Gossamer Gearが北米ロングディスタンスハイカーからの支持を強固なものにした立役者。同社を代表するバックパック「ゴリラ」が2024年にフルモデルチェンジ。従来から定評あるハーネス類のフィット感の高さはそのままに「腰荷重」を前提とした構造へと大きく舵をきりました。2020年代に入り、PCT、ATといった北米長距離トレイルにおいて腰荷重バックパックが再注目されている潮流と無関係ではないでしょう。
ULバックパックというよりも、現代のロングディスタンスバックパックへと変貌したGossamer Gear代表作のバージョン6。
仕様
重量:907g / Mサイズ(本体 462g、アルミフレーム 122g、パッド 65g、ヒップベルト 258g)
容量:50L
背面サイズ(適合身長):S(〜165cm)・M(160cm〜185cm)・L(180cm〜)
素材:70D & 100D Recycled Robic Nylon
色:Grey、Yellow
高いフィット感と安心のサポート
ULギアのパイオニアブランドによる
完全腰荷重のロングディスタンスバックパック


1998年に産声をあげたGossamer Gear(当時はGVP Gear)はULバックパックメーカーとして最古参のひとつであるパイオニアメーカーです。レイウェイバックパックの系譜を受け継ぐモデル、ひたすらに軽さに特化したモデル、ULバックパックメーカーとしてはじめてアルミフレームを搭載したモデル、と四半世紀を超える歴史の中でULバックパックのマイルストーンといえるモデルを世に出してきました。その中でゴリラは同社ふたつめのアルミフレーム搭載モデルとして2008年に発売がはじまり、北米のハイキングシーンにおけるGossamer Gearのポジションを確たるものにした立役者です。
アルミフレームとそれに接続したウエストハーネス、幅広く肉厚なショルダーハーネス、背中のカーブにフィットする背面。そのフィット感と適正な荷重サポート機能は多くのハイカーから長きにわたり支持されてきました。そのゴリラが2024年、6回目のアップデートをむかえました。従来の肩甲骨から肩にかけての上半身荷重前提の構造から、腰荷重前提の構造へと大きく舵をきったのです。背負う荷物が軽くなれば、腰荷重は不要である。ULハイキング、ULバックパックのテーマともいえるこの立ち位置からの離脱。ULハイカーへの裏切りともとれるこの変更の理由はどこにあるのでしょう。まずはそこからみてみましょう。
現代のロングディスタンスハイカーのニーズに応えたい
北米の長長距離トレイルであるパシフィック・クレスト・トレイルやアパラチアン・トレイルにおけるスルーハイク成功率をあげるための方法論としてうまれたのがウルトラライトハイキングとウルトラライトバックパックです。そこではハイキングで持つ道具を必要最小限の品目におさえ、かつそれらの道具を極限まで簡素化することが軽量化を支えています。こうしてベースウエイトを4-5kg、水や食料などを加えたトータルウェイトを8-10kg程度におさえることがULハイキングの基盤となったのです。しかし近年の北米長長距離トレイルのスルーハイクにおいては山火事の頻繁な発生により大幅な迂回を強いられることが珍しくなく、運搬する食料が増加傾向にあります。またハイカーの増加によりスタート時期が分散したことでハイカーによっては季節性ギアによって装備が増えてもいるのです。こうしたことからスルーハイカーのベースウェイト、トータルウェイトはともに増加傾向にあり、トータルで12-14kgの荷物を支える必要が強くなったのです。そこでコロナ禍以降、ロングディスタンスハイキングのシーンでは腰荷重を前提にした構造のバックパックへの関心が一気に高まったのです。
ゴリラは元々、アルミフレームもしっかりとしたウエストハーネスも備えていましたが、腰荷重を前提としたつくりではありませんでした。腰を拘束することなく、歩行の自由度を高める意味からも、基本は肩甲骨から肩にかけての上半身荷重、ウエストハーネスはあくまでふられどめという歩荷のような背負い方を基本としています。そのうえで上半身の疲労が気になったり、荷物が重たく感じる時などはバックパックの位置を下ろしウエストハーネスで腰骨をホールド、状況によって腰荷重にも対応するというつくりなのです。これは他のおおくのULバックパックメーカーも同じです。
しかし、上記のようなロングハイキングシーンの変化に対応するように、ゴリラも腰荷重を前提とした構造に大きくモデルチェンジしたのです。これによりGREGORY、OSPREY、MYSTERY RANCHといった従来からのバックパッキングパックと同じ構造、同じ背負い方になったのです。典型的なULハイカーのためのバックパックではなく、より幅広い長距離ハイカーのためのバックパックであることを選んだのです。
腰荷重のための機構
アルミフレームとウエストハーネスの連結方式


ショルダースタビライザーの採用



ゴリラの仕様





Gossamer GearがULバックパックメーカーとして2006年にはじめてアルミフレーム搭載モデルとしてマリポサを発表した時もULハイカーたちは「改悪」だと評したことがありkました。しかしGossamer Gearは同時期に軽さに特化したマーマーも発表しています。かたや長距離ハイカーのため、かたや先鋭的なULハイカーのため、両方のバックパックをULという土俵の中で表現できる。その懐のひろさがGossamer Gearが四半世紀の長きにわたり北米ハイキングシーンで支持されてきた理由でしょう。現在もG4-20、Kumo、MurMurとフレーム非搭載で軽さに軸足を持つULバックパックを同社は数多くラインナップしています。懐古ではなく、現在進行形のULバックパックを、ロングハイキングバックパックをつくり続けています。
腰荷重を前提とした構造に生まれ変わったゴリラは、国内外の長距離トレイルを旅するハイカーはもちろん、軽量化を志向するけれども、いままで使ってきた腰荷重バックパックの背負い心地を手放したくないというハイカーにとって最も力強い味方になるバックパックではないでしょうか。軽量化の恩恵をより多くのハイカーに届けてくれるバックパックがGossamer Gearゴリラなのです。