Stash

高効率バーナーのパイオニアJETBOIL(ジェットボイル)の最軽量&コンパクトモデル。軽さ、コンパクトさ、燃焼効率、に加えて一般的なガスストーブと変わらない「普遍的な使い勝手」を備えた新たなジェットボイル。

仕様

重量
203g
バーナー 60g
クッカー 143g
収納サイズ
直径φ13cm × 高さ11.2cm
容量
800ml
調理容量 500ml
出力
1,134kcal/h
沸騰時間
約2分30秒(500ml)
気温20℃、水温20℃、海抜64m
[無風の条件下において(ジェットボイル®社調べ)]
素材
バーナー アルミニウム、チタニウム
クッカー アルミニウム

総重量200g 沸騰時間2分30秒
軽量、コンパクト、燃焼効率に加え、
「普遍的な使い勝手」を求めた高効率バーナー

2002年に高効率一体型ストーブとして登場したJETBOIL(ジェットボイル)。「最小限の火力で最大限の仕事を」という開発コンセプトを実現するために「ストーブとクッカーの一体型構造」を採用してきました。そのジェットボイルがついに一体型ではない高効率ストーブ「STASH(スタッシュ)」を発売します。
一体型であること最大のメリットは優れた熱効率にあります。外気温や風の影響を抑えてくれるのです。高効率の肝であるといってもよいでしょう。しかし一方、他の一般的なストーブとは異なる使い勝手をユーザーに要求します。ストーブとクッカーの脱着作業に戸惑うユーザーがでてきたのです。クッカーとストーブの確実な接続ができていないためストーブが脱落してしまう、沸騰後に焦ってストーブとクッカーを分離させようとして熱湯をこぼしてしまう、といった一体型ゆえのトラブルもあるのです。一体型は不安定な場所でも手持ちで湯が沸かせるためクライマーには好評でしたが、賛否が最もわかれるポイントともいえるのです。

スタッシュはあえて一体型を採用していません。結果として沸騰時間や熱効率については他のJETBOILシリーズに及ばない部分もあります。しかし他のJETBOILシリーズにはない「普遍的な使い勝手」を手にしたJETBOILといえるのです。シリーズ中、最も軽く、最もコンパクトで、最も使いやすい。そして十分に満足させてくれる熱効率のストーブシステムです。ここにあえて一体型を採用しなかった意味があるのではないでしょうか。

「JETBOILは気になるんだけれど、やっぱり大きいし、重たいしなぁ...」
「JETBOILは便利そうなんだけれど、使い方が複雑な感じがして...」

そんなイメージを払拭するJETBOILがスタッシュです。

21世紀のスタンダードストーブJETBOIL

2002年にアウトドアマーケットに登場したJETBOIL(ジェットボイル)はアウトドアストーブに革命をもたらしました。JETBOIL以降、熱効率をあげるためのフラックスリング付属クッカーをはじめとして、MSRやPRIMUSなどの大手メーカーも高効率バーナーを開発する流れを生み出したのです。
ユーザー目線からしてもJETBOILは魅力的でした。「燃費が良く」「すぐにお湯が沸く」そして「手持ちでお湯が沸かせる」。フリーズドライ食品、ディハイドレート食品が中心の北米アウトドアシーンでは湯沸かしができれば良いと考えるユーザーがほとんどです。手持ちで湯沸かしができる点はクライミングなどストーブを安定して設置することが難しいアクティビティーにおいて重宝されました。そしてPCT(パシフィッククレストトレイル)やAT(アパラチアントレイル)といった北米の超長距離トレイルのスルーハイカーたちは燃費の良さからJETBOILを選んだのです。100ccのガスキャニスターで一週間の旅ができるのならば、燃料の重量を大きく減らせます。トレイル沿線の小さな街でもガスキャニスターが入手しやすくなった2000年代後半以降、JETBOILはハイカーにとっても定番ストーブの地位を得たのです。

重量「200g」の意味:軽量ストーブシステムの基準

こうして多くのスルーハイカーにとって定番ストーブとしての地位を手に入れたJETBOILですが、ULハイカーにとってはやはり大きく重たいストーブシステムの代名詞でした。無雪期中心に湯沸かしのみを重視する軽量志向のハイカーにとってストーブ&クッカーの重量として許容できるのはどれくらいなのでしょうか。クッカーの容量や材質、ストーブの火力やレギュレーター搭載か否か、ひとくくりにできるものではありませんが代表的なストーブやクッカーで大まかに比較してみましょう。

