2023年4月15日、16日の二日間、みちのく潮風トレイルの拠点施設である名取トレイルセンターで、トレイルでのお祭り、Trail Daysが開催されました。トレイルと地域の人とハイカーが交わり、混ざり合い作り上げていくトレイルをぎゅっと凝縮したようなイベントです。その模様をお伝えいたします。
ロング・ディスタンス・トレイル(以下ロングトレイル)の本場とも言えるアメリカのハイキング文化の中に、Trail Days(トレイルデイズ)というお祭りがあります。東海岸に伸びるアパラチアン・トレイル(以下AT)のダマスカスで行われるトレイルデイズが一番有名です。パシフィック・クレスト・トレイル(以下PCT)ではPCT Days というトレイルデイズがあります。
トレイルデイズとは、内容が決まったお祭りではありません。一つ決まっているのは、トレイル沿いのTrail town(トレイルタウン)で行われているということです。そのトレイルデイズをみちのく潮風トレイルでも開催したいという、NPO法人みちのくトレイルクラブ(以下MTC)での動きがあり、当店もアドバイザーとして協力させていただきました!
実はこっそり!?昨年6月に一回目のトレイルデイズが開催されました。その際は、ハイカーズデポは東京以外では初となる「はじめてのUL」を催行しました。そして、2023年4月15日、16日の2日間で第二回目となる「名取トレイルセンター Trail Days」が開催されました。
今年のトレイルデイズはコンテンツが盛りだくさんすぎて、フライヤーにタイムスケジュールが載せられない事態になりました(笑)詳細にご紹介したいところですが、それぞれのコンテンツを簡単に報告していきます!
*当日のプログラム内容については、みちのくトレイルクラブのHPをご覧下さい!こちら
ハイカートーク
未知の荒野をふたりぼっち〜Pacific Northwest Trail〜
新井篤史さん、美帆さんの若いご夫婦が、アメリカにあるPacific Northwest Trail(以下PNT)の話をしてくださいました。残念ながら直接お聞きすることができませんでしたが、新しい時代を感じます。2000年代、2010年代はまだATやPCTでさえ、情報は決して多くなく、2009年のPCTハイカーは400人にも満たない数でした。スマートフォンやマップアプリ等の登場は、アメリカでのハイキングシーンも大きく変えるものになったと思います。昨今アメリカの3大トレイルは過剰利用が問題になっています。この時代になり、さまざまなロングトレイルの選択ができるようになりました。彼らはPNTとロングトレイルの魅力を伝える為活動を続けているそうです。
スペイン巡礼路カミーノを歩く旅
2019年にスペインの巡礼路、カミーノ・デ・サンティアゴを歩かれた神垣友夫さんは、みちのく潮風トレイルを応援してくれている、仙台のハイカーです。1975年に創設されたグループわらじに所属されていて、歩くこと、歩いて旅をすることにおいては大先輩です。巡礼の道であるカミーノですが、今は歩く旅を楽しむ道としても多くの方に歩かれています。神垣さんのお話も聞くことがかないませんでしたが、みちのく潮風トレイルという新しい歩く旅の道で、地域と外から来るハイカーの両方が、海外トレイルの話ができることは、なんともすごいことだと感じました。
環境省 アクティブレンジャートーク 「私が歩いた、みちのく潮風トレイル」
アクティブレンジャーというお仕事があります。環境省の各地の国立公園や長距離自然歩道を管理する保護官と一緒に働く民間採用の役職が、アクティブレンジャーです。地元採用も多く、転勤の多い保護官に代わり地域との調整をするなど、非常に重要な役割を担っているといえます。富樫さんは神戸市出身ですが、2019年にみちのく潮風トレイルをスルーハイクしたのち、みちのく潮風トレイルの素晴らしさに魅せられ、熱く熱く熱い思いをずっとみちのく潮風トレイル、そして長く歩く旅に注いでくださっています!阪神・淡路大震災の被災者でもあり、東北沿岸にもまた特別な思いを持っている人です。熱いお話でした。ここでは書ききれません。なんてレポートだ!と思ってくださって結構です(笑)みちのく潮風トレイルや信越トレイルなど各地に出没中です。見つけたら直接聞くのがおすすめです。
ワークショップ/講座
アルコールストーブ作り講座
ハイカーズデポもいつもお世話になっている、Sanpo’s Fun Lite Gear の“さんぽ”さんによるアルコールストーブ作り講座。二日間で三回開催され、変わらず大盛況でした。アルコールストーブは、どうしたってガスストーブには火力や手軽さでは敵わないのかもしれません。しかし、一から手作りすることができてしまう、とてもULらしい道具の一つです。音も静かで燃料はアウトドアショップが無くても手に入る。自分の必要最低限だけが分かるところも好きですし、風防、ゴトクやクッカーとの組み合わせで、それぞれのハイカーに合った使い方ができます。僕はいつも「道具使ってるな〜」と思う、それは楽しい道具なのです。そのストーブが自分で作れてしまうなんて、とっても魅力的!懇切丁寧なさんぽ先生のご指南もあり、参加者全員ちゃんと使える「たった一つ。自分だけのアルコールストーブ」を手にすることができていました〜。
ニューハレテープでできるアレコレ 怪我や道具の故障に対応する
ニューハレという、サポートテープをご存知でしょうか。粘着性、肌への優しさや伸縮性など、本当に機能的なテープなんです。その中で、エマージェンシーテープという商品があります。ただテープだけだと使い方がわからない人も多いと思います。そこで膝や足首など、山でよくあるトラブルに対応するセットを販売しています。その使い方はもちろんのこと、その粘着性や伸縮性の高さから緊急時の道具の補修までできてしまう優れもの。その使い方を、ニューハレ竹谷さんから教えていただく講座でした。ロングトレイルを歩くのは、ある意味怪我と上手に付き合うことでもあります。竹谷さん自身、みちのく潮風トレイルをセクションでハイキングしているだけでなく、海外でのファストパッキングの経験も豊富で、実例を交えてご紹介してもらいました。参加した皆さん、とても真剣に受けていました。ぜひ、ハイカーズデポでも開催していただきたいと思います!
