CT Tarp

ハイカーズデポ土屋が5年間にわたりテストしてきたタープが製品化。コロラドトレイル、JMT、ハイシェラ、ツアーディバイドルートと海外数多のトレイルでテストと実績を重ねてきた。小さすぎず大きすぎずの絶妙なサイズ感、単体使用はもちろんハンモック併用にも使える汎用性。ソロ用ハイキングタープとしての必要十分を備えます。2018年版より耐候性の高いシルポリ生地採用。

仕様

重量
320g
サイズ
200cm × 280cm
素材
本体:20dn シルポリエステル
補強布:150dnダイニーマグリッドストップナイロン
仕様
タイアウトループ:周辺部 8箇所
内部 4箇所
ショックコード内蔵
カラー
Moroccan blue (深みのある青)
Khaki(茶緑色)

あるULハイカーの実践と実績を積み重ねた
ソロ用ハイキングタープ『CT Tarp』

小さすぎず大きすぎずの絶妙なサイズ、ソロ用シェルターとして十分に軽い、およそ300gの重量、12箇所と豊富なタイアウトループ、設営バリエーションをサポートするバンジーコードによる変形ギミック、そしてなによりもハイカーを魅了するのは、Hiker's Depot土屋が2011年のコロラドトレイル(CT)以降、ハイカーズデポが5年間にわたりアパラチアントレイルの「100 mile ウィルダネス」、ジョンミューアトレイル、ハイシェラトレイル、グレートディバイドマウンテンバイクルートと、海外でのロングハイキング&ロングツーリングで実践投入を重ねてきた実績です。

そんな、ハイカーが考えたハイカーのためのタープが Trail Bum®よりついに製品化。名前はプロトタイプが最初にテストされたフィールドにちなんで「CT Tarp」。そこにはこのタープのベースを考案したハイカーズデポ土屋の最も思い入れのあるハイキング、「中央ハイトレイル」ハイキングの略称“CHT”の頭とお尻の文字にも掛けられています。

単体使用はもちろん、市販のハイキングハンモックと併用できる汎用性の高さは現代ハイキングにおけるハンモックムーブメントを考えると大きな魅力でしょう。

日本でも使いやすい。ハイカーが使いやすい。トレイル上の経験から生み出されたありそうでないサイズ。タープキャンピングを積極的にするためのタープ。

Moroccan blue
Khaki
Royal

テント、ピラミッドシェルター、ツェルトと使ってきた経験のあるULハイカーにはシンプルの極みともいえるタープキャンピングを体験してもらいたい。そして思想や精神性からULハイキングに興味をもったハイカーには臆することなくタープキャンピングに挑戦してもらいたい。なぜならタープキャンピングは最低限のプロテクションと快適性を手に入れた上で、自然とのコネクションをもっとも感じられるスタイルの一つだからです。そのためのハイキングタープ、ハイカータープとしてデザインされたのが CT Tarpです。

レイ=ジャーディンとタープ

2000年代前半、ウルトラライトハイキングにおいてハイカーの固定概念に大きなインパクトを与えたギアといえば、「バックパック」「アルコールストーブ」「タープ」「ランニングシューズ」の4つでしょう。今日のUL的スタイルの雛形を提唱したレイ=ジャーディンは、自作キット(Ray Way Kit)というカタチでバックパックやタープを販売していましたが、タープに関しては『The Ray-Way Tarp book』(2003)という書籍まで執筆するほどの熱の入れようでした。実際、2016年にレイが来日した際には、

