応力集中を避ける合理的なデザイン
最低限を追求した世界最軽量のアルミ製背負子
背負子を軽くしたい。その想いから企画、製作をしたSuperlight SHOIKOがようやく完成しました。
一見、ウルトラライトシーンと関係のないもののように見えますが、そのシンプルかつ適材適所に材料が配置されたデザイン、そして最低限の荷物を運ぶために軽量化されたこの背負子にはウルトラライトの考え方に通じるものがあります。
現代における背負子
僕の背負子との出会いは、山ではなく海での磯フカセ釣りです。撒き餌を撒いて、その撒き餌とさし餌を同調させてメジナやクロダイを狙うこの釣りは、釣り場となる磯まで大量の撒き餌とクーラーやバッカンを担いで移動しなければなりません。その際に必要なのが背負子です。バックパックには入れることができず20kg程にもなるその荷物を運ぶには、剛性があり、クーラーなどの荷物を積載しやすい背負子しかないのです。

元はと言えば、背負子は昔(江戸時代ごろ)、薪や農作物を山村内から町へ運搬するために使われていたものです。日本の各地域で使われていた背負子は、運搬するものや地形によってその土地土地で様々な形のものが存在していました。車が普及してからは、人力による運搬は徐々に機会を減らし、昔ながらの木製背負子が使われているのは今や山小屋くらいかもしれません。
また、登山文脈での背負子と言えば、フレームパックを懐かしむ方も多くいらっしゃるでしょう。1952年にケルティがフレームパックを民間用に販売し始めましたが、このいわゆるエクスターナルフレームパックの形状は現在の背負子のような骨組みにバックパックが取り付けられたものです。その後、1977年にグレゴリーがインターナルフレームパック、つまりバックパックの内側にフレームが入る現代のバックパックのような内部フレームパックを発売してからは、登山文脈でいう背負子は下火になっていきました。

そして、現代における背負子と言えば、金属製のL字型のタイプが想像に容易いでしょう。僕が背負子と出会った海釣りや、林業などでは今でも多く使われています。 釣りであればクーラーボックスやバッカン、タックルケースなどバックパックには入らないものを背負子の荷台に載せ、林業であれば機械や苗木を運搬する際に使われるようです。
このように現代でも背負子は使われつつも、ニッチな道具であることには間違いありません。唯一日本生産でこだわりを持って作り続けているEVERNEWのようなメーカーもありますが、市場に存在する数少ない背負子はそのほとんどが耐荷重と耐久性に重きをおいて作られています。耐荷重と重量のバランスをふまえたうえで、本体の軽さを重視した背負子はほとんどありません。
頑丈に作れば安心というのは間違いありませんが、ウルトラライトの専門店として、「これで十分でしょ?」と言えるような最低限のものづくりをめざしました。積載する重量設定を見直せばが、とにかく軽量な背負子が作れるだろうと考え、世界でも最軽量クラスであろう背負子が完成しました。
民具から辿り着いた独自構造
どうにか背負子を軽く出来ないかと様々な構造を考え、最終的にパイプだけでなく板金を用いて、屈曲部に厚みを持たせたL字構造になりました。
オールパイプ構造で、パイプ厚を薄くして径を細くすることで軽量化することも考えられますが、その場合は重さによって負荷がかかる部分もかからない部分も同じパイプ規格で型作られることになります。
Superlight SHOIKOも一般的なL字型の背負子も、重さによって大きな負荷がかかる部分の一つはL字の屈曲部であり、この部分に集中する負荷をどのように分散させるかが肝になります。その際にオールパイプ構造であれば、この屈曲部だけパイプを厚くしたり径を大きくすることはできません。そのため市場にあるいくつかの背負子は屈曲部への負担を減らすために、荷台を支えるようにさらにパイプを追加する方法をとっています。
Superlight SHOIKOは板金構造をとることによって、大きな負荷がかかる屈曲部に厚みを持たせ、フレームにかかる負荷をすべての部位に均等に分散する構造になっています。これは背負子の文献を探す中で出会った白川郷の背負子構造を参考にしています。長年使われながらできるだけ軽く丈夫になっていった民具としての背負子は、構造分析をすると見事なほどに材料にかかる負荷をうまく分散できる構造のようです。民具は、非常に長い年月の中で作っては壊れてを繰り返し、合理性が最高に高まったものだと思います。その民具を参考にさせていただき、適材適所で材料の配置を変えることによって負荷の集中、材料力学の専門用語で言えば応力の集中を回避するという構造が実現できたのです。

