Tube Quilt

ハンモックをシステムで軽量化するのために作った、ハンモック軽量化への道しるべ的アイテム。汎用性こそ劣るが寒冷な季節や場所では従来のハンモックの寝具の組合せと比べると抜群の保温性と軽さが特徴。

仕様

重量
618g
ダウン
全体量:300g 超撥水加工
810FP /上面ボックス構造 100g
770FP/合計 200g
側部縦シングルキルト 100g
下面ボックス構造 100g
サイズ
全長:約200cm
幅:約80cm
その他仕様
15*15dnl シレ加工 ナイロン
参考適応温度 適温/10℃〜20℃
スタッフサック付属

ハンモックに合わせるためのスリピーングギア『Tube Quilt』

筒状のキルトでハンモックに覆うことにより、アンダーキルトとトップキルトを兼ねて軽量化。
顔まですっぽり入ることも可能。入り口は頭で蓋をすると保温効果が上がる。
ハンモック専用だからこそアンダーキルトとして使うことが可能。これはダウンバッグにはできない使い方。

HP内 Hiker's Note『チューブキルトをアンダーキルトにする方法』を参照。

商品概要

Tube Quilt(チューブキルト)は、ハンモックで快適に寝るために考えられたスリピーングギアの一つで、いわゆる“寝袋”とは言えないけれど、寝るために使う袋状の寝具が寝袋だと言われればこれも寝袋になると思います。
ハンモックアンダーキルト(下側の吊り下げる布団)とトップキルト(上掛け布団)を兼ねる方法で、マットが不要になることで軽量化になりますし、上下が別々になっていないので熱が逃げにくくもなります。またハンモックで冷たさを感じやすい側面部、いわゆる肩や二の腕付近もしっかりと守ります。

長さは200cm。幅は80cmで展開した時は160cmになる。横キルトはボックス構造。側面の縦キルトはシングル縫い。

外見は封筒型の寝袋のようですが、両側が開いていて筒状になっています。上下の縫い方のパターンは同じですが、基本的に上はHighland Designsのロゴが付いている方となります。中央部の横キルトはボックス構造になっていて断熱性を高めています。サイドは縦キルトのシングル縫いになっていて吊るした時にダウンが下に偏るのを防いでいます。上部中央は膨らみを重視して810FPの超撥水グースダウンを使用しています。それ以外のサイド縦チューブと下部中央ボックスには770FPの超撥水ダックダウンを使用しています。なぜならハンモックは宙に浮いているものでチューブキルトはそれに被せるもののため、サイドと下部は重力に潰されることは少ないと考察、770FPでも十分な膨らみを確保できるとしました。実際の使用においても申し分ないロフトになっています。

バンジーコードの力でしっかりと閉まる。
幅が広いぶん、閉じ込めるようにすることが重要。

寝袋の開口部を閉めるドローコードはハンモックの接続の相性を考えてバンジーコードにしました。通常の寝袋では伸びないコードの方が僕らとしては好みなのですが、ハンモックの場合はゴムの力を借りて強く締め込む必要がありますし、動いた時に不意に開いてしまうことを防げる“遊び”を作るために伸縮性のあるバンジーコードが必要なのです。

そして封筒型の形状は“ハンモックでまっすぐ寝るために対角を取る”余裕を持ってもらうためで、普通の寝袋では考えにくい200cmという長さになっています。しかし両側をグッと絞ればおおよそ10センチ程度短くなりますので、その程度の余裕があっても問題ないというわけです。

参考適応温度域は冬を除いた3シーズンが中心となり、およそ10℃〜20℃が単体でも快適に寝られる温度域と想定しています。ですが、寒がりの人の場合は10℃が単体での限界使用気温が10℃と見ておく方が良いでしょう。寒さに強い人であれば、5℃くらいまでなら単体使用も可能かもしれません。

メリットとしてトップキルト(*ここではハイカーズデポのトップキルトのことではなく上掛け布団の意で用いる)とアンダーキルト(下合せ)を使うよりはだいぶ軽くなりますし、通常体からの放熱を溜めるのが上下に別れてしまうところを一つで包むのでダウンの量に比べ暖かく感じる印象があります。
デメリットとしてハンモックとの相性によってはチューブキルトと体との間に空間ができすぎるために空気が対流して寒くなってしまうことがあります。
暖かく過ごすコツは頭側、足側の口をしっかりと蓋をすることと、空いた空間をできるだけ埋めることです。そのために持っているウェアや道具をフルに使う工夫をすると良いでしょう。

