アメリカを発祥とするロングハイキングカルチャー、その2010年代以降のシーンを象徴するシューズ。踵まわりの安定感を軸に進化を続けるまさにハイキングスタンダード。その第8世代が登場。
仕様
- 重量
- 518 g / 7.0インチ ペア
- アッパー
- Quick-Dry Air Mesh
- ミッドソール
- ALtra EGO™︎ form
- アウトソール
- MaxTrac™︎ Rubber
- ソールの高さ / ドロップ差
- 高さ:25mm
ドロップ差:0mm - カラー
- Dusty Olive
ALTRAのフラッグシップ
長距離ハイカーのスタンダード
クッション+ダイレクト+スタビリティ
更なる完成度へ
ブランド誕生の地、ユタ州の山から命名されたLone Peak(ローンピーク)は2011年のALTRA(アルトラ)誕生と同時に産まれたモデル。同ブランドのトレイルランニングカテゴリーにおけるスタンダードであると同時にフラッグシップといえるモデルです。inov8 や new balanceといった先行ブランドで謳われてきた低いドロップ差やフォアフットといったスタイルを加速度的にシーンに定着させた立役者が アルトラです。いまや北米のハイカーやトレイルランナーにとってスタンダートとなったローンピークは、2010年代から2020年代にかけてのハイキング&トレイルランニングを象徴するシューズです。
ローンピーク8の概要
トレイルランニングシューズとしてのバランスが向上し、完成度が高くなったローンピーク5以降、「安定感」をキーワードとしてさらに進化を続けているローンピークシリーズ。バージョン8においてもその方向性は変わりません。
できるだけシームレスにしたアッパーは砂の入りにくさと高い通気性、水抜けや乾燥性の高さを持っています。そして広々としたトゥーボックス。前後の反りがおさえられたフラットな履き心地と高いクッション性、地面へのダイレクト感と素早い反応、これらが高いレベルで融合したミッドソール「Altra EGO™ foam」の採用。こうした特徴はローンピークの核として第8世代にもしっかりと引き継がれています。
各部の詳細
アッパー上部
アルトラオリジナルであり、見た目でわかる大きな特徴がFoot Shape™(フットシェイプ)。指先をリラックスさせ、かつそれぞれの指にしっかりと力を込めて大地を踏む感覚を引き出してくれる幅広のトゥーボックス。裸足で生活し、山野を移動する先住民族の足はそのほとんどが指先が大きく開き幅広の足となっています。人間本来の力で歩くならば、こうした型が理想的だとの考えから、足を締め付けない自由な足型はローンピークに限らずアルトラの大きな特徴になっています。
アウトソール
MaxTrac™ Rubberといったオリジナルのラバー素材。特徴的な矢印形状のラグパターンを前後に配したものになっています。ローンピークのトラクションは必要にして十分なものとして安心いただけるはずです。またロッカーが強すぎずフラットな接地感もローンピークで継承されてきた特徴です。
ミッドソール
アルトラオリジナルのミッドソール「Altra EGO™ foam」は重要な地面へのダイレクト感にくわえ、高い衝撃吸収性を併せ持っています。しかし柔らかすぎるということはなく、吸収性とダイレクト感のどちらかに偏ることなくカチッとした履き心地に仕上がっています。リジッド感を感じるミッドソールです。
ローンピーク8気になる点は、、、
初代から全てのローンピークを履き込み、様々なトレイルを歩いてきたスタッフ長谷川が、ローンピーク8(以降「8」)も130kmのテストをしてきました。以下はそのレビューです。
『ずっと指摘しているローンピークの欠点といえばヒールカップ内側の素材が弱いことです。毎回話題にあがります。こればかりは癖もあると思いますので、個人的な指標です。ローンピーク7(以降「7」)は、500km以上の使用でも唯一穴が開きませんでした。表層の生地は擦り切れてしまいましたが、さらに内側にある生地が穴あきを防いでくれました。それから必ずと言って良いほど内部のクッション材がずれて薄くなっていましたが、それも起きませんでした。8でもこの部分の変更は見られないので期待大です。
アウトソールの減りの早さはいつも通りです。グリップ性能との引き換えの部分ですから、評価は難しいですが、あらゆる路面、あらゆる状況で滑りにくいので、基本は良い点として考えています。
7ではシューレースの滑りが悪く結びにくいという点がありましたが、8では改善されています。また7はシューレースが短かったのですが、その点も8では改善されています。
新たな課題はアッパー素材です。7ではリップストップがグリッドになり、さらに丈夫になっていました。しかし、密度が高いのか、やや蒸れを感じやすいように思っていました。8では6と見た目は同様の縦横リップストップになりました。通気性はさておき、少し弱いように思います。気がついたら少し切れていました。広がりはしないのでこの間放置して様子を見ようと思います。これに関しては、運もありますし、やはり通気性や軽さとのバランスなので、個人的には改良だと考えています。
7から大きな変更となった、安定性を高めるための数々の工夫については、8でも引き継がれています。基本的な変更はほぼ無いです。なので新品の状態では、履き慣れた7より固く感じました。ローンピーク6以前の柔らかな履き心地は相変わらず好きですが、硬い路面、柔らかい路面を問わず、長距離を安定して歩けるようになったのは確かです。ミッドソールの工夫によって横振れを大幅に抑えてくれています。これも7から引き継いだ良点だと思います。
