タープやフロレスシェルターとの相性が抜群のビビィ。グラウンドシートなどとしても使うことで持って行く意味も増える。カーボイキャンプを楽しむために。
仕様
- 重量
- Escape Bivvy / 228g(袋除く)
Escape Lite Bivvy / 146g(袋除く) - サイズ
- Escape / 213cm x 91cm(最大幅)
Escape Lite / 208cm x 81cm(最大幅) - 素材
- 防水透湿性のあるポリエチレンフィルムと不織布の合成素材
Escape / オレンジ、オリーブ
Escape Lite / オレンジ - 価格
- Escape / ¥9,300
Escape Lite / ¥7,800
* +tax
野宿派には愛され続ける道具、Bivy。それをタイベックと同様の構造をもった素材で作ったのが「Escape Bivvy」「Escape Lite Bivvy」。不織布とポリエチレンフィルムで構成された軽量な素材で、アルミ蒸着した裏面は体の熱を70%輻射するため体温保持に役立ちます。ビバーク などの非常用ではあるものの、繰り返し使うことのできる強度も持っています。詳細は分かりませんが防水透湿素材の為、野宿の際の夜露や朝露からも身を守っ てくれるでしょう。単体で使用する場合はありったけの服を着込み使うことを前提としていますが、その形状からスリーピングバッグカバーとしての使い方も考 えられます。また広げた大きさはグラウンドシートとしても十分でタープやフロアレスシェルターの時には二役をこなすことができるのです。
その名称のESCAPE からも推察できるように、積極的なビバーク道具として考えられている思います。ビバーク用という一つの使い方では限られてくるのですが、グラウンドシート として、またはドライパックライナーとしての使い方も検討すれば、荷物の軽減につながりより道具のメリットが生まれるのではないでしょうか。
Escape Bivvy
マミー型の形状。マチが付いているのでゆったりとした作りになっています。右サイドにジッパーが付いています。ドローコードを引っ張るとフードが丸まって被れるようになります。
Escape Lite Bivvy
よりシンプルな形状の封筒型。上半身部分から足元にかけて細くなっています。マチがないので見た目よりは中に入るとやや小さい感じがします。ジッパーがなく、肩くらいまで上下がめくれる作りになっています。
ビビィとスリーピングバッグカバー
Bivy(BivvyもしくはBivi)はBibouac Sackの略称。ビバークとは露営、野営のこと。その時に積極的に夜露など濡れから身を守るための、防水もしくは撥水性の生地を使用した寝袋の形状をした 袋(Sack)です。一般的に寝袋と言われるものは英語でSleeping Bagです。ということはビバークサックは寝袋と似た形状をしていても寝袋ではないのです。
たしかに欧米でBivy(ビビィ)というと、1人サイズのテントみたいな構造をしたものが多く見られます。顔周りの空間を確保する為にフレームなど が入り、素材は全体的に防水透湿素材が用いられています。その中にスリーピングバッグを入れて使うものです。ですので基本構造や使い方から言ってもビビィ は極端なワンパーソンテントという解釈になります。
ところが、そんなビビィの中にも最近はもっと寝袋の形状にそっくりなものが出て来ています。
スリーピングバッグカバー。これは日本の登山道具においては一時期非常に重用しされたものでした。しかし、このスリーピングバッグカバーという道具 が日本独自のものであるという認識の人は少ないでしょう。テントが重い時代、複数人で一つのテントを使うことは当たり前でした。その時どうしても外側より に寝る人はテントとシュラフがくっつきそのせいで寝袋が濡れてしまうものでした。今のような高機能服がない時代は雨が降ったら停滞というのはごく当たり前 のことで、何日もテントに閉じ込められていたなんて話も少なくありません。その時にずっと寝袋が濡れているのはあまり良いことではありません。どうしても 雨が多い日本のことですので、その中からスリーピングバッグという道具が生まれて来たのです。しかし、欧米ではそもそもそこまで湿度や濡れに対して考える 必要がありませんでした。ですので、スリーピングバッグというものを使う文化は発展して来ませんでした。
