Junction2400

長い旅の途上、様々な環境&気候に対応することを意図してデザインされた汎用ULバックック。2020年に誕生した最も新しいウインドライダーのバリエーション。急峻な地形、湿潤な気候、そんな日本の山岳環境にも適したモデル。

仕様

重量
908g(M)
本体:798g
アルミステー:110g
容量
本体 40L
ポケットなど拡張容量 9.5L
素材
DCH150
サイズ
S、M、L
カラー
ブラック

急峻で岩と藪が多い環境
湿潤で多雨な気候帯
HMGが考える汎用モデルの最適解

本体はブラックDCH150、サイドポケットはダイニーマナイロンを採用。よりタフな仕様を意識したBlack Junction2400

ハイカーズデポでは2011年から取り扱いをはじめたHyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)。HMG創業時のオリジナルラインナップは「ウインドライダー2400」「ポーター3400」「アイスパック2400」の3モデル。その中でもウインドライダー2400はアパラチアン・トレイルのスルーハイクを念頭においたハイキングバックパックとして長くHMGのフラッグシップモデルであり続けてきました。そのウインドライダーはこの10年間でポケット素材を多様化させることで様々なバリエーションを生み出しました。
アメリカ南西部のデザートエリアで固いトゲを持つ灌木への対策として生まれた「サウスウエスト」。深いドライキャニオンを有する中西部での立体的なオフトレイルハイキングでバックパックが岩に擦れても安心な「ノースリム」。そして2020年に登場した最も新しいバリエーションが多様な地理的特徴や気候帯に幅広く対応できる汎用モデル「ジャンクション」です。

Junction 2400(ジャンクション2400)

正面 レインウェアやタープなど雨や結露で濡れる可能性が高いギア類の収納に適したメッシュポケット
側面 ダイニーマナイロン製のサイドポケットにコンプレッションストラップ。ウエストベルトにもポケットを標準装備
背面 汗を吸ったり、雪がついたりしないよう背面はシンプルに

ジャンクションのポケット

ポケット素材を多様化させた結果、バリエーションとして生まれたのがジャンクションだと言いました。それではジャンクションのポケットを見てみましょう。

フロントはメッシュ、サイドはダイニーマナイロン。ちなみにこのメッシュは非常に強度も高く、魚網のように補修可能なメッシュです。
中央の小さな穴がフロントポケットの水抜き穴。2018年モデルからはグロメットが廃止されています
サイドポケットの水抜き穴は端に配置。こちらもグロメットは2018年より廃止されています

フロントポケットはウインドライダーと同じ耐久性の高いメッシュ、サイドポケットはサウスウエストと同じ擦れや突き刺しに強いダイニーマナイロンを採用しています。耐久性重視ならばサウスウエストでも良いのですが、HMGのバックパックのポケットは水抜き穴が非常に小さく設計されています。降雨時にはサウスウエストのフロントポケットは排水が追いつかないことが危惧されます。雨を無視できない気候ではメッシュポケットには排水機能というアドバンテージがあるのです。そこでジャンクションでは濡れ物の収納や降雨時の対策も含めフロントはメッシュポケット、ブッシュでの引っかかりや岩場での擦れを考慮してサイドポケットはダイニーマナイロンという組み合わせのポケットにしているのです。

2400/40Lの意味

2022年現在、HMGでは多様なモデル(Windrider、Southwest、NorthRim、Junction、Porter、Icepack)が存在し、それぞれのモデルで豊富なサイズ(2400/40L、3400/50L)、4400/60L)、5400/70L)が展開されています。それを可能にしているのがベースとなるオリジナルラインナップ「ウインドライダー」「ポーター」「アイスパック」の完成度にあります。2011年のHMG創業当時につくられたウインドライダーのオリジナル容量は2400/40Lです。UL志向のスルーハイカーにとって容量は2400/40Lで必要十分、これならば軽さをしっかりとアドバンテージにできるという考え方が伺えます。ハイカーズデポ でもULバックパックであること、そしてHMGの原点というに敬意と共感をもってウインドライダーは2400サイズをセレクトしてきました。その考え方はウインドライダーのバリエーションであるジャンクションでも変わりません。ハイキングバックパックならば、軽量化を志向するならば、2400/40Lをまず検討していただくと効果的です。
ちなみに3400は2400の吹き流し部分を伸ばしただけの構造になっています。スタビライザーを装備しないULバックパックでは肩より上の部分が長くなるとバランスをとるのが難しくなります。またバックパックの全長が長くなるため底の方の荷物の出し入れの際に吹き流しが邪魔になることもあります。3400を検討されるハイカーはそうした点も念頭にご検討ください。

ブラックの意味

主素材として採用されているのは超軽量のフィルム素材で有名なDCF(旧名称 Cuben Fiber)のハイブリット素材DCHです。現代の基準からすると劇的に軽い素材ではありませんが、特性バランスが優れています。軽く、頑丈で、防水性をそなえているこの素材は細かな起伏が多く、多雨湿潤なアメリカ東海岸の気候風土に適しているだけでなく、Ultralight & Durableなバックパックを製作するにあたってベストな素材のひとつだといえます。
そのDCHですが、HMGでは色によってその生地厚を変えていることにも注目です。HMGのシンボルカラーともいえるホワイトは軽さと強度のバランスが優れているDCH50、ブラックはより強度に重きをおいたDCH150を採用しているのです。DCH150はホワイトでも擦れなどのストレスを最も受ける底部について採用している生地になります。したがってHMGのバックパックにおいてブラックは非常に強い生地で作られているといえるのです。
HMGジャンクションもホワイト、ブラック両カラーで展開されていますが、ハイカーズデポでは高強度、対候性、汎用性というジャンクションのコンセプトをふまえて、あえてブラック一色での取り扱いとしています。

