下向きの前爪で登攀ではなく、歩行に特化したハイキングクランポンのパイオニアモデルKTS。どんな種類の靴にも装着できるように工夫されたストラップシステムが特徴の10本爪モデル。同社K10が軽さや装着のしやすさに重きをおいているのに対して、KTSは薄くたためるコンパクトな収納力や長い爪によるトラクション性能に重きをおいています。
- 重量
- 666 g
本体:628g
Snow Release Skin : 38g - スパイク詳細
- 材質:4130 Chromoly Steel
本数:10 spikes(10本爪)
長さ:1-inch spike length(爪長 25mm) - サイズ
- 対応サイズ
・S/M ハイキングシューズ:22〜27cm程
・M/L ハイキングシューズ:27cm〜程
カラー
Red
ハイキングクランポンのパイオニア
長い爪と薄く畳める高い収納性
より積極的なスノーハイキングに
歩行用のハイキングクランポンっていったい何?
他の10-12本爪クランポンと何が違うの?
同社の軽量ハイキングクランポンK10の商品解説でも説明しましたが、こちらでもまずはハイキングクランポンについて整理していきましょう。
ディテールの魅力
下向きの前爪
登山用の爪が前を向いたものと違い歩行に特化して前爪が下を向いています。爪が前を向いていても雪上歩行に慣れれば歩ける、というのも真実ですが慣れたとしても爪が 前向きに出ていると、大き過ぎる靴を履いているときのようにつまずきやすくなります。ですから、爪が下向きなだけで歩きやすくなります。その代わり雪面を 蹴り込んで『登る』ことには不向きになります。
スパイクの長さ
通常のクランポンと比較するとスパイク(爪)が短めなのも特長です。スパイクが長ければその分”下駄”の様に実際の足の底よりも地面が遠くなります。その 上接地面も少ないですから、確実にバランスが取りにくくなるのです。長すぎず短すぎないスパイクは、伝統的なものから変化の少ない従来の縦走用クランポン よりも歩くことを重視し考えた結果です。
ちなみにカトゥーラのハイキングクランポン2モデル、K10とKTSとではその長さに違いがあります。
KTS 1インチ(2.5cm)
K10 3/4インチ(1.9cm)
スノーハイキングのエントリーで使いやすいのはK10、よりしっかりとトラクションをかけたい場合はKTSという区別ができます。
クラシックなテープバインディング
KTSのバインディングシステムは、クラシックなテープによるもの。カトゥーラボのハイキングクランポンのオリジナルモデルだからこそのシンプルでクラシックなスタイルです。現在の主力モデルであるK10のクイックフィットバインディングシステムの方が脱着の容易さでは大きく軍配があがります。しかしKTSがいまだ作られているのには理由があります。それは収納サイズのコンパクトさにあります。樹脂プレートなどのパーツが最低限に抑えられており、バインディングはテープを主力に構成されています。そのため収納時に薄く畳むことができるのです。
使用する山域、季節、雪の状況により、クランポンを装着するタイミングが限られる場合、クランポンをどう携帯、運搬するかも重要になります。収納サイズを重視するケースではKTSは非常に有効です。
LeafSpring® Flex Bar technology
ハイキングクランポンで走れてしまう大きな理由としてクランポンの前後を繋いでいるセンターバーがとても柔軟であることを忘れてはいけません。登攀にも使える前爪が前を向いているクランポンのセンターバーは体重や踏む力を集約させて前爪に伝えるために硬く作ら れています。そのため柔軟性のあるハイキングシューズや、スキーでもつま先の曲がるテレマークブーツとは目的が異なるため相性がよくありませんでした。しかしKahtoolaのセンターバー は柔軟性に優れているので歩行目的のどんな靴でも使用できます。この柔軟性のあるセンターバーにより歩くだけでなく走れるクランポンになっているのです。
このフレックスバーにおいてはKhatoolaは元祖と言えます。ずいぶん前の話ですが一時期ブラックダイアモンドのクランポンのフレックスバーはKahtoolaのものが採用されていたのです。この高い信頼性も長くKhatoolaというメーカーが支持される理由にもなっているのでしょう。
クランポンの材質
クランポンの要である本体とスパイクなどには、強度のある4130 Chromoly Steel(一般言う鉄を強く合金にした鋼)を使用しています。クロモリブデン鋼は軽さと強度のバランスに優れています。KTSの実測重量は666gと、10本爪以上のクランポンとしては非常に軽いモデルといえます。爪の長さ は1インチ(約2.5センチ)で、短いのが特徴です。爪の絶妙な短さはクランポン初心者のハイカーも歩きやすいはずです。森林限界上で雪が吹き飛んでしまった凍った斜面には適しませんが、踏み固められたトレースや夏道での使用、いわゆるスノーハイキングにおいてはトラク ション性能にまったく問題はございません。
メリット と デメリット
ハイキングクランポンとしてのメリットは以下のようになります。
- 簡易アイゼンやチェーンスパイクと明確に機能を分けて考えられる
- 十二分なトラクションが得られる。
- アルパインクランポンより軽量化できる。
- サイズ調節が簡単で、フィット感が良い
注意すべき唯一のポイントはバインディングに関することです。
- バインディングテープが簡素なため、一般的なアルパインクランポンに比べると固定力に劣る
前爪を使うようなハードな“登り”ではないが、積極的に雪山で“歩き”を楽しみたいハイカー。
簡易アイゼンから一歩進みたいけれど、本格的なクランポンに は気後れしてしまうハイカー。
シンプルだけど、技術に応じて可能性も広がるハイキングクランポンのスタンダード。
雪が降りはめた初冬の近郊の山。
積雪が多くても冬季にトレースが途切れない森林限界下の雪山。
雪面がしまりトレースも落ち着いた残雪の稜線。
雪山を『歩く』ハイカーの次なるステップとして検討して欲しいクランポンです。