現在ではテントも軽くなり、様々な素材が高機能になりました。ソロや少人数パーティが増え、少人数の場合でも1人一張りが増えてしまった今におい て、テントの中を広々使えるのでスリーピングバッグカバーは必要ありません。撥水ダウンや防水素材をあらかじめ用いた寝袋もあります。スリーピングバッグ カバーを使用することでむしろカバー内に結露を起こしてしまい濡れてしまうデメリットも指摘されています。様々な状況が変化する中でスリーピングバッグカ バーの存在は小さくなっているのです。
ところがそのスリーピングバッグカバーと近い形状のものが日本以外から生まれてきました。そしてそれが必要とされる状況が新たに生まれてきているのです。
ビビィの変化
先に述べたようにビビィサックはどちらかというと1人専用テントみたいな作りのものがほとんどでした。それはアルパインクライマーなどがどんなに小さなスペースでも寝られるようにと使うことがほとんどでした。
しかし、アウトドアやハイキングの根底に流れている軽量化の動きはビビィにも同様に現れてきました。ビビィを軽量化していく流れは、ビビィをスリーピングバッグカバーに近づけていったのです。
また、その用途も軽量になるにつれて変化し、バイクやサイクリングなどの荷物をコンパクトにして、大げさで無く小さいスペースでも自由に寝られる様にしたいツーリングキャンパーやタープなどを好むハイカーたちにも使われるようになって行きました。
そういった動きの中でSOL Escape Bivvy は軽量化を進んでいき、スリーピングバッグカバーと同様の形状になりました。
Escape Bivvy とEscape Lite Bivvy
>Escape Bivvy の特徴
エスケイプビビィは一般的なスリーピングバッグカバーと同様の形をしています。短いですが右側にサイドジッパーも付いています。おそらく積極的に単体使用 することを狙ったものなのでしょう。重量面でも大きなアドバンテージがあり、一般的な3層防水透湿素材を使ったスリーピングバッグカバーと比べてとても軽 く、2層防水透湿素材と同等の軽さになっています。
3層防水透湿素材のカバー重量 300g前後から500g台まで
2層防水透湿素材のカバー重量 200g前後から300g台まで
Escape Bivvy の重量 228g(実測値)
3層超軽量モデル F社 280g
2層超軽量モデル M社 180g
3層のものが2層との違いで言うのが「単体使用ができる」ということ。これは裏地が付いているからなのですが、これは少し事実と異なります。確かに2層構 造は裏地がないので肌にべたついたりするし、直接触れてしまうことからそのような言い方になっていると思います。しかし、だとしたら、2層や2.5層のレ インウェアは着られないことになってしまいます。別に裸で入る訳ではないのですから、実際には3層でも2層でも「単体使用」は可能です。3層は安心感はあ るでしょう。しかしどうしても重くなってしまいます。現行で一番軽いものでも、300gを少し下回るくらいでしょう。2層のものになるとぐっと軽くなりま す。200gを切っているものもあるので、非常に軽量と言えます。
エスケイプビビィは2層の最軽量モデルまでは行かないものの、200g台前半の軽さを持っています。スリーピングバッグカバーほどは横に広くないから軽い のかもしれません。しかし、それでも3シーズン用のスリーピングバッグを入れた時に十分な余裕があります。また単体で使用したことを考えても、輻射熱を利 用できることを考えれば、スリーピングバッグカバーの単体使用よりは温かさを狙えるでしょう。
>Escape Lite の特徴
その特徴はシンプルさと軽さに尽きるでしょう。エスケイプライトは広げた時に上が広くしたが狭くなっている縦長の逆台形ともいえる形。マチもないので地面 に置けば綺麗に一枚のシート状に広がります。まるで「一反もめん」のような形です。実はこの形状を見た時にエスケイプビビィでは無かったひらめきが生まれ たのです。完全に平たいシート状になるのでこれで十分にグラウンドシートとして使えます。またフードなどの余計なパーツが無いことで、少々大きいものの パックライナーの役割も出来るような形になりました。もちろんEscape でもできることですが、Lite だから使いやすいことは間違いないでしょう。