「タープは布一枚で外界から身を守り、快適な空間を作り出す。非常にシンプルなギアだから強い思い入れがある。」

と語っていたのが印象的です。レイのタープは耐風性を上げるために“ビーク”とよばれる庇がついた独特なスタイルだ。軽量ハイキングの創始者がある意味、最も愛情を注いでいたギアにも関わらず、その後のULHシーンにおいてタープがメインストリームに躍り出ることはありませんでした。
理由はおそらく、「設営が難しそう」「プライバシーが保てなさそう」「雨風に弱そう」「広い設営面積が必要そう」といったイメージを払拭しきれなかったからだと思います。しかしこの印象を語る人のほとんどはタープを使ったことが無い、もしくはタープをオートキャンプスタイルでしか使ったことがないのでしょう。タープはシンプルだからこそ使い方は自由自在なのです。それを理解してしまえば、上げた要件のほとんどは払拭できます。
マニアック、ストイックというイメージのあるULハイカーのコミュニティにおいても、タープキャンピングを実践するハイカーは少数派にすぎません。ましてやタープを主力商品としてラインナップする大手ブランドは皆無です。現在に至るまで、アメリカのハイキングシーンにおけるタープの位置づけはマニアックなギアという範疇を出ることはありません。

Swing Tarp とNINJA Tarp

日本の登山シーンにおいても、もちろんタープは少数派です。山岳地が急峻で平坦地が少ない日本では上記のようなタープのネガティブイメージが膨らんでしまうからでしょう。しかし、アメリカとは異なる状況もあります。沢登りや源流釣行といった渓谷を舞台とした幕営ではタープが積極的に活用されてきたという歴史です。日本有数の山岳テントメーカーアライテントでは、「ビバークタープ」(M:250×290cm/410g)という実用的なスクエアタープが定番として長きにわたりラインナップされています。ULHまたはタープというと、アメリカが本場のように感じる方もいるでしょうが、実際は個々のユーザーがフィールドでタープを積極的に活用してきた蓄積は日本の方がはるかに多いと感じています。そんな日本国内では、近年インディペンデントメーカーを中心にタープがちょっとした注目を集めています。2012年に FREELIGHT & Highland Designs のダブルネームで発表された「Swing Tarp スウィングタープ」(260×280cm/307g)と2015年にPaago Worksが発表した「NINJA Tarp ニンジャタープ」(280×280cm/505g) がその双璧と言えます。
スウィングタープはHiker's Depotオーナー土屋が2011年にコロラドトレイルでテストした自作タープのギミックをFREELIGHT代表の高橋氏が理想とするサイズ感に落とし込んでおり、豊富なタイアウトポイントと十分なスペースを確保できる超軽量モデルです。ニンジャタープはPaago Works代表の斎藤氏とスタッフ樋口氏が2年近くテストを重ねたモデルで、設営のしやすさとバリエーションの豊富さが広く受け入れらました。
タープのサイズ感や周辺部にショックコードを装備するギミックなど共通点も多いこのふたつのモデル。実は当店土屋とPaaGo Works樋口氏が以前同じ職場の同僚であり、日本のULHの創世紀に立ち会っていたこと、そしてベースとしてEXPED/Scout Tarp との出会いがあったことは非常に大きな影響を与え、多くの共通点を生み出したきっかけなのかも知れません。
スウィングタープそしてニンジャタープの登場はそれ以降の日本においてタープ観を変えるきっかけになったと思います。従来は沢登りや源流釣行の愛好家のものとして捉えられていたタープを、ハイカーやサイクリスト、キャンパーにとっても実用的な道具として認識させたのです。一部のULハイカーはそれまでもポンチョタープなどを使用していましたが、多くのハイカーにとってはそれらはあまりにもミニマルすぎたのです。スイングタープとニンジャタープの登場で、ようやくハイカーが使えるタープ、使いたいと思えるタープが発売されたのです。

注)ヘキサタープなどキャンプで活用されるモデルや、堀田貴之氏のムササビウィングといった野宿系タープはまた違う文脈で評価すべきタープとして、今回は割愛させていただきます。

