ハイカーGNU(ヌー)のアイデアから生まれた最初のアイテムにしてシリーズ第二弾「Gnu S+Cape ヌーエスケープ」。レインケープとしても十分軽い130gの重量にして、最低限のシェルター機能も併せ持ち、レイン+シェルターの枠を超えてULハイキングをさらなる軽さの世界へと誘います!
仕様
- 重量
- 総重量 135 g
本体:130g
収納袋 5g
*誤差あり±5% - 素材
- 本体:20dn シルポリエステル
補強布:150dnダイニーマグリッドストップナイロン - サイズ&カラー
- サイズ:ワンサイズ
カラー:Moroccan blue
最低限にして 大きな意欲
『Gnu S+Cape』
軽量化の最初にして最終手段の一つでもある「雨具&ビビィ」「雨具&タープ」もしくは「雨具&シェルター」との兼用品。各メーカーからそれぞれの工夫のもとリリースされていますが、その中でもひと際異彩を放つのが『Gnu S+cape ヌー・エスケープ』です。
*以下画像は、旧カラーのものとなります。仕様は同じです。
元の名称は「Gnu Shed+Cape」でしたが、呼びやすさ覚えやすさを考えて改名しました。その名は「Gnu S+Cape ヌーエスケープ」! SにはShed、Shlter、Special、すごい(sugoi)などのSが掛かっています。
Capeというレインギアとしての特徴を備えながら、Shelter(小屋・避難所)として最低限のビバーグ道具としての機能も備えています。それだけでいえば他にも類似品はありますが、何と言ってもその重さはたったの「130g」です。
これは類似品がタープやシェルターをベースとしたレインギアであるのに対し、あくまでもケープというレインギアがシェルターになるように考えられているために生地の用尺が少ないことが要因です。軽くて小さい分シェルターとしてはギリギリすぎるサイズで体を横にすると脚が出てしまいますが、体を丸めれば175cmくらいの男性でも全て隠すことが可能です。ですが設営時の高さが高いので、快適に座っての使用ができます。座った場合には内部空間に余裕があるので、調理なども可能です。シェルターとして立てるには最低120cm以上、推奨135cm以上の長さのポールが二本必要になりますが、そのおかげで脱がなくても設営できる構造になっていたり、ペグダウンするところが最低二カ所で済むなど、ミニマルさが好きなハイカーGnu(以降、ヌーさん)のこだわりが詰まっています。生地のバイアス方向への伸びを利用した出入りの工夫など、ただ小さく軽いというところに収まっていないのがウルトラライト、ミニマルな道具としての可能性を感じさせてくれるのです。デイハイキングでの軽量レインギアとしてだけでなく、緊急時のビバークアイテムとしても使え、かつ130gという軽量さも併せ持っているので、いつでもバックパックの中に忍ばせといても良いでしょう。またその軽さや汎用性から考えても、ULを超える超超軽量ハイキングスタイルへの可能性も見えてくるのです。
レインギアか シェルターか
こういった雨具と避難用具を兼ねたアイテムは、ULの一つの象徴にして、日本でのUL初期にも好まれて使用されたアイテムの一つです。しかし今では「お話」の中の存在。そういったアイテムがあることすら知らない人の方が多いかもしれません。それでも、各メーカーでは継続しているところも多いですし、近年になって新しくリリースされたものがないわけでもありません。
雨具と屋根を兼用する道具の元は、軍の払い下げ品にあるポンチョタープがベースとなっていると考えられます。基本的な道具の重さが現在よりもだいぶ重かった時代、雨具とシェルターを一緒にして軽量化することは切実なことだったのかもしれません。戦前に書かれた『ハイキング/茂木槇雄』には、日本でもマントと兼用の「シート・テント」というものが紹介されています。内容や絵からするとタープだと思われます。まだ自立式テントのない時代においては、床ありテント、床無しテントと同様にシート状テントとして認識されていたのでしょう。
「ポンチョタープ」は、レインギアだけというよりはタープ、バックパックカバー、グラウンドシート、ビビィとして活用できる多用途さが特徴で、「タープとして使える最低限のサイズ=240cm*150cmという1人用タープの平均的なサイズ」というのを基準にしています。しかし、身長175cm以下のハイカーにとっては丈が長すぎるし、体周りに余っている部分も多く、登り下りの際に足元が見えにくく裾を踏みそうになったり、風が強い時に煽られたりすることもあります。そのためポンチョタープは、ポンチョとしては丈が長過ぎるようです。かといってポンチョとして使いやすいサイズで設計するとタープとしては小さすぎるのです。要するにアウトドア用のポンチョの場合は、あくまでタープとしての使用が前提になります。
