タープ設営バリエーション その2|ソロタープ ベース

どんなツェルトよりどんなテントよりミニマムなシェルター。それが一人用のソロタープ。ソロタープにはソロタープのお作法があります。ベーシックな張り方は大型タープのそれとは異なるのです。そんなソロタープの張り方バリエーションのご紹介。

ソロタープの張り方バリエーションについて

短辺は約150センチ、長辺は約240センチとどのメーカーも規格のように決まっているソロ用タープ。理由は生地が織られる幅に由来しています。無駄が少なく作ったのが始まりとはいえ、それが定番化してしまうということは、一人がミニマムに過ごすには十分なサイズであることの証明のようにも思います。

そのソロタープですが、キャンプで一般的に見られる小屋掛けにするとちょっと小さすぎるように感じるはずです。ソロタープにはソロタープのお作法があります。ベーシックな張り方は大型タープのそれとは異なるのです。以下で順にご紹介していきたいと思います。


〈沢中での一幕〉

 

〈山の景色の良い場所にての一幕〉

風を受けやすい谷側を低くして張るのはタープだけでなく、幕営のセオリー。


張り方について

A、基本形 (写真/下)

これがソロタープの張り方としてはもっともベーシックと言えるでしょう。タープ中央部にリフターがあれば内部空間をしっかりと広げることも可能になります。写真ではTerra Nova/Tarp Shelter 1を使っていますが、ほとんどのソロタープに共通していると思います。

a、どちらか一辺の長辺を固定します。この時、長辺を地面にベタ張りすれば耐候耐風の姿勢になりますが、天井高は低くなります。5〜10センチ地面からの距離をとれば居住性通気性ともに上がりますが、雨風の吹き込みは多くなります。

b、反対側の長辺のセンター(中央)にポールを立ててから、ラインを地面に固定します。この時点で手を離しても立つようになります。ポールの高さで奥行きと両サイド(短辺)の空き具合が変わりますので、天候や周辺状況と照らし合わせてポールの高さを決めてください。参考の高さとしては110センチ以上120センチ以下です。

c、固定されていない両側の角をタープ全体にテンションがかかるように調整しながら張り出します。

 

B、片翼形(写真/下)

基本形でセンターに立てたポールを左右どちらかに立て替えるだけです。リフターの張り出す向きもそれに合わせて変え、タープ全体にテンションがかかるように調整します。風向きが急に変わった時や周辺状況によっての簡単なバリエーションの一つです。

これ以外にもちょっとした工夫で張り方を変えられます。次に紹介するのはタープ単体での使用ではなく、別の道具との組み合わせの紹介です。

 

C、ツェルトの屋根として:森のハイカースタイル

ツェルトの屋根にタープを使う。わかりやすいアイデアで簡単にできそうに思うのですが、意外や簡単にはできないのです。専用で作ったものではないため、ツェルトとタープの長さは異なります。それが原因で、合いそうで合わないのです。

できない理由は、

  1. どちらもキレイに張ろうと思うとツェルトとタープそれぞれのポールとラインが必要になります。そうすると道具が増えて煩わしくなります。
  2. ツェルトはメインラインの張り出しに40度近い角度がないときれいに張れません。その角度をタープの長さに合わせてやろうとするとポールの長さがとても長くなりますし、ポールとツェルトが離れるほどにテンションが不安定になります。
  3. ツェルトに合わせてタープを張るのは一番簡単ですが、短辺側にたるみが大きくでてしまうし、ただの雨への耐候性を高くするための屋根だけ、というのではタープとツェルトを合わせる理由として弱いところがあります。

組み合わせとして大きな魅力になるために必要なのは「耐候性アップとちょっとした庇(ひさし)、前室のようなものを作れれば一石二鳥」。これならば合わせて持っていく意味も出てくるというものです。

