チェーンスパイクから一歩進んでみたいハイカーにこそ試してほしい。前爪を積極的に使うハードな「登り」ではなく、雪山をのんびり自由に「歩く」ための10本爪ハイキングクランポン。技術に応じて可能性も広がるスタンダードモデル。
仕様
- 重量
- 636 g
本体:598g
Snow Release Skin : 38g - スパイク詳細
- 材質:4130 Chromoly Steel
本数:10 spikes(10本爪)
長さ:3/4-inch spike length(爪長 19mm) - サイズ
- 対応サイズ
・ハイキングシューズ、ブーツなど:22〜27cm程 - カラー
- Black
チェーンスパイクから一歩先
歩くためのクランポン
『K10 Hiking Crampon』
歩行用のハイキングクランポンっていったい何?
他の10-12本爪クランポンと何が違うの?
まずはそうした理由を整理していきましょう。
【ディテールの魅力】
・下向きの前爪
登山用の爪が前を向いたものと違い歩行に特化して前爪が下を向いています。爪が前を向いていても慣れれば歩ける、というのも真実ですが慣れたとしても爪が 前向きに出ていると、大き過ぎる靴を履いているときのようにつまずきやすくなります。ですから、爪が下向きなだけで歩きやすくなります。その代わり雪面を 蹴り込んで『登る』ことには不向きになります。
・スパイクの長さ
通常のクランポンと比較するとスパイク(爪)が短めなのも特長です。スパイクが長ければその分”下駄”の様に実際の足の底よりも地面が遠くなります。その 上接地面も少ないですから、確実にバランスが取りにくくなるのです。長すぎず短すぎないスパイクは、伝統的なものから変化の少ない従来の縦走用クランポン よりも歩くことを重視し考えた結果なのです。
・Quick-Fit binding system(クイックフィットバインディングシステム)
K10のバインディングシステムは、足先と足首部分をストラップひとつで簡単に調整でき、脱着はバックルの取り外しだけです。それらのストラップに 引っ張られるように、幅の広いプレート部分が足を押さえ込みフィットします。どんな靴にでも合わせられるようクランポンのシャーシ部分は広めのつくりになっています。手間を少なく装着できるメリットはありますが、バックルに負荷がかかるような激しい登山、登攀には向きません。逆の言い方をすれば、スノーハイキングに焦点をあてたクランポンだからこそ、ストラップシステムの軽量化&簡易化ができていると言えます。
雪上でのハイキングやランニングに焦点をあてたクランポンだからこそ、歩くにはもちろん、走るのに使う人もアメリカでは少なからずいます。前爪が下を向いているから走れてしまうくらいつまずきにくく、幅広いシャーシと包み込むようなバックルシステムが高い安定性を生み出しているのです。
・LeafSpring® Flex Bar technology
走れてしまう大きな理由としてクランポンの前後を繋いでいるセンターバーがとても柔軟であることを忘れてはいけません。登攀にも使える前爪が前を向いているクランポンのセンターバーは体重や踏む力を集約させて前爪に伝えるために硬く作ら れています。そのため柔軟性のあるハイキングシューズや、スキーでもつま先の曲がるテレマークブーツとは目的が異なるため相性がよくありませんでした。しかしKahtoolaのセンターバー は柔軟性に優れているので歩行目的のどんな靴でも使用できます。この柔軟性のあるセンターバーにより歩くだけでなく走れるクランポンになっているのです。
このフレックスバーにおいてはKhatoolaは元祖と言えます。ずいぶん前の話ですが一時期ブラックダイアモンドのクランポンのフレックスバーはKahtoolaのものが採用されていたのです。この高い信頼性も長くKhatoolaというメーカーが支持される理由にもなっているのでしょう。
クランポンの材質
クランポンの要である本体とスパイクなどには、強度のある4130 Chromoly Steel(一般言う鉄を強く合金にした鋼)を使用しています。クロモリブデン鋼は軽さと強度のバランスに優れています。K10の実測重量は636gと、10本爪以上のクランポンとしては非常に軽いモデルといえます。爪の長さ は3/4インチ(約1.9センチ)で、短いのが特徴です。爪の絶妙な短さはクランポン初心者のハイカーも歩きやすいはずです。森林限界上で雪が吹き飛んでしまった凍った斜面には適しませんが、踏み固められたトレースや夏道での使用、いわゆるスノーハイキングにおいてはトラク ション性能にまったく問題はございません。
メリット と デメリット
ハイキングクランポンとしてのメリットは以下のようになります。
- 簡易アイゼンやスノースパイクと明確に機能を分けて考えられる
- 氷や岩がミックスする状況でも気兼ねせずに使える。
- トラクション性に優れる。
- 従来のスチール製クランポンより軽量化できる。
- サイズ調節が簡単で、フィット感が良い
注意すべき唯一のポイントは強みでもあるバインディングに関することです。
- バインディングがかさ張り、収納しづらい
- バインディングの強度に限界がある
注意点が限定されることは、ユーザー側として喜ばしいことでしょう。
前爪を使うようなハードな“登り”ではないが、積極的に雪山で“歩き”を楽しみたいハイカー。
簡易アイゼンから一歩進みたいけれど、本格的なクランポンに は気後れしてしまうハイカー。
シンプルだけど、技術に応じて可能性も広がるハイキングクランポンのスタンダード。
雪が降りはめた初冬の近郊の山。
積雪が多くても冬季にトレースが途切れない森林限界下の雪山。
雪面がしまりトレースも落ち着いた残雪の稜線。
雪山を『歩く』ハイカーの次なるステップとして検討して欲しいクランポンです。