タープとして使用する場合はロープが必須と言えます。大きさによってはロープがなくても設営できなくはないですが、もしポンチョタープをロープなしで張ろうと思うとただ寝るだけの縦長スペースしか作れません。良い点は支柱を「立ち木」など自然にあるものを使用できる点です。ですがこの場合も結局ロープありきになります。重量はもちろん素材にもよりますが、平均で約200gといったところでしょう。
同じように兼用タイプで名品といえば、Six Moon Designs / Gatewood Cape です。シックスムーンの代表的モデルであるLuna Solo ルナソロと同様の形状になるシェルターがレインギアとしても着用できるように工夫されたもので、居住性を重視した「ポンチョタープ」として考えるとこれほど良いものはないでしょう。しかし、ポンチョタープ同様にあくまでもシェルターありきのため、ケープにしては大きすぎて小柄で身長の低い人にとっては着丈も幅も大きすぎるのは想像に難くありません。
このシェルターは形状的に基本ロープを必要としませんが、居住性を重視するため生地の用尺が大きく重量が増えます。また固定する箇所が多いのもこのタイプの特徴でしょう。重量は実測で330g。シェルターとしての快適性を考えれば十分軽いでしょう。しかし、単純に重さだけでヌー・シェッドケープと比べると二倍近い生地を使用していることになるので、どれほど大きいか容易に想像できます。ロープ不要ですが、支柱となるポールが必要です。130cm以上の丈夫で落ちている木を探すのは決して楽ではありません。上から引っ張り上げることは可能ですが、簡単ではないでしょう。
こう考えてみると、やはり「Gnu S+Cape ヌーエスケープ」は同じようで見ている目線が違うのがわかります。レインギアとしての使用が大前提にあり、まずはケープとして快適に使うことができる。そしていざとなれば、最低限身を守ることが可能なミニマルなシェルターにすることができますし、工夫さえすればある程度の快適さも手に入れられる。そして軽いからこそ、レインギアとしてはたまたビバークギアとして、いつでもどこでもバックパックに忍ばせてもおいて邪魔になりません。
重量はたったの130g。160 cmくらいまでの人ならギリギリ生地が下に付きません。もし邪魔なら結んでください。設営に基本ロープは不要です。ペグダウンする箇所もたった二カ所です。設営には最低でも「120cm以上」のポールが二本必要です。それは、ヌーさんがいつもトレッキングポールを使用するからです。なるべくまっすぐで120cm以上の折れた木を二本探すのはなかなか楽ではないです。この点についてはポンチョタープには勝てません。しかしヌーエスケープ自体が軽量ですから、マウンテンキング / カーボンポール125(126g/一本)を使っても、だいたい380gくらいで済みますし、118cm・50gのカーボンタープポール(エバニュー)を二本使用して、突き上げる部分のフードを結んで突き上げ位置を調整さえすれば、容積は狭くなりますが設営は可能な上、合わせても230gの超軽量セットとなります。ただし、もし快適性を考えてポールを選択するなら、135cm以上、140cmくらいのポールでしっかりと高さを出して使うのが良いでしょう。ヌーさん自身、快適に使いたい場合には、140cmまで伸ばせるトレッキングポールを使っているみたいです。
ヌーさんからこの話を聞いた時にはすでにシェルターとしての使用を念頭に置いていたので、その違いが見えにくくはありました。ところが、実際に彼が近所のお直し屋さんに無理を言いつつも自力で作成してきたサンプルを見たときに感じた面白さや可能性みたいなものは「そこ」にあったのだと認識させられました。本人はイマイチ「そこ」のところはわかっていなかったように思えますが、ハイキングという実践の中で考え出されたものは、本当に無駄がなく、しかしその中で最大限の効果を出しているのだと改めて感じさせられました。ヌーさんはこう言っていました。『もっと軽いビバークギアがあればもっとみんなが安全にハイキングを楽しむことができるのに』。表面的なひょうきんさや明るさの裏にある、真面目で慎重な彼だからこその気遣いや思いなのでしょう。まさに最適なアイテムができたのではないでしょうか。
レインケープの使用感
