THE GREAT DIVIDE BIKEPACKING [Vol.4]

【Bikepacking Gear】
GDMBRの環境や生活についてお伝えしてきたVol.3まで。今回は実際に旅で使った道具について個人的な意見や思いと、実際に見た、話をしたをGDMBRライダー達の姿を交えながらバイクパッキングギアについて紹介していきます。

THE GREAT DIVIDE BIKEPACKING

[Vol.4]
Bikepacking Gear

記事:二宮勇太郎

 

Bikepackingの道具に求められるもの

Bikepackingは簡単に言ってしまえばオフロードのキャンプツーリングです。屋外で寝泊まりするために必要な最低限の道具や食料を自転車に積んで、延々と続くオフロードを長い時間移動し続けるわけですから、自転車やその他の道具に求める機能も舗装路を繋いで旅するロードツーリングとは多少内容が変わってきます。

 

・荷物はなるべく軽く小さく

まず第一に悪路を走るためにはなるべく荷物を軽く、小さくする必要がありますが、これは速く走るためではありません。舗装路のように路面状況が一定でないオフロードでは、常に自転車の挙動が不安定です。一日中それをコントロールし続けないといけないBikepackingでは自転車の操作性が肝になってきます。なるべくなら軽く、小さく荷物がまとまっていた方が自転車のコントロールに有利なのは当然で、荷物の軽量化と小型化はオフロードツーリングのたのしさを享受できるか否かに直結するポイントなのです。これまで自転車の長期ツーリングといえば前後キャリアにパニアバッグというスタイルが定番でしたが、重く、大きな装備を持ってGDMBRを走るのはきっと大変なことでしょう。オフロードツーリングはロードツーリングに比べて荷物の運搬には気を配る必要があります。

GDMBR Vpl4 自転車旅の定番といえば車輪の左右に装着する大容量のパニアバック。4つ合わせると80L以上の容量がある。

 

 

・悪路の振動への耐久性

そしてもうひとつ重要なのは道具の耐久性です。アスファルトで覆われていないオフロードは土が雨風で浸食されていたり、木の根っこが出ていたりと路面は凹凸だらけです。このような不整地を走る自転車は常に振動し続けているわけで、振動による道具への負担はあらゆるところに反映されます。特に金属や樹脂などの硬いものは振動をダイレクトに受けてしまうので、それに対応するための強度を確保する為にどんどん道具は重くなる傾向にあります。仮にGDMBRでキャリアを付けて走るとしたら、オフロードの振動に耐えられるしっかりとしたつくりのものを選ばなければいけません。重量も単体で1kg近いものを選ぶ羽目になります。

長距離ツーリングに使われる頑強なラック。これだけで約1kg。

その点 Bikepacking で使われるソフトバッグはストラップを使って自転車に直接固定するシンプルな構造で、金属製のキャリアを必要としません。その分過剰に自転車が重くなることはありませんし、万が一ソフトバッグが破損してしまっても金属より修理が簡単にできるのも重要なポイントです。人里離れた場所を旅するライダーにとっては道具が壊れにくいことと同時に、壊れてしまっても自力で修復できる道具であることも重要です。Bikepackingがもともと冒険的な自転車旅をベースに発展した遊びであることがこういった道具のつくりに反映されています。

今回のGDMBRで僕はキャリアを使わない典型的なBikepackingスタイルでしたが、実際に使ってみた感想などを以下に紹介していきます。

 

 

GDMBRで実際に使った道具

・自転車

今回の旅で僕は車輪の外径が大きな(29インチ)マウンテンバイクを使いました。もともと長距離のダートツーリング用として作られたこの自転車には、未舗装路を快適に移動するための工夫が盛り込まれています。一般的な規格よりも外径が大きい29インチの車輪は、細かい凹凸を拾いにくく、ちょっとした段差も乗り越えやすいのが特徴で、悪路での巡航性を高めるのに役立っています。それ以外の自転車の細かい仕様については割愛しますが、おかげで自転車自体にはこれといった不満もなく、快適に旅を続けられました。旅の途中で全く同じ自転車に乗ったGDMBRライダーに幾度となく出会ったのは、ただの偶然ではないはずです。