どんなにしっかりとしても、ヒールストライクのシューズでは無いのは、履いていれば分かってきます。8にも引き継がれた安定性ある構造は、長距離、長時間歩くハイカーにはありがたいです。また、ドロップ差(踵の高さ)があるシューズは、その高さが少なくても、やはりヒールストライクを誘発してしまうので、足首、膝や腰へのインパクトが大きいです。昨年のPCTスルーハイカーに聞いた話ですが、シューズをいくつか試したけど、ローンピークが歩いていて一番トラブルが少なかったそうです。ロングディスタンスハイカーに愛され続けているのはこうしたハイカーたちの口コミによる信頼感からではないでしょうか。
個人の好みの話になりますが、ゼロシューズなどのベアフット系シューズは足底筋を鍛える上でも、気持ちよさという点でも今後も履き続けます。しかし6以降の完成度があがったローンピークの安定感は長距離ハイキングの安心感を支えるものとしてなくてはならない。もうそれ以前には戻れない信頼感のシューズです。』
ハイカーたちからの信頼は12年間かけて積み上げてきたもの。その信頼はそう簡単には揺るぎません。7からの変化は軽微ですが、いまでも着実な進化を続けていることを実感しています。
ローンピークの変遷
人間が本来もつ自然姿勢、自然な運動フォームに導くための「ゼロドロップ」はALTRAシューズに共通する最大の特色ですが、トレイルランニングシューズであるローンピークの個性は何なのか。それを理解するために8世代にわたるその歴史を紐解いてみましょう。
第一世代
・1.0【Origin】薄めでシンプルなソールユニット 柔らかいアッパー
・1.5【Tightly】薄めでシンプルなソールユニット タイトなアッパー
第二世代
・2.0【Wide】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット 伸びの少ないアッパー
・2.5【Stretch】しっかりした厚みと広さをもつソールユニット ストレッチアッパー
第三世代
・3.0【Moderate】ロッカーと腰のあるソールユニット 適度なバランスのアッパー
・3.5【Durability】ロッカーと腰のあるソールユニット プロテクション重視のアッパー
第四世代
・4.0【Softy】腰がありフラットなソールユニット 柔らかく通気性高いアッパー
・4.5【Moderate】腰がありフラットなソールユニット 通気性高くバランスのとれたアッパー
第五世代
・5.0【Cushion】やわらかな接地感のソールユニット 通気性高くバランスのとれたアッパー
第六世代
・6【Stability】第五世代の完成度はそのままに、安定感という更なる強みが加わりました
第七世代
・7【fine tune】完成度のさらなる追求。踵まわりの安定感を軸に細部の微調整
第八世代
・8【 fine tune 2.0 】
ローンピークはALTRAにとって創業時から続くフラッグシップモデルのひとつですが、アンバサダーやカスタマーのフィードバックから実験的な改良を重ねてきました。そのため、各世代毎の個性が顕著なことが特徴でした。
ファーストモデル以降のローンピーク変遷を大枠でとらえると上記のようにハイカーズデポ では理解しています。第一世代から第二世代に至る過程はシューズトレンドが「マックスクッション」に傾倒するのと歩調をあわせています。その影響もあってか、第二世代以降、やや厚みのある柔らかいアッパーをもつ軽くフレキシブルなシューズになりました。
このようにローンピークは世代毎にソールとアッパーとのバランスが個性的なだけでなく、シリーズ全体を通じてソールの力強さに比べ、アッパーのおさえこみに物足りなさを感じる傾向がありました。ネイティブアメリカンのモカシンシューズを彷彿とさせるアッパーに頼らない構造はローンピークの特徴ともいえますが、使う人を選んでしまう、評価がおおきくわかれることも事実でした。こうした個性的なアッパーとソールのバランスが改善され、シューズとしての一体感を誰もが楽しめるようになったのが6年目の第三世代からと言えます。より良い可能性を模索した上で履き手を選ぶシューズから、長距離トレイルに代表される様々なコンディションに対応できるバランス感の良いシューズへ、そのひとつの方向性を指し示したのが第四世代です。第四世代は、ソールのフラット感は初代を彷彿とさせ、アッパーの雰囲気は第二世代を思い出す。そんな世代間融合をも感じさせるシューズでした。そして第五世代。世代間融合という方向性は第四世代と同じですが、オリジナルミッドソール「Altra EGO™ foam」により、第五世代ならではの接地感を手に入れました。この第五世代からはソールの特徴、アッパーの特徴という捉え方よりも、シューズ全体の完成度が一段階あがった感覚があります。第六世代は第五世代で手に入れたシューズとしてのトータルな完成度を継続的に発展させています。さらに「安定感」という強みが加えられました。そして第七世代ではシューズとしての完成度を細部にわたってさらに追求しています。この細部の微調整とでもいえる方向性はしばらく替わらないのではないでしょうか。それだけALTRAとしてめざすべき完成形が近づいているのかもしれません。多くの方に足入れをおすすめできるハイキングシーン、トレイルランニングシーンのまさにスタンダードシューズです。
長距離ハイカー愛され続ける理由をぜひ体感ください。
ローンピークからは目が離せません