BETA LIGHT 30

2010年代以降、Black Diamondが製品開発に取り組んできたファストパッキングギア。そのひとつの集大成ともいえウルトラライトバックパック。ベータライトシリーズは容量45L、30Lの2モデルが展開されていますが、ベストショルダーハーネスと脱着可能ウエストハーネスとの相性を考慮するとその真価をより発揮できるのはベータライト30だと当店では考えます。高速&長距離移動を念頭に設計されたモデルですが、週末の1泊2日から、数ヶ月のロングディスタンスまで、ランナーからハイカーまで、幅広いハイキングスタイルに対応します。

仕様

重量:720g/Mサイズ(最小重量:575g  ※ヒップベルトを除く)

容量:本体 30L、サイドポケット各5L

背面サイズ(適合身長): XS(〜150cm)・S(150cm〜160cm)・M(160cm〜)

素材:本体 ULTRA WEAVE Ultra200、底部補強 ULTRA WEAVE Ultra400
   フロントポケット 4ウェイストレッチメッシュ

 

より速く、より遠くへ
その行動を支える耐久性と軽量性
Black Diamondが辿り着いた
ウルトラライトのカタチ

ロールトップクロージャー、フロントメッシュポケット
サイドナイロンポケット、コンプレッションコード
ベストショルダーハーネス、脱着式ウエストハーネス
2024年にBlack Diamondが発表したベータライトシリーズの30Lモデルがベータライト30。2010年代以降、クライミングやスキーに加え、トレイルランニング製品の開発にも熱心な同社ですが、レース志向ではなくアドベンチャー志向の強いスクランブリングやファストパッキングといった要素が色濃い製品を開発してきました。より高くより険しく、に対して、より速くより遠く、自然の中を移動することをブラックダイアモンドは見据えています。その集大成のひとつといえるのがベータライトシリーズです。

ベータライト30の仕様

ロールトップクロージャー

近年のULバックパックのトレンドに違わず、ロールトップクロージャーを採用。他メーカーの多くがサイドバックルを使用するのに対して、トップストラップ1本で留めるため手数が少ないのが特徴です。また写真のように留めたバックル部分はストラップで上から押さえるようにしておけば、木の枝や岩角に引っ掛けてバランスを崩すリスクが大きく減少します。

ベストショルダーハーネス

ベータライトシリーズの大きな特徴がベストショルダーハーネスです。Gossamer Gear ファイストクモ、PA'LANTE ジョーイ、Hyperlite Mountain Gear エアロ28のように他ブランドでもベストショルダーを採用しているモデルはファストパッキング志向が強く、そのほとんどが20-30Lの容量でオーバーナイトハイキングするために設計されています。ショルダーポケットを活用するならばやはり最初から付いているものが使いやすく、ショルダーの面積が大きくなるベストショルダーだとポケットの配置に工夫が凝らせます。
左ショルダーはポケットは大きなものがひとつ
右ショルダーはジッパー付きとジッパーなしのふたつのポケット
ベータライトでも左右で異なる配置になっています。
ベストショルダーはその幅広い面積と複数のスターナムストラップの効果から、上半身全体に均等に荷重を分散しようとするフィット感にすぐれたハーネスですが、通常のストレートショルダーハーネスに比べ支えられる荷重には限界があります。ベータライト30はまさにベストショルダーに適したモデルといえそうです。

脱着式ウエストハーネス

テープ部分とポケット付パッドとが脱着可能
このウエストハーネスの脱着も30Lという容量だからこそ意味を持つ機構といえるでしょう。30L台のバックパックでは水をよほど過剰にもたない限り、テント泊のオーバーナイト装備でもトータルウェイトで10kg以下に抑えられるでしょう。上半身で支えることが無理な重量ではありません。フィット感が高いベストショルダーだからこそ、ウエストハーネスを積極的に外して下半身は歩くこと、進むことに集中させるのもスタイルでしょう。
振られどめとしてテープのみを残してもよし、もちろんウエストハーネスはそのままでも構いません。水食料の重量を考慮して上半身に疲労が蓄積した時には腰でサポートするというオーソドックスなULバックパックの背負い方は行動時間が長い旅ではやはり嬉しい機能であることは間違いありません。

フロントメッシュポケット

ストレッチメッシュのフロントポケットはベータライト45だとポケット入口がナイロン生地で補強されているためモノの出し入れがやや面倒ですが、ベータライト30の場合は、ストレッチメッシュのみ、かつツマミとしてのループが配置されているのでかなり使いやすくなっています。とはいえ、道具の外装が極力避けられるクライミング文化(※バックパックへ道具を外装すると、木の枝、岩角に引っかかることでバランスを崩したり、落石などを誘発することがあります。もちろん道具の脱落も考えねばなりません。不安定な環境での活動ならなおのこと注意が必要なことから、極力外装は避けるようになります。)をベースとしたブランドだけに、公式ホームページでもフロントポケットは「ボーナス」と表現されています。

ボトムコード

バックパックの底部にはコードが配置されています。公式ホームページではマットを横付けした画像があります。マット、衣類などの装着に有効です。バックパックの本体容量を最大限活かすうえでも嬉しい装備です。しかしマットを外付けするときはご注意ください。日本の山岳地では登山道とはいえ、急峻でかつ幅が狭く、すれ違いに十分なスペースがないところも多々あります。マットの横付けはすれ違い時にバランスを崩すこともあることを常に念頭においてください。
このストラップは装備の外装で使うより、デイハイクなどで荷物が少ない状況で使用する際にこのストラップをしっかりと絞ることでバックパックの底部のマチをなくし、荷物がバックパックの底にたまらないようにするために使用してはいかがでしょうか。

背面パッド

ベータライト30はフレーム無しのバックパックですが、薄手のウレタンフォームが入っています。挿し入れは容易ですので、バックパックの剛性をあげたい場合はホームセンターなどで硬めの樹脂シートをご用意いただき、このウレタンフォームを同じ形にカットして挿し入れてみてください。

目止めについて

バックパックの表側の縫い目は目止めされていますが、背面側については目止め処理はされておりません。ウルトラウィーブの素材自体は水を通しませんが、縫い目からの浸水を防ぐことはできませんので、バックパック内部での防水対策は必ずおこなってください。バックパックは完全防水ではありませんが、生地が水を吸わない、重たくならない、それだけで十二分に意味があることだと思います。
ベータライトシリーズは30L、45Lとふたつのモデルが展開されています。2024年1年間、両モデルをテストした結果、ならびに上記のような製品仕様をふまえると、その真価がより強く発揮されるのは30Lモデルだとハイカーズデポでは考えるようになりました。より速くより遠くへというファストパッキングの思想が色濃く反映されていますが、ランナーだけのバックパックではありません。週末の1泊2日のハイキングから、UL志向のハイカーによる数ヶ月のスルーハイキングまで、歩くことを愛するハイカーにとっても軽さと耐久性とを与えてくれるバックパックなのです。