GDMBR Vol4 今回の旅でぼくが使った29インチのMTB。長距離オフロードツーリングのためにつくられた自転車。
GDMBR Vol4 旅の途中に出会った夫婦。GDMBRをセクションで旅しているとのこと。夫は僕と全く同じ自転車だった。

GDMBRのように広いダートロードが続くルートなら、きっとどんな自転車でも旅はできるでしょう。ただし快適性やトラブルのリスクを考えると、車輪が大きくタイヤも太いマウンテンバイクが有利だと個人的におもいます。舗装路では路面抵抗が大きく敬遠される太いタイヤも、砂地や砂利道では安定したグリップを発揮する為に必要ですし、サスペンションがなくとも路面からの振動をある程度吸収してくれます。なによりタイヤの接地面積が大きいおかげで自転車の挙動が安定し、長時間のライドでもリラックスして自転車に乗っていられます。ダートロードがメインのツーリングでは自転車を選ぶ基準もロードツーリングとは変わってきます。

 

・生活道具

僕が旅をした7月ごろのGDMBRでは、南部のニューメキシコ州で最高気温が40度以上にもなりますが、コロラド州やモンタナ州の標高が高いエリアでは最低気温が0度近くまで下がることもあります。ですからそれらの環境変化に対応するためには道具の選択も日本でいうところの3シーズン対応がベースになります。

アイテム 品目 重量
PACKING GEAR  SUB TOTAL 1338 g
フレームバッグ REVELATE DESIGNS VISCACHA 248 g
サドルバッグ REVELATE DESIGNS FARGO用 412 g
ハンドルバーバッグ REVELATE DESIGNS SWEETROLL 315 g
ポケット(ハンドルバーバッグに追加) REVELATE DESIGNS POCKET 162 g
トップチューブバッグ REVELATE DESIGNS GASTANK 113 g
アクセサリーバッグ REVELATE DESIGNS FEEDBAG x2 88 g
SHELTER & SLEEPING  SUB TOTAL 1567 g
シェルター TRAILBUM CT TARP、ガイライン 314 g
グラウンドシート SOL Emergency Blanket 82 g
ペグ Tiペグ、アルミペグのMix 7本 64 g
スリーピングバッグ Highland Design Downbag UDD 10dカスタム 552 g
スリーピングマット Thermarest Neo-Air X-Lite W'sR 340 g
ハンモック ENO SUB7&Hummingbird ツリーストラップ 215 g
PACK IN CLOTHING  SUB TOTAL 1400 g
レインジャケット OR Helium Ⅱ 157 g
レインパンツ Teton Bros Breath Pants 181 g
レイン&防寒グローブ Terra Nova Topbag 39 g
インサレーションジャケット Highland Design Superlight DownJKT 15d Ver 240 g
Tシャツ Ibex OD Heather Tee 158 g
アンダーウェア1 Smartwool 75 g
アンダーウェア2 Pearl Izumi 119 g
保温用帽子 Wool BUFF 50 g
靴下1 Seal Skins Thin Mid 110 g
靴下2 Wigwham Ironman 46 g
靴下3 Darn Tough No Show L/C 39 g
サンダル LUNA Venado 186 g
COOKING & WATER  SUB TOTAL 699 g
クッカー VARGO BOT 149 g
ストーブシステム TRAIL DESIGNS Caldera Cone System 28 g
ライター Bic Mini 10 g
カトラリー MSR Folding Spork 10 g
食糧用スタッフサック SALSA Anything Bag x2 298 g
水筒1 Platypus 2L 39 g
水筒2 SAWYER 2L 42 g
水筒3 Smart Water 2L 45 g
ウォーターフィルター SAWYER 78 g
OTHER ITEMS  SUB TOTAL 3524 g
ファーストエイドキット テーピング、絆創膏など自作 194 g
ヘッドランプ1 Black Diamond SPOT 57 g
ヘッドランプ2 PETZL e-LITE 29 g
洗面セット バンダナ、歯ブラシ、耳かき、爪切など 127 g
トイレセット Mizo Mogu、ポケットティッシュなど 50 g
GPS Garmin e-Trex 20x 100 g
GPS用バッテリー 単三電池x6 142 g
カメラ Olympus OM-D 525 g
カメラ用バッテリー バッテリー、チャージャーなど 44 g
緊急用発信機 SPOT 114 g
携帯電話 I-Phone 5S 138 g
財布 メーカー不明 21 g
日記帳 日記帳、ペン 79 g
パスポート パスポート 53 g
ガイドブック&マップ GDMBRマップ&ガイドブック 661 g
自転車修理キット マルチツール、スペアケーブルなど 354 g
スペアチューブ スペアチューブx2 424 g
ワイヤーロック KRYPTONITE Flex 412 g
GRAND TOTAL 8528 g

