UL DOWN QUILT

同社ダウンバッグ のような汎用的ULスリーピングギアではなく、ニッチな領域のエッジを突き詰めた先鋭的ULスリーピングギア。ハイカーズデポが満を持して提案するULハイカー待望の3シーズン用ULダウンキルト。

仕様

重量
400g
素材
羽毛:810FP UDD加工
羽毛量:220g
生地:10dシレ加工 マイクロリップストップリサイクルナイロン
サイズと構造
全長:約180cm
首幅:57cm
フットボックス底面:幅21cm*高さ21cm
構造:シングルキルト
対応温度域
限界温度/-5℃
快適適温/2℃

ニッチでエッジな軽量化
保温性能と軽量化を突き詰めた
ULハイカー待望の3季用ダウンキルト

2008年のオープン以降、スリーピングバッグはオリジナルにこだわってきたハイカーズデポ。それは「Ultralight」であること「Simple」であることへのこだわりゆえ。いまやHighland Designs ダウンバッグ は当店の定番というだけでなく、3シーズンULスリーピングバッグの定番といえるモデルに成長しました。国内外を歩く多くの長距離ハイカーに愛されてきた実績は誇りでもあります。そしてキルトについてもHighland Designsトップキルトだけでなく、製品化されなかった数多くのテストサンプルで試行錯誤を重ねてきました。
そんなハイカーズデポが2022年、3シーズンULダウンキルトを満を持して提案します。

キルトの宿命

マットで潰れてしまう寝袋背面を思い切って省いてしまう。この極端に割り切った軽量化のスタイルは1980年代のRab(イギリス)がヒマラヤエクスペディションモデルの軽量化のために採用しています。ULハイカーには1990年代にレイ・ジャーディンが自作モデルとして提案したことが有名です。2000年代以降はNunatak(アメリカ)が積極的に製品展開、当時のULハイカーに熱く支持されました。キルトは寝袋を軽量化する手法として長い歴史を持ちます。しかし大手寝袋メーカーの主要ラインナップとして展開されないのはなぜでしょう。背中の保温は寝袋よりもマットが重要、そうした理屈はわかっていても「寝袋の背中が無い=寒い」と感覚的に避けてしまうことは否めません。キルトは暖かいイメージを持ちにくい、独特にして極端なスリーピングバッグなのです。キルトを考える時、前提としてこの事実からはじめないと中途半端な結果に陥ります。ニッチでエッジであることを受け入れた方がキルトの特性を活かせるはずです。言葉を変えれば、一般化されたキルトというのは魅力に乏しいともいえるのです。

ハイカーズデポ におけるキルトの系譜

2009年に発表したハイカーズデポ 最初のオリジナルギアであるHighland Designs ダウンバッグ 。限界温度-6℃、快適温度0℃という3シーズンモデルとして安心の保温力を提供しつつ、いかに軽量化するか。その考え方については商品ページが詳しいのですが、軽量化を考えるうえで当時からULハイカーには馴染みのある「キルト」というスタイルをあえて採用しなかったのには理由があります。それが上に述べたようなキルトを取り巻く背景です。そして最初に提案すべき寝袋は先鋭化したULモデルではなく、汎用型のULモデルだと考えたからです。これがダウンバッグ でキルト形状を採用しなかった理由です。だからこそダウンバッグ は10年以上のロングセラーとして支持されているのでしょう。
ハイカーズデポ では同じく2009年にHighland Designs トップキルトにおいてキルト形状を早くも採用しました。まだ日本のアウトドア市場にキルトが存在せず、北米においてもBozeman Mountain Works以外では化繊キルトが発売されていない時期です。トップキルトは「夏季用化繊モデル」という特性だからこそ成立しました。寒そうに感じてしまうキルトでも夏季用ならば問題ない。世界的にも稀な化繊モデルならダウンスリーピングバッグの保温兼結露対策用トップカバーとしても使用できる。キルトというニッチな形状に更にニッチな要素を加えることで他にはない個性を得たのです。
トップキルトだから成立する、夏季用化繊モデルだから成立すると考えていたため、ハイカーズデポ では長らくダウンキルトの企画に消極的でした。その潮目を大きく変えたのが2013年に発表したHighland Desaigs ミニモキルトでした。TJAR(トランスジャパンアルプスレース)出場選手の要望から企画したSULダウンキルト。山岳レース用ということで汎用性を最初から度外視できたのがブレイクスルーの要因です。山岳レーサーやそれを志向する人さえ使えればよい、と軽さとコンパクトさに完全に振り切ることでミニモキルトでもニッチを突き詰めることになりました。細かなアップデートを重ねながら2018年にはそのシェイプを大幅に変更。軽量化と密着感を突き詰めたHighland Desigsn独自のキルトパターンを生み出すことになったのです。今年2022年で10年になるミニモキルトの開発と改良の歴史。これこそニッチなキルトを更にエッジな存在に磨き上げる行為だったのです。実はハイカーズデポでは2015-16年の2シーズン、サブエスキルトというダウンキルトを発売していました。このモデルが短命で終わったのはNunatakなどのダウンキルトの焼き直しにすぎない中途半端なモデルという評価を受けたからだと見ることができます。

キルトの軽量化を突き詰め続けたミニモキルトでの挑戦、サブエスキルトでの妥協と挫折、そうした試行錯誤の歴史があったからこそのULダウンキルト。満を持しての登場です。

