Winter Down Bag

ダウン量を最大限活かす工夫を随所に凝らしたフードレスでシンプルな冬用スリーピングバッグ(寝袋)。-12℃以下の冬用としては驚きの実測885gを実現。超撥水ダウン使用。

仕様

重量
885g

ダウン
ダウン量 810FP 520g UDD超撥水加工
サイズ
底面最大長:185cm
上面最大長:174cm
首幅:約46cm
最大幅:約63cm(立体構造のため幅が短い)
フットボックス底面:幅32cm*高さ29cm
ロフト高:上面 約15cm
     下面 約10cm
仕様
素材:20*20dnlシルファイン(東洋紡) シレ加工
構造:サイドパネル立体、ボックス、コンティニュアスバッフル
その他:右肩 30cmジッパー、ドラフトチューブ付
快適温度  −10℃
限界温度  −16℃

化繊綿を使った、夏には単体、冬には複合で使える『トップキルト』。

ダウンの最大効率を考え、軽さと保温性を両立した『ダウンバッグ』。

かける、くるまる、着る、新提案の『フラップラップ』。

様々な提案をしてきたハイランドデザインのスリーピングバッグ(寝袋)に冬季用が登場です。

『Winter Down Bag』

総ダウン量 520g
重量 約885g±5%
参考対応温度 -12℃想定(下着の状態で使用した場合)
本体カラー:グレー/シームカラー:レッド

<なぜ冬用か>

重ねて使うことで対応幅を広げる使い方を提案してきたハイランドデザインのスリーピングバッグ(寝袋)のラインナップ。にもかかわらずなぜ冬用なのか。構想のきっかけはダウンバッグからでした。
ダウンバッグは今までに無い使い方だけでなく、ダウンを最大限活かすことのできる方法により少ない羽毛量でも高い保温性を出すことができるため広いシーズンで活躍できます。羽毛量を活かした結果軽くなる上に対応幅が広いため、私達を含め3シーズン以上の使い方をするカスタマーのお話を多く聞くことができま した。それにプラスしてトップキルトを合わせることで冬期にも対応する使い方を提案してきましたが、二つ寝袋を持って行くことはやはり重量増になりますし、単純に道具が増えることでの煩わしさもありました。
ダウンバックを冬に積極的に使う人達の中には、ダウン量を追加してロフトを増す方法を試す方もいましたが、目的の多くは湿度や湿気によるロフト低下防止の役割でもありました。ロフト低下に対してはダウンがUDD(超撥水ダウン)になったことである程度の回避が可能になりましたが、やはり保温力という点ではダウン量が直結する部分でもあるため、やはりある程度の追加は余儀なくされるのです。ですがダウンバッグには150g以上の追加をしても、それ以上の保温力増は見込めません。なぜならボックス構造の高さがあくまでも3シーズン用のため、多量のダウンを入れてもロフトがそれ以上出せずに膨らみきらないからです。また羽毛量が増せば温かくなるのは当然ですが、重量もそれに比例して増して 行ってしまいます。
ダウンを最大限膨らませることができる工夫をこらし、できる限る最大量を抑えて軽量化を図りつつ、シンプルで保温力の高い冬用の寝袋を作れないものか。そしてウィンターダウンバッグには様々な工夫が詰め込まれているのです。

<UDDダウン使用量 520g>

3シーズン用のダウン量に近いながらも、様々な工夫により、従来の冬用スリーピングバッグよりも高いロフトを出すことに成功し、上面のダウン量も十分に確保。

冬用としては決して多い量とはいえないものの、上面に来る量を調節することでダウン量600g台のスリーピングバッグと同等の保温力を出すことができ、軽さの面では春秋向け3シーズン用スリーピングバッグ同等の軽さを実現しました。

<上下でボックスの高さが違う構造>

上面と下面でボックスの高さを変えることでダウンの流入量を自動的に調整し、上面にはより多く(約7割)、下面には(約3割)のダウンが集まるように工夫しています。計算値では総ダウン量520gに対し、上面に約360g、下面に約160g程度と考えられます。

