LT5 three piece carbon trekking pole

「実重量」の軽さだけでなく「振り感」の軽さこそ大きな魅力の3セクショントレッキングポール。全長60〜130cmの調整幅はタープやシェルターの設営にも有効です。ULトレッキングポールのひとつの完成形といえるでしょう。

仕様

重量
298g(ペア)
149g(シングル)
全長
60cm - 130cm
各セクション長
上段 49.5cm
中段 49.0cm
下段 47.6cm
素材
グリップ EVA
シャフト カーボンファイバー
石突 カーバイト

最軽量級の軽さ
疲れにくい振り感
シェルター設営に適した長さ
軽量トレッキングポールのひとつの完成形

ペア298gは実用レベルでは最軽量級
最大長130cmはシェルターポールとして最適。様々なシェルターに適用可能
収納長60cmは3セクションポールとしては一般的

軽量ポールの軽さと強度

2010年以降の10年間で細分化が大きく進んだアウトドアギアのひとつがトレッキングポールです。2000年代前半、日本市場に折りたたみポールは存在しなかったといったら現代のハイカーは驚くかもしれません。プロトレイルランナーのパイオニア石川弘樹をサポートしていたアートスポーツODBOXがヨーロッパで石川が購入してきた軽量折りたたみポールを参考にシナノにオリジナル製品の制作を依頼。2006年バランスポール「Foxtail」としてODBOXで販売されたのが日本における最初の折りたたみポールになります。石川がヨーロッパで購入してきたポールもFoxtailもトレッキングポールとしての十分な強度には足りないため、バランスをとるための補助ポールと位置付けられていたのは興味深いことです。2000年代後半以降、折りたたみポールはBlack Diamondを皮切りにLEKI、Komperdelなど大手各社で製品化、また標準的な3セクションポールにおいてもHelinoxやFIZANなどでアルミの超軽量モデルが発売されますが、軽量ポールで常に命題だったのが「軽さと強度の関係」です。すべてのULギアの宿命でもありますが、体重を直接支えるトレッキングポールではよりそれが問われたように思います。日本においてはトレッキングポールにもJIS企画がありますが、どこまでの強度を求めればよいのでしょうか。

実用的な軽さ、制限的な強さ

身も蓋もない言い方ですが「軽いものは弱い」という現実を受け入れることからはじめないと軽量ポールの問題はどこにも着地できないように思います。日本における軽量ポールのはじまりであるFoxtailの時代から強度面との折り合いに作り手も、売り手も、使い手も苦労してきました。絶対的な強度という考え方よりも、使い方次第では実用的に問題ないという「実用的な軽さ」「制限的な強さ」を意識すると道具の見え方が広がります。誰もがどのように使っても大丈夫という道具は確かに安心ですが、そうではなく実用的な条件を理解したうえで使用すれば大丈夫という道具。ある意味ULギアの本来的な在り方をあらためて気づかせてくれます。

LT5の破損事例もヒアリングや実物確認を重ねてきました

FoxtailでJMTスルーハイクをして以降、耐久性が足りないと指摘されていた軽量系ポールをあえて使用してきました。Black DiamondディスタンスカーボンZは新製品販売時から10年、石突きのカーバイドチップが完全にすり減ってなくなるまで使用してみました。お客様の中にもHelinoxの超軽量モデルFL-120でPCTスルーハイク、Te Araroaスルーハイクをしたハイカーがいます。Gossamer Gearのトレッキングポールについても当店スタッフ長谷川が2010年PCTスルーハイクで前モデルのLT4を使用。2017年に発売開始となったLT5についても土屋がオフトレイルのSIERRA HIGH ROUTEで、長谷川がみちのく潮風トレイルで全線使用してきました。

  • ベースウェイト5kg以下のウルトラライトスタイルで重量的な負荷を軽減させること
  • 極端に不安定な場所が頻発するオフトレイルではなく、一般登山道やトレイルにおいて使用すること
  • 瞬発的な高負荷がかかることがある雪山での使用には適さない、前提はあくまで無雪期での使用

こうした条件下においてならば、軽量トレッキングポールの多くは「実用的な軽さ」「制限的な強度」を十分に発揮するといえます。Gossamer Gear LT5もこうした軽量トレッキングポールのひとつです。

3セクションポール最軽量級の軽さ

折りたたみポールではMountain Kingトレイルブレイズスカイランナーウルトラで110g(120cm/シングル)、トレイルブレイススカイランナーで129g(120cm/シングル)あたりが最軽量級となりますが、伸縮式の3セクションポールではHelinox FL120が149g(54-120cm/シングル)、FIZANトレッキングコンパクトFLEELIGHT 159g(58-132cm/シングル)が最軽量級の基準になります。Gossamer Gear LT5の重量は149g(60-130cm/シングル)、最軽量級とよぶのに十分な軽さでしょう。

トレッキングポールの本質「振り感の軽さ」

絶対重量や重量と全長のバランスといった要素では他の軽量トレッキングポールで同じような製品もあるのですが、LT5が他と比べて圧倒的な印象を使い手に与えるのが「振り感の軽さ」です。重心バランスなどをしっかりと調べれば他モデルとの違いもはっきりするのでしょうが、ここでは主観的な評価に終始してしまい申し訳ありません。個人的にはFoxtail以降、長さ調整ができない折りたたみ式の軽量モデルで十分満足していたのでもう3セクションポールをプライベートで使うことはないだろうと思っていたのですが、それを撤回させたのはLT5の振り感の軽さとスムーズさでした。トレッキングポールの用途を考えたとき、持った感触、振った感触こそ道具として最も大事にすべきポイントだと思います。実重量以上の軽さを感じること、スムーズな振り出しができること、そうした道具としての基本がしっかりしているからこそ、他の特徴も活きてくるのです。

シェルター設営に適した全長130cm

SIX MOON DESIGNSルナソロ、Gossamer Gear ザ・ワン、ザ・ツーはじめULハイカーに好まれるシェルター形状にミッドシェルターやツインピークシェルターがあります。これらは幕体下部からポールを突っ張りテンションをかけて設営します。北米メーカーに多いこれらのシェルターでは推奨ポール長を125cm以上に設定しているものがほとんどです。タープの設営においても、風の有無で全高調整をするにはポールの長さが変えられると素早い調整が可能になります。シェルターポール&タープポールとしての使用を念頭においた場合、この最小長60cm、最大長130cmという調整幅は大きな魅力になります。

なお調整は時計回りで固定、反時計回りで開放のツイストロック方式[注1]です。

[注1]使用後は必ず分解して水気を拭き取り、しっかりと乾燥させてください。またツイストロック機構のポールは冬季は内部の氷結や霜でロックが空転、固定できないケースも想定されます。

3セクションを分解して乾燥させることが最重要のメンテナンス

完璧なトレッキングポールではありません。あくまで軽さに重きをおいたことで失っているものもあります。それでも軽さを志向するULハイカーにとってGossamer Gear LT5は「実用的な軽さ」「制限的な強度」を備えた魅力あるトレッキングポールです。そして軽さに振り切っているようでいて、トレッキンポールとしてのバランスにも優れています。

軽量トレッキングポールの完成形のひとつと言っても過言ではないでしょう。