ハイカーのためのタープとは

スウィングタープとニンジャタープ、定番モデルのビバークタープ。この3つのタープがあれば、ある程度のニーズには対応できそうに思えたましたが、問題点が無いわけではありませんでした。それはサイズです。上記3つのタープサイズを見てみると、サイズ感が似ていることが分かります。いわゆる8×10ft(240×300cm)といわれるサイズに近似しているのです。
海外で作られるタープは、生地の幅を基準にしてつくられることがほとんどのため、5×8ft(150×240cm)もしくは、そのちょうど2倍にあたる 8×10ftとこの2サイズに集中しています。5×8ftサイズはポンチョタープや当店で紹介しているソロ向けタープサイズです。ソロ用として十分なミニマルサイズではありますが、雨風にゆとりをもって対処したり、停滞時にゆったり過ごすには不向きなサイズです。一方、8×10ftサイズは2人または1人でゆとりをもってタープキャンピングできるデュオ用サイズとして認識されています。

上述の3モデルはゆとりのあるデュオサイズに類するタープです。 しかし、このサイズでは設営場所を大きく必要とします。日本でも自由度の高い渓谷内や、広大なアメリカの自然においてはそれもたいした問題とはならないでしょう。実際にデュオサイズだからこそ、雨天のタープ下でも様々な作業をストレスなくこなせる居住性の高さが約束されるのです。しかし、日本の幕営指定地や林間などでの使用を考えると、取り回しにストレスを感じてしまうこともあるでしょう。ソロサイズでは小さすぎる、デュオサイズでは大きすぎる。やはり「日本において使いやすい、ハイカーにとって使いやすいサイズ」というものがあるはずなのです。

*1 feet (ft) は約30.48cm ですが、どのメーカーもおおよその換算にしているのが現状です。また、世界的にはセンチメートルが基準のため、cmをざっくりとftに換算してるものと推測されます。誤差についてはcmの方を確認いただければと思います。

サイズと重量

  • ソロサイズ  150cm×240cm 480g
  • ミドルサイズ 200cm×280cm 320g → CT Tarp
  • デュオサイズ  240cm×300cm 240g

サイズに関してはシンプルに考えてみました。ソロサイズでは小さすぎる、デュオサイズでは大きすぎるならば、その中間、ミドルサイズが最もハイカー望んでいるサイズに違いない。そのサイズが200×280cm(約6.5×9ft)だったのです。あとはこのミドルサイズ(CTサイズ)が使用に耐えるかどうかテストを重ねていけば良いと思いました。

プロトタイプ最初のテストは20日間、800kmのコロラドトレイル。夏の中央分水嶺は午後になるとほぼ毎日雨や雹がふり、雷に襲われます。タープの連続使用において耐久性、耐候性そして居住性の理想的なテストになりました。結果、200×280cmというミドルサイズの有効性を強く実感したのでした。その後も毎年テストは継続され、テストハイカーの身長も164〜180cmと多岐にわたったことで、必要十分かつ最低限度のサイズ感に確信がもてたのです。なおこのサイズの場合、タープ各辺にカテナリーカーブを採用すると有効面積が少なくなるだけでなく、設営時に風雨の吹き込みが大きくなってしまう。サイズ的にもカテナリーカーブを採用しなくてもテンションをかけての設営が十分可能なサイズであるため、あえてプレーンな長方形としています。

重量についても目標重量を設定していました。一般的なシルナイロン製 8×10ftタープの重量はおよそ500g。5×8ftタープの重量はおよそ200g。わたしたちが考えるタープの重量は300〜330gとしました。また、日本にはツェルトという効果的なULシェルターがあります。ツェルトよりも軽いことは、ハイカーがツェルトではなく、あえてタープを選ぶ動機をつくるうえで重要だと考えました。軽さだけを考えるならばキューベンファイバーを素材に採用してもよいのですが、このタープは汎用性をもたせたい。周囲に巡らせたバンジーコードにより様々なスタイルで設営できるようにするためには、キューベンファイバーのように伸縮性の無いフィルム系素材は融通が効かないのです。設営時に融通が利くシルナイロンが結局はベストだと判断。重量と耐久性のバランスを考え、スタンダードな20デニールシルナイロンをプロトタイプでは採用しました。2018年の製品からは軽く耐候性の高い20デニールシルポリエステルを採用、タープ周辺に仕込んだコードシステム込で「実測 320g」という重量を実現しました。