 

WEARABLE CLOTHING  SUB TOTAL 2089 g
ヘルメット GIRO SAVANT 248 g
キャップ メーカー不明 59 g
サングラス URBAN GALAXY ASTRA 34 g
アンダーシャツ Ibex Nelson L/S 185 g
シャツ HOUDINI Waft Shirt L/S 177 g
アンダーウェア Ibex Bike Liner 116 g
パンツ OR Ferrosi Pants Cut-Off 177 g
ソックス Darn Tough No Show L/C 39 g
シューズ GIRO TERRADURO 968 g
時計 Casio G-SHOCK 56 g
グローブ CCP 2Finger Grove 30 g

 

以上が実際にGDMBRで僕が使用したギアのリストです。
水と食料を含まないベースウェイトが8kgオーバーですから決して荷物が軽いとはいえません。特に重量面で目立つのが修理キットやワイヤーロックなど自転車を管理するためのものです。工具やスペアパーツ、ワイヤーロック等は金属製のものがほとんどなので、持つ量を最低限にしてもそれなりの重量になってしまいます。それでも長旅では万が一のメカトラブルに対応できるような備えが必須ですから、重たくとも削れない装備といえます。ハイキングでは必要のないこの辺が荷物の重さに影響しています。
環境によほど違いがない限り、ハイキングとBikepackingで道具を変える必要はありません。宿泊道具の内容は2012年に歩いたPCTのときとほぼ同じです。シェルターにはPCTハイキングの時と同様にタープを使いましたが、今回は新たにハンモックを追加しました。砂漠地帯ではハンモックを使いきれなかったものの、コロラド州やモンタナ州、そしてカナダに入ってからの山岳エリアではほとんどハンモックを使って過ごしました。それ以外でPCTを歩いたときと違うギアといえばスリーピングマットくらいでしょうか。PCTではクローズドセルのマットを使っていましたが、今回のGDMBRでは収納性を重視してエアーマットにしました。重量よりも収納サイズにこだわるのはBikepackingの特徴かもしれません。

 

自転車に荷物を積む

これらの生活道具一式に水や食料を追加したものを運ぶわけですが、これをまずどうやって自転車にパッキングするかが問題です。スルーハイキングなら50リットルのバックパック一つで対応できる量の荷物を、自転車ではいくつかに分けてパッキングします。なぜなら自転車でこれだけの大きさの荷物を1箇所にまとめて固定するのがスペース的に困難なのと、一定以上の重量が自転車の1箇所に集中してしまうのは自転車の操作性を悪くしてしまうからです。このような理由からBikepackingでは一つが20リットル以下の容量のバッグを自転車の何箇所かに分けてパッキングする方法が用いられます。主な場所は以下の三つです。

A 、フレームバッグ

三つの中では容量が一番小さく10Lほどで、自転車の重心に最も近い場所にあたるこの部分には、自転車の整備に必要な工具やスペアチューブ、自転車の鍵など比重の重いものをまとめます。できることならこの重心の近い部分に重い荷物を収納することで、自転車の操作性が悪くなるのを防ぎます。僕の自転車ではこの部分のスペースがあまり大きくはなかったので、ほぼ自転車関連のギアで埋まってしまいました。

B 、サドルバッグ(またはシートバッグ)

