みちのく潮風トレイル・データブックと旅の準備

データブックで自由になれること、準備をすべきこと

みちのく潮風トレイル(MCT)のデータブックが発売された。
一般的にデータブックには、トレイル上に現れる頂上や川、道路や便益施設などがスタート地点からの積算距離とともに書かれている。
ハイカーはデータブックを読み取って、次に何が現れるかを把握し、当面のスケジュールを立てながら歩く。闇雲に立てていると食料などが底をつきて辛い目に合うから、寝る前には次の日の行程をチェックして「R(レストラン)を見つけた!」と喜び、早起きするものだ。
また、町に着いたときも要チェック。次の補給地点まで何キロあるのか、何日かかるのかを計算してから買い物をしないと、不安のあまりに買いすぎてしまう。そして余るかと油断すると食べすぎてしまい、結局足らなくなるのだ。わたしは間抜けか。
いままでの環境省の地図では、尺取り虫のように指を開いて測っていくものだから、おおよそ「20キロ先に売店ね」くらいにしか把握ができない。くねくねとカーブが続いていたりする登山道が現れると正確な距離など分からず、閉店時間の早いお店などは間際に駆け込み、「40秒で買い物しな!」なんてことになる。金貨を握りしめて帰ってきたのにひどい扱いである。
データブックさえあれば、山道であろうと二点間の距離は測れるようになった。さよならグーグルマップ。
ただし、データブックに書いてない情報は多い。あくまでもトレイル上の最低限の便益施設が書かれているため、商業施設がどの程度あるのか行ってみないと分からない。
アパラチアントレイルの場合、G(groceries)と書いていて勇んで行ってみてら、ガソリンスタンドの脇にあるお店だったり、お土産屋さんだったりして、「またマッシュポテトかぁ」と、がっかりしてしまう。
MCTの場合は、SがStoreをさす。ストアの規模が不明だ。グーグルマップで店舗の様子を見てみると「〇〇スーパー」と書かれている小さな商店がチラチラ出てくる。パンやスナックを買うならいいけど、まとまった食料補給をするなら予め調べておいた方が良い。マイヤとかイオン、ヨークの文字を見つけると胸が高鳴る。
〈バウンスボックスに使える情報も〉
日本のトレイルらしいのは、コンビニの店名まで書いてあることだ。MCTハイカーにとって、飽きるくらいにお世話になるコンビニエンスストア。店名がわかれば、とっさに必要になったものなど、コンビニ預かりで送ることができる(はず)。
もちろん郵便局にも局名が書いてあり、自分の使わない荷物があれば
ゆうパックで先の郵便局に送りつつ歩く「バウンスボックス」もなんとかできる。
郵便局は預かり日数が10日間。コンビニは三日間だそうで、これまたガイドブックを睨んではしっかりと行程を練らないと、着いたときには荷物がリターンされていたりするので要注意(本当に戻される)。
ひょっとしたら「〇月〇日に受け取ります」と書いておけば、大目に見てくれるかもしれない。アメリカのメジャーなトレイル沿いの郵便局は意地悪でない限り、保管してくれる。時々、意地悪な郵便局がいて、すぐに送り返されちゃうんけどね。
〈ハイカーが寄りがちな施設〉
「広場あり」や「東屋(Gazebo)」もありがたい情報。ガイドブックにはあるが、普通のデータブックにない情報。
温泉マーク♨も素敵。値段と営業日が書いてあったら良いのにとかなんとか、ムニャムニャ……。
〈積算距離と地点〉
個人的には、マイレージ(積算距離)が左端にあるのになれてしまっていて、便益施設とマイレージを結びつけるのに難儀する。
137.0 Firewarden's cabin
「137マイル地点の監視塔」などのように、マイレージ+施設名称として使っていたからだ。
逆方向に歩く人は、右端に書かれてしまうから、どっちでもいいのかもしれない。
※ATガイドブックは、NoBo用と向きを変えたSobo用の2種類がでている。あちらは数千人が歩くから両方を印刷できるのであって、みちのく潮風トレイルもそのくらい増えたら、出てくれるに違いない。かもしれない。だといいな。
ちなみに、MCTデータブックはSoBo基準。Noboにとっては、上に向かっていくのが少し不思議。
「キャンプ場、要予約」とあってもメールアドレスや電話番号を期待してはいけない。それはガイドブックの役割であって、自分で調べなければならない。
「旅というのは自分で調べてこそ、深いものになる。甘えるな」と言われているようだ。
海外のトレイルもスマホのアプリ情報をなぞって歩くことが普通になりつつあるのだけれど、そんなのはRPGのガイド本を見て悪の親玉を倒しに行くようなもので、本来の楽しみを奪う行為であり、いささかもったいない。
町の人々にしつこく声を掛けて、情報を引き出さないと、王さまには会えないどころか、町からも一歩も外には出られないものと思え、勇者よ。
残念ながら、町の人に声をかけるのも憚られるご時世。無理ゲーの予感。とほほ。
それにしても、みちのく潮風トレイルは市街地に道標が少ないせいで、地図やらスマホに頼ることが多い。データブックでスマホ離れができるようになったのはありがたい。
なによりわたしはスマホを使わないで歩きたいのだ。
〈Cut it off〉
さあ、データブックと言えども切ります、裁ちます、バラします。
ハイカーズデポがウルトラライトのお店だとお忘れか。
残りの工程は釜石から八戸の約400キロ。すでに歩いた1000キロのうち南600キロは持っていかなくてもよい。表紙も裏表紙も要らない。解説も要らない。周辺の余白だって要らない。
お家においておけば、置いていった分だけ軽くなるのだ。
MCTデータブックはなんと140gが40gになってしまった。切るもんでである。
100gの削減効果は約一万円と偉い人が言っていた。なんとお得なのでしょう。
地図を拡大コピーしたものが240gと重いのが気になる。釜石から山田町辺りまでを持って、残りは山田町の郵便局へバウンス・レターパックだな。
本当に受け取れるのかしらね。ひゃーこわい。