  1. 下記写真では、ポールの最大高をタープの高さにしています。
  2. まず片側はタープとポールの距離がギリギリ狭くなるように設定します。今回はあえて結びで固定するようにしましたが、タープシェルター1の場合はグロメットがあるので、トレッキングポールを逆さにすれば石突きに挿すだけで良いので簡単です。グロメットを使えば写真よりももっとタープとポールが近くなります。この時タープを引いた時にポールにかかる力を分散するために、タープからツェルトのメインラインに自在結びやプルージックなどで結合させておくと良いでしょう。
  3. 反対側へ回り、ポールにタープを被せながらツェルトのメインラインとタープラインを結合させます。この時タープポールのように細かったり、ポールの石突きを上向きにしているとタープが破れます。石突きカバーや布など補強するのでも良いですが、トレッキングポールであればできるだけグリップを上に向けた方が良いでしょう。タープとポールグリップが滑るようなら滑り止めになるようなものを噛ませると良いです。
  4. 次に全体にバランス良くテンションがかかるように調整しながら張っていきます。
  5. 最後に短辺のツェルト入り口より張り出した部分にたるみがでるので、安全ピンなどを使ってテンションを整えてあげるのも良いでしょう。

この張り方の場合、タープの耐風性は低いと言えます。ツェルトとの隙間は大きいので風が抜けていく可能性もありますが、風向きによっては巻き上げられるので、その場合ツェルトにも大きく影響するでしょう。注意が必要です。

ですが、これだけで雨に対しての安心感は大きく変わります。風の影響を比較的受けにくい森の中や低地でのキャンプの場合に考えてみると面白い一つの提案です。

 

C、ハンモックの屋根として

ハンモックと合わせる場合でもこのタープは“ギリギリ”ミニマムなサイズと言えます。正直言えばもう少し長さが欲しい。ハンモックは、木から木の長さで言えば4m以上ありますので、到底長さが足りませんが、ハンモック本体は湾曲するということもあり、230〜240cmくらいを見ておけばよいでしょう。そう考えればソロ用タープの対角(バイアス)の長さがあれば十分カバーするということです。しかし、これは計算上であって実際はそんなにうまくいきません。あ〜残念。というのもやっぱり面積が小さいからです。百聞は一見に如かずで、やってみるとわかりますが両サイドの隙間というか開いている空間の大きいこと。

まだ諦めないでください。カバー率の小ささはタープとハンモック本体が離れているから生じています。ですので、できるだけタープをハンモックに近づけて欲しいのです。すると対角線に近くなるところは面積も大きいエリアですので、ハンモックをしっかりと覆っていくのが分かると思います。

これで雨風に対して十分、なんて言うつもりはサラサラありません!例えばロングハイキングなどの日数が長いとき、雨でも積極的にハンモックを使いたいハンモックギークにとってはもう少し大きめなタープの方が適しているでしょう。

しかし、そもそもハンモックをそこまで頑張って使うつもりはないよ、せいぜい一泊。晴れた時を狙って楽しみに行こう。冬は冬なりの遊び方をする。そんなハイカーにとっては大きなタープなんて不要です。せいぜい夜露を防いだり、多少の風を防いだり、影を作れれば十分。それにはこのサイズのタープで良いわけです。

また、どんなにミニマムにと思ってもハンモックはそれ単体では雨風が防げないので、結局はタープと合わせたシステム化が必要で、重くなったり道具が増えて煩わしくなったりする傾向にあります。でもだからこそ、少しでもミニマムなハンモックシステムに魅力を感じるハイカーも少なくないと思います。

Expedのトラベルライトハンモック、ENOのサブ6、Humming Bird Hammockのシングルやシングル+には、大型で耐候性の高いタープは似合わない!そう思うのは筆者の偏った意見ですので、どうぞ参考にもあまりなさらないようご注意くださいませ。

 

あとは、経験と実践の中でどうぞ楽しみながら自分らしい使い方を見つけてもらえればと思います。ようこそタープの楽しい世界へ。


・もう少し大きめのタープの張り方はこちら。タープ設営バリエーション その1|CT Tarp ベース

・超軽量ソロタープ Terra Nova/Tarp Shelter 1

・これぞハイカータープ Trail Bum/CT Tarp