そもそもダウンバッグではダウンを偏らせる方法で上下のダウン量を調節し温度域に変化を作っています。全体に均等の状態で開いたり足元だけを閉じた状態で 使えば春から初秋までの温暖な時期に対応し、完全に片面に寄せた状態でジッパーを閉めて使えば、晩春や秋から初冬まで約-6℃までの対応をすること ができます。最大限保温を重視した後者の場合、上面に約250g以上のダウンがある計算ですし、熱は上方向へとむかうため上面に断熱層があることで保温力 を増すことができるので、3シーズン用のスリーピングバッグ(SB)と同等の保温性を出すことが可能です。しかしこの場合、背面にはダウンがほとんど無く なります。3シーズンにおいては身体で潰れてしまう背面側にダウンが無くてもマットの保温力を考えて選ぶことで問題は解決できますが、厳冬期にはどうして も空間のできる体の隙間、腕と体の間や膝の裏など、が冷えてしまうのです。そういった隙間にもダウンが入り込むことでしっかりとした温かさを体感できる原 因になるということは多くの経験、体験からも事実でしょう。

背面にもダウンを入れながら、上面の保温力を重視したい。その為には上下のダウン量に違いを出す必要があります。結局は寝るとつぶれてしまうので背面側に 羽毛を多くを入れる必要はありません。単純に壁で区切って偏らなくしてしまえば済む話なのですが、内側の壁になる生地が増えれば重くなりますし、コンテュ ニアスバッフル構造(上面と下面で区切られることのない連続した筒の構造*下記で説明)によるダウンの自由な動きがふくらみに影響することは経験で分かっ ているので、この構造は継続しました。
コンテュニアスバッフル構造を残しつつ、上下面のダウン量を調節するには、上下のボックスの大きさに違いを作り、入り込むダウンの量が自動的に調整されるようにすれば良いのです。
上面は通常の冬クラス並の約15センチ以上のボックス高があります。下面は3シーズン用程度の約10センチ以下のボックス高になっています。これによりダウンは自ずとふくらむ場所へと移動するので上面と下面で羽毛量の違いを生むことができるのです。

上面約360gのダウン量は、総重量1kg以上/ダウン量600g程度の冬用スリーピングバッグと同等といえます。それらと比べても上面のロフト感がある のは、見た目を重視するよりもダウンのふくらみが最大限活かせるようにロフトを高くしたからに他なりません。確かにモコモコと山なりに膨らんでいる様はい かにも暖かそうですが、その状態まで膨らんでしまっても結局内部でダウンが潰れているので簡単に言うともったいない状態になっています。平坦に見えるギリ ギリまでボックスに高さを出すことでダウン量以上の暖かさを出すことができるようになるのです。

*基本的に寝返りをスリーピングバッグ内で行うことを想定しています。背面側の保温力は上面に比べ劣りますので寝袋ごと寝返りをうつ方はご注意下さい。

<縦ボックスを採用した立体パネル>

上面パネル、下面パネル以外にも側面パネルを作りことにより立体構造になるためダウンを最大限膨らませることが可能。

もう一つダウンをしっかり膨らませるために必要な工夫が縦ボックスを作ること、要するに立体構造にすることです。一般的にはスリーピングバッグはどのシー ズン用でも大幅に形が変わりません。しかし、膨らみがまだ強くない3シーズン用くらいまでは良いとしても、冬用のダウン量ともなれば、ただボックス構造に しただけでは、上面と下面の接続部はどうしても薄くなってしまうので、結局ダウンをたくさん入れても潰されてしまいます。もし潰れずに別の場所に移動した としても、結局は接続部周辺だけはダウン量が少なくなり保温力が低下することになるのです。
それらを解消するためには上下方向に膨らませるための横ボックスだけでなく、左右方向に膨らませるための縦ボックスを作ることが必要になります。もし輪切 りにしたとすると、上下左右の4つのパネルで構成され、どこの場所でも均等にふくらみが出るように工夫されているということです。

<コンテュニアスバッフル構造>

上面から下面にかけて遮る壁が無くダウンのふくらみを最大活用できる。

通常上面と下面で区切られる横方向を、上面下面連続して壁がない構造をコンテュニアスバッフル構造と言います。ウィンターダウンバッグの場合どちらかに偏 るといったことはないのですが、押される力によりある程度下面と上面とをダウンが自由に行き来することで膨らみを活かすことができます。ダウンを膨らませ るための工夫と同時に、少ないダウン量で最大限の保温力を作り出すためには必要な機能でもあるのです。