JETBOIL マイクロモ 375g
JETBOIL ジップ 335g
JETBOIL スタッシュ 200g
SOTO SOD300s(73g)+ Evernew チタンウルトラライトクッカー2(115g) 188g
PRIMUS P-115(57g)+EvernewチタンパスタクッカーS(95g) 152g
T's Stove サイドB(19g)+Evernewチタンマグポット500(75g) 94g
T's Stove UL W.W.ゴトク(8g)+Evernew チタンカップ400FD(50g) 58g

いまや軽量ガスストーブと軽量チタンクッカーの組み合わせなら150〜200gの重量におさまるのです。このように見てみるとスタッシュの200gという重量はJETBOILとして確実にクリアしたい重量だったのではないでしょうか。そして200gを実現したうえで最大の特色である燃費の良さと沸騰時間の早さを備えたならば、JETBOILスタッシュは非常に大きなアドバンテージを得られるのです。

143gのフラックスリング付アルミクッカー

60gのバーナーヘッド

ゴトクとクッカーの安定感:一体型でなくとも

スタッシュの特徴として一体型でなくなったことに注目が集まっています。JETBOILのJETBOILたる特徴としてこの一体型を挙げる方も多いことから賛否が分かれる部分だともいえるでしょう。実際にハイカーズデポ のスタッフ間でも議論されたポイントです。「普遍的な使い勝手」というメーカーとして目指しているものが見えてはいるものの、一体型でないことに残念な思いも感じていました。しかし実物を手にしてみると印象は一変しました。

500mlの水をいれてここまで倒してもクッカーは安定

ゴトクとクッカーとの相性が非常に良いのです。ゴトクの凹みにフラックスリングがしっかりおさまるのです。もちろん一体型とは違いますが、安定感は抜群です。最大調理容量である500mlの水を入れてストーブを傾けてみます。水が溢れるギリギリまで傾けてもクッカーは動きません。現実的にこの傾斜で燃焼させることはないでしょうが、相当な不整地でも安心して使えます。むしろ従来のJETBOILよりも重心は下がるのでその点では非常に安定感が高いと言えます。一体型でなくとも、クッカーとゴトクの相性はやはりJETBOILだからこそ。実物を手にして最も感心したポイントです。

スタッキングへのこだわり:コンパクト収納

スタッシュのクッカーは容量800mlとジップやマイクロモと同じものの形状は異なります。従来の典型的な縦型クッカーではなく、縦横比が1:1に近い平型クッカーに近い形状を採用しているのです。これは一体型を採用しないまでも少しでも熱効率をあげるためでしょう。またストーブとクッカーとを分離させたことで収納方式に自由度が与えられたことも大きな理由ではないでしょうか。実際にスタッシュのスタッキング方式はユニークです。

スタッキングにこだわってきたJETBOILならではの収納サイズがスタッシュでは実現しています。

ジェットボイルらしさ:フラックスリングと燃焼効率

スタッシュのフラックスリングはJETBOILシリーズ最大径を誇ります。これはクッカー形状が従来とは異なる結果でもありますが、熱を受ける底面を大きくし、高さをおさえることは熱効率をあげるうえで理にかなっています。すでに述べたようにJETBOILの高い熱効率を担っていたのは「一体型構造」と「フラックスリング」です。このふたつのうち一体型構造を手放したことで、それを補わなければなりません。クッカーのサイズ、材質、縦横比、フラックスリングは効率アップのために相当調整されたのではないでしょうか。沸騰時間2分30秒、出力1134kcalは最も出力が小さいモデルJETBOPILジップと同じです。一体型を手放してなお、このテストデータが出せるのはいままでのフラックスリングの開発知見の蓄積があるJETBOILだからこそといえるでしょう。

JETBOIL(ジェットボイル)といえば、すぐにお湯が沸く、わかりやすいこの機能に目が奪われてしまいます。もちろん最大の特徴であることは間違いありません。しかしJETBOILスタッシュはそれだけにとらわれると意味を見失うように思います。湯沸かしの速度だけならそれに特化したストーブがあります。燃費もそう、低温化や強風下の使用もそう、軽さもそう、何かに特化したストーブというのはすで市場に存在するのです。機能特化したストーブは魅力的ですがクセが強いのも事実です。扱いにくい部分もあります。あらためてスタッシュを手にして使ってみると、JETBOILがバランスに優れたストーブを追求したらどうなるかというひとつの答えに思えてきました。誰もが違和感なく使えるストーブ、安心して使えるストーブです。それはスタッシュのゴトクとクッカーとの安定感に色濃く現れているように感じました。これは手にする皆さんにも是非感じて欲しいと思います。

もうジェットボイルは、ちょっと変わったストーブではありません。