例えばEscape Lite Bivvy とタープを組み合わせたとします。タープには床がありませんので、何か敷物を敷きます。昔のカーボーイで言えば毛布といったところでしょうか。もちろんス リーピングマットだけという人もいるかもしれません。そのシートとしてはSol ヒートシートブランケットやタイベックシート、オールウェザーブランケットなどがあります。それの代わりにエスケイプライトビビィを敷いてみれば、面積こ そは狭いですが十分にグラウンドシートとしての役割を果たします。この時、生地は二枚分重なり、また遮熱層も重なることで、ある程度の断熱効果が狙えるよ うになるでしょう。そのまま快適な時が続いたら良いのですが、急な雨が降ってきたり風が強くなってきたとします。その時にタープだと風雨の吹き込みが気に なります。風が直接ではないものの寝袋に当たれば、その場所からは熱が奪われていきます。そんな時はEscape Lite Bivvy に入ればグラウンドシートとしての役割からビビィへと使い方が変わります。タープやシェルターの結露が気になるときやガスにまかれてダウンが湿るのを防ぎ たい時にも良いのかも知れません。
このように一つで二つの役割をしてくれれば、持って行く道具を簡素化して軽量化も同時に図れます。
重量は平均で約150g。これはビビィやスリーピングバッグカバーとして考えら、ものすごい軽量です。2層の防水透湿素材のものと比べても20%以上軽 く、Escape と比べたら35%ほどの軽さと言えます。ではEscape Lite をグラウンドシートと比べて見ましょう。
SOL ヒートシートブランケットソロ 約80g(誤差大きい為平均値)
ソフトタイベックシート(150 x 200cm)約145g(誤差大きい為平均値)
SOL エスケイプライトビビィ 約146g(実測値)
ヒートシートは1mm以下の厚みのポリエチレンフィルムの為とても軽量で完全防水のシートになりますが、やはり強度への心配などを感じる方は多いでしょ う。強度のあるものとしてタイベックシートも人気ですが、重量の対してはかさ張りやすく、耐水圧1000g/㎡.24hと低い(膝をついたらしみ出してく る程度)のが難点です。エスケイプライトビビィはタイベックなどと同様の素材で、スペックも出ていないので性能比較は難しいですが、何と言っても軽いのが 驚きです。ソフトタイベックシートとほぼ同重量で、スリーピングバッグカバーと比べれば圧倒的です。3層最軽量モデルの約半分はすごいことでしょう。また 耐水圧などの性能に関しても、タイベックは確かに耐水圧は低いですがそれによるひどい漏水の報告などがないことからも、エスケイプライトが同じ程度のス ペックだとしても十分だと考えられます。加えてタイベックは防水のみに対して、エスケイプライトはヒートシートとタイベックの両方の機能を備えていてかつ 軽量と言えるので、タイベックシートを持って行くよりもよりメリットが大きいのです。さらにいざとなればスリーピングバッグカバーとしての使い方もできる のです。
長さは200cmのマットを載せても十分な余裕があります。タープのグラウンドシートとしてはジャストであり、十分なサイズといえます。
>Escape と Escape Lite の違い
特にメーカーでは何も公表はありませんが、両方を触り比べてみると、若干エスケイプライトの方が薄く感じます。しかし、極端な薄さではないため特に大きな違いとは言えないでしょう。
マチが無い分、エスケイプライトの方がシートとして広げた時には綺麗に使えるように感じます。どちらに主を置くのかで変わってくるのですが、スリーピング バッグカバーとしての使い方を優先するなら、エスケイプビビィの方が良いでしょう。グラウンドシートとしての使い方を優先するなら、エスケイプライト。ど ちらにしても軽い方が良いのであれば、エスケイプライトの方が使える用途が広いように思います。
寝袋として単体で使用する際の注意点
その形状から寝袋の代わりとして使う人もいるのですが、保温性は無いため、寝袋として使うのは注意が必要です。
想像してみて下さい。ビビィやスリーピングバッグカバーに使われている素材の多くは雨具と同様のものです。雨具やレインウェアを着るだけで空気がこもるの で当然暖かく感じます。しかしじっとしているとレインウェアだけでは寒くなり、フリースやダウンなどの保温ウェアを内側に着ることになります。その時にレ インウェアと体との間には断熱層になる空気が溜まる隙間があり、それがあるから温かいのです。