12ヶ所のタイアウトループ

タープの設営バリエーションを確保するために重要なのはタイアウトループの数。これまで自ら使用してきたスクエアタープや多くのお客様から伺ったご意見もふまえ、タイアウトループは四隅(4ヶ所)と各辺中央部(4ヶ所)、さらにタープ面にも4ヶ所と、計12ヶ所に設けました。タープにかかるストレスはその大半がタイアウトループに集中します。そのため補強として140dnダイニーマリップストップナイロンをすべてのタイアウトループ部に貼付けています。現行のシルナイロンタープでここまで豊富なタイアウトループがあるのは、先に挙げたスイングタープとニンジャタープくらいではないでしょうか。

*下画像は旧カラーのものとなります。

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張り方のバリエーションについては、当HP内のHiker's Noteにある記事を参考にしてください。

タープ設営バリエーション その1|CT Tarp ベース

*下画像は旧カラーのものとなります。

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バンジーコードシステム

このCTタープを企画して以降、最も重要視したのが汎用性の高さ。シンプルな形状でも最低限のギミックで効果を発揮させたい。そのためにタイアウトループを豊富に設置することに加え、重視したのがバンジーコードによる変形サポートです。タープ辺縁部にバンジーコードを通し、コードロックで長さの調整を可能にします。これによりシンプルなスクエアタープに関わらず様々な設営バリエーションが可能になります。

*下画像は旧カラーのものとなります。

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写真のように入口部部分のバンジーコードを絞ることで、このような雨除けの庇を作ることが可能になります。もちろんバンジーコードによる整形ですから剛性はありませんが、タープのたるみを無くすことができるため、通常のタープでは作りにくい形状の設営を可能としています。ちなみに同様のシステムは先行例としてExped/スカウトタープに見ることができます。またPaaGo Works ニンジャタープではバンジーコードではなく、φ2mmのナイロンコードが各辺に仕込まれています。

シンプルなスクエアタープ。そのシンプルさはそのままにいかにハイカーにとって使いやすいタープに進化させられるか。
サイズ、重量、汎用性。 個人的な嗜好に偏ったものではなく、タープキャンピングに興味を持つすべてのULハイカーにとってベーシックなタープでありたい。
5年に渡るテスト期間はそうした意味でも必要な時間だったのです。

決定版であるとは言いません。しかし、サイズ、重量そしてバリエーションの豊富さにおいて、定番となりえるハイカーのためのタープだと思っています。

About the Trail Bum®

“Bum”とは、何かに熱中、没頭する人たちのこと。Ski Bum、Surf Bumといった言葉のように、Trail で過ごすこと、楽しむことが好きな人たちを、Trail bum(トレイルバム)と呼ぶことにしました。トレイルバムたちは、無駄が少なく、直しながらでも使い続けられるような道具を好みます。そしてトレイル上では限られた道具だけで長い時間を過ごします。長い旅の中でトレイルバム達にとって自然と街は同じ目線「どちらも日常」でフラットになるため、自然の中では高機能でありながらタウンユースでも馴染むシンプルなデザインを選ぶのです。そんな彼らのトレイルライフのように、シンプルでいて無駄の少ない道具や衣類をデザインし作ることを目的にできたメーカーが “Trail Bum®” なのです。

ロゴの意味

アメリカのロングディスタンストレイルの多くには "Blaze"と呼ばれる印があります。そのBlazeは微妙にラウンドした三角形のような形状をしており、それがTrail Bum のロゴのベースになりました。それに沿うように付けられたラインは “繋がっていく” “続けていく” 思いを込めて“道”を表現しています。この一歩はあの道に繋がっている。そう思いながら日々を過ごすTrail Bum たちの気持ちの一端と言えるのかもしれません。

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Trail Bum®のホームページはこちらから https://trailbum.jp