水を吸わない、雪がつかない背面

HMGではバックパックが水を含んで重たくならないように腰回りをのぞきメッシュパッドを排しています。背面にメッシュパッドを装備したモデルの方が確かに快適性は高いでしょう。誰もが躊躇せずに使えるはずです。しかし重たくなること、保水すること、雪が詰まること、こうした条件を考えると昔のアルパインパックのようにメッシュ素材を極力使用しないという判断にも合理性があるのです。DCHを使ったULバックパックというコンセプトである以上、こうしたシンプルさと合理性へのこだわりは当然ともいえます。
なお背面には二本のアルミステー(110g)を装備、バックパックの剛性感と積載重量をサポートしています。

徹底した目止めとパック内部の視認性

防水性の高いDCHを採用しているジャンクション。その防水性向上のためバックパックの縫い目はボトム以外すべてシームテープで目止めを施しています。これは他のHMGのバックパック同様です。縫製の構造上シームテープでの処理が不可能なボトムについても外側から目止め剤で処置すれば、更に高い防水性を持たせることが可能です。また黒いバックパックは内部も黒いと中の荷物が見えにくくなると言われますが、HMGでは心配いりません。

ブラックモデルでも内部は白く、視認性は高い。

このようにしっかりと底部まで中を見通せます。

底部以外、全ての縫目に施されているシームテープ

その他仕様

ジャンクションの仕様は基本的にはポケット以外はウインドライダーと同じです。

Y字ストラップはマット、ロープ、ヘルメット、パックラフト、スタッフバッグ など様々なものを安定感をもって固定可能です。
ダイニーマナイロンのポケットを装備したウエストベルト
ナイロンストラップやバンジーコードを取り付けられるコキ付タブがフロントポケット脇に配置されています
本体右側面上部には下向きにハイドレーションチューブ用のポートが配置されています

HMGは2011年の創業からの10年間、全くブレることのないモノづくりの姿勢で自らのスタイルを世の中に広めてきました。同年に誕生したシューズメーカーALTRA同様、2010年代のハイキングシーンを牽引してきたリーディングカンパニーであり、アイコンです。湿潤なアメリカ東海岸でこだわりの末に生まれた彼らのバックパックが同じく湿潤な日本においてひろく受け入れらるようになったのも必然といえるでしょう。2000年代に培われた西海岸のULハイキングを2010年代に新たなステージに導いてきたのがハイパーライトマウンテンギア。その最新バージョンにして汎用バックパックがJunction(ジャンクション)なのです。


2010年代ULのアイコン
Hyperlite Mountain Gear(ハイパーライトマウンテンギア)

ウルトラライトハイキングという文化が芽吹いたトレイルがアメリカ西海岸のPacific Crest Trail(PCT)だとすれば、種子が最初に蒔かれた場所はアメリカ東海岸のAppalachian Trail(AT)だといえるでしょう。20世紀前半”グランマ エマ”の伝説の舞台になった東海岸。この地にウルトラライトハイキングを継ぐべき21世紀のメーカーが産声をあげたのはまさに当然の帰結な のかもしれません。ハイパーライトマウンテンギアはAppalachian Trailの終着点であるメイン州に 居を構えるウルトラライトギアメーカーです。1998年にGossamer Gearがカリフォルニアに産声をあげて以来、数多くのULギアメーカーがアメリカに産まれました。その多くはPCTスルーハイカーをターゲットにギアの開発& 販売をおこなう関係上、西海岸から中西部にその活動拠点をおいてきました。ウルトラライトハイキングの歴史はPCT(西海岸)中心に積み重ねられてきたといっても過言ではないのです。
そうした潮流の中、異端児として2011年に産まれたのがハイパーライトマウンテンギアです。ULギアメーカーの主宰者はPCTコミュニティーの中でネットワークを築く例が多いのですが、HMGはそのコミュニティーとは距離を置いた東海岸で Pierrie兄弟の手によって誕生しました。自らがATスルーハイカーであり、パックラフターでもある彼らの元に集まった仲間もまたハイカーであり、パックラフターであり、アルパインクライマーでした。ハイキングに特化した西海岸のULギアメーカーと異なり、アウトドアアクティビティ全般にまたがるウルトラライトギアを提案するHMGは年齢も西海岸のガレージメーカー主宰者から比べると一回りほど若い世代にあたります。まさに文字通り「次世代のULギアメーカー」なのです。

そんな次世代メーカーが2010年代にULハイク、ロングハイクの世界を大きく飛躍させます。北米では2010年以降、PCTやATのスルーハイクを目指すハイカーが激増します。新世代のハイカーが支持したのがHMGのバックパックでした。ロングハイクする際のスタイル、テクニックとしてのウルトラライトハイキングも一気にアウトドアシーンにおいて市民権を得ます。そのアイコンとなったのがシューズではALTRA、バックパックではHMGだったのです。1970-80年代にワークブーツとフレームパックがバックパッキングムーブメントのアイコンであったのと同じ現象です。HMGは2010年代のハイキングシーンを代表するULギアメーカーと言っても過言ではないのです。

HMGが目指しているのは、湿潤な気候と細かい起伏が続くアメリカ東海岸に対応したウルトラライトギア。雨が多く、森林限界下でブッ シュが茂り、急で細かなアップダウンが延々と続く、そんな自然環境の東海岸。その地でハイキングし、パックラフトし、クライミングを楽しむためのギア。

「Ultralight(軽く)」「Durable(頑丈で)」「Water resist(雨に強い)」

アウトドアギアの王道ともいえるコンセプトをUL的に仕上げているのは彼らがリアルなスルーハイカーであり、パックラフターだからに違いありません。