サイドジッパーのフラップはあえて外側。
フラップ部分は化繊の中綿を入れています。

チューブキルトの使い方

*画像は旧カラー(廃盤)となります

1から13まで手順に従って見ていきます。

1、ジッパーを下まで全部開きます。

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2、ジッパーが生地を噛みにくくするにはスライダーを直接持って、指で生地がスライダーに当たらないようにするとスムーズに開けます。

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3、ハンモックに被せます。

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4、ジッパーを端から閉めます。

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5、ジッパーが生地を噛みにくくするにはスライダーを直接持って、指で生地がスライダーに当たらないようにするとスムーズに閉められます。

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6、足元になる方のバンジーコードを最大に引きしぼります。

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7、伸ばしたバンジーコードはハンモックとスリングなどの接続部にあるループやカラビナに通します。

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8、逆に返したバンジーコードの末端の小さいループにコードロックをひっかけます。

このコードロックの位置を前後させることで被せたチューブキルトのズレや張り具合を微調整することができます。

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9、バンジーコードを絞った側に寄せて、ハンモックを広げて乗ります。

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10、脚を入れて、ポジションを整えながらスルスルと被ります。

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11、バンジーコードを適度に絞ります。絞ったままでもバンジーコードで伸縮するので、肩を入れることができます。

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12、基本形の完成。入り方にもよりますが、上から見るとどうしても肩が見えてしまいます。そこがハンモックのコールドスポットなので、着ていない衣服やダウンジャケットなどで上手く隙間を埋めましょう。

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13、180cmくらいまでの人なら完全に頭まで入ることも可能です。頭で蓋をするイメージです。こうすると熱が逃げにくくなるので暖かいです。

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*応用編としてアンダーキルトとしての使い方があります。それについてはHP内 Hiker's Note の記事をご覧ください。

『チューブキルトをアンダーキルトにする方法』

チューブキルトをつくったわけ

そもそものきっかけはHighland Designsのダウンバッグ。ジッパーが足先まであり布団のように開く構造のため、まるでミノムシのようにハンモックに被せて使うことができます。それを使ってバイクパッキングの旅に出かけたのが当店のスタッフNinoこと二宮です。彼のバイクパッキング記事はこちら。そしてその経験をもとに制作したのがチューブキルトです。

?と思ったかたもいるでしょう。すでに当店ダウンバッグをお使いの方はハンモックさえあればすぐにでも被せて使うことができるわけです。じゃあそれで良いのでは?ULハイキングとしては軽いことはもちろん、多用途に使えることで荷物を減らすという考え方でもあり、その観点からすれば専用品を作るというのは反する考えでもあるのです。しかしながらハンモックという道具自体、タープやテントの様な屋根を作る道具でもなく、マットの様に下からの冷えを断熱するものでもないという、今までのカテゴリーには当てはまらない寝具(または休憩道具)なわけです。であるならば、ハンモックを取り巻く状況というのはまだまだ未知の領域や可能性があるのです。その中で「使えるから満足」とはいかないのがハイカーズデポというわけです。

果たしてこれがハンモック用寝袋の決定打になり得るのかと言われればそうではないでしょう。しかし軽量化に興味があるハイカーは試してみる価値はあると思います。
現在のハンモックの組み合わせは基本的に加算の原理なので決して軽ありません。例えばハンモック本体だけでは雨を防げないのでタープとの組み合わせがある意味で必要不可欠なわけです。要するに「ハンモックシステム」ということです。ヘネシーハンモックの様にセットアップされているから“一つのシェルター”だと言い張るのは無理があります。しかもそのシステムは決して軽くはない。そうであれば少しでも軽量化するために上下に別れている寝具を一つにするチューブキルトは、ハンモックの軽量化への一つの方法を示す“道しるべ”のような道具なのかもしれません。

