2010年代前半の日本のMYOG第一世代に感じていた「狂気」と「自分本位」を久々に感じる2ブランド。Blue traverse gearと45°の製品説明会を開催します。ともに日本の長距離自然歩道や旧街道などの「歩き旅」に自らのルーツをもっているブランドです。簡潔な構造で独創的な効果をうみだす工夫をぜひご覧ください。
MYOGとその狂気
コロナ禍以前、ハイカーズデポ では年に1-2回、Hiker's Partyというハイカーの集まりを開催していました。毎回異なるテーマでハイカー同士がリアルに語り合う光景はいつみても刺激的でした。
そのハイカーズパーティーの7回目(2014年3月)のテーマが「MYOG」。ULハイキングを構成する重要な要素が自作(Make Your Own Gear)です。自分が作って自分が使う道具だからこそ誰にも忖度はいりません。だからマスプロにはできない思い切ったアイデアがうまれるのです。このMYOGをテーマにしたハイカーズパーティーでは様々なギアが持ち込まれました。奇想天外かつ独創的なアイデアをプレゼンするギアビルダー達の誇らしげな顔はどこか狂気をはらんでいました。OgawandとWanderlust Equipmentも当時はそんな個人のギアビルダー。参加者から多くの支持を集め製品化にふみきっていったこの2ブランドもパーティーでの発表時は「そのアイデアがあったか?」「そこまでやるの?」「それ意味あるの?」という周囲のヒソヒソ声に包まれていました。そのうえで参加者の視線は釘付けなのです。そうです。作り手の狂気が透けて見えるMYOGが一番面白いのです。
ウケるウケない、売れる売れないは大事な要素のひとつですが、ひとまず置いておきましょう。わたしが個人の作り手の製品に望んでいるものは「狂気」ともいえる「自分本位のこだわり」です。北米ULバックパックの第4世代ともいえるPa'lanteもJohn ZahorianとAndrew Bentzが一日に30〜40マイルも歩き続けるような自分たちのひたすら歩き続けるハイキングスタイルのために作った自分本位なバックパックに過ぎません。自分たちが使えればいい。承認欲求ではなく自己実現のためのモノづくりだから時代を牽引するチカラがあるのでしょう。
2022年、そんな目線でわたしが注目しているのが「Blue traverse gear」と「45°」です。
Blue traverse gear & 45° 製品説明会
イベント概要
日時)2023年3月11日(土)&12日(日) 12時〜18時
場所)ハイカーズデポ店舗前デッキスペース(東京都三鷹市下連雀4-15-33)
内容)
- Blue traverse gearのシェルター製品展示と説明
- 45°のバックパック製品展示と説明
参加費)無料
既にホームページを開設し製品の販売もおこなっている両者ですが、イベント当日に製品販売をするかどうかは未定となります。まずは製品に盛り込まれたアイデアやその意図について製作者からじっくりと話を聞いてみてはいかがでしょうか。そのうえで気に入ればぜひそこで製作者に直接オーダーしてください。
Blue traverse gear
東海自然歩道をホームトレイルとして毎週末のように歩いているハイカーのシェルター。日本の長距離自然歩道の旅で使えるシェルターをめざしてツェルトとツインピークシェルターをハイブリッド。ガイラインのトラス構造に独自性が光ります。設営面積以上の広々と感じられる居住空間を体感ください。日本のトレイルを旅する日本のハイカーのためのモノづくり。宮大工らしい「構造即意匠」が彼のテーマです。(ホームページ)
45°
ハイキングでもハイカーでもなく「walking trip」。自らを「徒歩旅行者」と名乗ります。ユースホステルを利用したり野宿を重ねて全国を歩いて旅する若者が多かった時代が日本にもありました。そのころの旅を気負わない空気感、旅にヒエラルキーを持ち込まない自由なスタンス。「長い時間歩き続けるための機能を簡潔簡素に実現すること」をめざしたバックパックづくり。(ホームページ)
どちらの製品もパッと見ただけでは「ああ、普通のツインピークシェルターね」「ああ、レイウェイの亜流ね」と思ってしまうのですが、簡潔な構造で独創的な効果をうみだす工夫が随所に凝らされています。それらは実物でぜひご確認ください。そして作り手の思いを聞いていただければと思います。