ハンモック for みちのく潮風トレイル
当店のハンモックお兄さん、ニノこと二宮勇太郎によるハンモックハイキング講座。書籍「ハンモック・ハイキング」を出版した後では、初めての講座になったと思います。常時体験会も開いていたのですが、実践的に使う方法などをこの講座では話していました。ハンモックは吊るせるところがあればいつも高得点。反面吊るせないとどうにもならない道具です。タープ泊の派生としてであったり、今までに無い幕営地の選択ができるなど、フィールドへの関わりが変わる魅力があります。ではみちのく潮風トレイルでは?ちゃんと使えるの?そんな疑問が解けてたら良いな〜。まだわからなかった、もっと知りたい、そんな方はいつでも当店へご連絡くださいね!
ULパッキングのベーシック講座
ハイカーズデポのハイカーズデポたるコンテンツなのかもしれません。伝道師土屋師匠は店番でしたので、不肖の弟子が代わりにみなさんにお伝えさせていただきました。ロングトレイルを歩くのに必要な道具はたくさんありますが、どのように軽量化するか、どのようにパッキングするか?どのようにバックパックを選ぶのかなど、ハイカーズデポらしく実践から出てきた技術を少しお伝えできたかなと思います。言葉足らずもあったと思いますので、いつでもハイカーズデポへご相談ください。
Trail Gate 特別出店
TORAYA Equipment
受注販売のみで、コアなファンが数多くいるトラヤさんに、名取トレイルセンターに来ていただき、ハイカーズデポがみちのくトレイルクラブと協働している「TRAIL GATE」にて受注会を開いていただきました!ハイカーズデポではトラヤさんの開業当時から、店頭での受注会を開催していただいております。今回は、みちのく潮風トレイルの活動に共感していただき、お越しいただくことが叶いました。地域のファンのかたも、トレイルクラブのスタッフも喜んでいました。今から届くのが楽しみですね。
yamada packs
そのままですけど、山田さんが作っている新進気鋭のヤマダパックスさんもお越しいただきました。かれは自分で作ったバックパックを使いPCTを歩き、その経験をもとに作ったバックパックを注文販売しています。昨今ULでシンプルなバックパックが多い中、長い距離長い時間背負うために、フレームパックの構造を残したまま軽量化を計っているあたりがにくいです。従来の構造とは少し異なる独特な形状をしており、個人的にもかなり興味をそそられものです。多くの人が興味深く山田さんの話を聞いていました。
Live/地域とハイカーの交流
閖上郷土料理お振る舞い
昨年に引き続き、本当に美味しいお振舞いをいただきありがとうございます!閖上地区は震災前、多くの住宅がある港町でした。今そこに立つ名取トレイルセンターに、たくさんの閖上お母さんお父さんが集まってくれました。臼と杵でぺったんぺったん餅つきをして作ったお餅。子どもも大人も、餅つき経験初めての人もいました。みんなでついたお餅を、納豆餅とずんだ餅にしてくれました。もう一つの郷土料理おくずがけ。煮麺にお麩や野菜がたくさん入った餡をかけたものです。う〜ん、本当に美味でした。食べたい人は次の機会にぜひ行ってくださいね〜。
閖上大鼓演奏 in みちのく潮風トレイル 名取トレイルセンター
もう、最高でした。一時は天候の影響で開催が危ぶまれましたが、雲の動きが早まったおかげで、奇跡的に晴れた綺麗な青空のもと、地元「閖上太鼓保存会」のみなさんによる、演奏が実現しました。その途中には、観覧の人たちを交えた時間がありました。太鼓の演者は地元の皆さんです。地域の人たち、ハイカーがトレイルの上でこうして交わる姿は、素晴らしいものでした。太鼓を叩くのは、実は難しいものです。でも叩くだけで、みんなが同じように楽しめるものでもあります。5歳の子も楽しそうにずっと叩いていた姿が印象的です。
スラックライン体験会
綱渡ではありません。スラックラインも今はだいぶ認知が広まっているスポーツになりました。しかし、実際に体験できるところがないと思っている方も多いと思います。細いベルト状の上を歩くのですが、この体験会では6〜7センチそれなりに幅広のベルトなんです。これなら余裕、とはあなどるなかれ!上下に左右に揺れるベルトの上を歩くのはなかなかに難しいものです。もともとはクライマーがバランス感覚を鍛えるため、クライミング待ちの時の遊びに考えだしたと言われますが、ハイカーにとっても良いと思います。体感を鍛えれば、歩く時のブレを減らせますので、怪我の予防にも繋がります。僕も試しましたが、中級くらいまではクリア!でも、一番難しい4cm幅くらいは、、、できませんでした。30分程度の長い時間ではありませんでしたが、夢中になってできて、本当に楽しいです!
