実測59gと他容量を含めても圧倒的な軽さを誇るこれぞThe ULクッカー。ハンドルすらも省略することで軽さだけでなく美しさすら感じさせるシンプル&ミニマルクッカーの代表選手。
仕様
- 重量
- 59g
蓋 17g
本体 42g - 容量&サイズ
- 550ml
直径 φ95mm
高さ 80mm - 素材
- チタニウム 0.5mm厚
2000年代前半、日本はもちろん本場北米でもUltralight Hikingはまだまだアンダーグラウンドな域をでないカルチャーでした。その当時、多くのULハイカーが集まり、情報交換し、新たなチャレンジを発信していたウェブサイトがありました。それがBackpackingLight.com(BPL)。現在も幅広い情報発信を継続しているサイトですが、当時は活発な議論がなされていたフォーラムやとんがったオリジナル製品を販売するウェブショップなど、爆発しそうな熱量が混沌と渦巻いているサイトでした。そんなBPLのオリジナル製品には今やウールメーカー各社が扱うようになったフード付ウールアンダーがいち早く製品化されていたりと、ULにこだわるからこそ生まれた時代を先取りするかのようなアイテムが溢れていました。本項で取り上げるノーハンドルクッカーもまさに「Ultra」にこだわった時代だからこそうまれた製品です。
TOAKS チタンポット550NHは、BPLが2000年代前半に販売していたノーハンドルチタンクッカーを復刻させたモデルといえるでしょう。TOAKSはBPLオリジナルを生産していた工場が立ち上げた自社ブランド。そのため金型などはBPLでも使用したものをそのまま適用してる模様です。違いは素材の厚みのみ。当時はEvernewに対抗しての0.3mm厚でしたが生産&運搬時に生じる歪みがひどく、結局TOAKSでの復刻時には0.5mm厚に落ち着いたようです。厚みは増えたものの、ハンドルを省略するというクッカーとしてはこれ以上ない最大の軽量化を継続したことでクラス最軽量を実現しています。
TOAKSチタンポット550NHは成立の背景がUltralight Hiking黎明期の歴史とリンクするという点が非常に興味深いのですが、そうしたULマニア的郷愁を誘うだけのギアではありません。合理的に推薦できるクッカーでもあるのです。
1)ハンドルを省略することで25%の軽量化
2)安定感ある縦横バランス
3)湯沸かしにとどまらない絶妙な容量(ラーメン調理容量)
4)底が膨張しない底面デザイン
収納性に優れる縦型、調理の効率が良い平型の中間的な形状にギリギリ袋ラーメンが調理できる容量というのはまさにULハイカーが求めているサイズ&容量。そして何よりもハンドルの省略が最大の決断です。同じTOAKSの550mlのハンドル付クッカーが約80g、こちらのノーハンドルでは約60g。(ちなみに350mlのハンドル付きクッカーで約70g。)要は約1/4に当たる20gはハンドルの重さなのです。ハンドルが熱くなってどうせ手ぬぐいやタオルを鍋つかみ替わりにするのであれば、ハンドルはなくても一緒です。またハンドルを使わずコップのように持つことが違和感ない容量でもあります。欧米にはもとよりハンドルがなく、パンハンドラーを使用するクッカーが数多く存在(MSR、GSI、TRANGIA等)します。ULクッカーにおけるULパンハンドラーはハイカー自身の手に他なりません。それに25%の軽量化を実現する方法がハンドル省略の他にあるでしょうか?ハンドルが無いというと一様に「使いにくいんじゃないか?」という声が上がりますが、500ml程度の容量ならば大きな問題にはなりません。それよりも25%の軽量化を優先するのがUL的スタンスです。
「ハンドルレスによる大幅な軽量化」はこのように説明すれば確かに合理的と言えるでしょう。しかしマスプロダクトではなかなか実現しません。そうした中でBPLの復刻とはいえ、こうした製品がマスプロとしてリリースされたことは意味があることでしょう。
実測59gと他容量を含めても圧倒的な軽さを誇るこれぞThe ULクッカー。ハンドルすらも省略することで軽さだけでなく美しさすら感じさせるシンプル&ミニマルクッカーの代表選手。
【システム例:TOAKS Ti POT550NH+Trail Designs Sidewinder Ti-Tri Bundle:計95g】
TOAKSチタンポット550NH(59g)を使うにあたりもちろん様々なエスビットストーブやウインドスクリーンが使用できますが、個人的に使用しているのはTrail DesignsサイドワインダーTi-Triバンドル(36g)。これはEvernewのチタンカップ400ml用に設計されているものですが、直径が合うためにTOAKSチタンポット550NHでも使用可能です。エスビットの炎が最適に当たる高さで止まるよう付属のシリコンバンドを調整すればポットハンドラーとしても役立ちます。
市場にあるチタン製エスビットストーブとチタン製ウインドスクリーンを組み合わせれば約20〜35gとなります。確かにサイドワインダ−Ti-Triバンドルは最軽量とはいきませんが、熱効率の良さと何よりも使用時の安定性の高さも合わせてメリットが大きいと私は考えています。収納性の高さ含めULハイカーには使用を検討いただきたいシステムだと思います。
Trail Designs Sidewinder Ti-Tri Bundle(36g) ¥15,000+税