兄弟商品である「Gnu Cape」はケープとして使いやすくなるように考えているので、正面は足元の見やすさ動きやすさを考えて短めにカットされていますし、袖も自然と手が出せる長さになっています。
それに対して「Gnu S+cape」はケープありきとは言え、最低限はシェルターとしての機能を留めるために丈や袖は少し長く感じるかもしれません。写真にもあるように身長165cmの男性が着て裾は地面に付きません。長すぎると感じるなら前面の末端を結んでしまえば良いでしょう。袖は基本的手が隠れてしまう長さですが、末端のループに指を通せば使いやすくなりますし、手を保温するにはちょうど良い長さとも言えます。
丸みを帯びたヌーケープと違って、少し大きめのバックパックまで覆い被せることが可能です。写真で背負っているのはHMG/ウィンドライダー2400(約40L)です。ヌーケープが30L程度が限界なのに対して、泊まり道具を入れた40L程度のバックパックまで十分対応できます。
スナップボタン等がありませんので、風に対しては煽られやすくなりますから、基本的には森林限界下での使用が主になるでしょう。もし背中側のばたつきを抑えたければ両サイドをしっかり握って斜め下方向に引けばバックパックに密着させるので、短い時間であれば対応可能です。
シェルターとして使う場合
【設営】
設営の仕方は非常に簡単です。着た状態での前後がペグダウンなどで固定する二カ所になります。
- 前後をペグダウンまたは固定します。
- フードのドローコードを絞り切ります。
- 付属の袋でポールのグリップ側を二本まとめます。
- ポールの袋でまとまったグリップ側をフードに差し込み立ち上げながらポールを両サイドに向けて逆V字に開きます。
- ポールの石突きをループに引っ掛けます。
- 最後に全体の張り具合を調整します。
写真では固定する道具の関係で全体に高さが少しでていますが、地面に固定できる場合はもう少し低くなるでしょう。
【出入り】
出入りする場所は地面に固定をしていない両側のどちらからも可能です。この方法ができるのはバイアス方向の生地の伸縮を利用したものとなります。
- ポールの石突きにかけていたループを外します。
- 上に滑るようにずらします。
その他にも工夫としては、ポールの石突きをループにひっかけるのではなく、バンジーコードとコードロックなどを利用して、簡単に引っ掛けられるようにしたり、出入りの際の生地が滑り落ちてこないようにコードや面ファスナーなどで引っかかる部分を作ってあげても良いでしょう。
身長165cmのヌーさんが足を伸ばして寝た場合でも脚がでてしまう。晴れた日はゆったり。雨の日はサイドスリープで丸まれば、身長175cm男性でも全身カバーできます。雨の日でも脚を伸ばしたければ、スリーピングバッグカバーを使うか、防水のシートとかを足だけかけても良いでしょう。
U2 Styleのススメ
Ultralight Hiking。「UL」と略されるこのスタイルの基本は5kg以下。厳密に言ってしまえばアメリカ中心なので、10 pound(約4.5kg)以下となるのですが、ヌー・シェッドケープだからこそ可能になるのが U2スタイル。すなわち〈Ultralight 2nd〉でありBase weightが〈Under 2kg〉でのハイキングのおすすめです。
以前よりSub-ULという言葉は使われていました。Subには「副」「代わり」といった意味以外に「以下」「下位」という意味があります。ようするにSub-ULとは「UL以下」と言いたいわけです。だいたい3kg台のことを指していたと思いますが、当オーナー土屋は最近のベースウェイトが温暖な季節では3kg台が普通になっているようで、恐ろしい限りです。
ですがここではそれよりも軽い2kg台のすすめです。スタッフの長谷川が中心になって考えてみました。これはヌーエスケープがなければ思いつきもしなかったでしょう。以下装備リストです。
【ベースウェイト】
Gnu S+Cape Ver. for Warmth season
- Gnu S+Cape 130g
- HD Sub-s Quilt 350g
- 山と道 minimalist pad 55g
- トレイルバム バマー 315g
- チタンペグ3本 18g
- ポリシート 80g
- クッキングセット(チタンカップ、風防、エスビット) 85g
- マウンテンキング カーボン125 252g
- HD ダウンカーディガン 135g
- ペツル e-light 26g
- Exped コードドライバッグ 23g
- カタダイン be free 58 g
- プラティパス プラティ2L 40g
