Top Quilt TS

 ハイカーズデポの夏の定番寝袋トップキルトが、2026年春に新しく「トップキルトTS」へモデルチェンジしました。このページではこれまでのトップキルトに軽く触れつつ、トップキルトTSの解説をしていきます。

 

トップキルトについて

 ハイカーズデポ初めてのオリジナル製品であるトップキルトは2009年から販売を始めました。今でこそ認知された感のあるキルト形状ですが、当時は一部の好事家が北米ULガレージブランドの製品を取り寄せたりMyog界隈が自作したりするくらいで、 一般的には知られていませんでした。そんな時代ではありましたが、キルトの可能性に魅力を感じた私達が企画・デザインしたものを国内の老舗寝袋ブランド「ナンガ」へ持ち込み、出来上がったのがトップキルトです。

 トップキルトはこれまでに数度の仕様変更をしていて、トップキルトTSで5代目となります。初代の頃は重量500g弱でしたが新素材や新しい技術を使う事で軽量化が進み、4代目を迎えた頃には365gまで軽くなりました。そして5代目となるトップキルトTSはもう10g軽くなって355g。「たった10g?」と思う方もいるでしょうが、元々がシンプルな作りで無駄を削りにくいため、更に軽くするのは難しいことでした。そんなトップキルトTSの仕様変更点を絡めつつ詳細紹介していきます。

 

チタンスパッタリング

 今回のアップデートで1番大きな変更点です。保温性向上のため「チタンスパッタリング(生地へのチタン層蒸着)」を施しました。これにより放散する体熱がチタン膜で反射され、再び身体へ当たることで寝袋の保温効率を上げてくれます。

 

生地厚

 2番目に大きな変更点です。前トップキルトに使っていた生地厚15デニールから「10デニール」へ薄くしました。これだけ聞くと強度面を心配するでしょうが、バックパックやテントの底部などと違い、寝袋の生地に強い擦れや負荷が生じることは殆どありません。もっと薄い7デニールナイロン生地のダウンジャケットを10年以上使っているスタッフもいますが、特に破れもなく今だに現役です。つまり、10デニール厚なら余程変わった使い方でもしない限り大丈夫だと言えます。

 

PRIMALOFT® Gold Insulation with Cross Core

  中綿に変更はありません。トップキルトTSの中綿には引き続き「プリマロフトゴールドインサレーションウィズクロスコア」を採用しています。製品名称が長くてややこしいので、プリマロフト / ゴールドインサーレーション / クロスコアの3つに区切って説明していきます。

 

PRIMALOFT

 まず「プリマロフト」について説明すると、1983年に米軍から「濡れても保温性が低下せず速乾性に優れる化繊綿」の開発要請を受けたアルバニー社が、超微細な中空ポリエステル繊維で作った綿の商標です。保温性と撥水性と圧縮性に優れたこの化繊綿は、軍需だけでなく極地遠征など厳しい環境でも使われ、今ではアウトドア用素材として一般的になりました。

 

Gold Insulation

 次に「ゴールドインサレーション」について説明すると、プリマロフトにはゴールド(最上位:ハイエンド向け)・シルバー(バランス型:一般スポーツウェア向け)・ブラック(コストパフォーマンス:普及品向け)という等級分けがあり、更にその中で枝分かれして沢山の派生綿種があります。その全てを説明するスペースはありませんが、おおまかに言えばブラック→シルバー→ゴールドの順で性能が上がり、暖かさを示すクロー値においても同じ目付厚ならゴールドが1番保温性に優れています。つまり、ゴールドはプリマロフトの中で1番暖かく綿のしなやかさと圧縮率においても優れているので、同ブランドのフラッグシップ製品と言えます。

 

Cross Core

 最後に「クロスコア」ですが、エアロゲルという素材を加工してプリマロフト繊維へ添加したものを指します。エアロゲルはほぼ空気で構成されたとても軽い素材で、その断熱性の高さから宇宙分野でも利用されています。このエアロゲルを添加した繊維は重量を増やすことなく保温性能を上げられるので、寝袋のような道具にはうってつけと言えます。

 

 プリマロフトゴールドインサレーションウィズクロスコアはシート状の綿なので、ダウンと違い綿の偏りが生じません。ダウン寝袋において綿が偏ると、綿量が減った部分はコールドスポットとなり寒さを感じます。どの寝袋もそうならないように縫製で区画分けをしてダウンの偏りを防止していますが、夏用となると封入されたダウン量自体が少ないため、その区画内で偏りを起こす時があります。その点においても、シート状綿のトップキルトTSは安心できるのです。