最大で14リットルの容量を持つこの部分は、パッキング全体のメインパートです。着替えなどの衣類全般と街でしか使わないチャージャーなど細々したものを収納しました。容量の大きなこの部分にはとりあえず他に入りきらないものを放り込んでいましたが、荷物の揺れを抑えるためのコンプレッション機能のおかげで荷物を満載にしてもなんとかまとまります。ただいくらコンプレッションをかけたところで僕の使っていたソフトバッグではバッグ自体の揺れを完全に抑えることはできません。ダンシング(立ちこぎ)や激しいライディングを好む人は、なるべくこの部分の荷物を減らすか、バッグ自体に剛性のあるタイプを選ぶ必要があります。それに毎回コンプレッションをかけなければいけないので、荷物の出し入れは面倒です。頻繁に出し入れが必要なモノの収納には不向きです。

C 、ハンドルバーバッグ

三つの中では18Lと容量的には一番大きいバッグを装着できますが、ハンドルの形状によっては容量の制限も出てきます。それにハンドルに固定する構造上、あまり重たい荷物を収納すると操舵性が悪くなってしまいます。ですから寝袋やスリーピングマット、シェルターなど比重の軽い荷物を収納するのが適しています。ハンドルバーバッグを販売している各メーカーも寝袋を収納する前提で製品づくりをしていることが多く、濡れに弱いダウンを守るために防水性の高いバッグが多いことも特徴です。

D、その他アクセサリーバッグ

僕の場合は上記3つのバッグでは足りずに、頻繁に取り出したいモノや入りきらない食料などを防水性アクセサリーバッグで補いました。

三つのバッグを合わせた容量は42L。スルーハイキングの平均的容量からすると少し小さめかもしれません。さらに形状がシンプルではないため、スペースを無駄にしないようなパッキングがしにくいです。もしかしたらスルーハイキングより品目は多いですが、それを小さく収納するのがバイクパッキングのパッキングです。

GDMBR Vol4 ハンドルの周りには飲み物やカメラ、それにちょっとしたスナックを収納できる小物入れをつけた。

GDMBRで活躍した道具

GDMBRではPCTを歩いたときには全く必要性を感じなかった道具に助けられました。ルートの整備状況や移動方法の違いから必要な道具はガラッと変わります。

・GPS機器

まず出発の直前まで導入を悩んだのがGPS機器でした。PCTを歩いたときにはトレイルの整備が行き届いていたこともあって必要性を全く感じなかったGPS機器ですが、GDMBRにはルートを示す道標がほとんどありません。ガイドマップにも細かい表示はなく、ほとんどが生活道路を繋いでできたGDMBRではルートファインディングが困難です。特にだだっ広い丘陵地帯や砂漠エリアのジープロードでは一度ロストすると現在地の判断にかなり苦労します。GPS機能なら最近ではスマートフォンのアプリでも対応できますが、スマートフォンはバッテリー消費が激しく、数日間街で給電できない環境では給電のためにソーラーチャージャーを使ったり、重たいハブダイナモを自転車に装備しなければならず、長期ツーリングでは負担になります。それに比べ「ガーミン」などに代表されるハンディータイプのGPS機器は消費電力が圧倒的に少なく、どこでも簡単に入手できる単三電池2本で丸2日以上フル稼働できるので、バッテリーのことを気にせず安心して移動ができます。

eTrex20x_5 GDMBRで使ったハンディーGPS。ハンドルに取り付けて常に現在位置が確認できるようにしていた。移動中は常に起動させっぱなし。

ロストを未然に防ぐことは精神的、肉体的な負担を軽減することでもあります。GDMBRのような長距離ルートでは日々の些細なストレスを減らしていくことが大切で、GPS機器は絶対に必要な道具ではありませんが、今回の旅に持って行って本当に良かったと感じる道具です。実際旅で出会った数十人のGDMBRライダーのほとんどはハンディーGPSかスマートフォンのナビゲーションシステムを使っていて、一人だけ地図のみを頼りに走っているライダーに出会いましたが、ロストには慣れっこだよと言っていたのが印象的でした。気ままに旅をするライダーに憧れを持ちつつも、またGDMBRに行くことがあってもハンディーGPSは必ず持って行くであろう道具のひとつです。

 