<温かさを重視したフットボックスとシーム数>

シーム(縫い目)を少なくし軽量化に一役買うだけでなく、足元のシームを少なくすることでふっくらとしたフットボックスで温かさを重視。

ダウンの偏りを防ぐ意味でもどこの位置でボックスを区切るかは重要なポイントです。区切る数を多くすれば偏りは少なくなるものの、縫う場所が増えた分ボッ クス構造のための内側の壁部分を作るので重くなっていきます。ダウンジャケットやパンツと違い、基本静的状態で使うスリーピングバッグですから、縫い目の 数をできる限り少なくすることは軽量化への大切な工夫です。通常12カ所ほどある縫い目を9カ所にしています。さらに、足元に注目すると縫い目をあえて作 らず大きなボックスになっています。このお陰で熱の逃げる場所を減らし足周りの保温をしっかりと行えるようになっているのです。結構発汗量の多い足です し、気づくと濡れがちな足元ですから本来であれば細かくボックスを区切る方が良いのですが、ウィンターダウンバッグはUDD(超撥水ダウン)を使用してい るため、多少の濡れや湿気ではロフトが低下しないからこそ可能な工夫でもあると言えるでしょう。

<短いジッパーと開口部を小さくし熱を逃がさない>

コードを絞らなくても十分に熱が逃げるのを防ぐために開口部を小さくしました。ジッパーも出入りのための最低限に留め、30センチの長さ。

スリーピングバッグの出入りを考えるとある程度ジッパーが開いた方がよいのでしょう。けれどジッパーは熱が逃げる場所でもあり、それを防ぐためにはジッ パー裏にドラフトチューブを付ける必要があり重量増のポイントになります。これを出入りに必要な最低限の長さに留めることで軽量化を図りつつ、熱が逃げる ことも防ぎます。また開口部の形状を狭くすることでコードを絞らなくても肩周りにフィットして温かさを感じられるように工夫しています。

<ドラフトチューブではなく首回りを密着させる方法>

首回りの生地をあえて余らせることでふくらみを大きくし、自然と首や肩周りの隙間を埋め、熱の流出を防ぐと同時に温かさを生む工夫です。また上下で前後差を作り身体の形に合わせ密着。

冬用のスリーピングバッグにはドラフトチューブが付いていて、マフラーのように首回りに密着し、熱の流出を防ぎます。しかしこれを別に付けることでパーツ が増えるので重量増をうみます。なんとかドラフトチューブ以外の方法で首回りのフィット感を出せないかいくつも検討しサンプルを作った結果、あえて生地を 余らせることでふくらみを出し密着させるという方法に辿り着きました。写真や見た目でも非常に分かりづらいギミックですが、手で触れ、体感してみるとこの ふくらみはまるでドラフトチューブのような形状になり、首回りの隙間を埋めフィットします。全体の構造の一部となることで余分なパーツを減らすことに成功 し軽量化も可能になりました。また上下で前後差があるので首の後ろからアゴにかけての斜めのラインに自然に密着させることが可能になり保温力を高めます。

<Ultra Dry Down>

自由な発想を生むための超撥水ダウン『UDD』を採用。

冬用のスリーピングバッグで一番困るのは、結露による濡れです。これは防ぎ様がありません。

身体から出た蒸気はスリーピングバッグ内で温められています。これが外気に触れたとたん冷やされて結露として生地の表面やダウンを濡らします。低温 では乾燥もなかなか進まないためダウンがその湿度を吸い込んだ状態が保持されてしまいます。冬季、長期ででかけた際に徐々にスリーピングバッグが重くなっ ていくように感じた人もいることでしょう。

しかし、そういった現象もダウン自体が超撥水加工されている『UDD』であれば、湿気を吸い込んで重くなることも、湿気によるロフト低下も抑制する 効果があるのです。事実UDDの存在は、ウィンターダウンバッグを作ろうと考えたきっかけの一つでもありますし、UDDだからこそできる工夫や考え方が随 所にあるのです。

『もっと自由にダウンを使いたい』

そんな気持ちから当店では日本国内で工場を持つスリーピングバッグメーカー『ナンガ』の協力のもと、通常の撥水を超えた『超撥水』能力を持ったダウンを用意しました。

ダウンとは水鳥の羽毛のこと。本来水に浮かぶ水鳥の羽は水分に強いです。川面に浮かんで沈まない羽毛を何度も目にしています。しかしそのままだと臭いが出るため、通常使われるダウンは洗浄をして匂いの原因となる油脂を抜いています。そうすることでふくらみが出る反面、濡れには弱くなってしまうのです。