ビビィだけで寝るというのは雨具だけを上下着て寝るのと大差ないことなのです。保温とは断熱性と遮熱性の複合で起こる現象です。エスケイプビビィの場合輻 射熱を狙えるので、遮熱効果はありますが、それと同じくらい生地が薄いことで熱が逃げていきます。あるだけの服を着て直接ビビィと体が触れないようにし、 断熱層を確保することが大事です。昔から沢屋やクライマーの中にはスリーピングバッグカバーだけで寝てしまう強者がいます。やはり軽量化やコンパクト化が 狙いなのでしょう。あくまでも道具の限界を知っての上で使っているのだと思いますし、個人差もあるものです。ですので、絶対使えないとは言いませんが、道 具の構造や仕組みを良く理解した上で使うことが大切です。
それから、輻射熱が70%というのも非常に大きな数値だと思います。しかし、空間がある程度なければ輻射は起きないので、どれだけ断熱層を上手く作り上げるかが必要です。
また入った直後温かく感じるものですが、それはまだ交感神経が働き発熱をしているから輻射効果も大きいのでしょう。しかし人間は寝るときになると副交感神経が活発になり、体温が低下してきます。そうすると当然輻射効果は落ちますので、温かさはぐっと下がってしまうのです。
メーカーとしては単体使用(衣服をどのように着るかの設定が不明)で10℃を限界と考えているようですが、かなり難しいところでしょう。欧米人は発 熱量が日本人と比べると大きいので、その数値をすんなりと信じる訳にはいきません。日本人男性であれば単体使用で15℃くらいを限界として考え、女性の場 合は20℃位が単体での限界温度になるのではないでしょうか。この温度も温かいと感じるというよりは、なんとか寝られる、といった程度だと思います。もし 単体で使用しても十分温かく寝られるのは、20℃以上だと推測できます。
単体での使用とは言っても、要はどれだけ着込むかにかかってくるということです。もし軽さや保温性のことを考えるのであれば、複数のウェアを持って 行くよりは、寝袋を持って行った方が結果的に軽量になります。無理に単体使用にこだわらず、自分の好きなスタイルや山行方法、アクティビティの内容に合わ せて使い分ける必要がるのです。また、どうしても内部結露が起きるでしょう。ゴアテックスなどの高機能素材といえども2.5レイヤーではほとんどの場合で 結露が起きますし、エスケイプビビィの場合はそれ以上に結露が起きることも覚悟する必要があります。
エクストラスキル ~もっとシンプルに軽くするには~
もっと軽量化を図りたいハイカーは、Escape Bivvy もしくはEscape Lite Bivvy をパックライナーとして使ってみてはいかがでしょう。もちろんパックライナーとして使うには大き過ぎますし、シームシーリングもしていませんが、バック パック内での防水には十分です。それにパックライナーとして考えれば重量も決して軽くないです。しかし、パックライナー兼グラウンドシート兼ビビィとして 使うと考えると、一気に数百グラムの軽量化が可能になるのです。
シンプルだからこその多用途
本来の使い方として考えるのなら、ハイカーとしてはスリーピングバッグを持って行く方が素直ですし、目の前の数字に踊らされるのではなく、スリーピ ングバッグを使うことでの結果が軽量化につながる道を選ぶ方が良いでしょう。しかし、タープを使う場合どうしても雨や風の吹き込みでの濡れや湿気によるダ ウンロフト低下や風が当たることで熱を奪われる温度低下が気になるハイカーは検討してみる価値のある道具ではないでしょうか。
タープを張って夜露をしのぎつつ、天気が良ければ、グラウンドシートとしてのみ使用。雨が気になったら中に入ってしまえば濡れも気にならず、保温力 もアップします。ゆとりがあるサイズですから他の荷物も一緒に入れてしまっても良いのではないでしょうか。ビビィのみのカーボーイキャンプ(幕無しの野 営)はアウトドアでの醍醐味です。顔の上に深々と落ちてくる湿り気や空気を感じるのも楽しいものです。しかし日本の朝晩は露は想像以上の量になるときがあ ります。そんなときはビビィがあると助かります。
タープでのキャンプや、カウボーイキャンプ(幕無し野営)は経験してみるとなんとも言えない気持ち良さがあるものです。たしかに日本の気候は変わり やすく、寝るとき晴れていても夜半に雨になるという時もあります。夜露朝露も多いのもハードルを上げているのかもしれません。ですが、夜に包まれているあ の感覚は野営の醍醐味と言えるのではないでしょうか。ぜひ、「Escape Bivvy」「Escape Lite Bivvy」をもって積極的ビバークを楽しみに、ハイキングの自由を感じに行って欲しいと思います。