  • 高照度のライト

これまでハイキングでは全く必要性を感じていなかった明るいヘッドランプも、GDMBRでは大活躍しました。もともと1日の行動を早めに切り上げてしまう僕にとっては、ライト自体あまり重要な道具ではありません。できるだけキャンプ地で明るい時間からゆっくりしたいので、予定どおりに進めれば移動でヘッドライトを使う機会さえないからです。ところが今回の旅ではキャンプサイトが埋まっていたり、ロードコンディションの悪さに阻まれてペースが落ちたりと予想通りに進めないことがたくさんありました。そうなると日が暮れてからも行動せざるを得ないので、暗闇でも行動するための灯りが必要です。ハイキングなら最低限の照度で歩みを進めることもできますが、自転車のスピードに対応するとなるとそれなりにしっかりと先が見渡せるライトがなければ危険です。今回僕は最大照度200ルーメンのヘッドランプで特に問題は感じませんでしたが、積極的に夜も走る場合や、暗闇でもスピードを維持したい場合にはもっと明るいライトが必要かもしれません。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA 夜の森は暗い。やむを得ず行動するなら明るいライトは必須です。

GDMBRを走るBikepackerたち

ここまでは僕の個人的な装備を紹介しましたが、GDMBRを走る他のライダー達はどんな装備で旅をしているのでしょう。途中に出会ったライダー達の装備をいくつか紹介します。

・ウルトラレーサー

旅の前半で度々出会ったTour DivideというGDMBRで行われているセルフサポートレースに参加するライダー。速さを求めて最低限ギリギリの装備で走っている彼らはBikepackerのなかでも軽量化にとことんこだわった極端なスタイル。

 

・典型的なBikepackingスタイル

サドルバッグやフレームバッグ、ハンドルバーバッグなどBikepackerには一般的な装備をシンプルに組み合わせたスタイル。GDMBRではこのタイプが多く見られた。

 

・オーソドックスなパニアスタイル

ラックとパニアバッグを活用したロードツーリングでは一般的なスタイル。荷物を多く運びたいひとにとっては有利な方法。GDMBRでもまだまだ健在だった。

 

・ミックススタイル

パニアバッグとソフトパックの両方を使ったパッキングスタイル。荷物は余裕をもって積める。使い勝手が良さそう。

 

・番外編

重量なんて気にしない。とにかくオレに必要なものはなんでも運んでやるぜ。といった気合を感じるスタイル。さすがにギターまでは自転車に積めなかったらしく、自身で担いでいた。その気になればこんな自転車でもBikepackingはできる。

このようにGDMBRではそれぞれ思い思いのスタイルで旅を楽しんでいます。Bikepackingはあくまで行為を指すものですから、枠にとらわれることはありません。道具の選択も場面にあわせて自分の使いやすいようにアレンジしてしまいましょう。

 

GDMBRを走ってみて

今回GDMBRを走るにあたって、道具の準備段階では色々と不安がありました。まずこれだけ長距離のダートロードを自転車で走ったことがなかったこと。それに何がどこまで必要なのか身近な情報がなかったのが理由です。ですからインターネットで海外のサイトからできる限りの情報を集め、そしてせっかくならばとあえてコテコテのBikepacking GearでGDMBRの旅に臨み、結果この旅で道具に関して大きな問題は起きず、全ての道具が十分に機能しました。
しかしBikepackingは専用の道具がなければできないものではありません。たしかに軽量で耐久性の高いBikepacking Gearは、速さを求めるTour Divideのレーサーや未開の地を旅するBikepackerに必要な要件を満たしているのかもしれません。荷物が小さく軽く、丈夫になることはGDMBRを旅するライダーにとっても有利でしょう。でもその全てが僕に必要かどうかは疑問です。もっと違った道具でも旅はできたに違いありません。それに僕がGDMBRで出会った人たち全てが、Bikepacking Gearを使っていたわけではありませんでした。むしろ実際にGDMBRでオフロードツーリングをたのしむ人たちはもっと自由に道具を選択し、自分にとって使いやすいスタイルを確立している人たちだったように感じます。

結局GDMBRの旅で僕が教わったことは『道具でバイクパッキングをするわけじゃない』ということです。確かにバイクパッキングから生まれてきた道具類はそれぞれ今までと違う部分がありキャッチーなのはわかります。僕もそこに惹かれた1人だからです。ですが実際にやってみると、使う道具の選択はBikepackingの面白さにはあまり関係がないように感じています。それよりはもっと自由な発想で、自分に合った道具を選択し、野山を自由に旅する方法としてBikepackingが評価されることを願います。