2014年から続くハイカーズデポ別注バックパック。パック本体、ポケット、ショルダーベルトのみというULバックパックの王道ともいえるシンプルな構造にこそ、このバックパックの本質があります。
仕様
重量:340g
容量:20〜35L(本体+ポケット)
素材:ECOPAK EXP200
デイハイクはもちろん普段使いにもという欲張りなハイカーから、テント泊を楽しみたいハイカーにまで幅広く対応するサイズ感が特徴です。ジマービルトにデザインを渡して制作を依頼したのは2014年。こんなロングセラーモデルになるなんて、当時は思いもしませんでした。しかし最初にサンプルを見たときの興奮やトキメキは覚えています。シンプルであるということにフォーカスをあてたハイカーズデポのULバックパック。シンプルなULバックパックが少なくなってきた今だからこそ、あらためてオリジナリティを感じられるのではないでしょうか。
細めでスッキリとしたシンプルなデザインは、古いULバックパックを連想させます。そのスタンダードな作りの中に製作者であるクリスの創意工夫として、トップストラップにバンジーコードを用いた点があります。一般的なULバックパックは10〜20mmのナイロンテープを使うものが多く、コードを使うものがあっても伸縮しないものばかりです。それをバンジーコード、しかも前部メッシュポケットと連動する作りにしているのは、傍から見れば僅かなことでも私からすると目から鱗でした。
「ウルトラライトバックパックにオリジナルは無い」とゴッサマーギアの創設者グレン・ヴァンペスキが言ったように、シンプルなものだけになかなか新しい発見も少ないジャンルにおいて、まだ新しい発見があるのだと思わせてくれたのがパイカパックです。



容量
このパイカパックの本体容量は20〜30L。これにポケットの容量も含めれば、最大約35Lとなります。この容量拡張性の高さが日帰りハイキングからテント泊までの幅広い用途を可能とします。
下の写真はその例です。背負っているモデルは175センチ74kgのがっちり体型。拡張具合が分かるのではないでしょうか。ポケット外側にバンジーコードを付けることでマットなどの外付けもできるので、オーバーナイトハイキングも十分に可能です。バックパックの外側にあれこれ付けた状態は美しくないし、木々などに引っ掛かりやすくなるので推奨はしませんが、ある意味ロングトレイルを歩くハイカーらしい姿とも言えるでしょう。






ポケット
外側のメッシュポケットは両サイドからコードを引くと上部が締まるため、口から物が落ちるのを防ぐだけでなく、スッキリと本体に沿ってくれるため邪魔になりません。全開にすればテントも収納できてしまうほどなので、ミニマリストハイカーなら夏のオーバーナイトハイキングを楽しめる大きさといえるしょう。ポケットはトップストラップと連動しているため、上を止めれば自然とメッシュポケットが締まります。そしてコードを引けばポケット底部が引き上げられるのでポケット内の荷物も安定します。



付属バンジーコードの使い方
パイカパックにはバンジーコード(ゴム紐)が付属しています。使い方は以下の2通り。勿論、使わないという選択肢もあります。個人的にはそれがパイカパックに1番似合っている気もします。
ポケット内側に配置する:バックパック本体内の荷物を抑え付ける効果があり、ポケット部には影響しません。トレッキングポール・テントポールなどの長尺物や飲料ボトルなどを留めておきたい場合に良いでしょう。




ポケット外側に配置する:この取り付け方をした場合は、バックパック本体とポケット両方の荷物を抑え付ける効果があります。また本体・ポケットに入りきらない物を外付けする際にも役立ちます。写真では付属のバンジーコード以外に樹脂パーツを付け足しています。これを使うとコードに挟んでいる物の脱着が容易になり、かつポケット内の荷物の出し入れも簡単になります。樹脂パーツは店頭にて販売していますが、ミニカラビナなどでも代用できます。コードを中央で交差させてパーツを用いず取り付けることも可能です。




ウエストベルト
パイカにはウエストベルトが付属していません。同じような仕様はトレイルバムのバマーや山と道のミニ(付属のみで初期取り付けなし)など、30L前後のULバックパックに多く見られます。これらに共通して言えるのは、「日帰り用途の容量なら背負う荷物は軽いから肩だけで背負える→パック重量を増すウエストベルトは不要なので取り除く」という考え方です。とはいえ、ウエストベルトを必要とする人もいるでしょう。そんな場合に対応すべく、パイカパックは後付けを可能とするパーツが付いています。必要な物は「25mmテープを適当な長さ・25mm幅デュアルバックを1つ」だけ。作業も写真のように取り付けるだけで簡単です。パッドがないテープウエストベルトですが、速歩時のバックパック底部振れを抑えてくれます。もし幅広いパッド付きの物が良ければ、他社製にて取り付けることが可能な物も用意していますので、スタッフにご相談ください。



生地
本体生地にはChallenge Sailcoth社のECOPAK生地を採用。表面200デニール生地と裏面70デニールの間に補強糸が加わる3層構造となっていて、旧X-pac生地の頃から含めれば今現在も様々なメーカーで使われる定番的な素材です。UL黎明期のバックパックによく用いられた数十デニールのシルナイロンよりは重くなりますが、反面、ハリコシに優れているのでパッキングをデリケートにする必要がありません。薄くしなやかな生地で作られたバックパックは軽量という利点があるものの、中にある程度の物が入っていないと形が安定しません。そのような物を普段利用している人の中には少ない荷物の時に形を安定させるために、スリーピングマットなどを内側に入れて使っている人も多くいるでしょう。しかしパイカパックならそのようなことをしなくても普通に使えます。

軽さを追求することは、ULギアやULハイキングカルチャーを大きく前進させる原動力になりました。しかし、シーンの盛り上がりと共に新たに加わる人達が増えていく中で、本来の考え方が薄まっている場面も多々見受けられます。先達メーカーの作りをなぞったり異素材を使った道具=ウルトラライトではないし、便利さや快適性を強く謳う必要もありません。今改めてULハイキングの根本とも言えるシンプルさに目を向けることは、原点回帰であると同時に新たなULハイキングカルチャーへの一歩であると思います。Pika Packはそんな思想を体現してくれたULバックパックと言えるでしょう。ぜひこの道具と共にハイキングを楽しんでもらえればと思います。
参考使用例