実際のところ人間の身体からでる汗や湿度の量は私達が思うより多いものです。しかし、その程度では、いくら油脂を抜いてしまったダウンだからといっ てロフトが落ちることはありません。ロフト低下の多くは降雨などの多湿時に外気から吸ってしまうことや、寒冷時において身体からの蒸気を吸ったダウンが放 出(乾燥)しにくくなることが原因です。これらの問題をクリアにするには油脂抜きをする以前のような機能をダウンに付加し直すことです。

そこでナンガ協力のもと、通常の撥水力以上の『超撥水』を付加したダウン、『UltraDryDown』略して『UDD』を使用することを決めました。

*より詳しい説明は『ダウンバッグUDD』のページをご覧下さい。

UDD採用によって、湿気を含くみにくくなり、軽さとふくらみ感を保ってくれるようになります。長期使用においてもストレスを感じることを軽減してくれますし、雨の多い時期にも安心して使っていただくことができます。
<撥水ダウンに関しての注意点>

超撥水ですが、永久に保つものではありません。また完全防水ではないので、浸水するような状況では使わない方が良いです。しかし、撥水ウェアなどと違い内部にあるもので、こすれたり摩擦が起きないことを考えると長持ちすると考えて良いと思います。
使用しているダウンは、加工前で810FP(フィルパワー)のヨーロピアンマザーグースダウン。それなら他の メーカーでも同程度の数値のものを使っていますが、Nangaでは洗浄前のダウンを輸入し、国内洗浄、国内加工をしています。そのため品質管理が行き届い ています。またマザーグース(親鳥)になってダウンボールが大きくなったものを使っているため、そのふくらみ感や保温力が高くなっています。


*FP値のこと

試験数値は薬品でふっくらと仕上げてしまえばある程度FP値を高く出来てしまうのであくまでも目安の一つです。また最近ではFP値と暖かさを同義語 として扱うメーカーがありますがそれは、当たらずも遠からずですが、正しいというわけでもありません。暖かさ、保温性というのは断熱と遮熱の複合によって 変化します。 そこにはただ空気を溜め込めば良いのでは無く、その空間一つ一つの小ささや密度なども関係します。ダウンは膨らませれば暖かいと言われることもあります が、ダウンの密度が増せばそれもまた断熱力の上昇に繋がるので、FP値が高くてもダウン量が少なければ暖かさはそれほど変わらず、”ただ軽いだけのもの” になってしまう可能性があります。


<フードレスデザイン>

起きている間も使うことのできる、ニット帽や衣服のフードを合わせて使うことで頭部の保温を完結させて、トータルの荷物で軽量化を図る、ウルトラライトハイキングのスタンダードメソッド。

ハイランドデザインのスリーピングバッグにはフードがありません。ウィンターダウンバッグも然りです。スリーピングバッグのフードは起きている間には使う ことができません。また最近はアンダーウェアやミドルウェアにフード付きのものが増えてきて、それらを着用する人も多く見られます。フード付きダウン ジャットを使用している人も多いことでしょう。しかし気づけば、フード・オン・フード。へたしたら。フード・オン・フード・オン・フード、なんて人も多い のではないでしょうか。道具を単体で捉えるのではなく全体的に見て選んで行くのはウルトラライトハイキングの基本です。冬用スリーピングバッグにたとえ フードがなくても自分の持っているものを有効活用しさえすれば十分に頭部の保温をすることが可能です。だからフードレス。シンプルゆえの軽さ。という考えになります。

*フードが必要な場合は別売りでダウンフードをご用意しています。

<スタッフバッグへの工夫>

冬用のスリーピングバッグは反発力が強く従来のスタッフバッグでは入れづらかったものを、開口部が広い大きな形状にしたことで簡単に入れられる。付属品。

スタッフバッグ 重量 23g 容量 約15L *現行は共生地となります。

今は無くなってしまったインテグラルデザインが作っていたまるでダルマのような形状をしたスタッフバッグを参考にして作りました。これくらいの直径がある とバックパックの底に綺麗に収まりますし、他のスリーピングギアなどを一緒に収納するのにも便利な大きさと余裕があります。


冬用として本格的に使えるように作ったウィンターダウンバッグ。温かさを出すことに最大限考慮しながらも、軽さへの工夫も惜しまずに作り込みました。これはただ軽さだけを求める方へだけでなく、温かさを重視したい方にもぜひお考えいただけたらと思います。