むやみやたらと軽量なものだけを選んでも仕方ありません。自分なりにウルトラライトに近づくために何に気をつけるべきか。その原則をみてみましょう。
ベースウェイト8~9kgのライトウェイトから、4~5kgのウルトラライトへ。
そのための道具選びは実際にどうすればよいのでしょうか。自分自身の体力、経験、出かける地域、季節、様々な条件で装備は決まっていくものですから、むやみやたらと軽量なものだけを選んでも仕方ありません。ベースウェイトの基準は目標値であると同時に目安でしかありません。自分なりにウルトラライトに近づくために何に気をつけるべきか。その原則をみてみましょう。
①各装備の重量を知る
自分が持っている装備、それぞれの正確な重量を知っていますか?
カタログデータを鵜呑みにしてはいけません。やはり自分で計るのが一番です。
自分で計り一覧表を作りましょう。自分の手をつかうことで意外と軽いもの、意外と重たいもの、なんとなく自分の中の基準がはっきりしてきます。ちょっとした装備の積み重ねがいかに軽量化を妨げているか実感できます。
グラム単位のハカリでひとつひとつ、スタッフバックにいたるまで計りましょう。
②重たいものから対策をねる
バックパック、スリーピングバック&マット、テント。1泊以上のハイキングでまず考えることはこれらビッグ3の総重量を減らすことです。無雪期ならば最初は4kgを目標に、できれば3kg以内におさえましょう。このハードルがクリアできれば、ハイキング中の体力消耗が劇的に変化します。
そして意外とポイントになるのは調理器具。宿泊装備のダイエットがどうしても不安な方はここの見直しをオススメします。山で何を食べているか、お湯を沸かすぐらいじゃありませんか?ここをシンプルにできれば思い切った軽量化が可能になります。日帰りのデイハイキングならなおさらです。
③多目的アイテムを使う
アイディアを働かせ、ひとつの道具を様々な局面に対応させることは軽量化のポイントです。シンプルな道具は想像力次第で多目的アイテムになるものです。例えばダウンのインナージャケット&パンツ。防寒着としてだけでなく、寝具としても活用しましょう。「着る寝袋」です。これだけでアナタの寝袋はワンランク軽くできるはずです。手がかじかむほど急に冷え込んだ朝方は替えソックスをミトン代わりにしても良いのです。
④安全と信頼、そして修理可能な道具を選ぶ
荷物を背負い、トレイルを歩き、風雨を避け、食事をとり、眠りにつく。
自然の中に入っていくためにまず安全を確保することはすべての野外活動の基本です。今の自分には何が必要か?、今度の山はどんなところか? 自分の能力と安全とのバランスはしっかり考えましょう。快適のための装備は減らせても、安全のための装備は減らしてはいけません。そしてできるだけ修理可能な道具を選びましょう。壊れない道具はありません。壊れてしまった時に現地で対応、応急処置ができることは重要です。シンプルな道具ほど修理しやすいものです。針と糸、安全ピン、ダクトテープは必需品です。
⑤必要な中で最小のものを選ぶ
まず大事なことは「自分にとって」必要かつ安全のためのモノかどうか。そしてそのうえでもっと小さく軽いモノに置き換えられるかどうかを考えることです。軽いことだけを盲目的に追い求めるのではなく、必要であり安全かつ信頼がおけるものの中でより軽く小さくということが重要なのです。レインギアやライトに関しては特にしっかり吟味しましょう。
⑥使わないものは持っていかない
ファーストエイドやリペアグッズのことをいっているのではありません。タオルや着替えをたくさん持ちすぎてはいませんか?いつも持っていくけれどいつも使っていないもの、そして無くても困らないものが意外とバックパッックの中に多いはずです。「持っていかない」これが最大の軽量化です。
⑦ウルトラライトな装備は万能ではない
ベースウェイト4~5kgのウルトラライトスタイルは「自身の能力」「装備の機能」「フィールドの状況」この3つのバランスの中で決まるものです。自分の能力に不安があれば装備でカバーし、フォールドの状況がゆるせば更なる軽量化も可能になります。世界中のあらゆるシチュエーションに対応できる正解は残念ながらウルトラライトハイキングにはありません。
自分と自然との関係に常に注意をはらいながら装備を選びましょう。
ウルトラライトハイキングとは単なる計量装備の見本市ではありません。
軽量化はもちろん、ウルトラライトハイキングの根幹にあるのは「今の自分を知る」「目的地の状況を把握する」という自然に入るうえで最も重要なこの2つの原則に意識をはらい、実践することなのです。