ハイカーズデポ16歳になりました

 

ハイカーズデポは9月5日で16歳をむかえることになりました。ありがとうございます。
16年間、その時々に多くのみなさまに支えていただきました。
みなさまのおかげで今があります。
毎年毎年、感謝を噛みしめる日です。

日々のおこないや、言葉で伝えていること、その根っこは16年間変わっていません。言葉が溢れて、見失いそうになるときもあるので、自らに言い聞かせる意味も込めて、こうした機会にあらためて伝えさせていただきます。

昨年15周年時にお伝えさせていただいた言葉の再掲です。
(数字、年号は改訂しています。)

 気がつけば16年。専門店として大事なことはすべて店頭でのお客様との対話から学ばせていただきました。

2008年9月5日、Hiker's Depotがはじまりました。

日本初のULハイキング専門店としてハイカーズデポが産声をあげたのは2008年9月5日。今年満16歳を迎えることができました。16年間、東京三鷹で駅からも遠い小さな実店舗を守ってこれたのはハイカーズデポに関わり、支えてくれた多くのみなさまのおかげです。自分自身の誕生日以上に感謝の思いを噛み締める一日です。本当にありがとうございます。

この16年で日本のハイキングシーンは大きく成長したことを実感しています。

ハイカーズデポとULハイクとロングハイク

16年前、商品を揃えられないスカスカの商品棚でハイカーズデポは開店を迎えました。当時はULハイクもロングハイクも日本で積極的に取り組んでいる人は数える程しかいないマイナーなスタイル。なによりハイキングやハイカーという言葉を前向きに使う人がいない時代でした。ULハイクの専門店に不安を覚え取引に躊躇するメーカーが多かったのもいまでは懐かしい思い出です。ロングハイクにしても手探りでした。いまでは海外ハイクの入門のように捉えられているJMT(ジョン・ミューア・トレイル)も自分がスルーハイクした2008年当時は日本人に限らずスルーで歩いているハイカーがほとんどいない状況。その当時の日本のハイキングシーンにおいてPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)、CDT(コンチネンタル・ディバイド・トレイル)、AT(アパラチアん・トレイル)というトリプルクラウンは具体的なイメージができない世界だったのです。

 ULの軽やかさや自由さをどう伝えようか、「軽いって、自由。」をハイキング初心者にも伝えたい。そんな想いが込められたキービジュアル。

波紋のように広がるハイカーの輪

それでも少しずつULハイクというスタイルや考え方に興味を持つお客様が増え、人の輪が広がり、仲間が増えていったことが何よりも嬉しいことでした。その仲間たちがショップをはじめ、モノづくりに邁進し、ブランドを立ち上げる。ロングハイクについても2012年を境にトリプルクラウンに足を運ぶハイカーが急増。2010年代後半はそうしたロングディスタンスハイカー自身の発信がハイカー同士の交流の場になっていきました。ULハイクやロングハイクのうねりが波紋のように広がり、今もさまざまな場所でまた新たな波が生まれています。
ハイキングは競技ではありません。勝ち負けもありません。ハイカー全員が主役です。今のハイキングシーンは代理店や著名人が作りだしたものではなく、トレイルを歩いている多くのハイカーによる「集合知」のようなものです。そんなハイキングシーンにグラスルーツカルチャーのような頼もしさを感じています。

 ハイカーがその時々の流れに身を任せながら、時には集まり、時にはひとりで。多種多彩なハイカーがそれぞれに発信し、様々な輪をつくりあげていることが今のハイキングシーンの最も素晴らしい点のひとつだと感じています。

これからも歩き続けるために

とはいえULハイクもロングハイクも日本に根付いて10年と少し。ハイカーとその道具は増えましたが、肝心の旅する場についてはどうでしょう。登山道やトレイルは完成したものとしてそこに存在するわけではありません。ハイキング文化の本場北米でも紆余曲折を経て、官民が連携し、ハイカーがボランティアとして参加しながらトレイルが維持されてきました。日本においても登山道やトレイルといった歩き旅を楽しむ場をいかに次世代に残していくかを考えるタイミングがくるはずです。
ハイカーズデポでは、ハイカーがこれからも歩き続けるための取り組みにも協力しています。

  • 日本のトレイルの象徴である信越トレイルのトレイル整備協力(2013〜)
  • 長距離自然歩道ではじめて全線管理に取り組んでいるみちのく潮風トレイルの物販や情報収集協力(2019〜)
  • 北アルプス雲ノ平において植生復元と登山道整備をおこなう雲ノ平トレイルクラブの立ち上げ協力(2021〜)

こうしたハイキングとトレイルとを支える活動を継続できるのはハイカーズデポスタッフの思いの強さによるところが大きいです。PCT2010クラスの長谷川晋は『LONG DISTANCE HIKING』(トレイルズ)を著したのち、一般社団法人トレイルブレイズハイキング研究所を立ち上げ、官民が連携した長距離自然歩道の継続的な管理運用のための活動に奔走しています。またAT2014クラスの勝俣隆はアメリカの国立公園制度やトレイル管理団体や整備制度の専門家として前述の雲ノ平トレイルクラブ、山岳歩道協会などへ協力しています。

 信越トレイルのトレイル整備ボランティア活動は今年で10年目になりました。難しいことはできなくても、今できる簡単なことをとにかく続けようという想いではじめた活動です。これからも歩き続けるためのハイカーズデポの活動の原点です。
 みちのく潮風トレイル全線開通にむけて、海外トレイルでは一般的だったデータブックの作成に関わったことが、官民連携でのトレイルの管理、維持、活用という活動に繋がっていきます。全国二万七千キロの長距離自然歩道の再整備、再活用への協力にも繋げていきたいものです。
 2021年から雲ノ平山荘とはじめた登山道整備ボランティアプログラムはより継続的な活動のための「雲ノ平トレイルクラブ」設立という新しい段階に入りました。保護と利用の均衡をとるべく、植生復元と道の整備管理を目指す組織の応援もお願いいたします。

これからも変わらず

ハイカーズデポは東京三鷹の小さなハイキング専門店です。日々店頭でお客様と向き合い、お問い合わせに応えていく。それはこれからも決して変わることはありません。小さくても専門店としての信頼をこれから先も紡いでいくのが本筋です。しかしハイカーズデポとしての活動の中で、様々な輪が生まれ広がり、スタッフの想いや活動が新たな芽を育んでもいます。日本のハイキングシーンの躍進を専門店としてのささやかな矜持と大きな感謝をもって16年間見届けてこれました。これからも変わらずに東京三鷹の実店舗でみなさんと出会えることを楽しみに店を営んでいきたいと思います。

17年目も何とぞよろしくお願い申し上げます。

 16年間歩き続けてくれている「彼」にも感謝ですね。まだまだ歩いてもらいます。

Hiker's Depot
代表 土屋智哉