仕様詳細

・重量

重量は3シーズン用の寝袋とほぼ同じくらいで618g(誤差±3%あり)です。内ダウン量が300g。寝袋として見れば決して軽量ではないですが、ハンモックの中に敷くマットが不要になりますし、アンダーキルトと寝袋を兼ねていると考えればかなり軽いでしょう。マットは軽くてもレギュラーサイズで400g程度はあります。それに合わせるのがダウン量300g程度の寝袋だと考えると総重量は500g〜600gになります。合わせて1kgになる計算です。しかしチューブキルトは外気の影響を受けるとはいえ、体から放出される熱を効率よく溜めるため、十分に軽量なことがわかってもらえると思います。
正直なところハイランドデザインのダウンバッグ(ダウン量260g、重量580gほど)と比べればダウンバッグの方が保温性も軽さも上になりますが、ハンモックとの相性が決して良いわけではないのです。コンテュニアスバッフル構造上のデメリットとしてどうしても上や側面はダウンが薄くなりがちで、背中に偏りやすいからです。それに寝袋が狭くてハンモックと相性が良いわけではありません。その点チューブキルトはダウンバッグよりも少し重たいですが、ハンモックに相性よく使えるものだと考えればその重量差も大きくは感じないでしょう。

・ダウン量と品質

総重量300g。810FPと770FP超撥水ダウンを部位により使い分けしています。
最低保証値が810FP 最大値は850FPを超える超撥水グースダウンと、最低保証値が770FPの超撥水ダックダウンを部分的に分けて使っています。上部(パッチタグが付いている側)の横ボックスキルトにはロフトを保ち保温性を確保するために810FP超撥水ダウンを100g使用しています。重力の影響を受けにくい両サイドの縦シングルキルトには片側50gずつ両側で100gの770FP超撥水ダウン。下部のボックスキルトにも潰れにくいという理由から770FP超撥水ダウンを100g封入。全体で300gのダウンが入っていることになります。このような選択をしたのには理由があります。必要以上の品質を求めるあまり高価になりすぎるのは本来のアウトドア用品の本質からは外れるものではないかという思いです。ただでさえ“ハンモック用”にしたことで複雑な構造になってしまったため、どうしても高価格が想定されていました。しかしこの構造、宙に吊るされるハンモックだからこそ使い分けができたのです。十分な膨らみさえ作れれば、この程度のFPの差はわずかなものだと考えられます。その分価格を下げることも可能になりました。

・生地

15デニールのミニリップストップナイロンにシレ加工を施しました。制作を依頼している「ナンガ」定番の生地ではありますが、軽さと丈夫さのバランスが取れたもので、腰のある生地はダウンの膨らみ方にも影響をします。

・参考の適応温度域について

使用温度域の想定は3シーズンですが、春と秋がメインになるでしょう。ハンモックがマット不要で寝られる気温は大体25℃以上。20℃以下ではマットなしで寝ることは厳しいでしょう。そこから気温10℃くらいまでを快適に寝られる様に考えてつくりました。当店ダウンバッグの場合はダウン量260gで0℃くらいまでを想定していますが、マットが併用であることやテント内での気温(風の影響を受けない)の想定となります。チューブキルトはそれよりもダウン量は多いですが、ダウンを片寄らせて使うことができない、面積が大きい、ハンモック同様風の影響を受ける使用方法が一般的、というところを考えると10℃という気温は妥当だと思います。もちろんハンモック全体を覆い風の影響を完全にシャットアウトすることができればその温度域はもっと上がると思われます。

*実使用での体感の感想*

サンプルのテストをおこなった時、屋根はタープ(片側のみ落とし)、軽量で小さめのハンモック、気温は5℃以下(朝方2℃ていど)で、チューブキルト単体では厳しく、トップキルトを内側に一枚上掛けとして足して暖かく寝られました。ウェアはアクシーズクイン/ヨヒヤミ、ウールシャツ、ロンTとTシャツの重ね着、ウールタイツとTHオフらないパンツ、ウールニットキャップ。背中側はしっかりと暖かさが溜まっていた印象。テストしたのは男性でがっちり体型、寒さに強く末端が温かいほうなので、女性や寒がりの方が参考にする場合はもっとスペックを低く考える必要があります。ですので、基本的に単体のみで使えるのが10℃くらいまでと考え、それ以下の気温であれば何かしらもう一枚(チューブキルト内で)上にかけられるものを用意するのが良いと思います。たとえダウンジャケットやダウンパンツを着用してもチューブキルトと体との隙間が埋まらなければ暖かくはならないと考えてください。

・スタッフサックについて

スタッフサックは、両側が巾着状になっている "Double Ended" と言う形状になっています。この形状はハンモックのシステムにもよりますが、設営や撤収を楽にしてくれることで知られています。大きさは十分なので組み合わせ次第ではハンモックとチューブキルト毎出し入れすることが可能なのです。