Microraft

MRS(Micro Rafting System)は2007年に創業されたパックラフトブランドです。欧州圏での認知度は高いですが、日本ではまだそれほどではありません。そんなMRSを今年からハイカーズデポでも取り扱います。今回紹介するマイクロラフトはフィールドを選ばない仕様を備えながら軽さに秀でたモデルであり、同社ではクラシックモデルの位置付けとなります。

ホワイトウォーターからツーリングまで
全方位対応の貴重なクルーザーデッキ
パックラフトの本質を伝えるモデル

 

クルーザーデッキ

用途を問わない万能モデルを体現する部分が「クルーザーデッキ」と呼ばれる簡易的なスプレースカートです。オープンデッキの開放感や涼しさ、クローズドデッキの浸水に対する安心感や耐寒性。どちらも湖から急流まで幅広いフィールドで遊びたい人には欲しい機能ですが、そんな欲張りな要求もクルーザーデッキならデッキ部の全開閉ができるので叶えてくれます。そして必要なければデッキ自体を取り外すこともできるので、軽量化や荷物の削減に繋がります。

クルーザーデッキ全開/全閉

そんな便利なクルーザーデッキですが、パックラフトのジャンルが細分化していく中で姿を消しつつあります。パックラフトを語る上で外せないアルパカラフト社でも2022年に廃番となりました。遊び方がより先鋭化していき激しい急流を積極的に楽しむため、簡易的なクルーザーデッキよりも密閉性や沈脱スピードに優れるホワイトウォーターデッキが増えるのは自然なのかもしれません。ただホワイトウォーターデッキにスプレースカートを装着する場合、コクピット部に「コーミング」と呼ばれる硬質な輪部が必要となります。これは一般的なカヤックなどではお馴染みの作りですが、軽さを求めて生まれたパックラフトにおいては賛否両論あります。どう捉えるかは人によりけりですが、荷物がひとつ増えるのは事実です。(コーミングについてはMRS社の動画にてご確認頂けます)

私達はパックラフト初期からあるクルーザーデッキの「これで充分」という感じがとても好きで、MRSマイクロラフトを取り扱い始めたのも同仕様が続いていたからです。遊び方によっては物足りなく感じる人もいるでしょうが、この仕様で遊べない場所ならパックラフトよりもホワイトウォーターカヤックの出番だと考えています。

 

サイズ

マイクロラフトはXS〜Lまでサイズがありますが、サイズ差が極微差だったためMRS側に確認をしながらS・L展開としました。商品ページ記載のサイズの選び方は目安であり、絶対ではありません。160cm代の人がロングツーリング用に荷積載面積や浮力を決め手にLサイズを選んだり、170cmを超える人が旋回など小回り重視でSサイズを選ぶのもありでしょう。私達(身長165cm/174cm/175cm)もSとLをフィールドで試しましたが、最初はLよりもSの機敏な操作感を評価していました。ちなみにMRS社のスタッフ(175cm)も長年Sを使用していたそうです。ただLの船体内に体が収まる感じと比べてSの体が浮く感覚が気になり、結果的に〜170cmはS、170cm〜はLと結論付けました。

SとL

SとLの乗艇姿勢差(身長174cm)

乗ろうと思えばどちらのサイズでも乗れるし、用途や考え方次第で選び方も変わります。少しでも小さく軽くしたいからS、子供を乗せて湖で漕ぎたいからL、そんな視点も良いと思います。「で、結局のところ自分にはどのサイズが良いの?」と悩む方は、ご相談に乗りますので店頭にてサイズ感をご確認ください。

 

パックラフトの膨らまし方

パックラフトの組み立ては、空気を送り込み膨らませるだけです。注入口には二重構造のバルブが付いています。ひとつ目のバルブに付属のフローテーションバッグを使い空気を送り込む。一定量膨らまし空気が逆流してきたら、ふたつ目のバルブに切り替え呼気で空気を送り込み仕上げます。専用のフットポンプも販売されていますが、それを持つくらいならビールをひと缶持っていきましょう。

 

スケッグ

船底が平らなパックラフトは、漕ぐたびに船体が右に左にブレます(勿論、これを理解した上でパドルを操ることが基本です)。これを楽にしてくれるのがスケッグで、船底から突き出たフィンが直進性を増してくれます。スケッグは2サイズ付属しています。水深やコース長などで使い分けるのが良いでしょう。そして付けずに漕ぐのもありです。便利な道具に頼らず、自分自身の力で工夫して荷物を一つ減らす。ULパックラフティングとULハイキングの共通点ですね。

スケッグ装着底部/ショートスケッグ/ロングスケッグ

 

人里離れた川を野営しながら河口まで漕ぎ下る。歩いては渡れない湖の対岸へ漕ぎ渡り山奥へ足を踏み入れる。バックパックにパックラフトを詰め込んで、より自由な遊びを楽しみましょう。