- フードバッグ CFスタッフサック Lサイズ 10g
- その他(FAキット、トイレキットなど) 200g
- スウィングフレックス 210g
合計/1987g(傘なしで1777g)
【参考として食料】
食料 2泊3日 984g
- オーチャードバー 40g 2本*2 160g
- おかき 50g*3日分 150g
- 切れてるチーズ3枚 25g*3 75g
- トルティーヤ一枚 40g*2 80g
- 魚肉ソーセージ 95g*2 190g
- かりんとう 24g*3 72g
- アルファ米一人前 114g*2 228g
- みそ汁 14g*2 28g
- 水 行動中 1000g
- エスビットミリタリー*3個 42g
パッキングウェイト/3818g
実際には細々としたものが加算されるので、厳密にU2を目指すなら傘のスウィングフレックスは無しとなります。しかし、100g台の折りたたみ傘などに変更すればまだ余裕はあるでしょう。スリーピングバッグはミニモキルトではなくサブエスを。ミニモキルトはレース用であってハイキングとしては保温性が十分とは言えないからです。
もしヌーエスケープをポンチョタープにするなら、+70gにペグも+18g。張り綱はだいたい+30g。合わせて1895g。細々したものを足すとギリギリです。傘を足す余裕はなくなります。
ゲイトウッドケープはシェルターだけで330gで、+200gになるので、U2スタイルには大きな負担になりそうです。
例えばこれを軽量なテント「ツェルト2ロング」にすると、レインウェアが必要になってしまうのです。そうすると当然ながらU2の壁を超えることが難しくなります。もちろん他にもっとギリギリまで削ればという考えもあるでしょうが、安全を反故にする軽量化であってはならないと思います。
実はこのU2スタイルはまず「レインギアとシェルターが一緒」になっているというところにポイントがあります。その点ではポンチョタープも同じです。しかしポンチョタープは意外と付属物が多い。それに対し、ヌーエスケープは軽いだけではなく設営にかかる道具もミニマルなのです。だからこそ余裕を持ってU2スタイルが実現できるのです。
もちろんこのスタイルは誰にでも勧められるものではありません。それに我慢比べでもありません。寒いのを我慢する。安全性を削る。これは決して軽量化の本来の目的ではないと思います。もちろん、ULハイキングというスタイル自体が我慢の部分がないとは言えません。でもそれって自然の中に入ると普通にあることですよね。なにも軽量化したから我慢が増えるとも思いません。事実僕は軽量化する流れでいつのまにか組み合わせたフルサイズのマットに寝るようになっていました。トラディショナルなスタイルの時には他が重いからと足元がバックパックとしていましたが、そんなことをしなくても温暖な季節は4.5kgくらいで普通にいけるようになったのだから不思議なものです。しかしそこで留まっては面白くありません。人生面白く、楽しくしたい。それと同じことです!?
ULハイキングとは軽くする行為そのものであると僕たちは考えています。実際のところULスタイルでどこに行けたとかは関係ないと思います。よく「そんなんで北アルプス行けるの?」とか言われますが、北アルプスに行けなくたって山は楽しめます。自然は楽しめます。ULハイキングを楽しむのはどんなフィールドでも良いのです。ちょっと裏山へでも良いですし、歩き旅のためにでも良いわけです。そして、重量が何kgということが大事とは思っていません。ULハイキングの先には「重さに気を取られない自由」があると思うのです。それを知るためには、感じるためには、自分が「我慢する」限界を知ることが必要です。僕が今までで一番軽くしたのはベースウェイトで約3.8kgくらいです。『あまりの歩く軽さに驚くとともに、こんなに少ない荷物でも楽しめることに気がつかされた。むしろ物が多い、重いハイキングよりもどれほど楽しかったか。』その時の感動は今も忘れません。そこから少しだけ自分が欲しいものを足したり引いたり。今では上記した通りですが、久々にあの頃を思い出しつつ、もう一歩先に。もしかしたらまだ、もう少し、もっと軽くしたら新たなハイキングの楽しみが見えてくるのかも。そんなワクワク。そんなドキドキ。それはULハイキングを知った頃の気持ちと同じようです。
できる?できない?そんなことよりも、まずちょっとやってみませんか。まずはそこからですよ。
軽いのに、小さいのに、たくさんのことを想像させてくれる、いっぱい楽しませてくれるそんな不思議な「Gnu S+Cape」。おひとついかが?