ショルダーハーネス・背面パッド
ショルダーハーネス、背面パッドは背負う荷物の重さに準じた作りになっており、ともに内側のスポンジは最低限の厚みです。ただ、長時間背負う際にも体への負担がかかりにくいように適度の硬さを残しています。
ショルダーハーネスは、背面パッドとフレームにテープを固定する構造です。多くの背負子は、ショルダーハーネスが横ずれしないようにビスなどの金属パーツを用いて固定しますが、フレーム自体に何か付け足すのではない方法で固定をしたかったのです。
最初は、最上部の横パイプに2箇所ツブシ加工を入れ、そこにショルダーハーネス付け根のテープを巻くことで固定できないかと考えましたが、うまくいきませんでした。

その後、ハーネス製作にご協力いただいたMIYAGENのアイデアによって、最終的な構造が決まりました。ショルダーハーネスの付け根から伸びる2本のテープを背面パッドとフレームにそれぞれ固定することにより、ハーネスの長さや付け根の幅を調整することができる構造になり、重量が出やすい金属パーツを増やさず、プラスアルファの機能を付け加えることができました。

背面パッドは、軽量のためにフレームが体に当たる部分のみカバーする形状です。背負った際に一番体に当たりやすいのは下部腰側の横パイプですが、この部分にはスポンジが2枚入っています。必要なところに必要な量の部材を配置し、最低限を意識したこれらの作りは、もちろん軽量化にもつながる部分です。
スペックと使用例
積載重量
Superlight SHOIKOは、13kg程度までの積載を想定しています。耐荷重設定としては20kgですが、これは静荷重での想定です。実際に背負子を使う際には、歩く際の身体の上下運動により積載重量以上の負荷がかかります。テストでは、15〜18kgを積載して背負いながらの歩行や跳躍によって負荷をかけても問題なく、20kg積載の状態で48h、25kg積載でも24hの静荷重テストをクリアしています。
そのため、推奨積載重量内での通常使用において壊れることはないですが、転んだ際に岩にぶつけたり、落としたりした際には破損する可能性があります。強度よりも軽量性を重視した作りであることへのご理解をいただきながらご使用いただければ幸いです。
寸法
幅31.5cm、高さ50cm、奥行き21cmの寸法は、背面長は短く、幅も狭めな設計です。肩甲骨あたりに重心がくる高めの位置で背負うことを想定しています。
10-15kg程までの荷物を背負う際に効率の良い場所は肩甲骨のあたりです。いわゆる赤ちゃんをおんぶするような位置に重心を持ってくると、荷物の重さを感じにくく、荷物に振られにくくなります。
また、体の幅に収まる横幅のため木々がフレームに引っかかることも少ないはずです。以前に主流であったエクスターナルフレームパックはフレームが大きく、日本の狭い登山道では木々がよくひっかかり、衰退の原因の一つにもなっていたと言えますが、その心配はありません。
荷台の実質的に荷物が載せられる部分は17.5cmの奥行きです。10L周辺までのクーラーボックス、50L程のドライバッグ、ベアキャ二スターが積載できるような大きさにしています。
使用例




Superlight SHOIKOは国内の金属加工工場に製造を依頼しています。精度の高い溶接技術で作っていただいていますが、長く外遊びで使っていれば壊れることもあるかもしれません。本製品はアルマイト塗装を施しているので再溶接は難しいのですが、何かしらの方法で壊れた箇所を修理できる可能性もありますのでご相談ください。
バックパックには入れることが難しい、あらゆるものの運搬にはSuperlight SHOIKOの出番です。ぜひあなただけの使い方を見つけてみてください。