Highland Designsの曲線シェイプ

ULダウンキルト最大の特徴はその曲線的なシェイプにあります。2018年のHighland Designsミニモキルトで採用したシェイプをベースに3シーズン対応のボリュームをもったパターンにしています。デザインを曲線的に体のラインに合わせ。膨らむべきところは膨らみ、体への密着度も高められる。それでいて突っ張る部分はない。構造も決して複雑にはならず、キルトの構成パーツは大きく3つ。むしろパーツ数の減少による軽量化も実現しています。生地を薄くすることでの軽量化ではなく、パターンデザインによる使用生地削減での軽量化。ミニモキルトで実現したこの曲線シェイプがあったからこそ、3シーズンモデルとしても大幅な軽量化を実現したULダウンキルトがうまれたのです。

この曲線シェイプでは特に肩周りの膨らみに注目してください。ハイロフトのダウンジャケットを着ているかのような密着感と膨らみです。肩周りをしっかり保温できることがこの曲線シェイプの大きな特徴です。この肩の膨らみに大きく関係しているのが首回りの細さです。ボタンを止めた状態で頭がギリギリ通るくらいの寸法にしています。ダウンジャケットの首回りの太さを参考に、それよりはやや広めの大きさだとお考えください。調整のコードもつけていますが多くの方には不要だと思われます。冷気の最大の侵入経路を細くしたことは保温効果に大きく寄与しています。

なお足先に相当するフットボックスは上下で異なる向きのパターンを採用しより緩やかな立体構造にしました。これによりダウンが偏りにくくなり、足の収まりが良くなっています。

ULダウンキルトの作法

寝るときの手順/サイドスリープには適さない

ULダウンキルト はそのままでも体に適度にフィットします。隙間ができにくく暖かさを感じられます。とはいえ寝袋としてはもちろん、キルトとしてもかなり個性的なデザインですので、寝るときの作法、手順を考えた方がより使いやすくなります。

1、足を入れる。
2、スナップボタンを首の後ろで留める。体が硬い人は先にスナップボタンを付けてから頭を通す。
3、肩に掛ける。
4、横になる。

手順そのものは単純なのですが、店頭で試していただくと少し戸惑うケースも見受けられます。何度か試してみることをお勧めします。また寝るときの注意点として「サイドスリープに適していない」ということをご理解ください。当店オーナーの土屋が最終テストの際にギリギリサイドスリープでも就寝しているので決して無理ではありません。しかしサイドスリープに必要な余裕はまったくありません。就寝時の動き方しだいで寒気が容易に侵入します。あくまで仰向けでの就寝時の基本姿勢だとお考えください。サイドスリープ派のハイカーは注意が必要です。

背面コードの配置方法

キルトを更に体に密着させたい時、従来のキルトでは横方向に一列または二列というように平ゴムやバンジーコードを配置して絞り込んで密着させる方法が一般的です。Highland Designsの新しいシェイプでは独自のコード配置をおすすめしています。
片側4か所、両側で8か所とキルトにしては多めのループが付属しています。ここに写真の説明のようにU字になるようにバンジーコードを付けます。直接体の真ん中に当たらないので伸縮力の強いバンジーコードが最適です。写真では丸いバンジーコード2mmと2mmロープ向けコードロックを使っています。

寝るときは横になってから体の下(腰あたりでしょうか)でコードロックを引きます。そうすると全体的に寝袋が密着してきます。首回りも締まってきますので引きすぎたようであれば緩めて調節してください。

超撥水ダウンUDD

採用しているダウンはHighland Designsの他のダウンスリーピングバッグ、ダウンウェア同様、超撥水ダウンUltra Dry Down(810FP)となります。超撥水ダウンUDDの詳細についてはこちらの記事をご参照ください。

フィールドテスト

11月上旬の長野県。気温マイナス1℃でのフィールドテスト。宿泊装備はタープ(Gossamer Gear ソロタープ)、グラウンドシート(SOL エマージェンシーブランケットソロ)、マット(Evernew FPマット100)。着衣はメリノソックス、ジップオフパンツ、メリノウールTシャツ、ウインドジャケット、ネックウォーマー。

2021年は春先から晩秋にかけてフィールドを変え、テスターを変え、サンプルテストをおこないました。気温0℃前後という3シーズンモデルとして理想的な気候で繰り返しおこなったことで、生産いただくナンガの計算値だけでなく、使用体感としても適当な使用温度域は提示できたと考えています。同じHighland Designsの各種スリーピングと同じよう基準でのレーティングだとお考えください。また商品解説では「サイドスリープ(横臥での就寝)に不向き」と説明していますが、ギリギリできないことはありません。このあたりは体格とのご相談になるかと思います。

ニッチな領域のエッジを突き詰める、それゆえのウルトラライト

こんな思いをハイカーのみなさんに伝えながら、提案していきたいと思っています。

「3シーズンモデルとしてじゅぶんな暖かさをもったダウンキルト、それもその温度域ならめちゃくちゃ軽い。そんなダウンキルトをつくってみたかった。軽量化のためにいろいろな工夫も凝らした。いままでの経験値を全部投入したという実感もある。それゆえにちょっとピーキーになってしまったかもしれない。使いづらいって評価もある程度は予測している。でも、そんなピーキーなところも受け入れられれば、ウルトラライトなダウンキルトとして他にはない興味を持ってもらえるんじゃないかな。そもそもキルトって軽量化のためのとてもニッチな領域のスリーピングギア。どうあがいてもメインストリームになれないのはいままでの歴史が教えてくれている。そんなカウンターの存在。それならばそのニッチな領域のエッジをとことん突き詰めたほうが断然面白い。

ULダウンキルトはダウンバッグ のようなスタンダード(汎用的UL)にはなれないのかもしれない。でもキルト用曲線シェイプでデザインされたこのキルトは他のどこにもないエッジ(先鋭的UL)にあることは間違いない。

ニッチな領域のエッジを突き詰める、それゆえのウルトラライト。それがULダウンキルト。」