調理道具, 焚き火でゴハンをおいしく炊く, 調理に向く火加減など

第7章:生活術2
雨、風をしのぐ, トイレの方法, 歯をみがく、顔を洗う, 帰る前に

 

著者

高橋庄太郎 山岳/アウトドアライター

担当=第1章「計画と準備」、第3章「行動術」、第7章「生活術-2」、旅エッセイほか

1970年宮城県仙台市出身。高校の山岳部から山歩きをはじめ、出版社を退社した後には、一人パタゴニアやカナダの山々を歩いたり、ユーコン川をカヤックで下ったりと、2年間の国内外アウトドア旅へ。その後、フリーランスのライターになる。著書に『トレッキング実践学』『山道具 選び方、使い方』(枻出版社)、『テント泊登山の基本』(山と溪谷社)など。イベントやテレビなどへの出演も多い。子供のころから自分で毛鉤を巻き、浮子を削るほどの釣り好きだったが、現在はあまり興味がなく、現場では1匹釣ると満足し、後は仲間が釣ってきた獲物を食うことに専念している。

 

土屋智哉 ハイカーズデポ店主

担当=第2章「道具術」

1971年埼玉県川口市出身。大学時代は探検部に所属。青春時代の大半を洞窟で過ごす。都内のアウトドアショップで世界中の先進的な道具を紹介するバイヤーを務めたのち、東京都三鷹市に「ハイカーズデポ」を立ち上げた。お店のコンセプトは “ウルトラライト(超軽量)”なギアとそれらを支えに楽しむ“ロングディスタンスハイキング”。著書の『ウルトラライトハイキング』(山と溪谷社)では軽量な道具を使った自由度の高いハイキング術を紹介している。無人地帯の旅では、毎回新しいギアと独創的なアイデアを我が身で人体実験し、ときにひどい目に合ったりもしている。

 

池田圭 編集者/ライター

担当=第4章「生活術-1」

1981年神奈川県厚木市出身。幼少期から近所の川や工事現場を遊び場に育つ。大学卒業後はレコード店勤務→インド人のお土産製造業(in カナダ)を経て、数年後に帰国。両国国技館のお茶屋→サーフィン誌、登山誌の編集者を経て独立した。小雀の料理連載、矢島の写真連載、高橋の書籍などの編集も担当している。自身の著作はないが、編集者として手掛けたアウトドア系書籍には、いくつものベストセラーが生まれている。食べることが好きで、調理にもこだわりがある。年長者であり、調理の専門家でもある小雀を立て、一歩引いて我慢しているような光景が見られる。

 

藤原祥弘 アウトドアライター

担当=第5章「狩猟採集術」

1980年青森県生まれ宮崎県経由東京都育ち。リバーガイドを経てライターに。川遊びや野遊びなどの素朴な野外活動の記事をまとめる一方、自然物を使った摩擦発火などのワークショップも展開している。ライフワークは野生食材の採集と活用で、最も得意とするのは素潜りでの魚突き。無人地帯の旅では、そのおこぼれにあずかりたい他メンバーの総意として「藤原が獲物をとりやすい」場所をキャンプ地として決めることもある。共著に『BE-PAL 海遊び入門』(小学館)、編集を担当した本に『わがや電力 12歳からとるかかる太陽光発電の入門書』(ヨホホ研究所)などがある。

 

小雀陣二 アウトドアコーディネーター/カフェ「雀家」オーナー

第6章「調理術」

1969年東京都生まれ神奈川県育ち。アウトドアメーカー各社と共同でキャンプ道具の開発を手がけるアウトドアコーディネーターにして、神奈川県三浦市でカフェ「雀家」も経営。小学3年生で料理に開眼し、青年期はレストランで腕を磨く傍らアウトドアに傾倒。アラスカの荒野を漕ぐ旅を通じて実戦的なアウトドア料理の技術を確立した。『焚き火料理の本』(山と溪谷社)『キャンプ料理の王様』(枻出版社)など著書多数。無人地帯の旅には四年前から参加。小雀の参加により、刺身と米しかなかった食事に革命が起きたが、本人はエスカレートする仲間の要求に困っている。

 

矢島慎一 フォトグラファー

担当=撮影/グラフィック

1975年埼玉県秩父市生まれ。荒川上流で産湯を使い、自然児としてすくすくと成長。夏休みは魚突き、冬は野鳥観察をして過ごす。ハレー彗星の接近をきっかけに写真を撮り始め、1997年にキヤノン写真新世紀グランプリを受賞。写真家としてのキャリアをスタートする。現在はアウトドア雑誌や登山雑誌を中心に活動し、著書に『カメラをつれて山歩に行こう!』(技術評論社)がある。「生半可な気持ちで無人地帯の写真は撮れない」と頑なに撮影してこなかったが、最近、釣りがしたかっただけだと判明。本書の製作時には、旅の写真を撮ってこなかったことを仲間から叱られた。