 

 化繊寝袋の短所はダウンよりも重くなることがよく挙げられます。これは事実で、特にスリーシーズン〜冬用モデルのような綿量が多いものほど、その傾向は顕著になります。しかし、綿量が少ない夏用モデルとなるとその差は縮まります。実際に比べると

トップキルトTS/化繊(355g・12度対応)

A社/ダウン800FP(466g・11℃対応)

B社/ダウン850+FP(363g・11℃対応)

C社/ダウン770FP(300g・8℃)

 といった具合で、化繊のデメリットは感じにくくなります。また、夏に使う場合はどうしても汗や臭いが気になるところですが、洗濯などの手入れの楽さはダウンより化繊に分があります。以上を考慮した上で、私達は夏用寝袋のトップキルトにプリマロフトゴールドインサレーションウィズクロスコアを採用しています。

 

首元コード

 「1.5mm径」の細さへ変更しました。また細かい部分ですが、コードの両端をコードスリーブ内で縫い留めず、スリーブ外へ出して結び留めています。コードが抜けたとしても自身で結び直すことが可能な上に、他の紐(伸縮ゴム・別色)へ変更することもできます。紐を出す穴は大きくないので、なるべく細い紐通しかヘアピンなどを使ってください。

 

背面テープ幅

 前トップキルトより「細く薄く」しました。背中の冷えが気になる時には、設けられた4点のテープへゴム紐を張り巡らせ、キルト特有の背中の開き具合を調節します。ゴム紐の太さ・通し方に決まりはありません。お好みでどうぞ。こう書くと紐必須と思う方もいるでしょうが、私達はゴム紐を足さずそのまま使っています。トップキルトを使う夏前後はそこまで寒さが厳しくありませんし、もしも冷えを感じた時は普段使う布団のようにキルト端を背中の下へ巻き込めば十分だからです。

 そもそも背中の開きを用心して最初から紐をつけるのならキルトである必要はなく、一般的な寝袋形状を選んだ方が理に叶います。念の為に付けているテープですが、ブランケットのような気軽さがキルトの魅力のひとつであり、それを阻害する作りを不要と思うならテープを切除するのも良いかと思います。

 

収納袋

 前の作りよりも「少し小さく」して、底面を角丸長方形としました。これはテント泊時に使うバックパック底面寸法との相性を考えたリサイズです。昔と比べてテント泊に使うバックパックは40Lが当たり前、それ以下(写真は山と道ミニ)も多くなりました。そうした容量に対して、丁度よく収まるようにデザインしています。

 もっと小さい袋を用意すれば更に小さく収納できますが、特におすすめもしていません。過剰に小さくしたものはパック内でデッドスペースを生みやすいからです。収納袋を横にした状態でパック底部へ沈めれば、隙間なくパッキングできます。そしてその上へ他の荷物を積んでいけば、その重みで寝袋は自然と潰れてパック容量を邪魔しません。これは初代から続くパッキングへの考え方です。

 

ダウンバッグとの組み合わせ

 単体での使用以外にキルトの利用方法として挙げられるのが、秋冬のトップカバー。化繊綿キルトは単体使用でも「軽さと保温性能のバランス」において十分に魅力ある製品ですが、ダウンスリーピングバッグと併用することで保温力が増す点も外せません。実際に過去のテストでもハイランドデザインのダウンバッグ(適温0℃・限界-6℃対応)と組み合わせて、外気温-17℃・シェルター内室温-7℃の環境でその効果を実感できました。

 また、冬のテント泊時の結露対策にも効果的です。上へ被せたトップキルトが結露に触れても中綿のプリマロフトの撥水性と速乾性が機能してくれます。もちろん防水素材ではないので限界はありますが、保温性増強の上に付与してくれるのなら一石二鳥です。使う際はダウンスリーピングバッグの上へトップキルトTSを被せて使ってください。中へ入れて使うと内部寸法を圧迫するので、お互いのロフトを潰し合いかえって保温性能が下がる可能性があります。

 

 ここ数年で夏は酷暑が続くようになり、その期間も長くなっていることを実感します。そのせいか、これまでは夏も3シーズンモデルで済ませていた方達が、サマーモデルを購入、もしくは検討する場面が目立つようになりました。私達もこれまでに様々な環境で使いその良さを実感しているので、皆さんの選択肢のひとつにトップキルトTSが加われば嬉しい限りです。