みちのく潮風トレイル映像上映会〜「歩く旅」で出会った景色〜
悪天候のため、屋外での上映はかないませんでしたが、名取トレイルセンター内談話室で、常時流していました。みちのく潮風トレイルのYoutube動画、ハイカーから寄せられた写真やセンター前で撮りためた来館したハイカーの写真などを集めて上映しました。懐かしい景色、見たことの無い角度、いつ来ても、何度訪れても新しい発見があるみちのく潮風トレイルと、そこを楽しむハイカーたちの姿が素敵でした。
Live/トレイルで聴く
アコースティックライブ 〜線を撫でて〜
本当は最初にご紹介したいくらいで、そして最後にご紹介するのが、IsaGuitarra / イサ・ギターラさん(以後イサさん)のライブです。2019年みちのく潮風トレイル全線開通に合わせて制作されたPR映像があります。僕はそれにハイカーとしてご協力させていただきました。その映像の中で流れるアコースティックギターの音楽は、イサさんが、映像を見ながら音をつけてくださったものです。数年来の付き合いのようで、実はお会いするのは初めてでした。ぜひそれを、名取トレイルセンターの野営場で、みちのく潮風トレイルの空の下聴いてみたい。そんな気持ちから企画されました。しかし、残念ながらあいにくの天気で、二日間とも外での演奏はできませんでしたが、談話室の中、いつも聴いていたあの音を、あの場にいた全員と共有できて、そして生の音を聞けたことは、本当に感動する、忘れらない時間になりました。一緒に来られていた娘さんの歌もあり、心地よい、ハイキングの時間の中を漂うような、不思議な気持ちになりました。イサさんのアコースティックギター音楽を聴きながら、ぜひみちのく潮風トレイルの映像を楽しんでもらえたらと思います。映像はこちらから
ご紹介したコンテンツ以外にも、二日目の朝には、地域のボランティアの皆さん、ハイカーとトレイルクラブのみんなで、トレイル沿いのゴミ拾いをしました。
そして、多くのハイカーたちが訪れてくれて、野営場で泊まりました。今まさにMCTスルーハイキング中のハイカーもいました。PNT、PCT、Colorado Tarilなど海外トレイルを経験したハイカーもいました。これからのロングトレイルを歩くハイカーもいました。さまざまなハイカーが交わる姿は、まるで、僕も経験したアメリカのトレイルでのハイキングカルチャーにも通じているものだと感じました。
初日は断続的に強く降る雨と風。2日目は晴れましたが、強風の中と春らしい、変わりやすい天気でした。しかし、ほとんどの内容ができたことは、天気も味方をしてくれたのだと思います。そして、紹介を読んでいただいてわかると思いますが、本当に盛りだくさんの内容でした。みちのくトレイルクラブの皆さん、本当に楽しい時間を作ってくれてありがとうございました!
トレイルデイズは、トレイルの未来だと思います。トレイルは、ハイカーだけのものではありません。トレイルは、地域の人の協力がなければ成立しません。トレイルは、国や自治体の支えなくしてはできません。僕らが憧れる、アメリカの3大トレイルもそうです。1969年に大統領令とともに出された、National Trail Systemがあるから成立しているのです。名取トレイルセンターには、地域の人たち、地域でトレイルに協力してくれている人たち、トレイルの維持管理運営をしている人たち、自治体の人たち、環境省の人たち、そしてハイカーたちが、みちのく潮風トレイルの上で一堂に介して、トレイルの空の下、同じ時間を共有している。これが、ATで最初に示された「地域計画としてのロングトレイル」が、みちのく潮風トレイルでも芽吹いた、そんな瞬間を感じたのかも知れません。